2年ぶりのストリーミング回で前回は何を話したか?
Off Topicがストリーミングのプラットフォームを正面から扱うのは、2023年4月の回以来です。収録が2025年4月中旬なので、ちょうど2年ぶりの回になります。
よく(ストリーミングの話を)去年我々話さなかったですね。
草野さんによると、リスナーからはストリーミングの話をしてほしいという要望が何度かありました。作品単体の話はしていたものの、プラットフォーム側の話はあまりしていなかったと2人は振り返ります。
宮武さんによると、2年前は2回に分けて配信していました。前半はボブ・アイガー氏がDisneyのCEOに戻ったあとの組織体制の話で、後半は主にNetflixの話でした。
前回のNetflixの話では、黒字化している点や、始めたばかりの広告プランがまだ伸び悩んでいる点を取り上げていました。スポーツにはドキュメンタリーから入る、という点にも触れていたといいます。
YouTubeとの比較も前回の論点でした。両社は同規模のコンテンツ予算を持ちながら、Netflixは制作費をアップフロント ── 作品の制作や配信の前に、権利料や制作費をまとめて先払いする契約形態のことで支払い、YouTubeは先払いせず広告売上をクリエイターに分配しています。
赤字だらけのストリーミング業界は黒字化したのか?
宮武さんはまず、2022年当時のストリーミング事業の数字を挙げます。当時は各社が大きな赤字を抱え、Netflixだけが黒字でした。
| 企業 | 損益 | 規模 |
|---|---|---|
| Disney | 赤字 | 約34億ドル |
| Paramount | 赤字 | 約12億ドル |
| Warner Bros. | 赤字 | 約11.5億ドル |
| Comcast | 赤字 | 約11.6億ドル |
| Netflix | 黒字 | 約44億ドル |
草野さんがNetflixの強さの理由をシンプルに尋ねると、宮武さんは「ずっとやってきたから」を1つ目に挙げます。他社はライブラリの拡充、ユーザー獲得の施策、インフラ構築に多額の費用をかけていたからです。
ところが2024年の数字では状況が変わっています。宮武さんによると、Netflix、Disney、Paramount、NBCUniversalのPeacock、Warner Bros. Discoveryの5社を合計すると、初めて黒字になりました。
2024年1〜9月の数字では、DisneyとMaxが小幅な黒字、Netflixは大幅な黒字でした。Paramountはわずかな赤字で、Peacockだけが約14億ドルの赤字と、まだ大きくマイナスです。
Amazonのプライム・ビデオがこの比較に入っていないのは、数字が公開されておらず赤字額がわからないためです。DisneyにはHuluなども含まれているはずだと宮武さんは話しています。
プライム・ビデオは料金体系も独特です。宮武さんによると、基本は無料のまま広告付きで視聴でき、毎月3ドルほど払うと広告なしになります。デフォルトで全員が広告プランに入る仕組みは、他社には真似しにくいと宮武さんは見ています。
飽和したはずのNetflixが、なぜまだ伸びるのか?
草野さんは、日本やアメリカの市場はもうNetflixの会員を取り切ったように見えるのに、なぜ成長が続くのかを尋ねます。宮武さんによると、Netflixは2024年第4四半期の決算で、過去最高のユーザー数を獲得しました。
宮武さんはパスワード共有の制限にも一定の影響があると認めたうえで、最大の要因は広告プランだと話します。安いプランを提供することで、Netflixは市場のパイそのものを広げました。
確か(Netflixの)新規獲得ユーザーの半分が広告プラン入ってるみたいな。
草野さんは、話題になっている作品を少しだけ見てみたいとき、高いプランではなく安いプランで十分だと考える人は多いだろうと応じます。
宮武さんはさらに、Netflixに登録する理由が特定の番組を見るためではなくなってきたと指摘します。草野さんが「ケーブルテレビのように、とりあえず入っているもの」と言い換えると、宮武さんも同意しました。
Netflixがデフォルトになった背景として、宮武さんはコンテンツの量を挙げます。長年オリジナル作品に投資してきた蓄積があるため、超ヒット作がない時期でも見るものが大量にある状態になっています。
長年のコンテンツ投資
早くからオリジナル作品を作り、ライブラリが積み上がった
広告付きの安いプラン
「少し見てみよう」という層まで取り込み、パイを広げた
とりあえずNetflix
特定の番組のためではなく、まず登録するサービスになった
Netflixのコンテンツ予算はなぜ頭打ちになったのか?
宮武さんは、Netflixがコンテンツ企業というより、テックプラットフォームに近づいてきたと話します。説明のために持ち出したのが、2022年頃に番組で取り上げたSpotifyの話です。
Spotifyは音楽を配信するほどレコード会社への支払いが増えるため、売上が伸びてもマージンが上がりにくい構造にあります。ポッドキャストに進出したのは、その構造を変えるためだったと宮武さんは振り返ります。
テック企業の良さって、なんか売上どんどん上がっていくとマージンがどんどん上がるはずじゃないですか。理論上は。
宮武さんによると、Netflixも同じ課題を抱えていました。2014年から2018〜2019年頃は、売上とコンテンツ予算がほぼ同じ率で伸びており、コロナ前は配信売上の9割を翌年のコンテンツ予算に回していたといいます。
変化が出たのは2019年頃からです。コンテンツ予算は四半期で約40億ドル、年間150億〜180億ドル程度で横ばいに近くなり、2024年も約170億ドルでした。一方で売上はそれを上回るペースで伸びています。
2014〜2018年頃:売上とコンテンツ予算がほぼ同じ率で成長。売上の約9割を翌年の予算に回す
2019年頃以降:予算は年間約150億〜180億ドルでほぼ横ばい。売上はそれ以上に成長
宮武さんは、約3億人のユーザーを満足させるには年間200億ドル弱の予算で足りる、という水準をNetflixがようやく見つけたのではないかと見ています。予算を増やさなくても売上が伸びる段階に入ったという見立てです。
クリスマス映画と年末のお笑いは何を狙っているのか?
草野さんは、Netflixが予算をどう振り分けているのかに関心を示します。ホリデー向けの大作、実験的な作品、各国向けのバラエティや韓国ドラマなどの配分が気になるといいます。
宮武さんが例に挙げたのは、Amazonの『レッド・ワン』や、Netflixの空港を舞台にした映画『キャリー・オン』です。『キャリー・オン』の主演は、草野さんの補足によれば『キングスマン』に出ていた俳優です。
宮武さんによると、これほどの役者を起用したクリスマス映画は、ストリーミング市場が生まれる前には作りにくかったものです。
彼らは一つの作品で儲けなくていいんですよ。逆に赤字でもいいから、逆にそのタイミングで人をちゃんと引き寄せられるかみたいな。
映画会社は作品ごとに利益を出す必要があります。一方でNetflixやAmazonは、ユーザーを他社に行かせないことを目的に、作品群全体で採算を考えられると宮武さんは説明します。
草野さんは、日本のNetflixやプライム・ビデオが年末にお笑い番組を配信するのも同じ構図だと指摘します。大晦日にお笑いを見るという習慣のポジションを、テレビから取りに来たのではないかという見方です。
宮武さんは、こうした施策が日米でほぼ同時期に始まった点に注目します。共同CEO体制の経営陣による判断かもしれないと話しつつ、規模が大きくなったことで一種のネットワーク効果が働き、新規ユーザーの獲得が楽になっているとも話しました。
動画配信デフォルトイコールNetflixになったのかなっていうところです。
草野さんが、アメリカでは各社の料金がほぼ同じだと言うと、宮武さんはAmazonだけはプライム会員の特典としてついてくると補足しました。Amazonは単体で戦っていない、という整理です。
「コンテンツだけのNetflixは苦しい」という仮説はなぜ外れたのか?
草野さんは、以前の番組で「コンテンツ一本のNetflixは大変になるのでは」という話をしていたことを思い出します。宮武さんによると、その議論は番組の初期、2020〜2021年頃の回のことでした。
当時の仮説は、Amazonなら靴を、AppleならiPhoneを買わせ、Disneyならテーマパークに行かせるように、コンテンツの先に別の収益源を持つ企業のほうが有利だというものです。
Netflixは想定以上にすごかったっていうところですね。
宮武さんは、予算の適正水準を見つけたことに加えて、最終的に広告に舵を切ったことも大きいと話します。Netflixは長年「広告はやらない」と言い続けてきた会社でした。
宮武さんは、広告をやらない方針は戦略として誤りだったと考えています。そのうえで、広告導入を決めてからの実装スピードを高く評価します。広告の基盤システムを2回ほど入れ替えながら短期間で立ち上げたからです。
草野さんも、UIのデザインや改善スピードはNetflixがほかのサービスより抜きん出ていると感じていると話しました。
YouTubeは「暇つぶし」で、Netflixは「時間を有効に使う」なのか?
宮武さんは、Netflixのポジションに影響を与えうる唯一の存在としてYouTubeを挙げます。テレビ画面での視聴シェアでは、2年以上前からYouTubeがNetflixを上回っており、その差はさらに広がっているといいます。
この点について、NetflixのCEOは決算発表で対抗策を問われ、Netflixはプレミアムなストーリーに合うと答えました。別のイベントでは、より踏み込んだ発言もあったと宮武さんは紹介します。
暇つぶしのビジネス
視聴者が時間を有効に使うためのビジネス
宮武さんは、この発言が半分冗談だったかどうかはわからないとしつつ、YouTubeをかなりディスっていると話します。草野さんは、暇つぶしこそエンタメの延長にあるのでは、と応じました。
宮武さんは、この発言とNetflixがクリエイターを呼び込もうとしている動きには少し矛盾があるとも指摘します。Netflixは「YouTubeではできないことができる」と売り込んでいるのではないか、という見立てです。
有名な事例が、MrBeastがAmazonで手がけた『Beast Games』です。宮武さんによると、Amazonの発表では、アメリカのプライム・ビデオ視聴者の4分の1が配信開始から1か月以内に少なくとも1話を見て、そのうち6割が3話を見ました。
シーズン1はNetflixも獲得を狙っていましたが、Amazonがより多くの資金を出しました。予算1億ドルをMrBeastは超え、シーズン2と3では1億5000万ドルほどを求めていると宮武さんは話します。
全員に一押しするか、一人ひとりに薦めるか
草野さんは、Netflixの強みとしてプロモーション力を挙げます。YouTubeは人によってトップ画面が違うため、1つの作品を全員に一斉に押し出すことをしていません。
Netflixなら、トップのヘッダーで「ビーストゲーム配信開始」と見せたり、プロモーションツアーを組んだりできます。クリエイター個人の発信だけでなく、あらゆる媒体で一気に宣伝できるのが違いだと草野さんは話します。
宮武さんは、この違いはコンテンツ量の問題かもしれないと答えます。YouTubeと比べると作品数が少ないNetflixやAmazonは、特定の作品を推しやすいからです。
作品数が比較的少なく、全員に向けて「これを見てほしい」と一押しできる
投稿動画が膨大で、ユーザーごとにパーソナライズしたおすすめを出す
草野さんは、たとえばYouTubeが映画制作部門を作り、有名俳優の主演作を無料で全ユーザーのトップに出せば大ヒットしそうだと想像します。
宮武さんの答えは慎重でした。YouTubeはオリジナル番組を作った時期もありましたが、代表作の『コブラ会』も多少ヒットした程度で、投資を回収できていないという話をよく聞くといいます。
今までの多分YouTube施策の中で、オリジナル番組で大成功した案件って多分ほぼ聞いたことない。
いろいろなクリエイターと組んでオリジナルを作っても、ユーザーの求めるものとはどこか違う、というのが宮武さんの見方です。
Netflixはなぜ子ども向けYouTuberを取り込むのか?
宮武さんによると、Z世代やα世代へのアンケートでは、ストリーミングより自分の好きなクリエイターを見たいと答える人が多い傾向があります。そのためNetflix、Amazon、Peacockなどがクリエイターを誘っています。
Netflixの事例の1つが、子ども向けYouTuberのミス・レイチェルです。過去の動画をハイライトとして編集した作品をNetflixで配信しており、NetflixのアメリカのトップテンによくランクインしているといいYouTubeでの配信も続けています。
草野さんは、広告がなく、別の動画をおすすめされないNetflixで見る人もいるのではと推測します。宮武さんは、YouTubeには子どもに不適切な動画も多いため、守られた環境のNetflixを選ぶ親もいると話しました。
イギリスのYouTuberグループ、Sidemenのリアリティショーも例に挙がりました。シーズン1はYouTubeで公開されましたが、シーズン2はNetflixと契約し、YouTubeでは公開していません。
ほかにもDude PerfectやMark Roberとの話が進んでいるといわれ、宮武さんは、Netflixが子ども向けや教育、スポーツの領域を集中的に狙っていると見ています。
背景にはYouTubeに視聴者を奪われている現状があります。宮武さんが紹介した調査では、2〜11歳の視聴者は2021年以降、YouTubeで4〜5ポイント増え、同じ期間にNetflixで4〜5ポイント減りました。
NetflixはCocomelonとも提携しましたが、Cocomelonは今もYouTubeで配信できる契約で、YouTubeの視聴者のほうが大きいといいます。
Dude Perfectはすでに子ども向けアプリをローンチしています。草野さんは、自分の事業を進めながらマスに届けるためにNetflixにも出る姿を「クリエイター起業家」と表現しました。
Netflix
まず存在を知ってもらう
YouTube
継続的に動画を見てもらう
自社アプリ
最終的に自分のサービスへ誘導する
完璧。完璧なユーザージャーニーでした。
恋愛リアリティ『Pop the Balloon』はなぜバズったのか?
宮武さんが個人的に面白いと感じたのは、アーレット・アムリーさんとNetflixの提携です。YouTube登録者が約100万人いる彼女の番組が、出会い系企画の『Pop the Balloon』です。
草野さんは、SNLでパロディ化されていたのを見たものの、よくわからなかったと話します。宮武さんによると、番組の構成は次のとおりです。
風船を持った女性が5人ほど並び、そこに男性が登場します。司会のクリエイターが質問を重ね、女性は男性が好みでなければ風船を割ります。割らずに残ればカップル成立です。
草野さんがシンプルな構成なのになぜ人気なのかと尋ねると、宮武さんはまずTikTokで大きくバズったことを挙げます。草野さんも、拒否のリアクションがすぐ見えるのが強いと応じました。
若干やっぱり日本のバラエティっぽいなっていう。
宮武さんは、日本のバラエティのような構成をアメリカ風にしたことに加え、黒人層の出演者や視聴者を取り込んだことも評価された点ではないかと話します。番組は48話ほどで合計1億回ほど再生されており、Netflixはライブ配信版を作る予定だといいます。
リアリティショーはアメリカで特に市場が大きいジャンルです。草野さんは、牧場で働く男性が結婚相手を探す番組のように、出演者の属性を絞った企画を面白いと感じたと話します。
宮武さんは、応援しやすい人物像や、これまでなかった属性という点が受けているのではないかと見ています。
草野さんはもう1つ、ゲイ、レズビアン、ストレートなど恋愛対象が重ならない男女数人が共同生活をし、それぞれ外で出会いを探して結果を話し合う恋愛リアリティも紹介しました。友情とそれぞれのストーリーが新しいと感じたといいます。
IPと審査員はリアリティ番組をどう変えるのか?
宮武さんによると、最近のリアリティ番組はIPにも手を出しています。直近ではモノポリーを題材にしたゲーム型の番組や、ウィリー・ウォンカのIPを使った料理番組がありました。
宮武さんは、パターンが似がちなリアリティ番組も、IPを掛け合わせて少しひねることで新しさが出ると話します。草野さんは、一般人が出演する番組は予算が少なく済むのではとも尋ねました。
宮武さんによると、その場合に重要になるのが審査員選びです。『アメリカズ・ゴット・タレント』のサイモンのように、厳しい人、優しい人、公平な人を配置するのが定番だといいます。
料理番組なら、怒る審査員の代表格はゴードン・ラムジーです。宮武さんは、コンビのキー・アンド・ピール ── キーガン=マイケル・キーとジョーダン・ピールによるアメリカのコメディコンビ。スケッチコメディ番組で人気を集めましたが審査員をパロディにしたコントを紹介します。
セリフ的にはなんか「お前は下手だ」みたいなことを言うんですけど、なんかその後に、「でも可能性はすごいある」みたいなことを言ったりするんですよ。
コントではこの褒め言葉とけなし言葉が延々と続き、最後まで評価がどちらなのかわからなくなるのがおかしみになっています。草野さんは、ジョーダン・ピールが『NOPE』の監督だと補足しました。
宮武さんは、インタビュー番組『Hot Ones』が最初にバズったのはキー・アンド・ピールをゲストに迎えた回で、そのとき2人が宣伝していた映画をまだ見ていないとも話しました。
YouTubeクリエイターはアカデミー賞を取れるのか?
宮武さんは草野さんに、ストリーミング作品のようにクリエイターもハリウッドの賞の領域に入っていくと思うかを尋ねます。現状では、クリエイターの作品はそもそも候補に挙がりません。
草野さんは、アカデミー賞は映画好きが審査するため、ディズニー作品のような超大衆向け映画も作品賞にはなかなか選ばれないと指摘します。
一方で草野さんは、ホラー映像を作るクリエイターがA24に起用される例を挙げます。宮武さんが挙げたSam and Colbyや、ゲーム風の不気味な映像が話題になった『The Backrooms』の作者がA24の出資で映画を作っていることがその例です。
宮武さんは、映画より見られているYouTube作品も多く、比べるならテレビ番組のほうが近いと話します。『Hot Ones』や『Good Mythical Morning』はテレビ番組と対等に並べる番組だと考えているといいます。
競争が激しくなるため、ハリウッド側が嫌がると考えられる
テレビ番組の登場時と同じく専用の部門を作る。宮武さんはこちらになると予想
テレビ番組が出てきた時に、それ専用のカテゴリーをみんな作り始めたんですよね。それと同じことが起きてもおかしくない。で、起きるべきだと思うんですよね。
宮武さんは、このまま分断を続けると、どこかでハリウッド自体が危機的な立場に陥ると考えています。新しい部門はコメディショーなど複数のカテゴリーになり、映画と同じく興行成績ではなく審査員が選ぶ形になるだろうと話しました。
後半の回では、ストリーミングを含めたテレビ業界のリバンドリング ── 一度ばらばらになったサービスを、再びセット販売の形に束ね直す動き、次の大きな領域としてのスポーツ、YouTubeとNetflixの関係を掘り下げる予定です。
草野さんは経済ニュースの行方も気になると話し、宮武さんは、NetflixやYouTubeがビデオポッドキャストを取り込もうとしており、ポッドキャスターの取り合いになっていると指摘しました。
ワンテイクで撮られた『アドレセンス』の何がすごいのか?
最後は2人が最近見た作品の紹介です。宮武さんが挙げたのはNetflixのイギリス作品『アドレセンス』で、エピソード数の少ない作品です。
各エピソードワンテイクなんですよ。だから、そのカメラの使い方がめちゃくちゃうまくて。
宮武さんは、ストーリーの良さに加え、11歳ほどの役を演じた主演俳優の演技を絶賛します。初主演とみられる俳優が、感情の大きな起伏をワンテイクでこなしたからです。父親役の俳優が作品全体をプロデュースしている点にも驚いたといいます。
草野さんは、大スターやIPにつながる作品を推すイメージのあるNetflixで、この作品がヒットしたことを意外に感じていました。
宮武さんは、社会問題に焦点を当てていてPRしやすい作品だったと話します。イギリスの学校で上映されるほどの影響があり、ブラッド・ピットの制作会社プランB ── ブラッド・ピットが設立した映画制作会社。数多くの話題作の製作に関わっていますが関わっていることもPR効果になったのではと見ています。
宮武さんは同時期に見たApple TV+の『セヴェランス』のカメラワークにも、別の意味で技術的なすごさを感じたと話しました。
映画会社のトップを描く『ザ・スタジオ』の見どころは?
草野さんのおすすめはApple TV+の『ザ・スタジオ』です。宮武さんは「やっぱりApple TV+なんですね」と反応し、草野さんはAmazonのプライム・ビデオで見たクリストファー・ノーランの初長編『フォロウィング』も勧めました。
『ザ・スタジオ』は、映画会社のトップを主人公にしたコメディドラマです。映画オタクの主人公は、売れる映画より後世に残る名作を作りたいと考えています。
ところが『バービー』のヒットを受けて、上層部からジェンガやクールエイドの映画を作れと命じられます。作りたくないけれど作るしかない、という葛藤が笑いになっていると草野さんは紹介します。
主演のセス・ローガンは作品全体も手がけています。宮武さんによると、マーティン・スコセッシ本人役での出演を理想として打診したところ受けてもらえ、スコセッシを監督する立場になってとても怖かったとインタビューで話していたそうです。
草野さんによると、毎話、有名監督や俳優が登場する一話完結に近い形式なので見やすい作品です。
まとめ
ストリーミング各社は2年で赤字から黒字化へ進みました。その中でNetflixは、広告プランと予算の最適化で「とりあえず入るサービス」になっています。一方でYouTubeとクリエイターの存在感は増しており、Netflixはクリエイターを取り込みながら、賞の世界も含めて境界が揺らぎ始めています。
- 2024年はストリーミング大手5社の合計が初めて黒字化し、Netflixは過去最高のユーザー獲得を記録した
- Netflixの成長を支えるのは広告付きの安いプランで、新規ユーザーの約半分が広告プランを選んでいる
- 2019年頃からコンテンツ予算はほぼ横ばいなのに、売上はそれ以上に伸びている
- テレビ画面のシェアではYouTubeが上回り、Netflixは子ども向けを中心にクリエイターを取り込んでいる
- 宮武さんは、クリエイター作品には将来アカデミー賞などで専用のカテゴリーができると予想している




