ゴールデンウィークはクレープかピクニックか
この回は、4月の終わりに収録された雑談回です。配信日は5月2日ごろで、ちょうどゴールデンウィーク中になると宮武さんは話しています。
草野さんのゴールデンウィークの予定は、友達とのピクニックか、クレープを作る会だけだそうです。宮武さんは、なぜ「ピクニックかクレープ」の二択なのかが気になったようです。
え、それ(ピクニックとクレープ)、オアなんですか?アンドじゃダメなの?
草野さんは「両方を通すのもありかもしれない」と認めつつ、クレープの機械は電源が必要なので、外では難しいのかもしれないと理由を挙げました。
Shopify CEOが語る「サプライとデマンドの間の摩擦」とは
宮武さんが今も書き続けているデイリーメモの中で、最近とくに面白いと感じた話題があります。マーケットプレイスを考えるときの「サプライとデマンド」の話です。
マーケットプレイスでは、より集めにくい側に注力すべきだとよく言われます。サプライ側のほうが集めやすいケースが多いので、デマンド側に注力すべきだという考え方で、宮武さんも理論上はとても正しいと話しています。
ところがShopify ── カナダ発のECプラットフォーム企業。誰でもネットショップを開設・運営できるサービスを提供していますのCEOは、数年前のポッドキャストで「それだけではない」と語っていたといいます。サプライとデマンドに目を向けすぎず、その間にある摩擦を見るべきだという指摘です。
彼が言ってたのが、サプライとデマンドのところにフォーカスしすぎて、その間の摩擦を見るべきなんじゃないかなっていう風に言っていたんですよね。
ShopifyのCEOはカナダ出身で、創業時にはシリコンバレーのサンドヒルロードでVCを回りました。しかし多くのVCは出資を見送っています。理由は、当時の市場が小さすぎたことでした。
当時のオンラインストアは4〜5万店舗ほどしかなく、Shopifyが50%のシェアを取ったとしても、VCとしては十分なリターンにならないと判断されたそうです。
その後Shopifyは大きく成長して上場します。後日、出資を見送ったVCがCEOのトビーさんに「何を見過ごしたのか」と尋ねたところ、トビーさんは次のように答えたといいます。
そのタイミングでの市場の把握の仕方は間違ってはなかったんですけど、Shopifyがその摩擦をなくすことによって、めちゃくちゃ大きな市場を作れるっていうところまで見えてなかったのかもしれない。
オンラインストアは4〜5万店舗ほど。50%を取っても十分なリターンにならない小さな市場
出店の摩擦をなくすことで、市場そのものを大きく作れる
トビーさんは、同じ現象がほかの領域にもあると話しています。たとえば各国の政府機関は「自国にシリコンバレーを作りたい」と考え、インセンティブや資金提供、アクセラレーターの立ち上げで起業したい人を増やそうとしています。
しかしトビーさんの見方では、片側を増やすことに集中するのではなく、その間の摩擦を見るべきだということになります。宮武さんは、両側を見るだけでなく間を見ることのほうが重要なのだと受け止めています。
草野さんが「プラットフォーム系ビジネス以外でも同じことが言えるのか」と尋ねると、宮武さんは、何らかのマーケットプレイスがあれば考えられることで、単純に片側を増やせばいいわけではないと答えました。
Stripe CEOはなぜ研究資金の「制限」に注目したのか
宮武さんは、Stripe ── アメリカ発のオンライン決済サービス企業。開発者向けの決済APIで知られていますのCEO、パトリックさんもよく似た話をしていたと紹介します。パトリックさんは経済の成長のために、さまざまな研究所の研究開発を支援しています。
パトリックさんの見方では、研究への資金提供の業界はインプットとアウトプットしか見ておらず、研究機関への資金の額を増やせばいいという話になりがちです。しかし本当に見るべきなのは、それ以外の制限、つまり摩擦だといいます。
パトリックさんが挙げる摩擦の一例は、研究者が事前に研究トピックを選んで提案し、資金を受け取る仕組みです。資金を受け取ると、基本的に提案した研究しかできません。
宮武さんは、起業家との違いを指摘します。起業家は提出したビジネスプランで資金を得ても、場合によってはピボットできます。研究の世界ではそれが許されないため、柔軟な資金提供のほうが、額を減らしても効果的かもしれないという考え方です。
パトリックさんは研究者へのアンケートで、資金の使い方を問わない場合に研究内容がどれだけ変わるかを尋ねました。選択肢は「あまり変わらない」「少し変わる」「とても変わる」の3つで、79%が「とても変わる」と答えたそうです。
インプットとアウトプットの話の中ではなくて、その中の制限をちょっと変えるとか、それを緩めるとか調整するっていうのが、実はより重要なんじゃないかなっていう話があって。
経営者が続けて同じ趣旨の話をしていたことが、宮武さんには引っかかったといいます。マーケットプレイスでサプライとデマンドしか見ない人は多いので、間の摩擦について考え、KPIを作れないかを検討するのもよいのではないか、と話しています。
研究の自由とリターンの縛りをどう両立するか
草野さんは、研究内容が途中で変わるのは確かだと応じます。宮武さんも、結果が思うように出なかったり、別の路線で面白いことが見えたりするので、研究者は内容を変えたいはずだと話します。
宮武さんは、そうした柔軟なプログラムの例としてティールフェローシップ ── 投資家ピーター・ティールが設立した奨学制度。大学を離れて起業や研究に挑む若者に資金を提供しますを挙げました。草野さんはそれを「人に投資する」形だと表現しています。
一方で草野さんは、投資として考えると難しさがあると指摘します。最終的にどんなアウトプットを出すべきかの定義が難しく、ピボットしても最後にリターンを求められるなら、無理やり結果を出すことになり、研究には合わないかもしれないという懸念です。
宮武さんは、どこに制限を置くかで考え方が大きく変わると整理しました。
研究内容を事前に固めるため自由度が低く、効率の悪いアウトプットになる可能性がある
入口は自由でも、リターンなどの条件に最適化して動いてしまい、変なインセンティブが生まれる可能性がある
SNSの情報量はなぜ疲れるのか
草野さんは、ルールメイキングはクリエイションにおいて、あると面白く、ありすぎると大変だと話します。そこで宮武さんは、SNSの制限で良かったものはあるかと尋ねました。
草野さんは、コンテンツが多すぎることにプレッシャーを感じるといいます。LINEやSlackで通知画面に人の写真が出るようになったのは好きではなく、Slackでは顔を表示しない設定にしているそうです。
さらに草野さんは、拡張機能を使ってTwitterも文字だけで表示しています。
別に、宮武さんが嫌いとかっていうわけじゃなくて。
いや、ちょっと一瞬ドキッとしたんですけど。
草野さんによれば、情報が多すぎると心理的に疲れてしまうとのことです。アイコンに動画を使っていたSNSのamo ── amo。アイコンに写真ではなく動画を表示する仕組みが特徴だったSNSとして番組内で言及されていますもリッチすぎて、自分には無理だと感じたそうです。
本当に一番好きなUIは、もしかしたらiMessageみたいな、もう文字だけみたいな。
草野さんはTwitterについて、昔はそこまで負担に感じなかったと振り返ります。今はコンテンツに一喜一憂しすぎているのかもしれず、「ベーシックな情報だけをくれ」という気持ちになるのかもしれないと話しています。
草野さんが特に苦手なのは、YouTubeやTwitterで動画が自動再生されることです。
(自動再生の動画に)アテンション取られて、「何したかったんだっけ?」って前の自分を忘れてしまうみたいな。
Twitterの140文字制限は何をもたらしたか
宮武さんが好きだった制限は、Twitterの140文字です。「好きでした」と過去形なのは、今はお金を払えば制限を解除できるようになり、以前ほど制限がかからなくなったためです。
宮武さんは、noteを書き始める前、インサイトを日本語でちゃんとアウトプットできるのかがわからなかったといいます。そこでまず、短い形式のTwitterで書いてみたそうです。
無理やりでも、140文字に収めないといけないので、割とシンプルに書かないといけないっていうのは、個人的にはすごい良かったなっていうふうに思いますね。
SNSは制限を緩めたことを後悔するのか
宮武さんは、プラットフォームにとって制限は最初は良くても、後に後悔することはあるのかと問いかけます。Twitterには280文字に変えていた時期もあり、Instagramも最初は正方形の写真だけでした。
草野さんは、縛りを緩めることはあっても厳しくすることはなさそうだと指摘します。厳しくすれば、新しいオルタナティブなアプリが出てくるはずだという見方です。
宮武さんは、緩めることはスケールにつながると整理しました。厳しくすればユーザー数を狭めることになり、緩めればより多くの人がクリエイティブなアウトプットを出せるようになります。
プラットフォームは緩めるか、ストーリーズのような新しいフォーマットを作って広がっていきます。宮武さんは、Facebookはほぼ何でもありで、Twitterも今は1時間の動画を出せると例を挙げました。
草野さんは、広げた結果使われなくなってサービスがなくなる、元に戻るということはあると補足します。宮武さんは、制限を緩める場合と緩めない場合のリスクを次のようにまとめています。
スケールしにくく、VCから出資を受けていれば成長しないとして潰れるか、とりあえず生き残る形になる
面白さやクリエイティブさが失われ、他のプラットフォームと同じになり、ユーザーが離脱する可能性がある
どんどん厳しくなるSNSは作れるか
宮武さんは逆転の発想で、最初はとても緩く、使うほどどんどん厳しくなるSNSは作れないかと提案します。本人も「絶対使われなそう」と言いながら、最終形態は「よ」だといいます。
「よ」は、「よ」だけを送り合えるアプリです。草野さんは、簡単に言えばプッシュ通知を送り合うようなものだと説明し、シンプルでいいと評価しました。草野さんは、ホーム画面に写真を共有するだけのアプリも、アプリに行かせない制限の一種かもしれないと話しています。
宮武さんの架空のSNSでは、1日の最初の投稿は何でもありです。たとえば1回目で写真を使うと、2回目は写真が使えなくなります。使った機能がどんどん削られ、最後には「よ」しか言えなくなります。
1回目の投稿
何でもありで投稿できる
2回目以降
前に使った機能(例: 写真)が使えなくなる
最終形態
「よ」しか言えなくなる
どんどん終わりに向かっていく感じが。なんか、刹那的でいいですね。
ただし草野さんは、一瞬トレンドになっても、使えなくなったら終わってしまうだろうと付け加えました。
どんな制限なら面白いSNSになるか
宮武さんは、BeRealやDispoのように時間で制限を設けるサービスもあったことに触れ、どんな制限が面白いのかを問いかけます。
草野さんが挙げたのは、自分とまったく同じ人を探すアプリです。TikTokで同じ誕生日の人を探すタグが流行っていることがヒントで、年代、性別、髪の色、身長などをグローバルで絞り込み、最後に1人が残っても残らなくても面白いのではないかと話しています。
宮武さんは、アメリカで同じ名前の人が全員集まる日があることを思い出し、名前や誕生日などのフィルターは軸として面白いかもしれないと応じました。
恋愛としてのマッチングアプリじゃなくて、人類としての、相性とかじゃなく同じ人探すみたいなのとか。
一方で草野さんは、ブラックミラー ── テクノロジーがもたらす近未来の不穏さを描く、イギリス発のSFドラマシリーズのように「相性100%」と言われても、実際に会ったらがっかりするかもしれないと、その難しさにも触れています。
自分しかいない「シングルプレイヤー型SNS」は成り立つか
宮武さんは、知人と話した「完全シングルプレイヤー型のSNS」というアイデアを紹介します。FacebookやInstagramのようなサービスでありながら、人間は自分1人だけで、他に登場するのはすべてAIです。
そのSNSでは、自分が生きたい人生を生きられます。歌手やインフルエンサーになる選択肢を選ぶと、そこまでの道のりがあり、批判するAIファンも応援してくれるAIファンもいるという設計です。宮武さんは、SecondLife ── 2003年に始まった3D仮想世界サービス。ユーザーがアバターで別の人生を送るように過ごせることで話題になりましたに近く、セラピー的な要素もあると話します。
悪い言い方言うと現実逃避ですけど。
草野さんは、ロールプレイングゲームのような感覚だと受け止めます。宮武さんは、アカウントごとに自分だけの世界と友達と遊ぶ世界を分けるような形もありえると付け加えました。
草野さんが、批判されたとき自分はどう感じるのかと疑問を投げると、宮武さんは人によると答えます。本当に入り込む人の中には、そちらの人生のほうが重要だと考える人も出てくるかもしれず、怖い話でもあるといいます。
収益化については、宮武さんはお金儲けのイメージがあまりないと話しますが、草野さんはゲームのスキンのように洋服などを売る形があるのではないかと提案しました。
AIだけのSNSを人間はどう楽しむか
宮武さんはさらに踏み込み、人が介在せずAIだけが勝手に動くSNSは生まれるかと問いかけます。AIのマーケットプレイスは生まれると考えているものの、SNSはどうかという問いです。
(AIだけのSNSは)生まれそうな気はします。でもそれをどう面白がるかは人間次第って感じが。
宮武さんは、人間はそれを監視する立場になるのではないかと話します。草野さんも、「このAIのアカウントは面白い」と眺めたり、変なリプライを飛ばすAIを傍観したりするのは、普通のSNSでもしていることだと応じました。
子どもはAIを「第三の親」と思うか
宮武さんは、ChatGPTなどを子育てに活用する人が増えると、親がAIを使う姿を見た子どもが、AIを第三の親として見るようになるのかが気になるといいます。
AIがいろいろ教えてくれるっていう風になって、しかもその家族の中でずっといる存在になるので、そうすると、もう親として扱う可能性って出てこないのかなっていうのを思いました。
草野さんは、デバイスの見た目も関係しそうだと指摘します。子どもはキッズモードやスクリーンタイムで制限されるのが前提で、親が使う様子を見ていても自分は使えない状況から始まるため、親とまではならず、友達くらいにはなりそうだという見方です。
ただし草野さんは、話しかければ返してくれる存在として最初から家にあるような形なら、そういう存在になりそうだとも話しています。宮武さんも、アイアンマンのジャービスくらいのものなら、家族の一員と思う可能性はなくはないと応じました。
AIはジョークを言えるべきか
宮武さんの「AIはジョークを言えるようになったほうがいいか」という問いに、草野さんは即座に「なったほうがいい」と答えます。
面白い方がいいじゃないですか。つまんないより。
草野さんは、ジョークを言えることは人間らしさであり、人間っぽく接することができるという意味では、あったほうがいいと考えています。ただ、人間っぽく接するべきかはユースケースによるといいます。
ウィットの効いた返しがあると楽しく、プラスな気持ちになれる
ジョークはあまりいらないかもしれない
宮武さんは、これはAIをどう扱うべきかという議論になり、AGI的なものを信じるかどうかでも意見が変わると話します。宮武さん自身は、相手がAIだと知っていればツールとして見てしまい、人間っぽく扱いにくいそうです。
そのうえで宮武さんは、AIかどうかわからない、あるいは知る必要がなくなる将来を想像します。AIかどうかがどうでもよくなったとき、人は自然とAIに人間っぽく接しているのではないかという見立てです。
まとめ
ShopifyとStripeのCEOの話から始まったこの雑談回は、「両端ではなく間の摩擦や制限を見る」という視点を軸に、SNSの設計やAIとの関係へと広がっていきました。制限は窮屈さだけでなく、面白さや創造性を生む仕組みでもあると考えられます。
- ShopifyのCEOは、市場の大きさではなく、摩擦をなくすことで市場を作れる点が見過ごされていたと語った
- StripeのCEOのアンケートでは、使い道自由の資金なら研究内容が「とても変わる」と答えた研究者が79%にのぼった
- Twitterの140文字のような制限は、シンプルに書く訓練になる一方、SNSはスケールのために制限を緩めていく傾向がある
- 使うほど機能が減るSNSやシングルプレイヤー型SNSなど、制限を逆手に取ったアイデアが語られた
- AIが家族の中で第三の親や友達になるか、ジョークを言うべきかは、見た目やユースケース、AIと意識されるかどうかで変わりうる



