2021年の出来事と、1年を貫くテーマ探し
Off Topicの2021年最後の配信は、宮武さんが1年を振り返るところから始まります。年始のアメリカ議会議事堂襲撃事件、バイデン大統領の就任、ウォールストリートベッツやロビンフッドの騒動、日本でのClubhouse人気が挙げられました。
宮武さんはさらに、PaparazziやDispo、BeRealといった次世代SNSの登場、スエズ運河の封鎖、NFTバブル、テック業界のマイアミ移転、東京オリンピック、ジェフ・ベゾスのCEO退任、富裕層の宇宙旅行、イカゲーム、Daft Punkの解散と、多くの出来事を並べました。
ただし、この回の目的は年間トレンドの振り返りではありません。Off Topicは2020年、1年分のテキスト記事が実は1つのテーマにつながっていたと発表し、プレゼン資料と記事を出していました。
2021年はその範囲を広げ、ポッドキャストや記事など、Off Topicが出したすべてのコンテンツが1つのテーマでつながっているといいます。2020年のテーマは「Attention and Trust Economy」でしたが、2021年は別のテーマを示すと宮武さんは話します。
結局その一個一個のトピックに深掘りするだけだと、それが一個一個面白いストーリーだと思うんですけど、それを全部組み合わせてみると一つのナラティブになる。
誰でもコピーできる時代に、どうやって勝つのか?
宮武さんはテーマの前提として、マーク・アンドリーセン ── ウェブブラウザ「Mosaic」「Netscape」の開発者で、ベンチャーキャピタルa16zの共同創業者。2011年に「ソフトウェアが世界を飲み込む」という論考を発表しましたさんが語った「ソフトウェアが世界を飲み込む」状況は、すでに実現していると指摘します。世界のトップ企業はテック企業で、誰でもスタートアップを作れる時代になりました。
EC事業ならShopify、ソフトウェア企業ならAWSなど、立ち上げのツールは揃っています。さらにPassion Economy ── 個人が自分の情熱や専門性を直接収益化する経済圏のこと。クリエイター向けの課金・販売プラットフォームの広がりとともに注目されましたによって、Substack、Teachable、TikTok、YouTube、Robloxなどが新しい職を生んでいるといいます。
その結果、今では誰でも競合サービスを立ち上げられ、ソフトウェアさえコピーできるようになりました。宮武さんは、誰かがSubstackのコピーを3ヶ月で作った話や、2021年に大手SNS各社がClubhouse的な機能を追加した例を挙げます。
Facebookもポッドキャスト機能できましたもんね。
Stories機能を各社がコピーし合った例もありました。ただ、TwitterはStoriesに当たる機能を2021年にやめています。こうした状況を踏まえ、宮武さんは「誰でもコピーされてしまう世の中で、どうやって勝つのか」を考えたいと問いを立てます。
アテンションと信頼の奥に何があったのか
Off Topicとして、2020年はこの問いを考え始めた年だったと宮武さんは振り返ります。メタバース、D2C、次世代SNS、クリエイターエコノミーを話すなかで、どのカテゴリーもアテンションと信頼がなければ育たないと気づいたそうです。
宮武さんは、NetflixのCEOが競合としてフォートナイトの名を挙げたのも、同じアテンションの奪い合いという理由からだと考えています。
ただ、宮武さんも草野さんも、アテンションと信頼のさらに奥に何かがあると感じていました。特に2020年にZ世代のカウンターカルチャーやBlack Lives Matterを取り上げた際、その感覚が強まったといいます。
アテンションと信頼の話は、もう少し戦術的でトレンド寄りの話でした。2021年は、ブランドや会社が根本的にどう成功するかを考えた年だったと宮武さんは位置づけます。
2020年: アテンションと信頼の経済。戦術的・トレンド寄りの整理
2021年: カルチャーに根付くこと。ブランドが根本的に成功する条件
166回の配信が導いた「コンポーザブルなカルチャー作り」とは?
宮武さんによれば、166回のポッドキャスト、約60本の記事、数千のツイートを通して、1つのセオリーが浮かび上がりました。会社として一番重要なのはカルチャーに根付くことだといいます。
アメリカでよく言われるツァイトガイスト ── ドイツ語で「時代精神」を意味する言葉。ある時代に特有の思想や空気感を指し、英語圏でもそのまま使われます、つまり今のカルチャーにどれだけ寄せられるかが鍵になるという考え方です。草野さんが確認すると、宮武さんは「今イケてるカルチャー」のようなものだと説明しました。
2021年のテーマは、英語で「Composing Culture」、日本語では「コンポーザブルなカルチャー作り」です。ブランドが成功するには、カルチャーを作るか、既存のカルチャーの上に自分のブランドを置くかの2つのやり方があるといいます。
これをブランドが、ブランドとか企業が、時間に落ちて何回も繰り返しできると、世代を超えるブランドになりますと。
考え方自体はシンプルでも、気づくまでにも、その重要さを理解するまでにも時間がかかったと宮武さんは話します。理解するには、誰がカルチャーを作っているのかを知る必要があるといいます。
カルチャーは誰と何の影響で生まれるのか?
宮武さんは、従来はクリエイター、キュレーター、コンシューマーという3種類の人がカルチャーを作っていたと整理します。今日では、その役割が混ざり合っているといいます。
カルチャーを作る人たちは、テクノロジーのシフト、カルチャーのシフト、世代交代といった外部の勢力からも影響を受けます。外部の勢力と作り手が影響し合い、フィードバックループとして回ることでカルチャーが作られる、というのが宮武さんの見立てです。
外部の勢力
テクノロジーやカルチャーのシフト、世代交代などが作り手に影響する
カルチャーの作り手
影響を受けたクリエイターやキュレーターなどが新しいカルチャーを作る
外部への還流
生まれたカルチャーが再び外部の勢力に影響し、ループが続く
Off Topicが2021年、テクノロジーに直接関係しないカルチャーの話題も扱ったのは、この理由からだと宮武さんは明かします。次世代の起業家やクリエイターにとって、カルチャーがどう作られているかの理解が一番のアドバンテージになると考えているからです。
宮武さんは、この話は消費者向けビジネスに限らないとも強調します。社内カルチャーやBtoBのカルチャーにも、コンシューマー、クリエイター、キュレーターがいるため、まずその理解が必要だといいます。
ミームとリファレンス文化はなぜ強いのか
次に宮武さんが挙げたのは、リファレンスカルチャーです。イーロン・マスクがかつて「誰でもミームディーラーが必要」といった趣旨の発言をしたように、アメリカ、そしてインターネット全般はリファレンスカルチャーの場所だと宮武さんは見ています。
ミームやリファレンスコンテンツは、過去のIPを今風に生かし、古いものや今流行っているものに乗って自分の商品やコンテンツを売り込む手法です。一般に普及しやすく、誰も知らなかった過去のカルチャーでも今の人に伝わるといいます。
アニメではサウスパーク、シンプソンズ、ファミリーガイが90年代のリファレンスを多く入れている例として挙げられました。Web3では、アメリカ合衆国憲法の購入を目指したConstitutionDAO ── 2021年に合衆国憲法の初版写本をオークションで落札するため、暗号資産で資金を集めた分散型組織。落札には至りませんでしたが、映画『ナショナル・トレジャー』のリファレンスを多用し、DAO内に1つの言語を作ったといいます。
カルチャーがビジネスになり、ブランドのフックになる
2021年のもう1つの大きな動きとして、宮武さんは「カルチャーのビジネス化」を挙げます。投資の民主化そのものが投資というカルチャーを生み、ロビンフッドやNFTの人気につながったといいます。
Whatnotやストリートウェアカルチャーのようなコレクタブル ── 収集の対象になる商品や文化のこと。トレーディングカードやスニーカーなど、集めて交換・売買すること自体が楽しみになります文化も同じ流れにあります。Web3も、スポーツ、コレクタブル、アートといったカルチャー要素があったからこそ2021年に伸びたと宮武さんは考えています。
宮武さんにとって、カルチャーはブランドがオーディエンスとつながるフックです。例として、マクドナルドの創業者の「我々はハンバーガー事業ではなく、エンタメショービジネスなんだ」という言葉を紹介しました。
(Off Topicも)我々はテックメディアではない。カルチャーを提示しているような、みたいな。
マクドナルドは2021年にBTS、2020年にTravis Scottとコラボしました。宮武さんは、ハンバーガー自体は従来とほぼ同じでも、カルチャー要素を乗せることで、より意味のあるハンバーガーになると話します。
クリエイター・キュレーター・コンシューマーの役割はどう混ざったのか?
宮武さんは、カルチャーを作る人をあらためて整理します。従来のステークホルダーは、オリジナルのコンテンツや事業、アイデアを作るクリエイター、良いものを選んで自分なりに表現するキュレーター、それを消費するコンシューマーの3つでした。
ここ数年でその役割分担がミックスされ、新しく3つのステークホルダーが生まれたと宮武さんは定義します。草野さんが番組「bytes」で語った「関係性の再構築」が、まさに起きているといいます。
| 名前 | 掛け合わせ | 主な例 |
|---|---|---|
| リミクサー | クリエイター×コンシューマー | イカゲームのRobloxゲーム、カバー曲 |
| テイストメイカー | キュレーター×コンシューマー | Virgil Abloh、ブランドのコラボ、MSCHF |
| ワールドビルダー | クリエイター×キュレーター | ナイキ、フォートナイト、Dream SMP |
1つ目のリミクサーは、さまざまなコンテンツを消費し、面白いと思ったものをミームやTikTok動画にする人です。流行したイカゲームをもとに誰かがRobloxゲームを作ったのはその典型で、音楽のカバー曲やリミックスも、過去のIPに新しい意味を加える行為だといいます。
2つ目のテイストメイカーは、一般人が多いのが特徴です。Virgil Ablohさんやグッチのアレッサンドロ・ミケーレさん、ブランドのコラボがわかりやすい例で、ブランド以外ではMSCHF ── ニューヨークのアート集団・企業。既存の商品やブランドを改造した挑発的な作品やプロダクトを「ドロップ」形式で発表することで知られますが最もうまくやっていると宮武さんは評価します。
テイストメイカーは、既存の何かに対する自分のコメントや新しい見え方として世界観を見せます。草野さんが「そこがリミクサーと違うところか」と聞くと、宮武さんは、それが次のワールドビルダーとの一番の違いだと答えました。
世界を一から作るワールドビルダーとは?
3つ目のワールドビルダーは、クリエイターとキュレーターの掛け合わせです。宮武さんは、世界を一から作らなければならないため、3つのなかで一番難しいと話します。
(ワールドビルダーは)それを作るだけではなくて、その世界をより深みとか、より意味を作るために、人のキュレーションとかアイデアのキュレーションをするっていう。
ナイキは靴の会社ですが、みんなをアスリートにする、勝つといったミッションがあります。そのミッションを強調するアスリートをスポンサーとしてキュレーションすることで、ナイキのストーリーが大きくなるといいます。
フォートナイトも好例です。世界各国の有名IPが揃うゲームとして見られがちですが、チャプターごとに変わる明確なストーリーがあり、エージェント・ピーリーなどのキャラクターではなく、フォートナイトの世界そのものが主役だと宮武さんは説明します。
世界がブラックホールに吸い込まれたり、島がひっくり返ったりする環境を使ったストーリーテリングの上に、有名なIPやキャラクターが乗ってオーディエンスを引き寄せます。トップのMinecraftプレイヤーを集め、個々のやりとりからストーリーが生まれるDream SMP ── 人気YouTuberのDreamが運営するMinecraftサーバー。有名配信者たちが即興の物語を演じる企画として大きな人気を集めましたも、新しいワールドビルディングの形だといいます。
BtoB企業はなぜメディアを買収するのか?
新しいステークホルダーの話は、BtoBにも当てはまると宮武さんは続けます。HubSpotによるThe Hustle、RobinhoodによるMarketSnacks、StripeによるIndie Hackersの買収は、各社がテイストメーカーになりたいから行われたと見ています。
買収には関係性を直接持てる以外の利点もあります。宮武さんによれば、ソフトウェア企業の時価総額は売上の10〜15倍、メディア企業は2〜5倍程度です。
宮武さんの推計では、メディア企業としては2700万ドルの価値しかない会社が、HubSpotの一部になるとソフトウェア企業の倍率で評価されます。そのため、特に黒字のコンテンツ企業の買収はソフトウェア企業にとって実質的にディスカウントであり、この動きはさらに加速するという仮説を示しました。
コンテンツ以外では、Shopifyがアプリに投資してアプリエコシステムの形を方向づけるのも、テイストメーカーの一環だといいます。仕事のカルチャーの中心になろうとするNotionや、SalesforceとSlackは、BtoBのワールドビルディングの例として挙げられました。
ドロップ、イベント、API。BtoBのカルチャー作り
宮武さんは、来年さらに流行るのはソフトウェア企業のドロップマーケティングだと予想します。草野さんも、2021年にすでに多かったと応じました。
例として挙がったのは、2020年のStarと2021年のPartyRoundです。StarはMixerの終了時に、配信者がフォロワーのメールアドレスをエクスポートできる機能を提供しました。PartyRoundはCryptoPunks風のVCアバターを作り、業界に好かれてテイストメーカーにもなったといいます。
ガチガチのソフトウェア企業であるDatadogも、初期からコンテンツマーケティングに投資し、エンジニア自身に書かせていました。エンジニアカルチャーを一番理解しているのはエンジニアだからです。SalesforceのDreamforceやSXSWのような大規模イベントもカルチャーだと宮武さんは話します。
BtoB企業も営業だけで成り立つわけではありません。宮武さんは、Yammer創業者のデビッド・サックスさんが言うように、ムーブメントを作ることも1つの攻め方だと紹介します。
APIもリミックスの一形態です。Clubhouseの人気と同時に、音声の裏側を担うAgoraも注目されました。StripeはAPIを持ちながら、本を出版するStripe Pressなどのコンテンツでテイストメーカーにもなっており、その両軸が強いと宮武さんは評価します。
なぜテックだけを追っていてはダメなのか?
宮武さんは、ステークホルダーはポップカルチャー、政府の規制、社会・環境問題、テクノロジーの変化、世代交代といった外部要因に影響され、逆に自分たちのカルチャーで外部要因にも影響を与えていると整理します。
重要なのは、エコシステム全体を知ることです。1つのカテゴリーやムーブメントだけでなく、それがなぜ他とつながるのか、マクロ経済とどうつながるのかまで見る必要があるといいます。
本当にテックだけ追ってちゃダメだし、カルチャーだけ追っててもダメだし、政府のレギュレーションだけ追っててもダメだし。
草野さんは、Off Topicはテックのポッドキャストと見られがちでも、アメリカの背景やポップカルチャーの話があるからこそ成り立っていると話します。宮武さんも、カルチャーとテクノロジーは影響し合っていると同意しました。
宮武さんは過去に話した「アプリとインフラのサイクル」にも触れます。先に来るアプリをクリエイターカルチャーと捉えると、それを収益化しようとするインフラやソフトウェアが後から生まれ、その繰り返しが続いているといいます。
3つの役割をすべて持つ人は誰か?
宮武さんは、テイストメーカー、リミクサー、ワールドビルダーをすべて兼ね備えた人もいると話します。草野さんの「誰ですか?」に対し、挙がったのはカニエ・ウェストとBTSでした。
BTSには他に例のないほどのリミクサーのファンベースがあり、7人のメンバーのキュレーションもあり、音楽を含めたしっかりした世界観も作っていると宮武さんは説明します。
そのうえで、宮武さんがこの日一番話したかったのがLil Nas X ── アメリカのラッパー。2019年に「Old Town Road」が大ヒットし、Billboard Hot 100で歴代最長の1位を記録しましたです。今、世界一のマーケターは誰かと聞かれたら、Lil Nas Xと答えると宮武さんは言います。
結局彼はそのいい音楽を作るだけではなくて、やっぱりそこの世界、世界作り、テイストメイキング、リミックスングを全部加えた人でもあって。
Lil Nas Xはどうやって「Old Town Road」を広めたのか?
Lil Nas Xは、「Old Town Road」以前から10万人以上のフォロワーを持つバイラルなTwitterアカウントの運営者でした。草野さんが言う靴のプレゼント企画や、Nicki Minajのファン的な投稿を行っていたそうです。
特に注目されたのが「シナリオスレッド」です。ツイートでシナリオを書き、ユーザーに2択を与えると、選択ごとに別のスレッドへ進む仕組みです。
ああ、そっか、一つのツイートに二つリプライ自分でして(分岐させれば)。
この手法は人気を集め、YouTuberがシナリオを追う動画を作るほどでした。一方で、Lil Nas Xは複数の人気アカウントをTweetDeck ── Twitterの複数アカウントや複数のタイムラインを1画面で管理できる公式ツールで運用して互いにリツイートし合い、一時期アカウントをBANされたこともあったといいます。
なんかどっかの、どっかのインタビューで、「自分の親はインターネットだ」みたいな。
宮武さんは、Lil Nas Xがインターネットの構造を、テクノロジー面ではなくカルチャー面で深く理解していたと強調します。
「Old Town Road」のビートは、YouTubeで見つけたYoung Kioさんの作品で、そのサンプル元はNine Inch Nailsでした。Lil Nas XはそれをBeatStarsで30ドルで購入し、象徴的な歌詞の部分をミームとして広めました。
ミームが広がる裏で、Lil Nas Xは作り手たちにDMを送り、このミームを出すとよいかもしれないとアイデアを植え付けていました。さらにRedditで「Take my horse to the old town road」という歌詞の曲名を自ら尋ね、検索されることを見越して曲名に歌詞を入れたといいます。
Billboardのカントリーチャートから外されると、カントリースターのビリー・レイ・サイラスとのリミックスで応えました。Twitterでつながりたいと発信したことが、ビリー・レイ・サイラスのレーベルを通じて本人に届いたそうです。宮武さんは、インタビューを見る限り、これは完全に計画されていたと話します。
コンシューマー
YouTubeでサンプル由来のビートを見つける
リミクサー
リミックスされたビートに自分の曲を乗せる
テイストメーカー
歌詞をミーム化し、広がりを仕掛ける
ワールドビルダー
ムーブメントを次の曲へつなげて世界観を作る
「Montero」とサタンの靴は何を仕掛けたのか?
宮武さんが最もすごかったと語るのが、「Montero (Call Me By Your Name)」です。Lil Nas Xはリリースと同時にInstagramで、ゲイである自分の立場から、LGBTQの人々に「自分らしくありなさい」と伝えるミッションを発信し、そのメッセージは評判がよかったといいます。
一方、ミュージックビデオは、男性の主人公がサタンである男性と関係を持つ内容などで、アメリカの保守的なクリスチャンのコミュニティから強く批判されました。草野さんは、本来のキリスト教の物語から見ると邪道に映るのだろうと補足します。
続いてMSCHFが、ナイキの靴に一滴の血を入れた「サタンの靴」を発表しました。MSCHFは以前、聖水入りの「キリストの靴」もナイキの靴で作っていましたが、そちらは訴訟になりませんでした。サタンの靴は666足、1足1000ドル以上で、1分で売り切れたといいます。
初めて見た人は、Lil Nas Xがナイキとコラボしたと思い込み、ナイキを批判する人も出ました。ナイキは関与を否定し、MSCHFを提訴します。
「絶対勝てませんよと、誰も」
いくらナイキでも。
Lil Nas Xは9ヶ月前から計画し、批判も訴訟も報道もすべて予測していました。反応をリツイートし、ファンにミーム化を呼びかけながら、Instagramで示した「自分らしくあるべきだ」というメッセージを一貫して伝え続けたと宮武さんは説明します。
インターネット全体を「ストーリー」として使う発想
宮武さんは、YouTuberのローガン・ポールさんも似た手法をとっていたと紹介します。FOXニュースのインタビューをわざと失敗させ、それがバイラルになって「面白い人だ、YouTubeを見てみよう」とつながることを理解していたといいます。
Lil Nas Xやローガン・ポールさんは、インターネットを1つのチャネルとしてではなく全体として見ている、と宮武さんは考えます。批判する声、ミームを作る人、靴を買う人、訴訟するナイキ、それを報じるメディアまで、すべてで1つのストーリーなのだといいます。
草野さんは、Lil Nas Xのアイデンティティやこれまでの活動、ファンの存在を含め、彼にしかできない方法だと指摘しました。宮武さんも同意し、さらに謝罪動画風に始まって、直前でミュージックビデオの最も批判された部分に切り替わるYouTube動画にも触れます。
日本なら賛否が分かれそうだという草野さんの問いに、宮武さんは、アメリカは属性が幅広く何をしても批判されるため、コアなファンにどれだけ好かれるかの勝負になると答えました。ナイキも昔、同じことをしていたといいます。
宮武さんは、ブランドがここまで攻めるのはリスクが大きいとしつつ、考え方は正しいと話します。リアクションも含めた全員の行動が自分のブランドであり、それを何度も回すことが本当のカルチャー作りだという見方です。
なぜ「composing」という言葉を選んだのか?
宮武さんと草野さんは、2021年のテーマのキーワード選びに苦労したといいます。最終的に選んだ「composing culture」には、2つの意味が込められています。
カルチャーを一から「作る」こと
Web3の文脈のように、レゴのブロックのように既存のものの上に積み重ねること
宮武さんは、すべてのブランドがカルチャーを作る必要はないと話します。カルチャーを作るのは非常に大変だからです。
代わりに、今のカルチャーの上で自分のポジショニングや見せ方を考える道があります。そのうえで、テイストメーカー、リミクサー、ワールドビルダーを巻き込むか、自らなれるかを考えることが、次の5年、10年で成功するブランドを分けると宮武さんは結論づけました。
草野さんは来年が楽しみだと締めくくり、番組は2022年1月20日の更新再開を予告して年内最後の配信を終えました。
まとめ
Off Topicの2021年総括回では、コピーが容易になった時代にブランドが勝つ鍵として「カルチャーに根付くこと」が示されました。カルチャーを作る人の役割は混ざり合い、その理解がC向けにもB向けにもアドバンテージになるといいます。
- 2021年のテーマは「コンポーザブルなカルチャー作り」で、カルチャーを作るか、既存のカルチャーの上にブランドを置くかの2つの道がある
- カルチャーの作り手として、リミクサー、テイストメイカー、ワールドビルダーという新しい3つの役割が生まれている
- HubSpotやStripeのメディア買収、ドロップマーケティング、APIなど、BtoBでもカルチャー作りは進んでいる
- Lil Nas Xは、批判や訴訟まで予測し、インターネット上の反応全体を1つのストーリーとしてカルチャーを作った
- すべてのブランドがカルチャーを作る必要はなく、作り手を巻き込むか自らなるかが今後の成否を分けると宮武さんは見ている



