ポッドキャストから始まり、どこまで広がった?
この回は、Off Topicの草野美木さんと宮武徹郎さんが年末に合わせて1年の活動を振り返る番外編です。草野さんは、振り返りをしながら「お互いがどういう思いでOff Topicをやっているのか」を話したいと切り出します。
「今年一番思い出に残っているものは」という草野さんの問いに対し、宮武さんはまず「いろんなチャレンジをスタートした年だった」と答えます。
宮武さんによると、Off Topicは2018年11月に始まり、最初の1年ちょっとはポッドキャストとTwitterアカウントで発信していました。2020年からはnote、Instagram、YouTubeにも活動を広げています。
YouTubeについては、草野さんが「ポッドキャストを上げているぐらい」と補足しています。宮武さんは、特にnoteを通じて「いろんな方に知ってもらえる年になった」と振り返りました。
その象徴として二人が挙げたのが、JAPAN PODCAST AWARDS ── 日本のポッドキャスト番組を対象にしたアワード。ノミネート作品が発表され、リスナー投票なども行われますへのノミネートです。草野さんは「聞いてくださった方々に本当に感謝です」と何度も口にしています。
なんかいろんな新しい人にも知ってもらえる機会にもなりましたし、やっぱりなんかやっててよかったなっていうのは純粋に思えるっていう感じですね。
草野さんは、再生数の数字やTwitterで反応を知ってはいても、コメントをもらうと「聞いてくれてる人がいるんだな」と実感すると話します。宮武さんも、届いたコメントは二人とも全部読んでいると明かしました。
基本的にTwitterでも、(アカウントを)アットされても一応ちゃんと読んでるんで、やっぱりいいコメントが来るとめっちゃテンション上がりますし。
ノミネートの日には、もう一つ偶然が重なっていました。その日はちょうど、Off Topicのnote記事がTechCrunch ── アメリカ発のテクノロジー・スタートアップ専門ニュースメディア。日本版もありますに初めて掲載される日で、記事はストリーミングをテーマにしたものだったといいます。
その日はポッドキャストの再生回数が、それまでにない上がり方をしました。ただ、ノミネートとTechCrunch掲載のどちらの影響かがわからなかったことを、宮武さんは「ちょっと悔いとして残っている」と笑いながら話しています。
ノミネートは事前に知らされておらず、二人が知ったのは発表当日でした。投票の呼びかけはしていたものの、発表日を把握していなかったため「結構びっくりした」と振り返っています。
BLMの記事は、なぜ公開をためらったのか?
宮武さんがもう一つ思い出に残っていると挙げたのが、Black Lives Matterをテーマにしたnote記事です。数値としてのインパクトも大きく、二人とも書いてよかったと感じた記事だといいます。
一方で宮武さんは、この記事を公開するかどうかをかなり悩んだと打ち明けます。家族ともその話をしていたそうです。
なんだろう、やっぱり結構意見としての記事になっちゃうので。
宮武さんが悩んだ理由は、主に2つありました。1つは、エビデンスを持った解説記事というそれまでのOff Topicの流れから外れること。もう1つは、センシティブな話題であることです。
さらに宮武さんは、多くの日本人はアメリカに住んだことがなく状況を理解しにくいうえ、アメリカに住んでいても自分で体験していない人がほとんどだと指摘します。そのうえで「エキスパートでもない人が書くべきなのか」と考えていたといいます。
宮武さんは、とりあえず書いてから公開を考えることにし、書き上げた原稿を草野さんに送って意見を求めました。Slack上で草野さんが「これは公開するべきじゃないですか」と返したことが、公開の決め手になったそうです。
書いたものは書いたんですけど、出したのは草野さんのプッシュがあってからだったから、それはなんかすごい感謝してるし。
草野さんは、BLMの記事を読んで感じたことを説明します。日本のメディアでも報道はあったものの、アメリカで生活してきた宮武さんのバックグラウンドやリサーチ力、アメリカ史への詳しさがあったからこそ、勉強になる記事だったといいます。
報道としてのメディアって感じではOffTopicはないので、思いっていうのは伝えるべきだと思うし。
草野さんはさらに、日本にいても差別は必ずあり、どこに行っても存在するものだと続けます。だからこそ、BLMを遠い国の話ではなく、自分事として知り、理解することが大事だと改めて感じたと話しました。
警察の軍事化の記事と、ジョン・オリバーの偶然
宮武さんは、センシティブなテーマや選挙の記事では意見が分かれやすく、日本でも批判する人がいると話します。それを受け入れたうえで出すかどうかを判断するなかで、アメリカの文化を伝えることもOff Topicの仕事だと考え、BLMについてはその後もフォローアップの記事を出しました。
フォローアップ記事は、テック業界ではない領域の話だったため、これまでリサーチしてこなかった分野を調べる必要があり、宮武さんにとって新しい経験だったといいます。
なかでも宮武さんが「出してよかった」と感じているのが、警察の軍事化をテーマにした記事です。公開した日は、確か月曜日だったそうです。
同じ日、アメリカのコメディアンジョン・オリバー ── イギリス出身のコメディアン、テレビ司会者。アメリカで時事問題を風刺しながら深く掘り下げる番組で知られていますが司会を務める『ラスト・ウィーク・トゥナイト ── ジョン・オリバーが司会を務める米HBOの週刊ニュース風刺番組。1つのテーマを長尺で解説するスタイルが特徴です』で、たまたま同じトピックが扱われていました。
ジョン・オリバーさんの番組は、週1回アメリカの課題を解説するもので、警察の軍事化の回では宮武さんの記事と同じソースが多く使われていたといいます。宮武さんは、リサーチをしっかり行うチームと「似たようなレベルの情報は提供できたのかな」と手応えを語りました。
反対に、宮武さんが後悔しているのが、アメリカの選挙についてもっと記事やポッドキャストで発信すればよかったという点です。
なんかそもそもやっぱりアメリカの選挙ってすごい複雑なので。
宮武さんによると、アメリカの選挙制度は完璧なシステムではなく、さまざまな歴史を経て今の形になっています。民主党と共和党という歴史の長い組織も形を変えてきたため、話し始めると「エンドレスに止まらなくなっちゃう」そうです。
草野さんから「政治オタクでもありますよね」と振られた宮武さんは、アメリカ政治には興味があってフォローしていると認めます。大統領選があった年だからこそ、余計に発信したかったという思いがにじみます。
Instagramとnote、プラットフォームごとに何を変える?
宮武さんから「このコンテンツがよかった、もっとこうすればよかったというものは?」と聞かれた草野さんは、最近メインで担当しているInstagramの話をします。宮武さんいわく、Instagramは「もう完全に草野さん」の担当です。
なんかあのもっとオフトピックのアイデンティティみたいなのをもっとビジュアルで伝えられるようにしたいなとか。
草野さんは、宮武さんのようにnoteで長く深い解説記事を書きたい気持ちもあるといいます。ただ、英語のニュースソースを読んで理解し、書き出す作業では「本当に差がある」と感じていて、それ以外で勝てるところを模索している最中だと話しました。
宮武さんは、英語ネイティブである自分との比較をフォローしつつ、草野さんのInstagramのストーリーなどは「僕だと表現できない方法」だと評価します。自分がOff TopicのInstagramを運営したら硬くなってしまうだろう、とも話しています。
宮武さんの考えの軸にあるのは、コンテンツはプラットフォームに合わせて作るべきだということです。noteのような長文解説記事はYouTubeではうまくいかない可能性があり、YouTubeをやるならYouTubeなりのコンテンツが必要だといいます。
宮武さんがその例として挙げるのが、ポッドキャスト自体です。Off Topicを始めた2018年11月当時は、ポッドキャストはまだそれほど流行っていませんでした。
早く始める
ポッドキャストが流行る前の2018年11月に開始
競合が少ない
参入者が少ない時期に番組を積み重ねられた
成果につながる
JAPAN PODCAST AWARDSへの選出や、Spotifyのビジネスとテクノロジーのランキングでの上位入り
だからこそ宮武さんは、どのプラットフォーム、どのコンテンツフォーマットでできるかを常に探して試すことが重要だと話します。「どこかのタイミングでTikTokを作るかもしれない」と言うと、草野さんが「宮武さんのダンス動画に期待です」と返し、宮武さんが「絶対やりたくないな」と笑う一幕もありました。
草野さんが動画をやりたい理由と、これから求められる編集スキル
「今後やってみたいことは」と聞かれた草野さんは、動画を撮りたいと答えます。Off Topicのポッドキャストの音声編集は草野さんが担当しています。
草野さんは、D2C ── Direct to Consumerの略。メーカーが小売店を通さず、自社サイトなどで消費者に直接商品を販売するビジネスモデルですの気になるブランドを取り上げた回から音声編集を頑張ってみたといい、リスナーに感想を求めました。音声編集が楽しかったことから、動画もやりたいと考えているそうです。
宮武さんは、編集にかける時間はリスナーやファンにしっかり伝わると応じます。例に挙げたのが、YouTuberのミスタービースト ── アメリカの人気YouTuber。大規模な企画と作り込まれた編集で知られ、世界有数の登録者数を持ちますの話です。
ある5秒間で3時間ぐらいかけたことある、あったらしくて、編集とかで。でもそれをやっぱり全員気づいていて。
宮武さんによると、時間をかけたこと自体は知られなくても、その部分のクオリティの高さに気づく人は本当に気づいてくれます。自身も動画編集を少し経験したことがあり、こだわり出すと終わらない大変な作業だと話しました。
そのうえで宮武さんは、ポッドキャストやnoteの編集を担う草野さんの仕事を「超ハードな仕事」とねぎらいます。そして、エディターという職種の需要は今後世の中でかなり増えると予想し、アメリカではYouTuberやクリエイターがみな編集者やディレクターを欲しがっていると紹介しました。
Off Topicはメディアなのか、マネタイズはしないのか?
宮武さんのやってみたいことは、よく聞かれる2つの質問とつながっています。「Off Topicはマネタイズしないんですか」「Off Topicってメディアなんですか」という問いです。
草野さんによると、Off Topicとは何かを二人はこれまで定義してきませんでした。宮武さんは、定義しないほうがいいと考えています。
宮武さんは、今はメディアっぽい活動をしているものの、メディアではない動きをしてもいいと話します。Off Topicの立ち位置はクリエイターだと捉えていて、コンテンツ制作に加えて、グッズ化、コミュニティづくり、ファンとの1対1の対話などの機会を作ってみたいといいます。
宮武さんは、2020年の目的は認知を上げることだったと振り返ります。来年は認知を上げつつ、ファンとの距離を縮めるエンゲージメント ── ファンやユーザーとのつながりの深さを指す言葉。コメントや参加など、双方向の関わりの度合いを表すことが多いですも心がけたいと話しました。
2020年: 認知を上げること
来年: 認知を上げつつ、ファンとの距離を縮めるエンゲージメントにも取り組む
結局こっちが一方的に今話してる感覚になっちゃってるので、逆になんかリスナーとかの意見を聞いたりとか。
宮武さんは、リスナーの質問に答える機会を増やしたり、イベントを開いたりすることも考えています。草野さんは、ZOOMで一度ライブ配信をしたことを思い出し、ZOOMでは「ビデオ電話してるだけ」という感じでやりにくかったと振り返りました。
今回は二人が同じ場所で収録していることから、草野さんは同じ場でのライブ配信に「もう一回チャレンジしたい」と話しています。最後は、これからもいろいろな形でOff Topicを知ってもらえたら嬉しいと、リスナーへの感謝と応援のお願いで締めくくられました。
まとめ
2020年のOff Topicは、発信チャネルを広げ、ポッドキャストアワードのノミネートやBLMの記事を通じて多くの人に知られた年でした。二人は、プラットフォームに合わせたコンテンツづくりと、盛り上がる前の場所を探して試す姿勢を大事にしながら、来年はファンとの距離を縮める取り組みに力を入れたいと語っています。
- 2018年11月にポッドキャストとTwitterで始まったOff Topicは、2020年にnote、Instagram、YouTubeへ活動を広げた
- BLMの記事は意見記事になることから公開を迷ったが、草野さんの後押しで公開し、警察の軍事化を扱うフォローアップ記事にも手応えがあった
- 宮武さんは、プラットフォームごとにコンテンツを変え、まだ盛り上がる前の場所を探して試すことが重要だと考えている
- 編集にかけた手間はファンに伝わり、今後は編集スキルの需要が高まると宮武さんは予想している
- Off Topicはあえて定義せず、来年は認知に加えてエンゲージメントを高め、ファンとの対話やイベントにも挑戦したいと話している





