帰国したのに家に帰れない?成田でのPCR陽性と、24ミーティングの1週間
この回の収録場所は、宮武さんの自宅ではなく空港近くのホテルです。2週間のアメリカ出張から帰国した際、成田空港でのPCR検査で陽性となり、1週間の隔離中に収録しています。
日本に帰国する時、成田空港でもPCR検査を受けるんですけど、そこで見事に引っかかりまして。
宮武さんの体調は「100パーではない」ものの、熱はなく、おそらく大丈夫だろうと話しています。普通に家に帰れると思っていたのに帰れなかった、という状況に草野さんも同情しつつ、体調が良さそうなことに安堵していました。
宮武さんの出張はほぼ丸々2週間で、そのうち約1週間がニューヨーク、1週間弱がマイアミでした。コロナにはなったものの、宮武さんは「やっぱり行って良かった」と振り返ります。
ニューヨークでは、RTFKT ── NFTやデジタルスニーカーなどを手がけるクリエイター集団。CloneXというアバターNFTのプロジェクトでも知られていますのイベントに参加したほか、投資先や現地のVCと会い、アメリカの今の状況を聞いて回ったといいます。VCはマイアミを含めて7、8社ほどとキャッチアップしたそうです。
ニューヨークでの予定は、イベントを含めて約24ミーティング。しかも5日間に移動時間も考えながら詰め込んだため、宮武さん自身「ちょっときつかった」と認めています。相手はD2C系の人やNFTプロジェクトの担当者、VCなどでした。
ファン700人が集まったAll-In Summitは、どんなイベントだったのか
マイアミ滞在の主な目的は、宮武さんがお兄さんと一緒に参加した「All-In Summit」です。人気ポッドキャスト「All-In Podcast ── シリコンバレーの投資家・起業家4人がホストを務める、テック・経済・政治を語る人気ポッドキャスト」の初めてのイベントで、参加者は合計700人ほどだったそうです。
All-In Summitの日程は3日間です。日曜の夜はポーカーナイトというパーティーのような場で、月曜と火曜にスピーカーが登壇するセッションが行われました。
All-In Summitのセッションは「自分が解決したい課題は何か」という問いに、登壇者がそれぞれ答える形式です。1枠30分ほどの流れは次のように整理できます。
ただ、All-In Summitの30分枠は宮武さんいわく「パツパツすぎ」で、話が終わるはずもなく、進行は大幅に押しました。1日目からセッションがなくなったり、2日目にスケジュールが大きく変わったりしたそうです。
スケジュール見た瞬間、これ絶対無理だって僕も兄も同じこと言ってて。
一方で、All-In Summitの観客はポッドキャストのファンなので、ホストに質問したいという声も強くありました。そこで2日目には急遽2時間の枠を取ってQ&A会を開きましたが、途中でゲストを呼ぶなどして、実際に質問できたのは1時間ほどだったといいます。
All-In Summitの参加者層も、普通のテックカンファレンスとは違っていました。VCやテック企業、クリプト系の人に加えて、不動産系やPEファンド系の人までいたそうです。参加者の半分ほどが定価、残り半分が割引価格で参加していました。
また、All-In Summitにはメディアが基本的に誰も呼ばれていません。宮武さんは、それは「わざと」だと話しています。
イーロン・マスクの90分と、パルマー・ラッキーが壇上で読み上げたツイート
All-In Summitで印象に残ったセッションとして、宮武さんがまず挙げたのはイーロン・マスクの回です。会場には来ずZoomでの参加でしたが、1時間半ほど話してくれたことに宮武さんは驚いていました。
もう一つ宮武さんが「衝撃的」と表現したのが、パルマー・ラッキー ── VRヘッドセット「Oculus」の創業者。OculusはFacebookに買収され、その後ラッキー氏は同社を離れましたさんのトークです。パルマー・ラッキーさんは現在、防衛系スタートアップのアンドリルでCEOを務めています。
パルマー・ラッキーさんのトークの本題は、ディフェンステックと呼ばれる防衛系テック企業の資金調達でした。ウクライナでの事態が起きる前は、軍事系スタートアップは資金を集めにくい環境だったといいます。シリコンバレーと防衛にはもともと関係がありながら、最近はそれがやりにくくなっていた、という内容です。
ところがパルマー・ラッキーさんは、トークの最後の最後に、All-Inのホストの一人であるジェイソン・カラカニスさんが過去にTwitterで自分を侮辱したツイートを、一部始終読み上げました。宮武さんは、台本を持っていたことから計画的だったと見ています。
パルマー・ラッキーさんは、トランプ支持者側に数十万規模の寄付をしたことで、Facebook社内で大変な扱いを受けていました。そのときジェイソンさんもTwitterでかなり悪口を書いており、パルマー・ラッキーさんは、それがFacebookをクビになった理由の一部だと話し、今もめちゃくちゃ怒っていると壇上で語ったそうです。
宮武さんが評価したのは、All-Inのファンが集まるアウェイな場であえてそれを言った勇気です。会場からはしっかり拍手が起きました。さらにホストが登場する場面では、ジェイソンさんが一番最初に出てきて、パルマー・ラッキーさんを追い出すこともなく、そのままディスカッションが始まりました。
その場でパルマー・ラッキーさんは、宮武さんが「多分事実だろう」と感じた指摘をしています。自分がこのカンファレンスに呼ばれた理由は、もう一度ユニコーンを作ったからでしかない、というものです。
パルマー・ラッキーさんが、また頑張ってユニコーン2社目作ったから、だからジェイソンさんも「カンファレンス来てくださいよ」とかって言うようになったんじゃないかと。でもそれってなんかおかしいですよねと。
その後のパルマー・ラッキーさんのセッションは、他のホストが空気を読んだのか、スタートアップの話へ移っていきました。ジェイソンさんはあまり話さず、途中から携帯を見始めたそうで、宮武さんは「おそらくPRチームからの指示待ち」と推測しています。
最後は観客から「謝れ」という声も出て、ジェイソンさんが多少謝り、2人はハグして終わりました。ただ宮武さんは、正直仲直りはしていないはずだと見ています。パルマー・ラッキーさんも許したわけではなく、怒ってはいるものの、その場で悪口を重ねるつもりもなかったようです。
All-Inは言論の自由を大切にする番組なので、宮武さんはこのパルマー・ラッキーさんの回もおそらくフルで公開されるはずだと話しています。会場が一瞬「やばい空気」になり、どうなるのかと思ったという臨場感も、ぜひ聞いてほしいポイントだそうです。
なぜ「違う意見を言い合える場所」がこれほど貴重なのか
宮武さんがもう一つ面白かったと挙げたのが、ウクライナをテーマにした別のセッションです。All-Inのホストがモデレーターに入り、正反対の意見を持つゲスト2人が、ウクライナをどう支援すべきか、ロシアをどう考えるべきかを議論しました。
やっぱりなんかこれだけ違う意見がぶつかり合う場って最近あんまり見ないなと思っていて。
宮武さんは、違う意見を言いづらい環境にどんどんなっている中で、All-In Summitは違う意見をより許す環境だったと感じています。草野さんも、最近はコミュニティごとに集まってイベントが行われるイメージがあると応じました。
All-In Summitには、予定になかったビル・ガーリーさんも急遽登場し、VCの今の市場環境などについて話したそうです。集まった顔ぶれのすごさも、宮武さんの印象に残っています。
そのうえで宮武さんは、All-Inの良さを、思っていてもなかなか言いづらい意見を出せる点にあると語ります。
宮武さんによれば、こうした場は大事なのに、世の中ではどんどん失われつつあります。アメリカでは最近特にそうで、フィルターバブル ── 検索やSNSのアルゴリズムによって、自分の好みや考えに合う情報ばかりが表示され、異なる意見に触れにくくなる状態によって分裂が進むと、人は自分の側の人としか話さなくなり、意見交換がなくなっていくといいます。宮武さんは、この課題は改めてOff Topicでも話したいとしています。
ビーガンレストランでリー・ジンが「肉食べたい」。現地で人と話す価値とは
マイアミの最終日、宮武さんは過去にOff Topicでインタビューしたデビッド・フェルプスさんや、バリアントファンドのリー・ジンさん、ミラーのメンバー、クリプト関連の開発者たちと食事をしました。ちょうどマイアミでクリプト系のイベントが開かれており、その一環で皆が来ていたそうです。
一行が向かったのは、マイアミのとても美味しいビーガンレストランでした。ところがリー・ジンさんはずっと「肉食べたいのに」と愚痴をこぼし、シェイクシャックを頼まないかと言っていたそうで、草野さんは「可愛い愚痴」と笑っています。
食事の席では、分散型と集権型のどちらに極端に振るべきか、その間なのかという議論や、Web3のSNSがうまくいくのかどうかといった話題が出ました。
宮武さんは、現地で人と話すと小さなディテールがわかることを出張の収穫に挙げます。「このサービスを皆よくメンションするな」といった肌感覚は、現地に行ったからこそ得られたものだと振り返っていました。
まとめ
コロナ陽性による隔離中のホテルから届けられたこの回では、24ミーティングを詰め込んだNY滞在、All-In Summitでの波乱のセッション、そしてWeb3の論者たちとの食事まで、宮武さんの出張の濃さが語られました。中でも宮武さんが強調したのは、違う意見を言い合える場の価値です。
- 宮武さんは帰国時の成田空港のPCR検査で陽性となり、空港近くのホテルで1週間隔離されながら収録した
- All-In Summitは約700人が集まり、メディアをあえて呼ばない、参加者層の幅広いイベントだった
- パルマー・ラッキーさんは壇上でジェイソン・カラカニスさんの過去のツイートを読み上げ、評価が成功次第で変わることへの違和感を示した
- 宮武さんは、フィルターバブルで分断が進む中、異なる意見がぶつかり合える場は貴重だと感じている
- 現地で人と話すことで、よく話題に上るサービスなど細かな肌感覚がつかめた





