Podcastが流行っている3つの理由とは?
草野さんは、2019年は音声メディアがこれまで以上に盛り上がると見ています。きっかけとして挙げたのは、AppleがiTunesをMusic、Podcast、TVの3つのアプリに分割し、それぞれに注力すると発表したニュースです。
草野さんは、iTunesの分割でPodcastを聴く人がさらに増えるのではないかと話します。Off Topic自身も、これまでiTunesを開かないと聴けなかった配信が、PCのブラウザから聴けるようになったことを喜んでいました。
宮武さんは、各社が音声メディアに力を入れている印象があると続けます。特にSpotifyとAppleの動きが目立ち、SpotifyはAnchor ── Podcastの収録・編集・配信をスマホで手軽に行えるアメリカのサービス。2019年にSpotifyが買収しましたとGimlet ── オリジナルのPodcast番組を制作するアメリカの制作会社。2019年にSpotifyが買収しましたを買収しています。
そのうえで草野さんは、Podcastが流行っている理由を3つに整理します。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 聴く手軽さ | AirPodsなどBluetoothイヤホンの普及で、物理的に音声を聴くのが楽になった |
| 配信の楽さと汎用性 | テキストや動画の編集より手軽で、動画やテキストにも置き換えられる |
| メディアとしての伸びしろ | 音声ドラマのような高品質なコンテンツがこれから増えていく |
2つ目の配信の楽さについては、宮武さんも「書くの結構めんどくさいので、ポッドキャストだったら楽だな」と同意しています。草野さんは、Podcastを「話をしてコンテンツになる」素敵なメディアだと表現しました。
3つ目の伸びしろの例として草野さんが挙げたのが、リード・ホフマンのMaster of Scale ── LinkedIn共同創業者のリード・ホフマンがホストを務めるPodcast。起業家へのインタビューを通じて、事業を大きくする方法を探る番組ですです。この番組では、インタビュー中に「カフェに入って」という場面が出てくると、カフェの音が流れる演出があるといいます。
(カフェの場面では)周りでちょっとワチャワチャしてる音とかで、カフェ感を出すみたいな感じですね。
草野さんは、これまでのラジオやPodcastが「後ろに音楽を入れるぐらい」のコンテンツだったのに対し、音声ドラマに近いハイクオリティなものがどんどん出てくると見ています。コンテンツの質が上がれば、ビジネスも加速するという見立てです。
宮武さんは、Gimletを「Podcast版のNetflix」に近い存在として捉えています。Netflixの将来像が自社で全部オリジナルコンテンツを作ることだとすれば、自社制作の多いGimletはそこに近いという理由です。
宮武さんが面白いと感じているのは、音声メディア自体はラジオとして昔からあるのに、ラジオは特に何も変わってこなかったという点です。映画からYouTubeやミニコンテンツへと動画が先に変わり、ようやく音声が追いついたと話します。
宮武さんによれば、Podcast自体は2004年ごろ、iPhoneが出る前から「オーディオブログ」のような形で始まっています。普及したのは、AppleがiTunes StoreにPodcastを載せてからだといいます。
昔のPodcastは何人かが適当に話すラジオと変わらないものでしたが、最近はコンテンツの質がめちゃくちゃ上がっていると宮武さんは話します。Spotifyのオリジナルシリーズも増えており、あとはマネタイズが追いつけば、面白い業界が生まれるのではないかと見ています。
米国では殺人事件のPodcastが人気、その背景は?
草野さんは、中国でも音声メディアが流行っていると紹介します。詳しくはないと断ったうえで、Himalaya ── 中国の音声配信プラットフォーム「喜马拉雅(シマラヤ)」。有料の知識・学習系コンテンツが多いことで知られていますというアプリでは学習系のコンテンツが特に人気だと聞いたそうです。
さらに草野さんは、アメリカにはPodcastを熱狂的に好む層が1600万人ほどいるという話も挙げます。Fast Companyで読んだ記事では、活字中毒のように、ずっと音声を聴いていないとダメだという人たちが描かれていたといいます。
動画なんか半分見ながらなんか作業やるっていう感じが、多分音声が一番やりやすいですよね。
宮武さんは、コンテンツの種類に国ごとの違いがあると指摘します。日本や中国では教育系が多いかもしれない一方で、アメリカではエンタメの要素が強いという見方です。
教育系・学習系のコンテンツが多い。中国のHimalayaでは学習系が人気
ドラマシリーズ、ミステリー、実際の殺人事件の真相など、エンタメ要素が強い
アメリカで流行っている例として宮武さんが挙げたのは、実際の殺人事件をもとに、裏で何が起きたのかを掘り下げる番組です。未解決事件がなぜ解決されなかったのか、今振り返れば解決できたのではないか、といった話をするケースも多いといいます。
草野さんは、チャット形式の小説アプリを見ても、日本のバルーンなどと比べてアメリカはホラーが好きな印象があると話します。宮武さんも、テレビドラマのCSIが大好きな人が多いことを挙げ、アメリカではノンフィクションも好まれていると応じました。
アメリカで事件ものが受ける理由について、草野さんは「事件に対するジャーナリズム精神が、アメリカのほうが受け入れられている感じがする」と自分の意見として述べます。宮武さんは、アメリカでは事件の規模や数が多く、学校での銃撃事件などがよく取り上げられることも理由の一つではないかと加えました。
日本のPodcastはなぜラジオに置き換わらないのか
宮武さんが疑問に感じているのは、日本ではいまだにラジオが大きく、Podcastに置き換わりそうでなかなか置き換わらないことです。
草野さんは、日本の深夜ラジオをよく聴くリスナーです。オールナイトニッポンやJUNKのような深夜1時から5時ごろの枠は、若手俳優や中堅の芸人が担当しますが、そこに入れるのは5組ほどに限られているといいます。
(深夜ラジオの枠は)限られてますよね。時間がもう設定されてますし、チャネルもそんなにラジオチャネルってないんで。
そこで草野さんは、ラジオの枠に入りきれなかった人気の配信者が出る「Podcast版のNetflix」のような有料サービスがあれば、めちゃくちゃ課金する人がいるのではないかと考えます。日本には有料の音声サービスはまだないのでは、という認識です。
日本の音声メディアとして名前が挙がったのは、VoicyとRadiotalkです。草野さんが感心したのは、Radiotalkでは日本語の音声に字幕を付けた動画を作り、SNSで配信できる点でした。
Off Topicが使っているAnchorでも、英語なら冒頭の発言に字幕を付けた動画をSNS向けに作れます。ただし日本語には対応していないと、2人は確認し合っています。
ただ(字幕機能を)Anchor上で一回試したことあるんですけど、まあまあきつかったです。結構間違ったりするので。
宮武さんによれば、英語でも名前を出したり、早口で話したり、2人が同時に話したりすると変になり、結局は編集が必要になるそうです。自身のバスケの投稿でも試したものの、うまくいかなかったといいます。
それでも宮武さんは、NLP ── 自然言語処理(Natural Language Processing)の略。人間の言葉をコンピューターで解析・生成する技術の総称ですの精度が上がればどんどん良くなると見ています。将来は有名人の名前に合わせて写真を出す、音声から動画や記事、サマリーを自動で作る、といった方向にAnchorやRadiotalkが進むのではないかと話します。
(トークから)勝手に記事コンテンツとか、勝手にいろんなマイクロコンテンツを作れるっていうのは、なんか将来的に見える世界かなっていうふうに思いますね。
a16zのレポートが示すPodcast市場と、Disneyの可能性
次に2人が取り上げたのは、有名なVCであるアンドリーセン・ホロウィッツ ── シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル。略称はa16z。テック企業への投資に加え、業界分析のレポートやPodcastも発信していますが出した、アメリカのPodcastエコシステムについてのレポートです。
宮武さんによると、レポートにはPodcastリスナーが1週間に平均6時間以上Podcastを聴いていることや、週に7話ほどエピソードを聴いていることなど、市場の大きさを示すデータが載っています。どんなアプリが流行っていて、どんなプレイヤーがいるかも説明されているといいます。
市場で最も大きいのはApple Podcastですが、宮武さんはSpotifyが追いついてきていると見ています。作成・配信ツールのAnchorに加え、オリジナルコンテンツに力を入れるためGimletを買収し、もう1社も買収していたはずだと話しました。
宮武さんはここでもNetflixを引き合いに出します。Netflixは既存の映画のレンタルから始まり、今では自社コンテンツを作ってIPの獲得に力を入れています。
Podcastでも、3年から5年後ぐらいには自社コンテンツへの投資を大きく行う会社や、DisneyのIPを取りにいって大金を払う会社が出てくるかもしれない、と宮武さんは見ています。今年自社のストリーミングサービスを出すDisneyが、音声のストリーミングを一緒に出す可能性もあるといいます。
子供向けキッズ向け音声。ディズニーってめちゃくちゃ良くないですか?
草野さんは、寝る前に流しておく使い方を思い浮かべます。宮武さんも、子どもがテレビを見る量を減らしたい親にとって良いのではないかと応じました。
宮武さんによれば、絵本の読み聞かせやインタラクティブなストーリーは実際に少しずつ増えています。Netflixでも見られる、途中で2択や3択を選んでエンディングが変わる形式は、音声のほうがやりやすいといいます。
(スマートスピーカーと一緒にやると、)結局スマホでも同じことできるんで、特に多分子供とかだとそういうのが面白かったりするかもしれないんで。
Podcast広告はなぜまだ小さいのか?
草野さんは、海外のPodcastには広告が多いものの、うるさく感じる広告ではないと話します。音声広告の市場はいいと感じたそうです。
宮武さんは、音声広告はこれから大きくなるとしたうえで、現状ではラジオと比べて広告の量も時間も圧倒的に少ないと指摘します。もう一つの課題が、広告の分析の仕組みがほとんどないことです。
宮武さんが挙げたのは、広告が本当に購入などの行動につながったかを測るアトリビューション ── 広告などの施策が、購入や登録といった成果にどれだけ貢献したかを分析すること。広告の効果測定で使われる考え方ですです。Podcastでは、これがまだうまくできていないといいます。
今のPodcast広告の値付けと、広告主が本来求める指標の違いを、宮武さんはアプリ広告と比べて説明しています。
エピソードのダウンロード数に応じて料金が決まる。ちゃんと聴かれたかもわからない
[CPI]のように、広告を見てインストールされた数など、広告主が求める行動をもとに料金が決まる
宮武さんは、ダウンロード数による値付けを「昔のインプレッション数でお金を取っているのと同じ」と表現します。今後は中身のデータをもとに、より良い広告の仕組みができるのではないかと見ています。
余談として草野さんは、海外のYouTuberやPodcastで必ずといっていいほどSquarespaceの広告を見かけると話します。宮武さんは、Podcastを聴いている層の属性が、Squarespaceの狙う層にたまたま合っているのかもしれないと推測しました。
宮武さんは、アメリカ出張中にUberの車内のラジオでメルカリの広告を聴いたそうです。そうした広告をPodcastに出すのもありだと話し、草野さんはメルカリとアメリカで人気のこんまりさんが組めば相性がいいとずっと思っている、と付け加えました。
Adobeのデモはなぜ世に出ないのか?合成音声の可能性
草野さんは、Radiotalkでは声を少しだけ変えられると紹介します。まだ使ったことはないそうですが、音声は声そのものも変えられるという意味で、大きな可能性があると感じています。
宮武さんは、好きなキャラクターの声でニュースを聴くといった使い方もあり得ると話します。特に日本には声優文化があるので、そことうまく連動できるのではないかという見方です。
一方で宮武さんは、セレブの声を勝手に作れる技術も広がっていると指摘します。有名な例が、オバマ元大統領の声でトランプ大統領について語らせるものです。
オバマもうフリー、フリー素材かってぐらい使われてますよね。
宮武さんによると、こうした技術は2018年や2019年の盛り上がりより前、2016年ごろから大企業が発表やデモをしていました。ところがその後は静かになっていて、どうなっているのか気になっているといいます。
例として挙げたのが、Photoshopで知られるAdobeが、画像ではなく声の編集ツールとして見せたデモです。録音した声を文字にして画面に表示し、そこを編集すると声そのものが変わる仕組みでした。
録音
誰かの声でセリフを録音する
文字化
話した英語の内容が文字で表示され、それが編集画面になる
単語の入れ替え
「犬」と「猫」を入れ替えるなど、つなぎ目を自動で滑らかにする
タイプで発話
文字を打ち込むと、録音していない言葉もその人の声で話させられる
宮武さんが不思議に思っているのは、デモが成功していたのに、Adobeがその技術を一切世に出していないように見えることです。自分が聞いていないだけかもしれない、とも断っています。
Adobeは、本物の声とそうでない声を区別できるウォーターマークも用意できると話していたそうです。オバマ元大統領の声で変なことを言わせても、ディープフェイク ── AIを使って、実在の人物の顔や声を本物そっくりに合成する技術、またはそれで作られた偽の映像・音声のことのような偽物だとすぐわかる仕組みです。
なんでそれが世の中にあんまり出てないんだろうっていうのはちょっと不思議でしたね。でもそういう技術はどんどん増えてくると思うので。
宮武さんによると、Adobeのデモ動画はYouTubeで公開されていて、2016年のカンファレンスで発表されたものだそうです。動画の長さについては、話の中で20分間とも7分ぐらいとも言っています。草野さんは、これまでも話題にした記事を概要欄に貼ってきたが、もっとエピソード内で案内すべきだと気づいたと話しました。
最後に2人は、リスナーともっとコミュニケーションを取りたいと呼びかけます。話してほしいトピックや質問、インタビューしてほしいゲストがあれば、TwitterのOff Topicアカウント(@OffTopicJP)へメッセージを送ってほしいとのことです。
まとめ
この回では、Podcastの盛り上がりを、聴く手軽さ、配信のしやすさ、コンテンツの伸びしろの3つから整理しました。そのうえで、米国と日本の違い、広告モデルの未成熟さ、合成音声技術の可能性まで、音声メディアの次の展開が語られています。
- AirPodsの普及、配信の楽さ、高品質化の余地が、Podcastが流行る理由として挙げられた
- 米国では実際の事件を扱うノンフィクションなどエンタメ系が人気で、日本ではラジオの枠からこぼれた人気配信者を有料で聴けるサービスに可能性があると話された
- SpotifyのAnchor・Gimlet買収のように、Netflix型の自社コンテンツ投資やDisneyのIPを生かした子ども向け音声が今後の焦点になり得る
- Podcast広告はダウンロード数ベースの値付けにとどまり、効果測定の仕組みづくりが課題とされた
- Adobeが2016年に披露した、文字入力で声を作れる技術がなぜ世に出ていないのかを、宮武さんは不思議に感じている




