Bytesはなぜ終わり、何を残したのか
草野さんと宮武さんが運営してきたテックニュース関連の番組「Bytes」が終了することになりました。この雑談回は、もともと別の雑談を収録していたものの、Bytes終了の話題があるため急遽差し替えて録り直したものだと宮武さんは裏話を明かしています。
宮武さんによると、Bytesは約1年半続いた番組で、二人にとって短尺系のコンテンツを出すのは初めての試みでした。そこで宮武さんは草野さんに、Bytesを通じた学びを尋ねます。
どうです?草野さん。その1年半ぐらいですかね、多分Bytesをやったと思うんですけど。
OffTopicでもたまにやりますけど、タイムリーな話をできるっていうのはすごく面白かったなっていうのは思いますね。
Bytesは週3回の配信で、タイムリーな話題を扱う難しさもありました。宮武さんは、収録後に状況が変わることもあったと振り返り、草野さんはイーロン・マスク関連の話題を例に挙げています。
ヘッドラインから見えた「メディアのナラティブ」
草野さんはBytesのトピック選びのために日々ニュースを見るうちに、ヘッドラインに並ぶニュースの傾向がわかるようになったといいます。最近ならAI関連が非常に多く、イーロン・マスクが話題の時期はヘッドラインがほぼ彼一色だったそうです。
「ああ、こういうことが注目されてるんだな」っていうのが、自分でも分かったような気がします。少しだけ。
宮武さんはこれを受けて、Bytesを通じてメディアのナラティブを追っていけたことは確かにあったと応じています。
宮武さんはもう一つ、尺の違いによる効用も挙げました。平均50分ほどのOffTopicでは深掘りが求められる一方、10分ほどのBytesでは考え途中の「プチインサイト」も話せたのが良かったといいます。
平均50分ほど。ある程度しっかり深掘りする必要がある
10分ほど。考え中の話やプチインサイトも出せる
決算発表の書き起こしを読み込んで見えたこと
宮武さんは、テックニュース全体を追うようになったこと自体も大きな変化だったと話します。GAFAなど大手テック企業の動きは以前から多少見ていたものの、全体像までは見ていなかったそうです。
特にBytesの後半では四半期決算 ── 企業が3か月ごとに業績を公表する仕組み。米国の上場企業では、発表後に経営陣が投資家向けの電話会議(アーニングコール)を開くのが一般的ですの解説も扱い、宮武さんが決算発表をしっかり読み込むようになったのはBytesを始めてからだったといいます。
四半期ごとの決算発表って、CEOとか経営メンバーが投資家とコールをやるんですよね。で、コールで説明をするんですけど、それって後々書き起こしが出てくるんですよ。
その書き起こしを全部読み始めたっていう。
宮武さんによると、決算コールの書き起こしを読むことで、企業の方向性や自社をどう語っているか、どの数字を強調しているかが少し見えるようになりました。
Bytesで決算解説
後半から四半期決算の解説を扱うようになる
書き起こしを読む
翌日ごろ出る決算コールの書き起こしを全部読む
見えてきたもの
企業の方向性、自社の語り方、強調する数字
OffTopicへ
129話・130話のSNSのTikTok化の話につながる
ニュース「的」番組のトピックはどう選ばれていたのか
草野さんは、Bytesで扱うトピックの数の変化にも触れています。初期は1回3つほど扱っていたものの、最近は1つに絞って少し深掘りする形になっていったそうです。
草野さんによると、Bytesはニュース番組と断言せず「ニュース的な番組」とぼかしていたため、自分たちが好きなものとの兼ね合いでトピックの選び方が難しかったといいます。
宮武さんが個人的に一番面白かったと挙げたのが、このトピック選びのプロセスです。去年は収録日の午前中に二人がバーチャルで会い、それぞれ2、3個ずつ候補を出し合っていたものの、好みの違いから意外と合わなかったそうです。
人のキュレーションを見れるのが面白いなって思って。
あ、草野さん、こういうトピックを選びがちなんだとか。
わぁ、分析されてる。
宮武さんは、一度だけでなく1年間通して他人のキュレーション ── 情報を選び、整理して届けること。ニュース番組では、どの話題を取り上げるかという編集判断そのものを指しますを見続けられたことが、制作側ならではの特典だったと話しています。もっといろいろな人のキュレーションを見てみたい、とも語りました。
好きな記事ほど選べなかった理由
草野さんは、今年から自分が好きなニュースを選ぶ形式に変わったことで気づいたことがあるといいます。本当に好きな記事は、何かの現象のような抽象的なものが多く、興味はあっても自分で説明しようとするとできないことが多かったそうです。
そのため草野さんは、二人で一緒にトピックを選んでいた時期には「どういうニュースにみんなが興味があるか」という視点で選んでいたかもしれないと振り返ります。
まあでもそれも一人よがりっちゃ一人よがりなんですけどね。みんなに聞いてるわけじゃないので。
宮武さんは、それもキュレーションの考え方の一つだとしたうえで、時間をかけて何度もその判断を見られるのは貴重な経験だったと述べています。
何度も繰り返される「あるある」ニュースとは?
草野さんは、テックニュースの定点観測も面白かったと話します。二人の間では「これ前も話したな」というのがあるあるになっていたそうです。
草野さんが例に挙げたのは、GAFAのような大手テック企業が短尺動画に乗り出し、クリエイターにお金を渡していくという現象です。OffTopicでも何度も話し、Bytesでも候補記事として繰り返し上がっていたといいます。
宮武さんは独占禁止法のトピックも挙げ、去年の初めには毎週のように候補に出していたものの、最後には「もういいや」となっていたと笑います。企業名によってリスナーの反応の多寡が変わるのを見られたのも面白かったそうです。
この1年で増えたテックニュースの潮流は?
草野さんから肌感として増えたトピックを問われた宮武さんは、トピックとしては完全にAIだと答えます。そのうえで、ビッグテックへの訴訟や独占禁止法案に関する動きも大きく増えたと挙げました。
宮武さんはさらに、動画配信サービスへの論調がネガティブになり始めた点も指摘しています。一昨年やその前の年と比べると、競合が増えて登録者数が伸びなくなったことが背景にあるのではないかと話しています。
草野さんは、中国企業ではSheinに関するニュースがかなり増えたと話します。加えて、ニュースを拾う側としてニュースレターや新興メディアを参照する機会が増えたといいます。
草野さんは例として、Instagram創業者による新サービスのローンチを挙げます。その際にはSubstack ── 個人が有料ニュースレターを発行できるプラットフォーム。著名記者が独立して自分のメディアを持つ場として広く使われています上で配信される、The Vergeにいた著名テックジャーナリストの「Platformer」や、BuzzFeedの元編集長が関わる新興メディアSemaforなども引用されていたそうです。
宮武さんも、Semaforは以前はまったく聞かなかった名前で、去年後半あたりから目にするようになったと同意しています。
番組の最終回はどう終わらせるべきか
宮武さんが個人的に悩んだのは、Bytes終了が決まった際の最終エピソードの終わらせ方でした。収録時点では最終話をまだ録っていなかったものの、公開時には最終話が配信された後になっていると二人は確認しています。
宮武さんは、終了が決まったタイミングで「いい終わらせ方をしたい」とまず思ったといいます。考えた選択肢は複数ありました。
- 通常回と同じように終える
- 216話を振り返るまとめにする
- Bytesを通して伝えようとしたことを伝える
- ニュースらしく締めくくる
草野さんが続編がある風にするのか、ここで終わりにするのかと尋ねると、宮武さんは一旦幕は切ると答えています。
見てきた自分を肯定できるエンディングとは?
宮武さんは、Bytesというストーリーが終わるからこそ良い終わり方が欲しいと語ります。漫画でも映画でもドラマでも、悪いエンディングは本当に嫌だといいます。
まあこのBytesっていうストーリーが終わるからこそ、漫画とか読んでも、映画見てもドラマ見ても、やっぱりいい終わり方が欲しいんですよね。
宮武さんにとって、物語がハッピーかバッドかはあまり問題ではありません。結論が出たかどうか、あるいは結論がない終わり方でも、エンディングがしっくりくるかが大事だそうです。視聴者に想像を任せる終わり方でもかまわないといいます。
宮武さんが挙げた悪い例は、無理やり感や急に終わらせた感じのあるもの、そしてドラマのように永遠に続くことでした。草野さんの「だんだんしぼんでいくのは嫌」という言葉に、宮武さんは強く同意します。
「あ、これがこの、例えばフレンズっていうドラマだったんだ」っていうのを、でもここで終わる、こういう終わり方はすごい良かったなっていうのを思わせるっていう。
(作品が)だんだんしょぼーんってなってくと、「ここまで見てたのにこれかよ」みたいな気持ちになっちゃったりするので。
宮武さんは、エンタメでよく使われる最初のシーンをオマージュする手法などにも触れつつ、テックニュース風の番組でそれをどう実現するかを考えたといいます。草野さんの言葉どおり、見てきた自分を肯定できるフィナーレが二人の理想として浮かび上がります。
草野さんは、最終回への感想もぜひ聞きたいと話し、OffTopicでは感想やフィードバックをハッシュタグ「#オフトピック」で募っていると呼びかけました。
短尺コンテンツはOffTopicに何をもたらすか
宮武さんはBytesを通じて、短尺のコンテンツフォーマットはOffTopicとしても「あり」だと感じたといいます。50分の番組は、聞く側にとってハードルが高い場合もあるからです。
「50分聞けないよ」っていう多分人って全然いると思うので、それは。
宮武さんによると、1.5倍速や1.8倍速にしてもそれなりの量があるため、気軽に、でも少し深くテック情報を知りたい人にはBytesがよりフィットしたのではないかといいます。
一方で宮武さんは、OffTopicらしいコンテンツの出し方でなければならないとも考えており、そのバランスはもっと考える必要があると話します。そこでリスナーに、短尺ならどんな形で届けてほしいかのアイデアを求めました。ポッドキャストでも、別の形でもかまわないそうです。
草野さんは、OffTopicは今後も続くので、引き続きこの番組を聞いてほしいと締めくくりました。
まとめ
Bytesの終了をきっかけに、二人は短尺テックニュース番組がもたらした気づきを振り返りました。ニュースの潮流やキュレーションの個性が見えたこと、そして見てきた人が報われる終わり方を模索したことが、今後の短尺コンテンツの検討にもつながっています。
- 毎日のニュース選びを通して、ヘッドラインに表れるメディアのナラティブが見えるようになった
- 決算コールの書き起こしの読み込みが、OffTopic本編の深い分析にもつながった
- 1年間、互いのキュレーションの偏りを見続けられたことが制作側の特典だった
- 良いエンディングとは、しぼまずに「見ててよかった」と思わせる終わり方
- 短尺フォーマットはOffTopicとしても「あり」で、リスナーからアイデアを募っている





