100回目に、なぜ振り返りではなく「国の興亡」なのか?
Off Topicは、アメリカを中心にテックニュースやスタートアップ、ビジネス情報を紹介するPodcastです。今回の100回目では、宮武さんが「The Rise and Fall of Empires」、つまり歴史に基づいた国レベルの上がり下がりをテーマに選びました。
宮武さんによると、番組の初回から約3年をかけて100回目に到達しました。最初の2年ほどは毎週配信ではなかったため、毎週配信なら2年ほどで届く回数に、少し時間がかかったといいます。
(毎週じゃなかったので)三年かかったんですけど、まあようやく100回目。三桁になりましたよ。
草野さんは、新番組「bytes by Off Topic」が週に複数回配信されているため、本編にもうすぐ追いつきそうだと笑います。宮武さんも「数週間後に追い抜かれますよ」と応じました。
宮武さんは、100回目によくある振り返り企画は「ちょこちょこ振り返ってるので」やりたくなかったと話します。代わりに選んだのが、これまで別々に話してきたテーマをまとめる大きな話でした。
番組ではこれまで、個人の起業、業界のつながり、アメリカがインフレの世界に向かうというマクロ経済の話、政府やメディアへの信頼低下などを個別に扱ってきました。宮武さんは、これらが「実はすべてつながっている」と考えています。
コンテンツ、テック、ビジネス、そして国にも続くサイクル
宮武さんはまず、身近なサイクルの例を並べます。メディアではストーリーが一時的に盛り上がって下がる「ハイプサイクル」があり、テック業界ではメタバースやWeb3のようなバズワードの上がり下がりがあります。
VCやビジネスの世界には、経済が上がって不況で下がる「ビジネスサイクル」もあります。ただ宮武さんと草野さんはリーマンショック以降に就職した世代なので、不況をあまり実感していないといいます。
宮武さんが気になっているのは、こうしたサイクルが何度も続いたときに、もっと後ろから引いて見るとどう見えるかという点です。そこで出てくるのが、国そのものの上がり下がりです。
宮武さんによれば、番組のリスナーもほぼ全員、アメリカがすでに世界で一番権力を持つ国だった時代に生まれています。第二次世界大戦後、アメリカは経済的にも軍事的にもトップに立ち、その前提が変わることをほとんどの人は予想できません。
どの国も、どの経済も、どの政府も、歴史上を見ると、一生続かないじゃないですか。
宮武さんは、ビジネスサイクルが8〜15年ほどなのに対し、国のサイクルは50〜100年、うまくいけば200〜300年続くと説明します。オランダの海上帝国、大英帝国、中国の王朝などもこうしたサイクルの一部だといいます。
そのうえで宮武さんは、二人が生きている間に、場合によっては20年以内に、アメリカが世界ナンバーワンでなくなるタイミングが来るかもしれないと話しました。草野さんも、ここ10年で中国の力がとても強くなったと感じていると応じています。
通貨は8割が消えた?「永遠に続く」と思えるものの寿命
宮武さんは、元々あったものがなくなるという現象は、政治や経済システムだけでなく通貨でも起きていると話します。1700年以降に存在した約750の通貨のうち、いま残っているのは2割ほどだといいます。
1850年当時のメジャーな通貨を見ても、現在まで主要通貨として残ったのはUSドル、イギリスポンド、スイスフランくらいです。しかも宮武さんによると、当時はそれらがトップだったわけではありません。
当時のドイツでは「グルテン」と呼ばれる通貨が使われていたと宮武さんは紹介します(表記はグルテン)。日本も円ではなく小判や両の時代で、イタリアにも6つほどの通貨があったといいます。
このまま一生続くと思う。
フォーエバーな気がしますよね。
宮武さんは、こうした大きな変化はだいたい生涯に1回ほどのペースで起きると話します。草野さんは、変化のない人生を送る人もいれば、変化の最中を生きる人もいるのだと受け止めました。
宮武さんによれば、いまの世代はちょうど変化が起きそうなタイミングにいます。それが、国の興亡のサイクルを今回取り上げた理由の一つです。
歴史は繰り返さない、「ライム」する
宮武さんは、「歴史は繰り返す」という言い方は少し間違っていると考えています。歴史の中で起きているのは同じことの繰り返しではなく、似たようなことの繰り返しだというのです。
宮武さんがその根拠に挙げるのが、人類全体の成長です。1800年から現在までのGDPや平均寿命を世界的に見ると、大きく右肩上がりになっています。
宮武さんはその理由を、教育、イノベーション、努力、資本主義などの経済システムによって、一人ひとりのアウトプットが上がってきたからだと説明します。その全体の上昇の中で、個々の国が上がったり下がったりしているという見立てです。
宮武さんは、国の興亡を理解するには、国を1つの会社として見るのがわかりやすいと話します。会社は売り上げがコストを上回らなければ成長できず、借り入れやVCの資金が入っても、最終的には生産性がコストを上回る必要があります。
会社は大きくなると生産性の伸びが落ち、コストの上昇、社内政治、イノベーションの停滞、上層への権力集中と下層の不満が起きると宮武さんは言います。草野さんはこれを「イノベーションのジレンマ」と重ねました。
その後、人が辞め、新しい競合がシェアを取り始め、元トップの会社と争うようになります。人材獲得、訴訟、広告などにお金がかかる間に、良い人材と良いプロダクトを持つ新興企業が元トップを追い抜く、という流れです。
成長
売り上げがコストを上回り、会社が大きくなる
停滞
コスト上昇や社内政治でイノベーションが止まり、不満が溜まる
競合の台頭
人材が流出し、新しい競合がシェアを取り始める
争いと逆転
人材・訴訟・広告で消耗する間に、新興企業が追い抜く
やり直し
経営者が交代し、新しい制度と成長プランで再出発する
宮武さんは、1社が負けて1社が勝つことを繰り返しながらも、業界全体はイノベーションで良くなっていくと指摘します。国の興亡も同じ構造だと考えています。
結局歴史って完全繰り返してなくて、ゼロに戻ってるわけじゃないので。
宮武さんはこの状態を「歴史がライムする」と表現しました。草野さんは、直訳すれば「韻を踏む」だが日本語にない表現だとし、「繰り返す」だと元に戻る感じがしてしまうと話します。
エピソードの説明欄にも、この考え方を表す言葉として“History doesn’t repeat itself, but it often rhymes”が掲げられています。
500年で覇権国はどう入れ替わったのか?
宮武さんによると、過去500年で世界のトップ級になった国は11カ国ほどあり、そのうち本当に世界の頂点に立ったのは4〜5カ国です。
ドイツ、フランス、インド、日本、ロシアなども強国でしたが、世界のトップにはなっていないと宮武さんは話します。そして現在は、アメリカが下がり中国が上がる分岐点に、もう少しで到達する段階だといいます。
宮武さんは、国の上がり下がりを決める要素が大きく8つあると紹介します。教育、競争心、イノベーションと技術、経済アウトプット、貿易のシェア、軍事力、ウォールストリートのような金融センター、そして準備通貨としてのステータスです。
宮武さんの説明では、この8つの要素には典型的な順番があります。出発点は教育です。
教育
教育がイノベーションとテクノロジーのリードを生む
経済と貿易
経済アウトプットと貿易のシェアが伸びる
軍事力
経済と貿易を守るために軍事力が必要になる
金融センター
並行して金融の中心地がつくられる
準備通貨
その国の通貨が準備通貨のステータスを得る
ハードマネーからフィアットマネーへ。長期債務サイクルとは?
宮武さんは、国全体のサイクルの前に、より小さなサイクルが2つあると話します。1つは「長期債務サイクル」、もう1つは国内で起きる「内部サイクル」で、小さいとはいっても100年ほどかかる場合もあるそうです。
長期債務サイクルの説明で、宮武さんはまず3つの通貨制度を紹介します。金や銀そのもののハードマネー ── 金や銀など、それ自体に価値がある物を貨幣として使う形態。発行量は保有する金属の量に縛られます、金や銀と引き換えられる紙幣のペーパーマネー、そして現在のUSドルが該当するフィアットマネー ── 金などの裏付けを持たず、政府の信用によって価値が保たれる法定通貨。発行量を政策で調整できますです。
ハードマネーの時代は金があるかないかの勝負で、借り入れのようなことはできません。金を持ち歩くのは重く不便なので、たとえば1万円分の金に対して1万円のお札を出す仕組みが生まれ、その役割を担う場所が銀行や中央銀行になっていきました。
ペーパーマネーが生まれると、借り入れをする人が出てきます。銀行は利子で儲け、人は借りたお金で事業を始めたり物を買ったりでき、政府も借り入れを行います。
宮武さんによれば、借り入れで生産性が上がるうちは全員がハッピーで、経済はブームになります。しかし会社と同じく、どこかで生産性と借り入れが見合わなくなります。
そうなると人々は「お金を返してくれ」と言い、紙幣と紐づいた金を欲しがります。政府は金を返せば経済が悪化し、代わりにお金を印刷して負債を買い取る道を選びますが、印刷にも限りがあり、やがて債務不履行のような状況になるといいます。
ニクソンショックはなぜ起きた?大砲とバターと金の流出
宮武さんは、アメリカにもその局面があったと話します。第二次世界大戦の終わり、アメリカは世界の政府が持つ金の3分の2を抱え、世界の経済アウトプットの5割を生み出し、軍事的にも世界トップでした。USドルは1944年に準備通貨として認められています。
その後1971年まで、アメリカは軍事とソーシャルプログラムに多額のお金を使いました。宮武さんはこれを、英語でguns and butter policyと呼ばれる「大砲とバター」の政策だと紹介しています。
アメリカはこうした支出を借り入れでまかないました。投資家がその負債を買ったのは、利子がもらえることに加え、最悪でもアメリカが持つ金に換えられると考えたからです。
しかし負債が増えても金の量は増えません。投資家は「今のうちに金に換えたほうがいいのでは」と考え、それを見た他の投資家も続き、取り付けのように金が流出していきました。
じゃあアメリカ何をしたかというと、その金をUSドルから切り離したんですよ。
そんな裏技があるんですか。
宮武さんによると、これが1971年のニクソンショック ── 1971年にニクソン米大統領がドルと金の交換停止を発表した出来事。戦後の固定相場制が揺らぎ、変動相場制へ移るきっかけになりましたです。アメリカは一時的に不況になりましたが回復し、同時にドルを無限に印刷できる状態になりました。
宮武さんは、特にここ2〜3年、アメリカがコロナ対策などのためにものすごい量のドルを印刷してきたと指摘します。人を救うための支出である一方で、負債も大きく溜まっています。
負債を戻すには生産性の高さが必要ですが、宮武さんはこれだけの負債を抱えた今のアメリカでは難しそうだと見ています。さらに、お金を印刷して配る局面では貧富の差が広がり、内部の争いが激しくなり、革命や内戦、債務の再編、新しい社会の誕生へとつながるといいます。
財産と権力を持つ人々が手を組むとき、何が起きるのか?
ここから宮武さんは、国の中で起きる「内部サイクル」の話に移ります。その1つが、財産を持つ人々と権力を持つ人々のサイクルです。
宮武さんによれば、ほとんどの国ではごくわずかな人口が財産と権力の大半を抱えています。財産を持つ人は権力者に影響を与えられ、権力者は財産を持つ人に影響を与えられるので、両者は今の世界を保つために仲良くなりがちだといいます。
国の成長期には新たな一部の人々が財産と権力を得ますが、行き過ぎると貧富の差が広がります。宮武さんは例として、1200年代のイギリスでジョン王がより高い税を求め、下の人々が反発して内戦になり、王が負けて議会という新しいルールが生まれた話を挙げました。
国民の「お金持ち意識」でわかる5つのステージ
宮武さんが次に紹介したのが、経済と心理が連動するサイクルです。国と人々が実際にお金を持っているかどうかと、人々が自分たちをお金持ちだと思っているかどうかで、5つのステージに分かれます。
| ステージ | 実際のお金 | 人々の認識と様子 |
|---|---|---|
| 1 | 持っていない | お金持ちと思っていない。無駄遣いせず借り入れもしない |
| 2 | 持っている | まだお金持ちと思っていない。努力・貯金・教育を重視する |
| 3 | 持っている | お金持ちと認識する。アートやライフスタイルへの消費が増える |
| 4 | そこまで持っていない | お金持ちだと思っている。負債が生産性を上回り、成長が鈍る |
| 5 | 持っていない | 持っていないと認識する。バブルが弾け、大量にお金が刷られる |
ステージ1では誰もお金を貸してくれないため、人々は無駄遣いも借り入れもしません。宮武さんは、40年前の香港、シンガポール、台湾、韓国がこの段階にいて、その後ステージ2や3へ上がってきたと見ています。
ステージ2の人々は、前の世代の感覚で育っているため、豊かになってもまだ努力し、貯金し、効率よく投資し、子どもに良い教育を与えようとします。宮武さんによると、新しいビルの横に古いビルが並ぶ街並みや貯金率から、この段階の国は見分けられるそうです。
ステージ3は悪い方向への転換点です。給料が上がり、アートやライフスタイルへの消費が増えますが、前の世代の投資がまだ効いているため国全体の生産性は保たれます。宮武さんは、1950〜1965年頃のアメリカと現在の中国をこの段階に置いています。
ステージ4では、ステージ1・2を生きた世代がいなくなり、かつて努力が必要だった感覚が伝わらなくなります。ラグジュアリーグッズの消費が当たり前になり、給料も上がってコストが膨らみ、国は競争力よりも「今まですごかった」という評判で戦うようになるといいます。
怖いですね。
ステージ5では、人々も国も実際にお金を持っておらず、それを自覚します。宮武さんによれば、ここでバブルが弾けて大量のお金が印刷され、サイクルがまた始まります。
草野さんから理論の出どころを問われた宮武さんは、ヘッジファンドのレイ・ダリオ ── 世界最大級のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者。著書『Principles』などで知られますが最近の本で語っている内容をベースにしていると明かしました。歴史や経済を部分的に研究する人は多くても、総合的に見る人は少ないと宮武さんは話します。
経済指標の4〜6割にフラグが立つと、内戦の確率は?
宮武さんは、内部サイクルを1つの流れにまとめます。新しい社会とリーダーシップが生まれて国が成長すると、過剰な消費と負債が積み上がり、貧富の差と政治のギャップが経済を悪化させ、内戦や革命を経て再び新しい社会が生まれるといいます。
新しい社会
新しいリーダーシップが力を統合し、経済・政治の仕組みを決める
成長
仕組みがうまく回り、国が成長する
消費と負債
過剰な消費と負債が積み上がる
分断
貧富の差と政治のギャップが広がり、経済が悪化する
内戦・革命
争いを経て、再び新しい社会が生まれる
宮武さんによると、レイ・ダリオは50以上の内戦を調べ、内戦に最もつながる要素は経済的な要因、特に政府が倒産に近い状況にあることだと結論づけました。そこで108個ほどの経済要素を集めてインデックスを作り、何本のフラグが立つかで内戦の確率を計算したといいます。
| フラグの割合 | 内戦の確率 | 補足 |
|---|---|---|
| 4〜6割 | 約11% | 絶対に起きるわけではない |
| 6〜8割 | 約6分の1 | 現在のアメリカがいるレンジ |
| 8割以上 | 約3分の1 | アメリカが向かっている方向 |
フラグの例として、宮武さんは政府の借り入れの水準を挙げています。草野さんは「108個もあるんですね」と驚いていました。
宮武さんに「アメリカはどこにいると思うか」と問われた草野さんは、貧富の差が激しくなり、分断も広がり、本当のお金持ちはさらにお金持ちになっていると答えます。宮武さんの答えは、6〜8割のレンジでした。
次の10年間で三割ぐらいの確率でアメリカって内戦が起きるんですよ。
草野さんは、想像しにくいとしながらも、暴動のような出来事やトランプ大統領の誕生を振り返り、「確かにこういうこと起きるかもしれないな」という予兆は感じると話しました。
貧富の差がポピュリズムと分断を生むのか?
宮武さんは草野さんの指摘を「めちゃくちゃ正しい」と受け止めます。貧富の差が大きくなると、国ではポピュリズム ── エリートや既存の体制を批判し、「普通の人々」の代弁者を名乗る政治姿勢。右派にも左派にも現れますや過激派グループが人気を集め、SNSがそれを一部加速しているとはいえ、主な原因は貧富の差だといいます。
宮武さんの説明では、アメリカでは上位0.1%の人々が国全体の財産の2割を持ち、下位9割の持ち分は30%以下になっています。
宮武さんによれば、この格差がエリート層とシステムを変えたいという声を生み、2016年に共和党側でトランプが選ばれ、民主党側ではバーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン、AOC ── アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員の略称。民主党の中でも左派の若手政治家として知られますのようなより左の勢力が台頭しました。
分断が進むと、政治だけでなくメディアのコントロールも激しくなり、相手が悪い、相手が間違っているという主張やフェイクニュースが生まれます。宮武さんは、革命の前にはこうしたことがよく起きていたと話します。
宮武さんは、メディアへの信頼が特にアメリカで低くなっていることや、2020年の大統領選挙の結果を一部の共和党支持者が認めず、2021年1月6日の暴動につながったことにも触れました。
約50年前は共和党と民主党の間に、どちらにも転ぶ人がいて、ほぼ均等に分かれていた
いまは完全に二分され、間にいる人がほとんどいない
収録は2022年で、宮武さんは2年後の大統領選挙で、負けた党がまた結果を認めない事態も考えられると話します。それも内戦につながる可能性が高いと見ています。
オランダ、イギリス、アメリカへ。覇権交代の実例
宮武さんは、ここまでの要素を国全体のサイクルとしてまとめます。新しい世界とルールが生まれて平和と成長の期間が続き、人々は平和に慣れてお金を借り、貧富の差と不満が膨らみ、債務バブルが崩壊すると、お金の印刷がさらに格差を広げ、内戦や革命を経て富の分布を均す新しい世の中が生まれるという流れです。
実例として宮武さんはまずオランダを挙げます。1500〜1600年頃はスペインが海軍力でヨーロッパ最強となり、一時は地球の13%の土地をコントロールして金や銀を集めていました。
その後に台頭したオランダの強みは、教育と発明でした。宮武さんによると、17世紀のメジャーな発明の25%はオランダから生まれ、資本主義、最初の上場企業、証券取引所、世界初の準備通貨であるギルダーもオランダが起点で、アムステルダムが世界の金融センターになりました。
しかしオランダは成長とともにコストが高くなり、その間にイギリスが台頭します。イギリスは自国への輸入にイギリスの船しか受け入れない法律を作り、オランダは大きな打撃を受けました。
その後の英蘭戦争でお金を借り、お金を刷り続けたオランダは、結局資金が尽きます。新しい世界の主導権をめぐって、イギリスはナポレオンのフランスとも戦い、1815年に勝利して約100年の覇権を築いたと宮武さんは説明します。
イギリスのピーク時、イギリス人は世界人口の2.5%ほどしかいなかったのに、世界の経済アウトプットの2割を生み、輸出の4割をコントロールしていました。教育と産業革命が強さの源泉で、ロンドンはアムステルダムに代わる金融センターになります。
ただ、他国もイギリスの技術を真似し始め、最もうまくやったのがアメリカでした。アメリカは鉄、自動車、電気などを生み出し、第一次世界大戦後の変化を経て世界のトップに立っていったと宮武さんは話します。
明治維新から敗戦まで。日本の76年のサイクル
宮武さんは、日本でも世界規模ではないものの同じサイクルが起きていたと話し、最もわかりやすい例として明治維新を挙げます。明治維新は革命であり、そこから新しい教育制度や政府が生まれ、資本主義が取り入れられ、小判もなくなりました。
草野さんが渋沢栄一 ── 明治から大正にかけて500社ほどの企業設立に関わり、「日本資本主義の父」と呼ばれる実業家ですの名前を挙げると、宮武さんも「まさにそこで新しい日本が生まれた」と応じます。
宮武さんの見立てでは、日本は新しい技術とともに成長しましたが、次第にコストが高くなり、最も高くついたのが第二次世界大戦でした。敗戦とともにお金が払えなくなり、1つのサイクルが終わります。宮武さんによると、そのサイクルには76年ほどかかっています。
ビジネスをする国の「ステージ」を知るべき理由
宮武さんがこのテーマを選んだのは、アメリカが当たり前のように世界のトップにいるという前提を考え直す必要があると、自分自身も感じたからです。世界は繰り返しているのではなくライムしながら進化していて、その中にパターンがあるといいます。
だからこそ宮武さんは、自分の国やビジネスをする国がいまどのステージにいるかを理解することが、ビジネスパーソン、起業家、VC、投資家にとって知っておくべきことだと話します。
それをより理解すると、今なぜアメリカがこういう動きをしていて、中国がこういう動きをしていて、プーチンがいるロシアがこういう動きをしているかっていうのも、なんとなく見え始めると思っていて。
草野さんに「残念ですか?」と聞かれた宮武さんは、半分アメリカで育ち、アメリカで教育を受けてきた身として「やっぱ残念ですよ」と答えます。
宮武さんは、経済面での政府の対応に加えて、アメリカが教育とイノベーションの強さを保てれば、このサイクルがもう少し良い形で終わる可能性はあると考えています。内戦や革命にも、多くの人が亡くなるものもあれば、誰も亡くならずに終わるものもあるからです。
草野さんは「大きい目線で見るのは大事だ」と話し、宮武さんが紹介した本も気になると語りました。宮武さんは、101回目からは通常回に戻ると告げて、100回目を締めくくっています。
まとめ
100回目のOffTopicは、レイ・ダリオの歴史サイクル論をもとに、通貨・債務・貧富の差・分断が1つの流れとしてつながり、覇権国が入れ替わっていく構造を整理した回でした。宮武さんは、アメリカがその転換点に近づいている可能性を示しつつ、ビジネスをする国のステージを知ることの大切さを語っています。
- 歴史は同じことを繰り返すのではなく、全体として右肩上がりに進みながら似たことが起きる、つまり「ライムする」と宮武さんは捉えている
- 国の強さは教育から始まり、イノベーション、経済・貿易、軍事力、金融センター、準備通貨へと連鎖するとされる
- ペーパーマネーからフィアットマネーへの移行(ニクソンショック)以降、アメリカは大量のドル印刷と負債の蓄積が続いている
- レイ・ダリオの指標では、アメリカは経済的フラグの6〜8割が立つ段階にあり、格差がポピュリズムと分断を生んでいると宮武さんは説明する
- ビジネスをする国がいまどのステージにいるかを理解すれば、各国の動きが見えやすくなるというのが宮武さんの提案





