雑談のはずが「そもそも雑談って何?」に
番外編の雑談回として収録を始めた草野さんと宮武さんですが、二人はまず「雑談するトピックがなさすぎて」苦しんだと明かします。
草野さんによれば、宮武さんから「そもそも雑談って何なんですか?」と問われ、確かにわからないと感じたそうです。ふだんの『Off Topic』はテックやビジネスのトピックしか話さないため、雑談の形が見えにくかったようです。
(RealSoundの)記事でもありましたけど、本当に敬語で話してるポッドキャスターってあんまりいないらしいんですよ。
宮武さんも、Spotifyの担当者が同じことを言っていたと応じます。草野さんは、トピックの話しかしない番組なので、敬語で話すのは楽といえば楽だと話しています。
「かしこまりました。」は怒っているサイン?
草野さんが打ち明けたのは、宮武さんとのSlackでのやり取りです。作業の報告をすると、宮武さんからは句点付きの「かしこまりました。」が返ってきます。
丁寧すぎて、なんか怒ってるのかなと思う時があったりとか、なんか距離なんか難しいですよね。
宮武さんの答えは、怒っているわけではなく、仕事だから敬語なのだろうという感覚に加え、自身の経歴が関係しているというものでした。宮武さんは日本語より英語のほうが得意で、アメリカの大学から戻ってデジガレ ── デジタルガレージの略称。インターネット関連の投資や事業を手がける日本の企業で、宮武さんと草野さんの前職ですに入り、そこで敬語を教わったといいます。
僕はその敬語を使う時も、考えて敬語を使ってるわけでもないんですよ。
どちらかというと、そっち(敬語)が普通で、普通の日本語になってしまってるって感じですね。
宮武さんの敬語は、意識して丁寧にしているのではなく、デフォルトになっているわけです。草野さんは「それはいい気づきでした」と受け止め、これからは気にしないと話しています。宮武さんは、家族と話すときでも「かしこまりました」や「了解です」を使うそうです。
「了解でーす」と「ダマテン」はどこから来た?
草野さんは前職時代のエピソードも持ち出します。同僚がSlackで伸ばし棒付きの「了解でーす」を使っていて、二人で何なのだろうと話したことがあったそうです。
宮武さんは、先輩がその言い回しを使っているのを見て、カジュアルに接してくれているのだと思い、自分も使っていました。ところが上司から指摘が入ります。
「あ、なんかちょっと若干失礼な感じなんですね」っていうことを気づいて。で、逆にそれでより、よりかしこまったっていうか。
宮武さんの丁寧すぎる敬語には、この経験も影響しているかもしれないということです。
先輩の「了解でーす」を見て、カジュアルに接してくれていると思い自分も使っていた
上司から指摘され、若干失礼な表現だと気づき、よりかしこまった話し方になった
草野さんがもう一つ気になっていたのが、宮武さんが使った「ダマテン ── 麻雀用語の「黙聴(ダマテン)」から来た言葉。テンパイ(あと1枚で上がれる状態)を宣言せずに黙って待つことで、転じて「黙って何かをする」意味の俗語として使われますで」という言葉です。草野さんは麻雀用語だと知らず、麻雀好きの上司から覚えたのかと思っていました。
宮武さんは、デジガレに入る前から知っていたと否定します。草野さんは標準語なのかもしれないと考えますが、宮武さんは標準語ではなく何かしらのスラングだと話し、認知度の高いスラングなのかもしれない、というところに落ち着いています。
先輩後輩も「くん・ちゃん」もない話し方
話題は先輩後輩の話し方へ移ります。宮武さんはインターナショナルスクールからアメリカの高校・大学に進んだため、そもそも先輩後輩という概念があまりなかったといいます。
英語だと結構フランクに、まあ下の名前で全員呼び合うので。
だからこそ、日本の会社に勤めたときは上下関係をすごく意識しなければならないと感じたそうです。宮武さんはデジガレに入って最初の3、4年ぐらいは、上でも下でも全員を「さん」付けで呼び、「くん」や「ちゃん」はほぼ使わなかったと振り返ります。
ずっと社内で一番の若手だった草野さんも、先輩後輩で話し方を分けたくないといいます。
先輩後輩とかになんか喋り方を分けたくなくて、全部敬語にしてるっていうのはあるかもしれないです。
草野さんにとって敬語は、上司にも後輩にも対等に接するための話し方だということです。
下の名前で呼ぶなら英語の発音で?
宮武さんは、『Off Topic』に将来従業員が入ったら、アメリカ風に下の名前で呼び合うほうがいいのかと問いかけます。アメリカでは下の名前で呼ぶことが、全員フラットという感覚にもつながっているからです。
草野さんは、仕事上は日本語なら敬語が一番話しやすいとしたうえで、ユニークな案を出します。日本語の呼び捨てと英語の呼び捨ては文脈が違うので、上司を名前で呼ぶなら英語の発音のほうが気持ちが和らぐのではないか、というものです。
ドラマなどでも、下の名前で呼ぶことは特別な関係性を示し、上司を呼び捨てにするのは抵抗がある
上司も含めて全員が下の名前で呼び合い、フラットな関係の表れになる
宮武さんは、日本では下の名前で呼ぶと関係性が違って見えることに納得しつつも、名前だけ英語の発音にするのはやりづらいと笑います。
幼なじみを名字で呼ぶ不自然さ
宮武さんは、デジガレの同期に、同じインターナショナルスクールに通っていた幼なじみがいたと明かします。
彼女(幼なじみ)の名字で呼ぶのってすごい不自然だったんですよね。
それでも会社にいる間は、日本の文化では下の名前で呼ぶのは間違いなのだろうと考え、名前では呼べなかったそうです。草野さんは、環境が呼び方を決めるという点に共感し、アメリカに行けば上司も普通に下の名前で呼ぶと話します。
ニックネームの話にもなり、草野さんは「ミキって人大体ミキティになりますね」と笑います。宮武さんは、呼び方は組織の文化と話す言語で決まり、外資系では英語で話すため下の名前になってしまうのだろうとまとめています。
英語で話しかけたら「OK」で終わる
呼び方の話から、草野さんが「英語にしますか」と言い出し、話題は草野さんの英語へ移ります。英語で話してくれるのかと聞く宮武さんに、草野さんの返事は「うん」や「OK」です。
OKで、OK、OKだけで終わるっていう。YesとOK。
困りますよ、こっちは。
草野さんは、結局は宮武さんに英語を教えてもらうしかないと話します。宮武さんの提案は、たとえば毎週1時間、その時間中は日本語を一切禁止にして英語で話すしかない環境を作ることです。
ネイティブでも英語力は落ちる
宮武さんは、自分もデジガレに入って最初の1年は英語を使う機会が減り、英語のレベルが落ちたと明かします。アメリカに長く住んでいた宮武さんでも、言葉が出てこなかったり、思ったように表現できなかったりしたそうです。
逆にアメリカの高校・大学時代は周りに日本人がいなかったため、日本語がどんどん下手になったといいます。家族によくネタにされるのが、身につけるものの動詞です。
眼鏡をかけるじゃないですか。靴を履くじゃないですか。服は着るじゃないですか。全部着るにしてたんですよ。
「靴を着る」「眼鏡を着る」と言っていた宮武さんにとって、「かける」という言葉は出てこなかったそうです。使わない言語は落ちていくという実感から、宮武さんは無理やりでも話す環境を作るべきだと繰り返しています。
環境
周りに話す相手がいない(アメリカでの日本語、デジガレでの英語)
使用機会の減少
その言語を使う回数がすごく減る
語学力の低下
言葉が出てこない、思ったように表現できない
いきなり英語は、なぜ恥ずかしい?
草野さんは試しに英語で話しかけてほしいと頼みますが、宮武さんが何を聞こうか迷う段階から「やっぱ緊張しますよね」と身構えます。宮武さんが「今日のニュースで何か面白いことはありましたか」と英語で尋ねると、草野さんの答えは「Nothing.」の一言でした。
草野さんは、言いたいことはあるのに、結局一言で終わらせてしまうのが壁だと話します。宮武さんは、その場で答えはあっても、それを別の言語にするのは難しいと理解を示しつつ、無理やりでも練習しないと上達しないと話します。
普通に今まで日本語喋ってたのに、いきなり英語喋ってってやった時の(恥ずかしさ)。
宮武さんは聞き手側の事情も語ります。前職で同僚に英語で話したいと頼まれた際、相手があたふたすると、日本語で一回解説しようかという気持ちになってしまうといいます。
そうですよね。いや、ほんとそうですよね。悪いサイクルがずっと。
話し手があたふたする
英語で返そうとして言葉が出てこない
聞き手が気を使う
日本語で解説しようかという雰囲気になる
話し手がさらに焦る
相手の戸惑いを感じ取り、何も出てこなくなる
日英ミックスはインター特有の話し方
宮武さんは、自分のネイティブな発音が恐怖感を生んでいるのではと気にしますが、草野さんはそれはあまりないと答えます。わざと丁寧に発音してみせる宮武さんには「小馬鹿にしてるように感じる」と返しています。
草野さんのリクエストで、宮武さんは会話の途中で英語と日本語を切り替える話し方を実演します。1フレーズや1単語だけ変えることもあり、意識してやっているわけではないそうです。
普通の人に慣れてないです、これは。アメリカ人もこれできないんで。
草野さんの言う「Iwentto コンビニで」のような混ぜ方は、両方を話せる人でなければ難しく、宮武さんは割とインター特有の話し方だと説明しています。
最後に二人は、リスナーが英語をどう勉強しているのか気になると話し、その方法を教えてほしいと呼びかけて回を締めくくっています。
まとめ
この番外編は、敬語で話すポッドキャスターが珍しいという話から始まり、宮武さんの敬語がデフォルトになった背景や、呼び方を決める組織と言語の文化を経て、草野さんの英語の悩みへとつながりました。言語は使う環境に左右されるという点が、会話全体を貫いています。
- 宮武さんの丁寧な敬語は、デジガレで敬語を学び、「了解でーす」を指摘された経験からデフォルトになったもの
- 下の名前で呼ぶかどうかは、組織の文化と話す言語によって決まると宮武さんは考えている
- ネイティブ並みの宮武さんでも、使う機会が減れば英語も日本語も落ちるという
- 英会話上達には、日本語禁止の時間を作るなど無理やりでも話す環境が必要だと宮武さんは話す
- 二人はリスナーに英語の勉強方法を教えてほしいと呼びかけている




