5月のOpenAIはなぜニュースが止まらなかったのか
5月のテック業界では、MicrosoftのイベントやGoogle I/Oのほか、FigmaやStripeのカンファレンスも開かれました。Fortniteの復活などもあるなかで、宮武さんは今回のテーマにOpenAI周りを選んでいます。
宮武さんによると、OpenAIはここ数か月ずっとニュースになっていて、5月は特にその傾向が強かったといいます。まず、非営利団体のOpenAIが営利団体になろうとしていた計画は難しくなりました。
その結果、OpenAIはPublic Benefit Corporation ── 公益法人(PBC)。営利企業でありながら、株主利益だけでなく定款に掲げた公共の利益の追求も義務づけられる米国の会社形態という形に落ち着いたと宮武さんは説明します。法人ではあるものの、非営利の目的をしっかり持つ形です。
同じ時期にOpenAIは、AIコーディングツールのWindsurfを約30億ドルで買収しました。元InstacartのCEOであるフィジー・シモさんをヘッド・オブ・アプリケーションとして迎え、宮武さんはこれを大きな採用だったと見ています。
さらにOpenAIは、FDA(アメリカ食品医薬品局)と創薬プロセスでのAI活用について話していたり、AIデータセンター計画Stargateの発表を重ねたりしていました。
宮武さんは、これらの中でシリコンバレー内で一番話題になったのが、ジョニー・アイブさんの話だと続けます。
ジョニー・アイブと「io」、合併で何が起きたのか
宮武さんの説明では、ジョニー・アイブさんは2年ほど前に、元Appleのスコット・キャノンさん、エヴァン・サンキーさん、タン・タンさんとともにioという会社を立ち上げました。3人ともアイブさんの配下で働いていた人で、特にサンキーさんとタンさんは有名な人物だといいます。
3人はもともと、アイブさんが率いるデザイン会社LoveFromに参加していました。今回のOpenAIとioの合併は、名目は合併でも実質的には買収で、規模は65億ドルです。
この合併を通して、ジョニー・アイブさん以外のioのメンバーは全員OpenAIの従業員になりました。
なぜアイブさんがこの道を選んだのかについて、宮武さんはLoveFromとAppleの関係に触れます。LoveFromはもともとAppleとコンサル契約を結んでいましたが、2022年ごろ、サム・アルトマンさんと会う1年ほど前にその契約が終わりました。
その契約には、LoveFromがAppleと競合する商品のクライアントワークをしてはいけない、という条件が入っていたといいます。宮武さんは、次の新しいコンピューティングデバイスを作りたいというアイブさんの考えが、今回の展開につながったのではないかと見ています。
65億ドルは高いのか、それとも安いのか
草野さんは、テクノロジー系ハードウェアのレジェンドデザイナーとはいえ、すごい金額だと感じたといいます。そのうえで、ジョニー・アイブさんにそれだけの価値があると思うかと宮武さんに尋ねます。
宮武さんは、65億ドルは高く見えるものの、アイブさんと55人の従業員が対象であることに注目します。平均すると、1人あたり1億1800万ドルを払っている計算です。
比較対象としてはあまり適さないと断りながら、宮武さんは過去の買収を挙げます。FacebookがInstagramを買収したときは10億ドルで13人、1人あたり7700万ドルでした。WhatsAppは190億ドルで55人、1人あたり3億4500万ドルです。
| 案件 | 買収額 | 人数 | 1人あたり |
|---|---|---|---|
| OpenAIのio合併 | 65億ドル | 55人+アイブさん | 1億1800万ドル |
| FacebookのInstagram買収 | 10億ドル | 13人 | 7700万ドル |
| FacebookのWhatsApp買収 | 190億ドル | 55人 | 3億4500万ドル |
こうして並べると、ioの金額はめちゃくちゃ高いわけではない、というのが宮武さんの見立てです。ioにはまだプロトタイプしかないので評価の難しさはあるものの、次世代デバイスを本当に作れるなら正直安いと話します。
でもなんかこれっていわゆるそのゼロになるか、OpenAIの時価総額を10倍にするかっていう話だと思うんですよね。
宮武さんによると、OpenAIの直近の評価額は3000億ドルです。65億ドルは株式で支払われていて、OpenAI全体の2.1%ほどをioのチームに渡した計算になります。
宮武さんは、全体の2%ほどで時価総額10倍の可能性を買うのであれば、悪くない賭けだと考えています。
LoveFromとio、2つの会社はどう分かれたのか
草野さんは合併に前向きな立場です。LoveFromにはUIデザイナーやハードウェアデザイナーだけでなく、アーティストやミュージシャンなど多様な人がいることに注目しています。
いろんな角度からデザインできるデザインコレクティブっていうのは、すごくなんかどういうものができるんだろうっていうのは楽しみです。
一方で宮武さんは、LoveFromとioの関係がややこしいと補足します。LoveFromは別会社として存在し続けていて、ioとどこまでメンバーが重なっていたのかは正直よくわかっていないといいます。少なくとも、何人かのキーメンバーは両社に関わっていました。
ioはOpenAIの配下に入りました。LoveFromは別会社のままですが、新規クライアントは基本的に取らない条件になっています。AirbnbやFerrariといった既存クライアントの仕事は続けるものの、今後はOpenAI全体のデザインやクリエイティブをLoveFromが担当します。
その引き換えに、LoveFromはOpenAIの株式を受け取ります。宮武さんの整理では、ioの55人はデザイナーやハードウェアエンジニアなど、プロダクト作りに長けた人たちが中心です。
ioには株主もいて、スティーブ・ジョブズさんの妻であるローレン・パウエル・ジョブズさんのほか、Sutter Hill、Thrive Capital、SBエンジェル、Maverick Capitalなどが入っていたといいます。宮武さんは、多少なりとも儲かったVCもいるはずだと話します。
ioはすでにAIデバイスのプロトタイプを作ったと、9分の発表動画の中で語っていました。その後、サム・アルトマンさんが従業員に合併について話した際も、本当にすごいプロダクトだという反応だったそうです。
出回るデバイス画像は本物なのか
期待は大きいかと草野さんに問われ、宮武さんは当然期待大だと答えます。ただ、事前にここまで言ってしまえば期待大になるしかない、とも付け加えています。
なんか出回ってる画像はあれAI生成のものなので、皆さんそこはちょっと気をつけてください。
草野さんも、ペンダント型や、丸みのある形にOpenAIのロゴが入った画像がたくさん出回っているのを見ていました。一瞬リークかと思ったものの、さすがに違うと気づいたといいます。
(出回っている画像は)そのまますぎだろって。
こんなデザインさすがにジョニーアイヴさんやらないだろうなって思っちゃいましたもんね。
宮武さんによると、サム・アルトマンさんはこのデバイスを「第3のコアデバイス」と表現していたようです。パソコン、スマホに続くもので、首にかけられ、マイクやカメラも付いているという話があります。
ただし宮武さんは、実際にはもっと音声ベースのものになるのではないか、という見方がよく語られていると紹介しています。
これまでのAIハードウェアはなぜうまくいかなかったのか
草野さんは、Humaneなどのこれまでの製品は、良い点もありつつあまりうまくいかなかった印象だと話し、その理由を宮武さんに尋ねます。
宮武さんは代表例として、HumaneのAI PinとRabbit R1を挙げます。まず問題になるのがフォームファクターで、音声デバイスになった瞬間に避けられない課題が出てくるといいます。
何を聞けばいいかわからないっていうのは、おそらく今回のそのOpenAIの出すやつでも、なんか同じような課題っていうのが出てくるのかなと思うので。
草野さんも、AppleのHomePodやGoogleのデバイスでさえ、結局は天気を聞いたり音楽を流したりする程度で終わっている、と同意します。
宮武さんは、音声デバイスは本当はもっといろいろなことができるのに、何を聞けばいいかわからないことがUI・UXの課題になっていると指摘します。加えて、反応のスピードの問題も必ず出てくるといいます。
AI Pinにはプロジェクターのような機能もありましたが、環境によって使えるかどうかが変わります。それなら画面を見たほうが早い、となってしまうと厳しい、というのが宮武さんの見方です。
何を聞けばいいかわからない
機能はあっても使い道が見えない
反応が遅い
スピード感の問題が出る
使える環境が限られる
プロジェクターなどは場面を選ぶ
画面のほうが早い
結局スマホに戻ってしまう
だからこそ宮武さんは、全く違うUI・UXを提供しないといけないと結論づけています。
OpenAIのデバイスはどんな形になりそうか
理想でもいいのでどんなものだと思うかと草野さんに聞かれ、宮武さんは、ioが複数のプロダクトを作っているらしいことに触れます。その一つがAIの「パッド」のようなもので、宮武さんはむしろそちらが気になっているといいます。
(パックのようなものを置くと)多分イヤホンとつなげられると思うんですけど、なんかプライバシーある形でAIから声かけてもらう方がいいと思うんですよね。
宮武さんのいうプライバシーとは、周りに聞こえないようにすることです。さらに、ユーザーが話しかけるのではなく、AIのほうから声をかけてくれるパターンを作ることが大事だと考えています。
草野さんは、以前の回でも触れた映画『Her』のデバイスを挙げます。名刺入れほどのカードホルダーのような形で、パカっと開くと文字が出て、カメラも付いていて、ポケットにも入れられるものです。
草野さんはもう一つ、ハリー・ポッターに出てくるトム・リドルの日記がChatGPTっぽい、という以前の話も持ち出します。紙っぽい、少し昔風のデバイスとAIを掛け合わせると、人っぽさが出て、実際に対話している気持ちになれるのではないかと話します。
文字が浮き上がってくるとか、ちょっと本っぽい感じとかはなんか面白いんじゃないかなと思います。
宮武さんは、音声だけでなくテキストなど複数の手段でやり取りできることも大事だと応じます。スマホと連携するという話もあり、マーベル作品のJARVISのようなものを想像しているのではないか、と見ています。
草野さんは、ペンダント型は日常的に身につけられるかという見た目の面で難しそうだと話します。宮武さんも、常に会話を聞いているのかといったプライバシーの課題を挙げます。
宮武さんは、ペンダント型があってもいいとしたうえで、ポケットに入れてイヤホン越しに自分だけが聞く形のほうが、プライバシー面では受け入れられやすいのではないかと考えています。
首にかける。見た目の違和感や常時録音へのプライバシー懸念がある
自分にだけ聞こえる。AIから声をかけてもらいやすく、プライバシー面で受け入れられやすい
ジョニー・アイブは「今さらのレブロン」なのか
宮武さんは、今回の合併をめぐってシリコンバレーでさまざまな議論が起きたと紹介します。アイブさんがAppleへの不満をひたすら語っていたのではないか、という見方もありました。
アイブさんは、今のコンピューティングデバイスは何十年も前に作られたものだ、という趣旨の発言もしていて、Appleがまだ新しいものを作れていないという話にもつながっています。
一方で、この価格が正しかったのかという疑問もあります。宮武さんによると、アイブさんは今58歳ほどで、iPhoneやiPad、Apple Watchほど画期的なプロダクトをもう一度作れるのか、と問う声が出ています。
よくこれ、あのTwitter上で皆さん言ってましたけど、なんか今更レブロン・ジェームズを取りに行ってもっていう話で。
レブロン・ジェームズ ── NBAを代表するバスケットボール選手。長年トップで活躍してきたレジェンドで、キャリア終盤の年齢に差し掛かっていることから、この比喩が使われていますの例えは、レジェンドではあるものの年を取りすぎているのではないか、という指摘を表しています。
草野さんは、代わりになる人は誰だろうと考えると思いつかないと話し、宮武さんも正直あまりいないと答えます。
なぜ優秀な人材とチームにはお金を出すべきなのか
宮武さんは前向きな面として、会社にはアイブさん以外に55人の優秀な人材がいることを挙げます。ほとんどが元Appleの人だと見られ、コストは高く見えても、成功したときのリターンがとても大きいといいます。
その例として宮武さんが挙げるのが、AppleによるNeXTの買収です。スティーブ・ジョブズさんをCEOとして復帰させるきっかけになった買収で、当時はかなりバカにされていたと宮武さんは話します。
宮武さんは、払いすぎたとしても、その分のリターンがある可能性がある、という考え方は間違っていないと話しています。
宮武さんが評価するもう一つの点は、チームの仕組みです。Apple社内では、アイブさんが見ていたインダストリアルデザインチーム(IDチーム)がとても重要な部署でした。
IDチームは15〜25人ほどで、アイブさん自らが選んだ人たちが、ずっとプロトタイピングをしていたといいます。その下に、方向性に沿って実際に作れるか、量産できるかを担うハードウェアやソフトウェアのチームがありました。
宮武さんは、ioもそのままこうした形のチームを持ち込み、OpenAIで実装させようとしているのではないかと見ています。個々の人材だけでなくチーム全体の仕事のあり方も評価できる点だ、というのが宮武さんの考えです。
草野さんが来年の発表を楽しみにすると、宮武さんも、おそらく来年、夏ごろに出てくるかもしれないと応じています。
次の時代は「Meta対OpenAI」になるのか
宮武さんは、OpenAIのデバイスが次世代のものになれば、競争の構図が大きく変わると話します。草野さんも、Appleにとっては結構変わりますよね、と反応します。
宮武さんによると、PCの時代はMicrosoft対Appleで、オープン対クローズドの戦いでした。モバイルの時代はGoogle対Appleでした。
多分みんなその次の時代が、なんかMetaVSAppleになるみたいなことを想像してたんですけど、もしかしたらMetaVSOpenAIになるかもしれないっていう。
草野さんが「Appleは終わり?」と驚くと、宮武さんは可能性はゼロではないと答えます。ただ、Appleは強い流通力を持つ会社で、優秀な人材も残っているので、何とも言えないとも付け加えています。
宮武さんの見立てでは、新しいコンピューティングデバイスを本気で作ろうとしている会社はまだ少なく、そこにOpenAIが思った以上に入ってきました。OpenAIはAIの記憶やアイデンティティの領域も押さえようとしていて、そこにハードウェアが加わればいいものが作れる可能性があるといいます。
アイブさんを採用したOpenAIは、Appleのようなクローズドなエコシステムに近づくと宮武さんは考えています。それに対抗し、よりオープンな戦い方をしようとしているのがMetaではないか、という整理です。
草野さんは、MetaのRay-Banのようなハードウェアはある程度成功しているものの、AIデバイスとしてはまだ出ていない気がすると話します。宮武さんは、もともとメタバースの文脈だったRay-Banのデバイスも、マーク・ザッカーバーグさんなら今はAIウェアラブルと呼ぶだろうと応じます。
スティーブ・ジョブズはなぜSiriに執着したのか
宮武さんは、Appleにとってもこの領域はとても勝ちたい分野だと話し、スティーブ・ジョブズさんが昔からSiriを気にかけていたエピソードを紹介します。Siriはもともと買収によって導入された機能です。
宮武さんによると、ジョブズさんは検索エンジンが嫌いでした。人は自分が欲しいものを自分ではわからない、という思想を持ち、それをきちんとキュレーションしてあげることがAppleの仕事だと考えていたようです。
宮武さんの話では、2010年代の中盤ごろ、AppleはiPhoneのホーム画面の上に検索ボックスを置くことを考えたことがありました。しかしデザインチームが絶対にやらないと反対し、結果として右スワイプで出てくる形になったといいます。
ジョブズさんは、Siriがあれば検索のようなものは必要なくなり、ユーザーに合わせた情報が勝手に出てくるようになる可能性を強く信じていたそうです。
そこでジョブズさんは、Siriのアプリを使い始めて間もなく創業メンバーを自宅に呼び、3時間ほど話して「買収させてくれ」と頼みました。創業者たちは一度断ります。
スティーブ・ジョブズが次の24日間連続毎日連続で、電話して、「買収させてくれ、買収させてくれ、買収させてくれ」っていうのを言って。
最終的に創業者たちはOKを出しました。草野さんは、Siriはジョブズさんが本当に欲しかった機能の一つだったのだと受け止めています。
草野さんは、Siriは音声アシスタント以外の部分ではかなり浸透していると指摘します。Spotlightやバックグラウンドでのおすすめ、音声入力などは精度が上がっているといいます。
宮武さんも精度向上には同意しつつ、AIアシスタントとしてのSiriにはまだ不満が多いと話します。社内の体制がうまく整っていないという報道も多く、Appleがどう動くかが気になっているといいます。
OpenAIはなぜ大手テック全方位に挑めるのか
宮武さんは、OpenAIはこれまでのテック企業と比べてとても幅広い動きをしている会社だと話します。ハードウェアだけでも、パーソナルデバイスでAppleと、人型ロボットでTeslaやFigureと競い合おうとしています。
LLMの領域には大手が多いうえ、OpenAIは検索でGoogleやPerplexityと、コマース機能でAmazonと競おうとしています。ソーシャルフィードの構想でMetaやXと、データセンターでMicrosoftやAmazon、Googleとも競合するといいます。
| 領域 | OpenAIの動き | 競合 |
|---|---|---|
| パーソナルデバイス | ioとのデバイス開発 | Apple |
| 人型ロボット | さまざまな検討 | Tesla、Figure |
| 検索 | 検索機能の提供 | Google、Perplexity |
| コマース | コマース機能の検討 | Amazon |
| ソーシャル | ソーシャルフィードの構想 | Meta、X |
| データセンター | データセンターの構築 | Microsoft、Amazon、Google |
なんかこれだけ幅広く大手テック企業に挑む会社って初めて見たなっていうふうに思いました。
草野さんは、サム・アルトマンさんだからできることでもあり、AI企業だからこそ、さまざまな分野に投資しても集まる情報で回収できるのではないかと話します。
宮武さんも、これだけ幅広く、しかもしっかり競合できるサービスを作れる会社が久しぶりに出てきたと応じています。
io合併は営利化のための布石なのか
宮武さんは、OpenAIがioを合併した理由の一部は、サム・アルトマンさんたちが非営利団体から営利団体に変えるための施策ではないか、という噂を紹介します。ただし宮武さん自身は、理論上は可能でも、それほど強い仮説ではないと考えています。
宮武さんの説明では、現在のOpenAIは非営利団体が全体をコントロールし、その配下に営利団体がある構造なので、この方法は無理です。しかしPBCへの転換後は、非営利団体が完全にコントロールするのではなく、PBCの株式の過半数を持つ形になります。
WindsurfとioはどちらもOpenAIの株式で支払われていて、新株を発行して渡したとすると、合計約95億ドル分、およそ100億ドル分の株が増える計算です。宮武さんは、そうなると全員の持ち分が希薄化 ── 新しい株式が発行されて発行済み株式の総数が増え、既存株主の持ち分比率が下がることすると説明します。
たとえば非営利団体が52%を持っていたとすると、今回の2件の買収で3%ほど希薄化する、というのが宮武さんの試算です。理論上は、営利側が過半数の株式を持つ可能性もあります。
株式で買収
Windsurfとioの対価を新株で支払う
新株発行
合計約100億ドル分の株が増える
持ち分の希薄化
非営利団体が52%持っていたとすれば3%ほど下がる
過半数割れの可能性
理論上は非営利団体が過半数を失い得る
ただし宮武さんは、この話は議決権を考慮していない点で違うのではないかと見ています。非営利団体は、株式とは別に議決権の過半数を持っている可能性もあるためです。
それでもこの噂が多く語られる理由として、宮武さんはサム・アルトマンさんが過去のRedditで似たことをした、という話を挙げます。
宮武さんによると、Redditは2006年にコンデナストに買収されました。YCの人たちや創業者は、売ったのは間違いだったと考え、コンデナストの持ち分を希薄化させる施策を打ったといいます。
具体的には、新しいCEOを雇う際に株を新たに発行して渡したり、従業員採用のための株式プールを新設したり、サム・アルトマンさん率いる投資家から追加で資金調達したりしました。
2006年の買収で、コンデナストが過半数の株主になる
新株発行や追加調達で、コンデナストは少数株主になり、CEOの席が創業者側に戻る
同じことが今回も起きるのではないかという見方に対し、宮武さんは、今のOpenAIのガバナンス構造では難しいのではないかと考えています。草野さんも、議決権の面で今回は難しそうだと受け止めています。
サム・アルトマン解任劇は何だったのか
草野さんは、以前サム・アルトマンさんが解任された件について、結局理由は何もわかっていないのではないかと尋ねます。
宮武さんは、調査もいろいろ出てきていて、解任に関わった役員の一部も話していると答えます。その人たちの主張では、報告すべきことを報告しなかった、OpenAIのファンドをアルトマンさんが自分の名前で作り、OpenAIが関わっていない状態があった、といった話があるといいます。
宮武さんによると、そのファンドは後に移管されたという話もあります。ほかにも、勝手に動いていたことや、安全面を一部無視して進めようとしたことなど、さまざまな主張が出ています。
宮武さんは、もしOpenAIが非営利団体から営利団体に変われば、大きな批判が起きるだろうと話します。非営利団体は税金を払わないので、誰もが同じことをしようとしてしまうからです。
そんなことができるんだったら、みんな非営利団体からスタートして、後々営利団体に転換しましょうみたいな。
草野さんが「節約できますね」と返すと、宮武さんも「節約いっぱいできますよね」と応じています。
最後に宮武さんは、OpenAIの買収はまだ続くかもしれないものの、ジョニー・アイブさんほどの買収はさすがにないだろうと話します。二人はX、あるいはPinterestのようなSNSを買収したら面白いかもしれない、と冗談めかして語り合い、回を締めくくっています。
まとめ
5月のOpenAIは、PBCへの転換やWindsurf買収などが重なり、なかでもジョニー・アイブさんのio合併が大きな話題になりました。宮武さんは、1人あたりの金額で見れば突出して高くはなく、次世代デバイスが実現すれば安い賭けだと評価しています。一方で、AI音声デバイスの使いにくさや、アイブさんの年齢、ガバナンスをめぐる疑問も語られました。
- io合併は65億ドル規模で、1人あたり約1億1800万ドル。InstagramやWhatsAppの買収と比べると突出して高くはない
- これまでのAIハードウェアは「何を聞けばいいかわからない」「画面のほうが早い」という壁に当たってきた
- 宮武さんは、プライバシーに配慮しつつAIから声をかけてくれるイヤホン連携型に注目している
- 次の時代の競争は、Meta対AppleではなくMeta対OpenAIになる可能性があると語られた
- io合併が営利化の布石という噂について、宮武さんは議決権の観点から強い仮説ではないと見ている





