なぜ海外ゲストにWeb3を聞くことにしたのか
年末の番外編として、草野さんと宮武さんはゆるめのトークを届けています。この回の中心は、二人が英語で収録したディビット・フェルプさんへの動画インタビューの紹介です。
インタビューのきっかけは、Off TopicでWeb3の回が人気だったことでした。草野さんが「海外のゲストを入れて勉強会をしたい」とつぶやいたところ、参加したいという声が多く寄せられたといいます。
結局僕も草野さんも含めて、Web3の最先端に行ってるわけでもないので、実際にそこで手を動かしてる人たちの声を聞きたいっていうところで、今回(ディビットさんを)インタビューした。
インタビューは英語で行われ、日本語字幕が付く予定です。宮武さんは、今後もWeb3に限らず、テックやカルチャー寄りの海外ゲストを幅広く招きたいと話しています。
編集を担当した草野さんは、ディビットさんが難しい概念を「例えばこういうことだよね」と一段階かみ砕いて説明してくれる点に納得感があったと振り返ります。宮武さんも、TwitterやSubstackで発信を続けている書き慣れた人だからこそ、事例を交えた説明がうまいと評価しています。
Web3にいる人は「SF作家」に似ている?
宮武さんとディビットさんは、Li Jin ── 元Andreessen Horowitzのパートナーとして知られる投資家。クリエイターエコノミーやWeb3分野の論考で注目されていますさんが運営するAtelier Angelsというプログラムの参加者同士として出会いました。30人ほどのグループの中で1対1で話すうちに、すでにクリプトの専門家だったディビットさんからいろいろ教わったといいます。
宮武さんによれば、ディビットさんは宮武さんがRabbitHoleやLearn to Earnのようなサービスを知るきっかけをくれた人物でもあります。ディビットさん自身はスタートアップを運営し、現在はDAO ── Decentralized Autonomous Organizationの略で、分散型自律組織と訳されます。トークンを持つメンバーが投票などで運営方針を決める、ブロックチェーン上の組織形態ですを運営しています。
宮武さんが面白かったと挙げたのは、Web3の人々は自分で学び、その学びをTwitterやYouTube、ポッドキャストで発信して広めていく、という話の流れで出たディビットさんの一言でした。
(ディビットさんが)Web3にいるのは、SFの作家みたいな、と何か似てるみたいな話をしたのはすごい面白かったなと思いますね。
草野さんはこの比喩を受けて、SF作家は半分は今のトレンドに基づき、半分は自分が行きたい方向の未来を描いていると整理します。そして、Web3では語った未来が実際に実現する可能性が大きいところが面白いと話しています。
composabilityはTikTokで説明するとわかりやすい
インタビューで宮武さんがわかりやすかったと挙げたのが、composability ── コンポーザビリティ。既存のサービスや部品を組み合わせて、新しいものを積み上げられる性質のこと。Web3ではプロトコル同士の組み合わせやすさを指して使われますをTikTokにたとえた説明です。宮武さんによれば、composabilityは英語でもWeb3業界以外ではあまり聞かない単語だといいます。
宮武さんは、composabilityはレゴブロックにたとえられることが多いと紹介したうえで、TikTokの例のほうが正直わかりやすかったと話しています。
オリジナルの動画があって、その動画に返信する動画って、その動画にプラスしてるので。
TikTokって結局、音楽を使って動画を作るとか、エフェクトを使って動画を作るとか、リミックスしやすいっていう文化を作ってるので。
草野さんはこれを「リアクションそのものがクリエーション」と言い表しました。宮武さんは、反応の動画が最終的にオリジナルの動画にもつながり、オリジナルも人気になる構造だと補足しています。
草野さんはさらに、Web3はアメリカのカルチャーと相性がいいと話します。過去のOff Topicで取り上げたリミックス文化や、過去のカルチャーを引用してジョークにするリファレンス文化とよく似ていて、それを受け入れる土壌があるという見立てです。宮武さんは、そもそもミームがそういう話だと応じています。
DAOのトレジャリーは大学のビジネスモデルに近い?
宮武さんによれば、インタビューの大半はDAOの話でした。DAOをどう定義するか、どんなガバナンスの構造がよいかといった話題に加え、DAOの大きな特徴としてトレジャリー ── DAOが保有する資金やトークンの蓄え。いわば組織の基金で、メンバーの投票などを通じて投資や報酬の支払いに使われますを持っていることが挙がりました。
宮武さんは、ディビットさんのツイートが、Off Topicの過去回で扱った大学のビジネスモデルの話とつながっていたと紹介します。大学は授業やキャンパスという「フロント」のプロダクトを持ちつつ、一番お金を稼いでいるのは後ろにあるヘッジファンドだという話です。
DAOって意外とトレジャリーが重要だったりするんですよね。
宮武さんは、DAOが基金を使って投資できる点が株式会社との違いだと説明します。株式会社が使えるのはエクイティかキャッシュだけで、エクイティはすぐに現金化できないため、従業員には給料も合わせて払う必要があります。
使えるのはエクイティかキャッシュ。エクイティは流動性が低く、従業員には給料も払う必要がある
トレジャリーを使って投資でき、トークンを他のDAOのトークンとスワップできる
宮武さんによれば、DAO同士がトークンをスワップしてお互いのトークンを持つと、利害がつながり「一緒に這い上がろう」という協力関係が生まれます。宮武さんはこの考え方を新しいと評価しつつ、トレジャリーを持つ点は大学っぽさもあると話しています。
話は教育へ広がります。宮武さんは、無償で授業を受けられるサービスがあっても、働く人にとっては授業を受ける時間とコストより仕事が優先され、家事や家族を養うことも重なると指摘します。そこで、授業を受けるとお金がもらえるという発想に変えたのがLearn to Earnの根本の概念だといいます。
宮武さんは、Learn to Earnでは授業を提供する会社、RabbitHoleのようなプラットフォーム、ユーザーの三者のインセンティブがうまく揃うところが面白いと話しています。
この言葉は、Learn to Earnが広まった未来を想像したディビットさんの発言として、宮武さんが紹介したものです。宮武さんはさらに、今の会社でもできる例としてゴールドマン・サックスが学生の学費を払うシナリオを挙げました。
学費を払う
ゴールドマン・サックスが学生の学費を負担する
実データで授業
データ分析の授業で同社のデータを提供し、学生が分析する
採用と好印象
分析結果は会社に役立ち、優秀な人がわかって採用につながる。学生も好印象を持つ
Web3化
学費に加えてトークンを渡すと学生がオーナーになり、より貢献・投資したくなる
宮武さんはこの仕組みを、過去400年の教育の根本が変わるかもしれないと表現しました。草野さんは、教育だけでなく会社の評価のされ方やステークホルダーまで何もかもが変わると応じています。
手数料が下がる世界で、日本に勝ち目はあるのか
宮武さんは、DAOのガバナンスでは判断のプロセスを自動化する必要があるなど、課題が今も残っていると話します。加えて、Web3系のツールやサービスには、マネタイズをしっかり解決している会社が少ないといいます。
特にDAOのツールについて、宮武さんはこれから伸びる領域だとしながらも、今はそもそもマネタイズしていないものが多いと指摘します。「トークンを発行する」という回答になりがちですが、トークンにも限りがあり、連携先のDAOからお金を取る仕組みが成立するのかを議論している人は少ないそうです。
宮武さんはさらに、Web3系の会社は手数料が低いぶん、ユーザー数を大きく増やす必要があると説明します。
今の手数料
20%や30%が普通
Web3の手数料
2%や3%と、およそ10分の1になる
必要なユーザー
同じ売上を出すには10倍のユーザーが必要
日本の課題
国内ユーザーは限られ、グローバル展開が求められる
じゃあ例えば今の、楽天とか、大きめなサービスが10倍ユーザー獲得できるかというと、日本だともうできないじゃないですか、多分。
宮武さんは、日本語のサービスではグローバルに行きにくいとも話します。これを受けて草野さんは、コミュニティに詳しいグレッグ・アイゼンバーグさんが未来の働き方の要素の1つに「働く言語としての英語」を挙げていたことを紹介し、ここに来て英語が必要になってくると実感したと語りました。
宮武さんは、ディビットさんの見立ても紹介しています。DAOそのものは1兆ドル規模に達するものが将来出てくるかもしれない一方、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスクのように1人の個人に集まる富は、Web2.0の世界より小さくなるかもしれないという話です。宮武さんは、この考え方はまだ検証段階で、今後のトピックになりそうだと述べています。
インタビューの最後には、ファンから寄せられた質問のうち3つほどをディビットさんに聞いています。DAOの立て替え精算ツールについては、結論として良いものがまだなく、宮武さんは新しく参入できる領域かもしれないと見ています。
ほかに、投資DAOとVCの比較や、Spotifyのような音楽配信サービスがどうWeb3化するのか、Spotifyは参入が遅れても大きなアドバンテージを持っていたという話も取り上げたそうです。詳しくは動画で見てほしいと、二人は呼びかけています。
1年で166エピソード、bytesはシーズン2へ
話題はOff Topic関連のお知らせに移ります。草野さんによれば、Spotifyオリジナル番組『bytes by Off Topic』のシーズン1は収録の2日前に終了し、シーズン2が1月17日から始まります。
宮武さんは、6月か7月に始めたbytesは自分たちにとって新しい挑戦だったと振り返ります。そのうえで、今年はとにかく多くのポッドキャストを出したと話し、計算した数字を紹介しました。
今年の後半のペースを見るとちょっとすごくて。1.5日おきに1エピソード出してるんですよ。
草野さんは、全部聞いてくれているリスナーもいることに触れ、「一緒に完走しましたね」という嬉しい気持ちだと話します。宮武さんは、編集で何度も聞く草野さんが一番聞いていて、一番大変だったはずだとねぎらっています。
2021年のOff Topicで印象に残った回は?
草野さんは、Web3の回が自分にとって学びが多く、一番好きなテーマの1つだったと話します。それ以外では、6月後半の雑談回で話したリファレンス文化の回がすごく楽しかったと挙げました。宮武さんも、その回が来週話すテーマのきっかけの一部になったと評価しています。
宮武さんにとって一番準備に気合を入れたのは、Web3を扱った第90回と第91回でした。ほかにも、ドリーム仙ピーの話、オープンメタバース、Andreessen HorowitzなどVCの進化、クリエイターのマネタイズの変化を挙げています。宮武さんは、クリエイターのマネタイズの話はWeb3のライト版のような内容だったと振り返ります。
人気だった回としては、Twitter、Salesforce、Shopify、スターバックスなど1社を深掘りする企業分析の回や、独占禁止法の話も挙がりました。
宮武さんの頭に残っている名言は、ドリーム仙ピーの回で草野さんがディズニーについて話した一言です。ミッキーマウスとハグするとき「ようこそ、Lifetime customer」と言われるようなもの、という表現でした。
あれ(「ようこそ、Lifetime customer」)はなんかあれだけ切り取って出したいですもん。
いやいやいや。
宮武さんはもう1つ、Axie Infinity ── NFTのキャラクターを育てて戦わせるブロックチェーンゲーム。プレイで得たトークンが収入になる「Play to Earn」の代表例として知られますを扱った回で、草野さんが「これは国みたいですね」という発想にたどり着いたことを挙げます。宮武さんによれば、今はアメリカのVCもクリプトゲームについて同じような話をしているそうです。
来年のWeb3市場とOff Topicはどうなる?
来年について草野さんが「Web3の話はこのまま多くなるのか」と投げかけると、宮武さんは、テック業界は盛り上がるものの、投資面では市場が一度冷めるかもしれないと答えました。草野さんは、NBA Top Shotのときにも一度NFTブームが下がったことを思い出しています。
宮武さんはその背景として、アメリカの金利が少なくとも3回上がるとアメリカ政府が示していることを挙げます。それが投資にどう影響するかという話が出る中で、株式市場もいろいろ落ち始めているといいます。
Off Topicとしては、来年をいろいろ試す年にしたいと宮武さんは話します。メディアブランドと呼ぶのも違うと感じており、メディアだけじゃないことを、コンテンツカンパニーでありながら投資の支援などの形で前に出したいという考えです。草野さんに「硬いですね」とつっこまれる一幕もありました。
次回は年内最後のエピソードで、2021年を通してOff Topicがどんなテーマで動いていたかを発表する回になるそうです。宮武さんは、2022年にもつながる話になると予告しています。
まとめ
この回では、ディビット・フェルプさんへのWeb3インタビューの見どころとして、SF作家の比喩、TikTokで説明するcomposability、トレジャリーを持つDAOとLearn to Earnの可能性、手数料が下がる世界での日本の課題が紹介されました。後半では1年で166エピソードを配信したOff Topicの振り返りと、来年への展望が語られています。
- ディビットさんは、Web3にいる人はトレンドと理想の未来を描くSF作家に似ていると表現した
- composabilityは、反応やリミックスが新たな作品になるTikTokにたとえるとわかりやすい
- DAOはトレジャリーで投資やトークンのスワップができ、Learn to Earnは教育のインセンティブを変える可能性がある
- 手数料が10分の1になる世界では10倍のユーザーが必要になり、日本のサービスには言語とグローバル展開の壁がある
- Off Topicは2021年に166エピソードを配信し、来年はメディアにとどまらない活動を前に出したいとしている




