1年分のエピソードは、なぜ1つのテーマにつながるのか
Off Topicでは毎年末、その年に配信したエピソード全体が実は1つのテーマにつながっていた、という総括の回を出しています。宮武さんによれば、2023年は雑談回を含めて50エピソード近くを配信しており、この取り組みは2020年から続いて4年目になります。
過去のテーマは、2020年が「Attention and Trust Economy」、2021年が「Composing Culture」、2022年が「System Renaissance」でした。2020年は記事とスライドのみ、2021年は1エピソード、2022年は2エピソードと増えてきたため、2023年は3エピソードで話すと宮武さんは説明します。
宮武さんは、1年分のエピソードのつながりだけでなく、過去のテーマとどう結びつき、自分の考えがどう進化したかを振り返ることも重要だと話します。
(このタイトルを)私も今読んで「難しそうだな」って思いました。
トレンドからカルチャー、システム、そして宗教へ
宮武さんの振り返りでは、2020年に扱ったのはクリエイターエコノミー、D2C、メタバースといった市場のトレンドでした。Z世代のような新しい消費者が新しい行動や考え方を持ち、企業がそこに乗ることでムーブメントが大きくなる、という見立てです。
2020年のテーマは、アテンションだけでなく信頼も得なければならないという「Attention and Trust Economy」でした。ただ宮武さんは、後から振り返るとそれは表面レベルの話だったかもしれないと述べています。
そこで2021年は一段深く掘り下げ、成功する企業はカルチャーにいかに根付くかで決まると考えました。消費者、クリエイター、キュレーターが混ざり合い、リミクサー ── 既存の作品や要素を組み合わせ直して新しいものを生み出す人。2021年のOff Topicのテーマで、新しいカルチャーメーカーの類型として挙げられたやテイストメーカー、ワールドビルダーといった新しいカルチャーメーカーが登場した、という整理です。
2022年はさらに、カルチャーを生み出す新しいシステムに目を向け、過去50年スケールしてきたシステムが乗り換えの時期にある、という「System Renaissance」を語りました。
2023年は、そもそもシステムやカルチャーがなぜ、どう作られるのかを考えるため、より根本的な人間の考え方や行動を見る必要があったといいます。その結果たどり着いたのが「宗教OS」と「カルトメイキング」です。
トレンド
新しい消費者の行動と企業の参入でムーブメントができる
カルチャー
ムーブメントはカルチャーに根付けるかで決まる
システム
カルチャーを生む仕組みそのものが入れ替わる
宗教
システムやカルチャーを生む人間の根本的な性質
去年と今年を通して、いかに宗教が人間社会にとって重要なのかっていうのを気づいたかなっていうところですね。
宗教は死んだのではなく、別の場所へ移っている?
草野さんは、Off Topicでも経営者のカルトブランドづくりを扱ってきたことに触れ、会社やチームを作る人には宗教学を学んでいる人が多いと話します。
宮武さんによれば、アメリカではキリスト教を信じる人の割合が徐々に減っています。ただし宮武さんは、それで宗教が死んでいるわけではなく、むしろ宗教に入る需要は高まっているのではないかと考えています。
(宗教の需要は)今まであった、例えばキリスト教とか、そういうところではなくて、違うところに行ってる、違う宗教で。
宮武さんは、今の社会ではそれを宗教と呼んでいないかもしれないものの、要素を分解すれば宗教だと話します。そのうえで3回シリーズの構成を示しました。今回は宗教がなぜ重要か、次回は新しい宗教づくりがなぜ失敗しているか、最終回は今の社会でどう宗教を作れるか、です。
宮武さんは、宗教にネガティブな印象を持つ人もいると認めたうえで、今回はその先入観をいったん捨てて聞いてほしいと呼びかけています。
4000年前の社会は「ファシストで共産主義でカルト」だった
宗教の重要性を理解するために、宮武さんは3〜4000年前の社会にさかのぼります。手がかりは、1860年代にフランスの古代ギリシャ・ローマの専門家が書いたとされる本『The Ancient City』です。
『The Ancient City』の著者は、名前もあまり残っていない古代ギリシャ・ローマ以前の社会を、ギリシャ・ローマに残る文学から逆算して解釈しました。宮武さんは、西洋の話なので日本にどこまで当てはまるかはわからないとしつつ、アメリカを見るうえで参考になると話します。
当時の暮らしを問われた草野さんは、歴史には疎いとしながらも「村があって、偉い人がいて、上下関係がありそう」と答えます。宮武さんは、そこはかなり合っていると応じました。
その社会は、ファシストであり、共産主義であり、カルトであると。
宮武さんの説明では、個人の権利という概念がなく、家族の中では父親が完全なトップで、家族の生死まで決めていました。経済市場も存在しないため、共産主義的な社会になるしかなかったといいます。
「カルト」という点については、家族、民族、町ごとに信じる神様が違い、互いにほとんど交わらない「島同士」のような状態だったと宮武さんは説明します。今風に言えば強烈なフィルターバブル ── 自分の好みや考えに合う情報ばかりに囲まれ、異なる意見が見えなくなる状態。主にネットのアルゴリズムが生む現象として語られる言葉だったという表現です。
逆にその他の町の人と会ったら、その人を殺すのが義務だったんですよ。
フィルターバブルっていうよりは、本当にそれぞれの国というか、敵対してるものとしてカウントしてるんですね。
暴力的だった古代社会に、生きがいはあったのか
宮武さんは、昔の社会が今より圧倒的に暴力的だったことを認めつつ、カルチャー面ではどうだったのかを議論すべきだと話します。当時のほうが宗教が強く、コミュニティ感も人生の生きがいもあったのではないか、という問いです。
草野さんはこの見方に共感します。自身はそれほど宗教を信じていないとしながら、変わらない信じるものがあることや、教会のように毎回戻る場所があることには安心感があると語りました。
やっぱ教会に行くとか、やっぱコミュニティじゃないですか。毎回行く場所があるというか、戻る場所があるというか。
それはすごい素敵だなと思いますね。(殺すとかは)あれですけど。
宮武さんは、古代社会では「この神様を信じる、信じない人は殺す」というパーパスが明確だったため従いやすく、カルチャー面では今より強かったかもしれないと述べています。
ブランドも企業も「希薄化された宗教」なのか?
宮武さんは、宗教を人生の意味やパーパスを表現するためのストラクチャーであり、コミュニティでもあるととらえます。道徳の定義を共有するために聖書がある、という見方です。
そう考えると、宗教の役割はキリスト教やユダヤ教以外のものにも置き換わっており、企業やブランド、さらにはこのポッドキャストも同じだと宮武さんは話します。
聖書で倫理を示し、教会に通い、他の神を信じる者を破門する
ミッションやビジョンで考え方を示し、新商品の店舗に行き、競合商品を嫌う
企業のミッションステートメントやビジョンは企業の倫理や考え方の意思表明で、新商品が出て店舗に行くのは教会に行くことに似ている、と宮武さんは説明します。競合商品を嫌う感覚も、教会での破門に通じるといいます。
今のいろんな組織とかコミュニティとか企業とか、4000年前の社会のめちゃくちゃ希薄化されたバージョン。それを作ってるんじゃないかなと。
宮武さんによれば、個人を重視する時代になり、神という絶対的な存在を信じにくくなったことで、宗教は希薄化しています。それでも人間はグループに所属したい欲求が強いため、新しいカルトや宗教を作り続けているといいます。
その例として宮武さんは、ポピュリズム、ナショナリズム、ウォーク、イーロン・マスクやトランプ、企業ではAppleを挙げ、どれも4000年前の概念と似たものが希薄化された形だと話しました。草野さんも「それがブランドかもしれないし、人かもしれない」と受けています。
4000年前から人間が進化していない部分
宮武さんは、人間は進化していると考えたいものの、道徳や倫理の議論は4000年前から変わっていないと指摘します。宗教が重要なのは道徳と倫理を作るためで、その需要は一生続くという考えです。
煩悩みたいなの、昔の人も悩んでて、今も一生悩み続ける話なんだなって。
宮武さんは、テクノロジーや科学で人間以上の存在になろうとしても、結局なれないと話します。次回のテーマとして、科学ですら宗教化してしまう例にも触れました。
宮武さんが「宗教OS」と呼ぶのは、個人にもグループにも、道徳や倫理を定義するOSのようなものがあるからです。OSがコードで書かれるように、宗教は聖書や詩、ストーリー、モーセの十戒 ── 旧約聖書で、神がモーセに与えたとされる10の戒め。「殺してはならない」など、ユダヤ教・キリスト教の倫理の基礎とされるといった形で考え方をコード化している、という比喩です。
さらに宮武さんは、キリスト教やユダヤ教などが1000年以上信じられ、何が良く何が悪いかを定義してきたからこそ今の世の中がある、と述べます。また、従来の宗教の多くは科学の発展以前に作られ、知識を再現性のある形にする役割も一部担っていたといいます。
宗教の強さは「クレイジーなアイデア」から生まれる
宮武さんは、倫理や道徳はグループを結びつける一方で、周りを見えなくさせるものでもあると話します。そして宗教の面白いところとして、真実ベースでなくてよい点を挙げました。
宮武さんの例では、一神教も多神教も、神の子キリストもアマテラスも、信じない人から見ればクレイジーに映るかもしれません。今のアメリカなら、銃を持つべきかどうかも同じ構図だといいます。
クレイジーなアイデアを信じる人は、それを信じていると口にしなければなりません。宮武さんは、その表明が後戻りできない状態を作り、コミットメントを高めると説明します。
アイデアがクレイジーなほど入るハードルは高い
信じていると表明したら後戻りできず、コミットがめちゃくちゃ高くなる
その後戻りできないみたいな言い方って、実は自分はそうじゃないかもしれないって思ってる人の言い方な気がしたんですけど。
草野さんの問いに、宮武さんはそういう人もいると認め、それが悪いという話ではないと答えます。草野さんが洗礼を例に挙げると、宮武さんも、みんなの前での意思表明という意味で一部そうだと応じました。
(洗礼を)した後の自分には戻れないって気がちょっとしますよね。
大手よりも小さなブランドがカルト化しやすい理由
宮武さんは、宗教の仕組みをビジネスに当てはめます。大手ではない小さなブランドのほうがカルト的なステータスを持ちやすいのは、既存の大手と全く違う考え方やデザインで、アイデアがクレイジーだからではないか、という見立てです。
草野さんは、世の中にクレイジーなものが多すぎて、信じる以前に俯瞰してしまうと話します。宮武さんは、だからこそ今はカルトブランドやカルチャーアイコンを作りにくくなっているのではないかと応じました。草野さんは、トランプ氏の勝利も、多くの人がクレイジーだと思いながらカルト的な人気があった例として挙げています。
宮武さんは、新しいブランドや会社を作るとき、人に嫌われたくないと思う人が多いと指摘します。しかし宗教的なものを作るなら、一部でクレイジーなことをする必要があるといいます。
それが足りなければ、むしろそのハードルが低すぎて、(宗教に)入ってくるかもしれないんですけど、逆に後戻りしやすい。なので、むしろハードルを上げた方がいいっていう。
草野さんが、西洋の宗教のほうが後戻りできない感が強そうだと感覚的に話すと、宮武さんも同じ感覚を持っていると答えます。日本は昔から何千、何万もの神様がいる考え方なので、一神教とはかなり違うのではないか、という見方です。
Apple信者とiMessageの「緑の吹き出し」
宮武さんは、2年ほど前に話した、次世代のコマースブランドを作るには摩擦を上げる必要があるという議論が、クレイジーなアイデアの話に似ていると振り返ります。
宮武さんは、Appleという宗教に入る過程を例に挙げます。入り口は使いやすさなどのプロダクト面でも、ブランドのイデオロギーや友達が使っているかも影響し、使ううちに他の製品もApple化していきます。最後には「もうAndroidはダメ」と言う人も出てくるといいます。
入り口
使いやすさや機能などプロダクト面
深まる
ブランドのイデオロギーや友達の存在が影響する
広がる
他の製品も次々とApple化していく
最終地点
Androidを拒絶する
Appleはクローズドなエコシステムなので、それがより起きやすいと宮武さんは話します。象徴的なのがアメリカのiMessageで、Appleユーザー同士なら吹き出しは青、Androidユーザーが入ると全員緑になります。
宮武さんによれば、アメリカの10代は緑の吹き出しを嫌いますが、論理的な理由は全くないといいます。草野さんが無料か有料かやグループチャットの作りやすさの違いではないかと尋ねると、宮武さんは単純に緑色が嫌なのだと答えました。
宮武さんは、AndroidユーザーがMac経由でメッセージを送り、吹き出しを青にするアプリまであると紹介します。サービス名は覚えていないとしています。
もうApple買えや。
なんか隠れキリシタンみたいな。
この緑色のバブルがなぜか嫌われるっていうのは、論理的な理由っていうよりも、おそらく宗教的な理由だと思うんですよ。
キリスト教は「ユダヤ教+PMF+グロースチーム」だった
宮武さんは、宗教を広めるには、クレイジーなアイデアを信じるコア層に加えて、カジュアルファンも増やす必要があると話します。草野さんは、信者ではないけれど十字架のアクセサリーを着ける人を例に挙げ、宮武さんはとりあえず教会に行ってみる人も含め、どちらもそうだと応じました。
宮武さんによると、キリスト教は宗教としてとてもイノベーティブでした。それまでの宗教は民族や地域に紐づいていましたが、キリスト教は初めてそれを切り離し、どんな人種や民族でも、世界のどこにいてもクリスチャンだと名乗れるようにしたといいます。
民族や地域に紐づき、範囲が限られていた
民族や地域から切り離し、全世界が対象になった
宮武さんはこれを、スタートアップでいうディストリビューションハックだったと表現します。全世界がTAM ── Total Addressable Marketの略。ある製品やサービスが獲得しうる市場全体の規模を指すスタートアップ用語、つまり市場対象になったということです。
キリスト教はユダヤ教プラスPMFプラスグロースチームがいたっていう話をしてて。
この言葉は宮武さんの知人によるものだといいます。PMFはプロダクトマーケットフィットのことで、製品が市場に受け入れられている状態を指すスタートアップ用語です。
最も成功する起業家は宗教を作るのか
宮武さんは、サム・アルトマン ── OpenAIのCEO。以前はスタートアップ支援組織Y Combinatorの代表を務めたもスタートアップと宗教について同じことを言っていたと紹介します。宮武さんの記憶では、YC Chinaのトップで元百度のCEOだった人物から聞いた話として、ブログに書いていたといいます。
その内容は、成功する人は会社を作り、もっと成功する人は国を作り、最も成功する人は宗教を作る、というものです。宮武さんは、最も成功している起業家にとって会社作りは手法でしかなく、そのミッションは宗教に近いと読み解きます。
いい意味で執着してる、実現させようとしてる人って、やっぱり強いリーダーだなっていう気はしますし、それもなんか宗教的な感じはしますね。
宮武さんは、スティーブ・ジョブズが一度決めたことを全く曲げなかった例を挙げます。また、今最も大きなテック企業は基本的にピボットしていない、というのがアルトマン氏の考えだと紹介し、ピボットは宗教を変えることに似ているのかもしれないと話しました。
(ピボットは)一般的な宗教の考え方でいうと、「信じてた神様が違いました」っていうことと同じですからね。
反面怖いですね。もし自分が間違ってたと思ってたら、それ言い直せないって考えたら。
2012年はアメリカ文化のティッピング・ポイントだったのか
宮武さんは、2022年のテーマで取り上げた1971年に話をつなげます。1971年は、格差の拡大、電気や食料の値上がり、国の負債や弁護士数の増加などが始まった経済的なティッピング・ポイント ── ある変化が一気に広がり、後戻りできなくなる転換点のこと。社会現象やマーケティングの文脈でよく使われるだった、という話です。
そして宮武さんは、ここ数年、何人かが2012年をそれに似た心理面・カルチャー面のティッピング・ポイントとして指摘し始めていると紹介します。一般的に定説というより「ちょこちょこ言われている」程度だと補足しています。
経済的な転換点。格差拡大、物価上昇、国の負債や弁護士数の増加
心理・カルチャー面の転換点。若者のうつ増加、学力低下、メディア分裂など
宮武さんが挙げたアメリカのデータでは、2012年ごろから中高生のうつ症状や自殺未遂が大きく増え、2012〜2015年には睡眠7時間未満の10代が増えました。全米で13歳が受けるテストの読解と数学のスコアも、2012年をピークに下がり続けているといいます。
ほかにも、2012年にはTinderが登場して出会いの概念が変わり始め、ビルボードトップ100で放送禁止用語を含む曲が増え、メディアの分裂やリメイク・シリーズ作品の増加、wokeという概念の登場も重なったと宮武さんは話します。良い面として、州ごとの同性婚の合法化が増え始めたことにも触れました。
同じ時期、アメリカのスマホ普及率は2012年から2013年にかけて46%ほどから50%以上に達しました。宮武さんは、偶然ではないと思うと述べています。
SNSは原因か、それとも道具か
スマホ普及と重なると、多くの人はSNSが原因だと考えます。宮武さんはSNSの関与を認めつつ、根本原因が別にあり、SNSはその道具として使われたのではないかと問い、後者だと考えています。
そこの根本的に何かっていうと、宗教だと思うんですよ。
宮武さんの見立てでは、キリスト教やユダヤ教のような従来の宗教を拒絶し始めたのが2012年ごろで、そこからアメリカでポストキリスト教社会が作られ始めました。宗教の需要は高いため、人々はエンタメの過去のIPのファンダム、ブランドや企業、社会主義、科学などに新しい宗教を探しに行ったといいます。
人は何かを信じたいんですね。
信じたいと思うんですよ。
数字で見るアメリカの宗教離れ
宮武さんは、アメリカの宗教離れをいくつかの調査の数字で示します。ピュー研究所のデータでは、自分をクリスチャンだとするアメリカ人は2007年の78%から2021年には63%に下がりました。
同じ期間に、他の宗教は5%から6%にしか増えず、宗教に入っていない人は16%から29%に増えています。宮武さんは、他の宗教が伸びていれば宗教がまだ強いと言えたが、そうではないと指摘します。
| 区分 | 2007年 | 2021年 |
|---|---|---|
| キリスト教 | 78% | 63% |
| その他の宗教 | 5% | 6% |
| 無宗教 | 16% | 29% |
宮武さんが「CES」と紹介した別のグループの調査では、宗教に入っていない割合は36%でした。この調査は世代別の違いを示しており、若い世代ほど無宗教の割合が高くなっています。
| 世代 | 割合 | 2008年からの推移 |
|---|---|---|
| サイレント世代(1925〜45年生まれ) | 18% | {placeholder} |
| ブーマー世代 | 26% | {placeholder} |
| GenX | 35% | 25%から35%に増加 |
| ミレニアル世代 | 44% | 33%から44%に増加 |
| Z世代 | 48% | 39%から48%に増加 |
この調査は2008年から2022年まで同じ質問を繰り返しており、どの世代でも無宗教の割合が増えていると宮武さんは説明します。アメリカでは、Z世代の約半分が宗教に関わっていないと自ら答えていることになります。
さらに、80年間教会への所属を尋ねてきたギャロップの調査では、1999年に約7割だった所属率が2020年に初めて50%を切り、今は47%だといいます。シナゴーグやモスクも含めた数字です。
親友が減る社会は、宗教の希薄化の結果なのか
宮武さんは、教会に通う人が70%から47%に減ったギャップを何かで埋めなければならないと話します。埋められていない結果の一部として挙げたのが、アメリカで親友の数が減っていることです。
宮武さんによれば、親友が1人以下の人の割合は過去30年で3倍になり、今は20%です。一方、親友が10人以上いる人は30年前の40%から15%に減ったといいます。草野さんは、親友の定義も変わっているのではないかと問い、宮武さんもその可能性を認めました。
(親友が)10人いる人、それ親友と言えるのか。それ幸せですね。10人はいないな。
宮武さんは、アメリカの10代で毎日友達と会う割合が減り、今の高校1年生は1980年代の高校1年生よりパーティーに行く回数が大きく減っているとも紹介します。こうした友達づくりの機会の減少も、宗教の希薄化による一部の結果だと宮武さんは考えています。
宮武さんは、より強い宗教を作れば、より強い体験が生まれ、強い親友関係ができる可能性も高まると話します。だからこそ次世代の宗教をどう作るかが、ビジネス面でも社会面でも重要になると述べました。
日本のスピリチュアルや「推し」も宗教なのか?
草野さんは、アメリカの話を聞いて今の日本にも近い気がしたと話します。アメリカで宗教を信じなくなる人が増えている一方、無宗教や不可知論でも天使や祈りの力、天国、占星術、生まれ変わりを信じる人がいるという記事を読み、日本にもそうしたスピリチュアルな人は多いのではないかと考えたそうです。
草野さんは、日本はもともとパーティー文化も薄く、一人で暮らしやすい街と言われ、一人でご飯を食べる人も多いと話します。ただし、東京にずっと住んでいるので日本全体については言えない、と断っています。宮武さんも、日本では一人でレストランに行っても変な目で見られにくい一方、アメリカでは「本当に一人なんですか?」と聞かれることがあると応じました。
アイドルとかも好きなのも結構、推しっていう、神様、絶対的な存在がいるみたいなのも。
いや、でもそれは、それはあの、すごい正しいと思います。
宮武さんは、アイドルは神様に例えられることもあり、宗教はいろいろな形で存在すると話します。宗教に入ることが悪いという話ではなく、人間にそういう性質があると理解することで、新しいビジネスのチャンスや考え方が生まれるという立場です。
宮武さんは、宗教を作れなければ、必ずしもとは言えないものの市場では勝ちにくいと述べます。Off Topic自体も、ビジネス上の目的の1つが宗教を作ることだといいます。次回は、アメリカでキリスト教が減る中でどんな新しい宗教が生まれ、どんな課題があるのかを話す予定です。
まとめ
今回のOff Topicは、宗教を特定の信仰に限らず、道徳や倫理、帰属意識を作る人間の根本的なOSとしてとらえ直す回でした。宗教の需要は消えておらず、ブランドや人物、ファンダムなど希薄化した形で受け継がれている、というのが宮武さんの見立てです。
- 年末恒例の総括テーマは、トレンド、カルチャー、システムと掘り下げ、2023年は「宗教OS」と「カルトメイキング」にたどり着いた
- 4000年前の社会は暴力的だった一方、宗教とコミュニティが強く、生きがいがあった可能性がある
- 宗教の強さは真実かどうかではなく、クレイジーなアイデアを表明させて後戻りできなくする仕組みにある
- AppleのiMessageの青と緑や、キリスト教の拡大、起業家のビジョンにも宗教と同じ構造が見られる
- アメリカでは2012年ごろから宗教離れが進み、親友の減少など、その空白を埋められていない兆しも出ている




