Activision Blizzard買収とは関係ない?Microsoftを語る理由
今回のテーマは「Microsoftはなぜ強いのか」です。宮武さんは冒頭で、MicrosoftによるActivision Blizzardの買収がこの回のきっかけではないと断っています。Microsoftの話をしたいという構想は以前からあり、大型の買収がたまたま重なったため、このタイミングで扱うことにしたそうです。
草野さんによると、宮武さんは別の題材を用意していました。そこへ草野さんが「Microsoftのニュースの波に乗った方がいい」と提案し、テーマを差し替えた経緯があるといいます。Activision Blizzardの買収そのものは後編で扱う予定です。
前編の中心は、2014年にサティア・ナデラ ── 2014年からMicrosoftのCEOを務める人物。クラウド事業を率いた経歴を持ち、就任後に同社の方向性を大きく変えたとされますさんがCEOに就任してから、Microsoftが特に強くなった理由です。宮武さんがこの話をしたいと考えた直接のきっかけは、前年11月ごろにMicrosoftがNotionのクローンのようなツール「Microsoft Loop」を発表したことでした。
Off Topicではこれまで、Slackのプロダクトの良さや、SalesforceとSlackの組み合わせがMicrosoftに勝てる可能性を語ってきました。宮武さんは今回、そうした過去の議論に対して、あえて逆側の立場をとりたいと話しています。
今日はそこ(Slackなどの話)に対しての、カウンターポジションを出したいなと思ってて。
宮武さんの見立てでは、いまビジネスを一番うまく運営している会社を挙げるならGoogleが真っ先に来ます。そして2番目あたりにMicrosoftが入ってくるといいます。宮武さんは、番組でMicrosoftの話をあまりしてこなかったからこそ、この評価は重要だと考えています。
Netscapeはなぜ負けたのか。IE無料化というプラットフォームプレイ
宮武さんは、Slackは単体のプロダクトとしてはMicrosoft製品より良かったかもしれないのに、最終的には売却したと指摘します。そのうえで、MicrosoftがSlackをそこまで追い込めた理由を考えます。宮武さんによれば、こうしたパターンは珍しくなく、代表例がNetscapeです。
Netscapeは最初の商用ブラウザで、マーク・アンドリーセン ── Netscapeを生んだ起業家で、のちにベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzを共同創業した人物ですさんが作りました。宮武さんによると、Netscapeが上場した当時、ブラウザのシェアは7割ほどありました。
宮武さんは小学生のころ、学校のMacでNetscapeを使っていたそうです。一方の草野さんはNetscapeを使ったことがなく、普段はWindowsのInternet Explorerを使っていたと振り返っています。
Internet Explorerが入ってきたことで、Netscapeのシェアは上場から5年後に5%以下まで落ちました。宮武さんの説明では、Internet Explorerは当初は有料で、機能面でNetscapeと競っていました。そこでビル・ゲイツが方針を変えます。
最終的にビル・ゲイツが、「いや、機能ベースで戦うのは無駄だ」と。「Internet Explorerを無料にしよう」と。
ビル・ゲイツはさらに、Internet ExplorerをWindowsにバンドルしてデフォルトブラウザにしました。宮武さんは、これを「プラットフォームプレイ」によってNetscapeを潰した事例だと説明しています。この件でMicrosoftは訴訟を受け、会社を2つに分割される寸前まで追い込まれますが、その話は後編に回されました。
機能で競争
Internet Explorerは当初有料で、機能面でNetscapeと戦っていた
無料化
ビル・ゲイツが機能競争をやめ、Internet Explorerを無償にした
Windowsにバンドル
Windowsに組み込んでデフォルトブラウザにした
シェアの逆転
Netscapeは7割ほどあったシェアを失い、上場5年後には5%以下になった
宮武さんは余談として、Netscapeがいまどこにあるかもクイズにしています。NetscapeはAOLに買収され、AOLがベライゾンに買収されたことで、ベライゾンの傘下に入りました。その後、ブランドと、技術やIPが分かれます。
技術とIPを持つ別会社が「New Aurora Corporation」で、AOLはこの会社をMicrosoftに売却しました。Microsoftはさらにそれを売却し、現在はFacebookの傘下にあるといいます。Facebookがどう活用しているかは宮武さんにもわからないそうです。
思った以上に変なところにありますね。
ZoomとTeamsの戦いでも繰り返される「Netscapeのパターン」
宮武さんは、Netscapeのパターンが別の領域でも繰り返され始めていると見ています。Slackの前に例として挙げたのがZoomです。MicrosoftはもともとSkype ── Microsoftが2011年に買収したビデオ通話サービス。個人向けの通話アプリとして広く使われていましたを持っていましたが、Zoomはコロナの影響もあり、予想以上に成長しました。
宮武さんによると、Microsoftはもともと主にSlackと戦っていて、Zoomはそこまで意識していませんでした。Zoomが急成長したことで戦略をシフトし、Teamsのビデオ通話機能を強化してZoomへの対抗を強めたといいます。
一方のZoomについて、宮武さんは最近は株価が落ちていて、コールセンター事業などの新しいビジネスチャンスを探していると紹介しています。草野さんは、Zoomで外部アプリが増えたことにも触れました。
草野さんは、日本ではTeamsを使う人もZoomを使う人も多いと感じていて、テック業界以外も含めた全業界でどちらがシェアを持っているのかが気になると話します。宮武さんは、もともとMicrosoft製品を導入している企業が多い点で、Teamsはやはり強いと答えています。
Slackが売却を選んだ3つの課題
宮武さんは、Teamsに見られるような「すでに導入されていること」の強さが、Slackの売却にもつながっていると考えています。SlackがSalesforceに売却した理由は、Microsoftに対抗するうえでの課題だったという見方です。
1つ目の課題はエンタープライズセールスです。宮武さんによれば、Microsoftはエンタープライズセールスのチームが非常に強く、大企業はほぼすべてOffice 365を使っています。Office 365などを売ってきた関係で、Microsoftのチームは大企業のIT部門と仲がいいといいます。
Slackはそうした関係を一から作らなければなりませんでした。創業者のStewartさんも、自らエンタープライズセールスは得意ではなかったと語っているそうです。草野さんが「もともとゲームを作ろうとしていた人ですね」と補うと、宮武さんは、だからこそエンタープライズのパイプラインを持つSalesforceを選んだのではないかと話しています。
2つ目の課題は、Slackに生産性ソフトウェアがなかったことです。MicrosoftにはWord、Excel、PowerPointがあります。宮武さんによると、Slackは売却前にSalesforceへQuip ── Salesforceが2016年に買収したドキュメント共同編集ツール。文書や表計算をチャットと組み合わせて使えるのが特徴ですを買収したいと持ちかけていて、生産性ソフトウェアを欲しがっていたと考えられます。
3つ目の課題は、MicrosoftがSlackのようなコミュニケーション機能や、Zoomのようなビデオ会議を、すべてOffice 365のパッケージに盛り込んだことです。
吸い込まれていきますね、Office 365に。全ての機能が。
| 論点 | Slackの状況 | Microsoftの状況 |
|---|---|---|
| エンタープライズセールス | 大企業との関係を一から作る必要があった | 大企業のIT部門と強い関係があった |
| 生産性ソフトウェア | 持っておらず、Quipの買収を持ちかけた | Word、Excel、PowerPointを持つ |
| パッケージ | チャット単体のプロダクト | チャットやビデオ会議をOffice 365に同梱 |
「新しいものを試す需要」を消すGood Enough Product
宮武さんの説明では、Office 365に課金さえしていれば、Wordなどはもともと必須なので、それ以外の機能は実質的に無償で手に入ります。この仕組みが重要な理由の1つが、ユーザーのコンテキストスイッチング ── 作業中に別のツールや別のタスクへ切り替えること。切り替えのたびに手間や集中力の損失が生じるとされますを避けられることです。
いまは多くのソフトウェアを使い分けているため、あるツールから別のツールへ乗り換えるのはとても面倒です。1つの箱の中ですべて解決できたほうが楽なので、Office 365を導入した瞬間に、新しいサービスを試す需要そのものがなくなると宮武さんは話します。
もうすでにこの機能を提供してるので、新しい機能を試さなくていいですよねと。
宮武さんは、Instagram Storiesが成功した理由も同じだと見ています。SnapchatがStoriesを出した狙いの一部は、Instagramのユーザーを引き抜くことでした。ところがInstagramが同じ機能を出したことで、Instagramのユーザーは「Instagramにあるなら、Snapchatを試さなくていい」と考えるようになったといいます。
宮武さんは、ほとんどの人は新しいものを試すのが嫌だと指摘します。そのうえで、ある一定のクオリティのプロダクトを無償で提供し、スイッチングコストを上げることが、Microsoftの戦略の1つだと説明しています。宮武さんはこれを「Good Enough Product」と呼んでいます。
ただし宮武さんは、Microsoftにも課題があると話します。Slack、Discord、Notionなどに共通しますが、次世代のユーザーには、最初からOffice 365を使っていない人たちがいます。既存のOffice 365ユーザーを逃がさないことはMicrosoftの得意分野でも、最初からNotionを使い始めた人をMicrosoftへ乗り換えさせるのは別の問題です。
あ、じゃあNotion勝てそうですね。
NotionとMicrosoft Loop、数字で比べるとどれほど差がある?
宮武さんも草野さんも、Notionはプロダクトとして優れていて、Microsoft Loopより良いだろうと考えています。草野さん自身もNotionを愛用しているそうです。宮武さんは個人的な予想として、今年Salesforceが買収に動くのではないかとも話しています。
宮武さんによれば、Notionは評価額が10ビリオンの会社になりました。そろそろMicrosoftにどう対抗するかが問われ、単独のプロダクトとしてNetscapeやSlackと同じ結果になるのか、違う結果になるのかの分かれ目にあると見ています。
いくら10ビリオンの会社としても、Microsoftの経済力とディストリビューション力とプライシング力とサティアさんみたいなCEOがいると、本当に勝てるのかと。
草野さんに「勝てないと思いますか?」と聞かれた宮武さんは、勝てるチャンスはあるものの、正直かなり厳しい道のりだと答えています。草野さんは、AmazonとShopifyの関係のように、Notionが他のスタートアップと連携して勝ち抜く方法もあるのではないかと提案しました。宮武さんは、それこそがNotionの勝ち方だと同意しています。
宮武さんは、Microsoft LoopはほぼNotionのコピーで、Microsoft製品との連携は強めているものの、機能も見た目もかなり似ていると話します。草野さんも、発表時にはみんな驚き、「Notion潰しに来た」という受け止めだったと振り返っています。
宮武さんは、両社の規模の差を数字でも示しています。Office 365のアクティブユーザーは3億人で、全員が課金しています。一方のNotionは2000万人以上のユーザーがいますが、これは無料と有料の両方を含む数字です。
宮武さんはNotionの売上をざっくり試算しています。無料から有料への転換率を10%と仮定すると、課金ユーザーは200万人です。転換率は一般に1〜10%程度で、例えばDropboxは2.5%なので、10%はかなり良い水準だといいます。1ユーザーが毎月8ドル払うとすると、ARRは約200ミリオン(約200億円)になり、10ビリオンの評価額はARRの50倍にあたります。
宮武さんによると、MicrosoftはOffice 365単体の売上は公表していません。ただ、Office 365を含む部門は直近の四半期で15ビリオンの売上を出していて、そのすべてがOffice 365ではないにしても、Notionとはかなりの差があるといいます。
Notionの勝ち筋はエコシステム。では一般層は取れるのか?
宮武さんは、Notionが勝つとすれば、草野さんが挙げたShopify的なアプローチ、つまりアプリのエコシステムとインテグレーションで「みんなで勝ちに行く」形だと話します。ただし最大の課題は、テック企業以外のユーザーを取れるかどうかです。
草野さんは、ExcelやWordを使っている一般層のことだと受け止め、テック業界の人も普通に使っていて便利だと話します。宮武さんが「スタンダード化されている」と付け加えると、草野さんはファイルを送るときの拡張子もWordが当たり前で、KeynoteやPagesではないと実感を語りました。
宮武さんの見立てでは、Notionの強みは新しいワークフローのインテグレーションがうまいことです。企業が使うSaaSツールが増えるなかで、Notionはワークフローの中心になるものを持っていて、Microsoftにはそこまでのものがないといいます。
宮武さんは、Slackも同じ発想だと説明します。Slackはチャットというコミュニケーションを中心に、そこからワークフローを作ります。一方のNotionは、1つのノートやページを起点に、さまざまな連携を作ります。宮武さんは個人の見方として、Teamsはその中心がまだ明確ではないと話しています。
草野さんは、Notionに書類をため込むと他のツールへ移るのがとても難しく、Evernoteには戻れないと話します。そのうえで、Loopへ移行しやすい仕組みをMicrosoftが作ったら、UIがほぼ同じなのでそのまま移行されかねないと懸念しました。
ノートやページを中心に、EvernoteなどMicrosoft以外のツールと連携を広げる必要がある
中心となるツール(Loopかどうかは未定)を決め、WordやExcelと連携すればよい
宮武さんは具体例として、Notionが買収したAutomate.io ── 複数のWebサービスをつないで作業を自動化するツールを提供していた企業。2021年にNotionが買収しましたを挙げています。NotionはGoogleカレンダーと連携しているので、宮武さんと草野さんのそれぞれのGoogleカレンダーから、共有のNotionカレンダーを作れるといいます。
同じように、Evernoteで作ったものが自動的にNotionに反映される仕組みがあれば、ユーザーが他のツールに移っても情報はNotionとつながり続けます。ただし、Evernoteがそれを認めるかという問題もあり、その戦略が勝つかどうかはまだわからないと宮武さんは話しています。
生産性アプリの歴史と、価格で勝てるかという問題
宮武さんは、生産性アプリの歴史を振り返りながら、いまの競争の構図を説明しています。
宮武さんは、SlackやNotionを中心にした形を「相互運用性のある集権型」と呼び、Notionをその代表例と見ています。この形では、個々のツールはMicrosoftより優れている場合があります。ただし最大の問題は、価格で勝てるかどうかです。
それ対Microsoftの全部バンドル化して、1個の値段で全部アクセスできます。ちょっと機能性落ちるかもしれないですけど、っていうそこの塩梅なんですよね。
草野さんは、特に大企業ならMicrosoftのほうがお得だと感じるだろうと話します。宮武さんは、別々のアプリだとそれぞれを連携し、それぞれを覚える必要があると付け加えました。草野さんが会社のITチームの立場に触れると、宮武さんは、Microsoftならセキュリティも担保しやすく、リスクを考える人が多い大企業ほどその点が重要になると説明しています。
一方で宮武さんは、市場全体はまだ伸びると見ています。エンタープライズのIT予算のうちクラウドに移行したのは10〜15%ほどで、ITのワークフロー全体でもクラウド化は20〜30%ほどにとどまるといいます。宮武さんは、日本ではNatsuinなどのサービスも含めての話だろうと補足しています。
宮武さんによると、テック企業は平均で150ほどのSaaSアプリを使っていて、2017年の100個ほどから4年ほどで50%増えています。エネルギー会社でさえ平均50個のSaaSツールを使っているそうです。部署別では、セキュリティとエンジニアリングが70ほどで最も多く、プロダクトが65、マーケティングと人事がそれぞれ50ほどです。
SaaSツールが増えるほど、必要になるのはワークフローのインテグレーションだと宮武さんは話します。例に挙げたのが、Adobeに買収されたFrame.ioです。Frame.ioは動画編集の確認だけでなく、それまでのメールやSlackでのやりとり、ファイル共有、Googleスプレッドシートを不要にするツールだといいます。宮武さんは、それがNotion、そしてSlackとSalesforceの組み合わせの考え方でもあり、Notion上ですべてにアクセスできることでコンテキストスイッチングを避けるのだと説明しています。
Notion単独では厳しい?SalesforceとSlackとの組み合わせという仮説
宮武さんは、Notionがすでに評価額10ビリオンの会社として成功していることは認めています。そのうえで、Microsoftを倒せるかという問いに対しては、単独では厳しいというのが個人的な正直な意見だと話しています。
草野さんが「どこかに入るか、他のスタートアップを引き連れるか」と問いかけると、宮武さんは買収も含めて考え、いまならSalesforceだろうと答えました。宮武さんによれば、SlackとSalesforceの組み合わせに欠けているのは生産性アプリです。QuipではMicrosoftに勝てないものの、Notionなら勝てると見ています。
Quipは正直Microsoftに勝てないと思ってて。でもNotionは勝てると思うんですよ。なんで、Notion掛けるSlack掛けるSalesforce。
宮武さんは、個々のツールで比べればMicrosoftより優れたものは多いと話します。DropboxはOneDriveより良く、Googleのアプリもコラボレーションの観点ではMicrosoft Officeより良く、AsanaはタスクのPlannerより良く、SlackもチャットではTeamsより優れているといいます。
草野さんは、ここまでの話だとMicrosoftの製品が一つひとつは微妙に聞こえるものの、Microsoft Teamsは普通に良いプロダクトだと強調しました。宮武さんもそれに同意しています。
草野さんは、最初にMicrosoft Teamsを知ったら「これでいいじゃん」となると話します。宮武さんは、テックに詳しい人ならNotionやSlackのほうが良いと感じても、普通の人にとってはTeamsだけで十分に足りると答えました。宮武さんは、普通の人にとって「これで足りる」ことこそがMicrosoftの一番の強みだと見ています。
独占禁止法と次世代ユーザー、Microsoftが抱える2つの論点
宮武さんは、Microsoftがこの領域で独占禁止法の目をつけられてこなかったことも大きいと指摘します。Microsoftの強みはプライシングパワーで、低い価格で提供することでエンドユーザーには利益があるかもしれない一方、競合をすべて潰しているからです。
宮武さんは、アメリカ政府がこの状況に動くかについて、今のところは動かなそうだと見ています。仮に動くことがあれば、それはNotionなどにとっての勝ち筋の1つになると話しています。
Notionにとってのもう1つの勝ち筋は、次世代の市場をどれだけ取れるかです。Microsoft Officeを使わず、最初からNotionだけを使うユーザーを作れるかが問われます。ただし宮武さんは、大学や高校、会社でもOfficeが使われているため、簡単ではないとも話しています。
宮武さんによると、Microsoftも次世代へのリーチを課題と捉え、買収で解決しようとしているように見えます。GitHub、Pinterest、TikTok、Discord、Minecraftは、実際に買収した会社と買収を試みた会社が混ざっていますが、共通するのは次世代の人たちが使っていることだといいます。Minecraftでは教育版も作っています。
草野さんは、Microsoftが動画編集のPlatumも買収したことに触れ、クリエイション系も見ているのだと感じたと話します。宮武さんは、編集アプリを使うとOffice 365が数カ月無料で付いてきて、そこからTeamsに寄せていくような形を作れるのがMicrosoftの強みだと答えています。
めちゃくちゃNotionも好きだし、Slackも好きだし、Airtableも好きなんですけど、まあ。Office 365も便利なんだよなみたいな。
サティア・ナデラはMicrosoftをどう変えたのか
宮武さんも本音ではNotionに勝ってほしいと話しています。今回はカウンターポジションを取る回なのでMicrosoftを推しているものの、その強さを可能にしているのはCEOのサティア・ナデラさんだと見ています。
宮武さんによると、2014年にナデラさんがCEOに就いたころのMicrosoftはかなり厳しい状況でした。スマホの戦いに負け、売上の中心はソフトウェアのライセンスで、LinuxがWindowsを超えるかというタイミングだったといいます。そこからナデラさんは方向性を大きく変えました。
ナデラさんは外部から来た人ではなく、以前からMicrosoftのクラウドとエンタープライズのグループでAzureなどを見ていました。宮武さんは、クラウドへ移行する戦略はナデラさんの経歴から来ていると説明しています。
2017年: AWSが65%、Azureは20%ほど
2020年: Azureは30%ほどに伸び、増えた10ポイントはAWSから奪った
宮武さんは、ナデラさんが意外にも従業員を解雇していることにも触れています。CEO就任後に2回のレイオフを行い、そのうち1回はMicrosoft史上最大の規模で、1万8000人が会社を去りました。宮武さんは、一部の事業を諦めたタイミングだったと記憶しているそうです。
草野さんは、創業者ではない2代目の社長がそうした大きな意思決定をするのは大変だろうと話します。宮武さんは、それでも社内で好かれていることがすごいと評価しています。
宮武さんによれば、ナデラさんの重要な戦略は主に4つあります。アメリカ政府との関係構築、M&A戦略、Activision Blizzardの買収にも表れたゲーム領域のビジネスモデルのシフト、そして最も重要なWindowsから新しいビジョンへのシフトです。
アメリカ政府との関係について、草野さんはMicrosoftが公聴会などの表舞台にあまり出てこない印象があると話します。宮武さんは、他の大手テック企業のトップが出てくる場面でもナデラさんはほとんど出ておらず、それは出ないように頑張っているからで、とても重要なことだと話しています。
この4つがあるからこそ、今のMicrosoftがありますし、今のMicrosoftの方向性がなんとなく見え始めるっていうところで。
この4つの戦略の詳しい中身は、後編で語られる予定です。
まとめ
前編では、NetscapeやSlackの事例をたどりながら、Microsoftの強さが単体のプロダクトの性能ではなく、バンドルと価格、そして「これで足りる」と思わせる設計にあることが語られました。Notionにはエコシステムと次世代ユーザーという勝ち筋があるものの、宮武さんは単独では厳しいと見ています。
- MicrosoftはInternet Explorerの無料化とWindowsへのバンドルでNetscapeを追い落とし、同じパターンをTeamsでも繰り返している
- Slackの売却の背景には、エンタープライズセールス、生産性ソフトウェアの不足、Office 365への機能同梱という課題があった
- Good Enough Productを無償で付けることで、新しいツールを試す需要そのものを消すのがMicrosoftの戦略
- Notionの勝ち筋はインテグレーションと次世代ユーザーで、宮武さんはSalesforceとSlackとの組み合わせを有力視している
- サティア・ナデラさんのもとでのクラウド移行と4つの戦略が、今のMicrosoftを形づくっている




