Instagramでしか見られないブランド情報とは?
Off Topicは、アメリカを中心にテックニュースやスタートアップ、ビジネス情報を紹介するPodcastです。今回のエピソードでは、番組のInstagramで紹介してきたD2C ── Direct to Consumerの略。メーカーが小売店を介さず、自社サイトなどで消費者に直接商品を売るビジネスモデルですブランドやスタートアップを取り上げています。
Off Topicはnote、Instagram、Twitterで発信していますが、草野さんは最近始めたInstagramで、D2Cやソフトウェアのスタートアップを1社ずつ不定期に紹介しているといいます。
宮武さんによると、Instagramの投稿では「これから来るかもしれない」と感じるブランドを選んでいて、noteやTwitterでは扱っていないものも多いそうです。
(Instagramの投稿は)Twitterですら多分出してないので、多分Instagramでしか逆に見れない情報。
宮武さん自身も、Instagramで知ったブランドを面白いと思って調べ、その後にnoteで情報を補うという流れで驚きを得ているそうです。投稿の情報は草野さんから受け取っていると明かし、草野さんが「どうやって投稿してるかがバレますね」と笑う場面もありました。
白地に写真と文字だけ、Entireworldのサイトはなぜ心地よい?
最初に挙がったのは、スウェットを扱うD2CブランドのEntireworld ── 有名デザイナーが立ち上げたアメリカのD2Cアパレルブランド。シンプルでカラフルなスウェットなどを扱っていますです。宮武さんは「アスレジャーブランドなのかな」と前置きしつつ、最近の投稿の中でも特に面白いと話しました。
(Entireworldを)紹介した一番の理由は、サイトがめちゃくちゃ可愛い。
草野さんのいう「可愛い」は見た目の話ではなく、体験の話です。Entireworldのサイトは白地に写真と文字だけというシンプルな作りですが、スクロールするとかすかに人混みの音やBGMのような、癒される雑音が聞こえてくるといいます。
なんかこう、可愛い、ビジュアルで可愛いって話じゃなくて、体験としてすごく素敵で。
宮武さんは、こうした音の演出がスウェットブランドという性格に合っていると評価しています。さらに印象的だったのが、サイトのAbout UsページのQ&Aです。
About Usページでは、創業者がブランドを作った理由を語る動画が流れます。その後の「どんな素材を使っているか」「どこで作られているか」といった質問にもテキストの回答があり、その背景で動画が流れる仕組みです。草野さんによると、「どこで作られているか」の背景では、中国の歌手が歌謡曲を歌う映像が流れていたそうです。
宮武さんは、この体験は今のところPCでしかできないと補足しています。
質問と無関係な動画が、なぜブランドの世界観を伝えるのか
Entireworldのサイトの動画について、草野さんは服のデザインやフォントよりも「こういうものが好きです」という動画のほうが世界観を伝えると感じたそうです。
なんか全然関係ない動画なのに世界観がわかるっていうのがすごい。
一方で宮武さんは、この演出にはリスクもあると指摘します。質問と動画のつながりがわからない人も多いはずだからです。
つながらないって人もいっぱいいるんですけど、逆につながる人は逆によりファンになると思うので、なんかすごい面白いなっていうのは普通に思いました。
質問と動画の関係がわからず、よくわからないブランドだと感じる
無関係に見える動画から世界観を読み取り、よりファンになる
草野さんは、Entireworldのスウェット自体はシンプルで、色がカラフルな程度だと話します。シンプルだからこそ、それ以外の部分で世界観が際立つというのが、草野さんがこのブランドに惹かれた理由でした。
複数のロゴを持つFacultyは何を表現しようとしているのか
世界観の話の流れで、宮武さんが次に挙げたのがグルーミングブランドのFacultyです。エピソード説明では「Faculty」と表記されていますが、宮武さんは「英語でいうとFUCK」と発音に迷いながら紹介しています。
宮武さんが斬新だと感じたのは、Facultyが複数のロゴを用意している点です。スキンケアやコスメ、香水のようなプロダクトは人によって受け取り方が違うため、それぞれの人に合うロゴを用意しているのではないかと考えました。
人によっては女性っぽく感じるかもしれないですし、人によって違う感覚に感じるかもしれないので、その人のためのロゴが用意されてるのかなっていうのを一瞬思って。
草野さんは、ロゴが複数あるのにすごく統一感があると応じ、宮武さんも「違うのに統一感」と重ねました。
草野さんの補足によると、Facultyは男性向けのネイルポリッシュを販売しています。発売はドロップ式で、次に何が出るかはわかりません。グルーミングプロダクトという枠なので、ネイルの別の色が出るかもしれないし、ブラシが出るかもしれないといいます。
FacultyからSNIFとMischiefを思い出した理由とは?
宮武さんは、Facultyのブランドを見て2つの会社を思い浮かべたそうです。1つ目は香水ブランドのSNIF ── アメリカの香水D2Cブランド。香りの説明を前面に出さない独自の売り方で知られていますで、草野さんも「いいなと思いました」と反応しています。
宮武さんによると、SNIFはあえて香りの説明をほとんどせず、ユーザーに白紙を渡して「どういう匂いだと思うか」を書いてもらうそうです。同じ匂いでも人によって感じ方が違う点が面白く、今後は自己表現が重要になるのではないかと話しました。
2つ目はMischiefです。Podcastでは扱っていないものの、noteでは記事にしたことがあるブランドだといいます。
宮武さんの説明では、Mischiefは「いたずら」「ふざけ」をテーマに、ドロップ式で毎回違う商品を出しています。アプリなどのソフトウェアもあれば、グッズや靴のようなハードもあります。
今の社会の課題だったり、社会のトレンドに対してのいたずらだったり、批判だったりをMischiefがプロダクトを使って表現していると。
宮武さんは、Facultyも同じような形を目指しているのではないかと推測します。次の商品を明かさないことや、ロゴを多く作っていることには、グルーミングとは別の意味合いがあるのかもしれないという見方です。
草野さんは、Facultyが「男性らしさ」のようなものを軸にしているのかもしれないと応じました。
表面の特徴
複数のロゴ、次が読めないドロップ式の商品展開
似たブランド
商品を通して社会への批評を表現するMischief
推測
Facultyにもグルーミング以外の意図があるのかもしれない
服が実在しないTributeのデジタルファッションとは?
次に話題になったのは、草野さんが「非接触型サイバーファッションブランド」と紹介したTributeです。Tributeの服は物としては存在せず、デジタルの服として売られています。
購入の流れは、Tributeのサイトで決済し、自分の写真を送ると、その服を着た自分の写真が届くというものです。草野さんは、仕上がりが「めちゃくちゃ綺麗に着てる」と話しています。
宮武さんが面白いと感じたのは、Tributeが限定販売をしている点です。デジタルなら無限に作れるのに、たとえば1つのアイテムを10着しか売らないといった形を、あえて取っているといいます。
宮武さんは、デジタルファッションブランドは今後増えると見ています。クリエイターやブランドとのコラボでフォートナイトに登場したり、Snapchatやzoomと提携したりする展開も考えられると話しました。
いわゆるあの普通のパジャマ姿でも見た目スーツ着てるとかっていう概念って今後できてくるのかなって思ったり。
草野さんも「フィルター欲しい」と反応しています。宮武さんはさらに、デジタルで買ったことをきっかけにオフラインでも買えるような流れも出てくるかもしれないと話しました。
なぜデジタルの服は「自然な流れ」なのか
草野さんは、Tributeを作ったのがIT系やスタートアップの人ではなく、ファッションデザイナーである点がいいと話します。デザインも普通にかっこいいと評価しています。
宮武さんは、コロナ禍でこの領域が加速していると見ています。フォートナイトやあつ森、ROBLOXでデジタルスキンが流行っている中で、同じ流れがInstagramのようなソーシャルの場面にも出てくるのは自然だという考えです。
その写真では絶対できないような、そのリアルとデジタルの不気味の谷的な、その、なんか不自然なんだけどリアルっていう。
草野さんは、Tributeの服の光沢感に、リアルとデジタルの間にある独特の魅力を感じています。宮武さんは「普通に出資したいなと思っちゃった」と話し、今後必ず来る流れだと語りました。
TopicalsはなぜTwitterで強いのか
宮武さんから過去の投稿で面白かったものを聞かれ、草野さんはスキンケアブランドのTopicalsを挙げました。Topicalsについては、占いのシートの話などを扱うnoteも公開予定だといいます。
宮武さんによると、Topicalsはゲームやコンテンツを一部組み込んでユーザーを獲得する手法を取っています。加えて、Twitterをうまく使うD2Cブランドは少ない中で、TopicalsはTwitterがとても強いそうです。
Topicalsの強みは、肌や皮膚についての教育コンテンツをスレッド形式で流していることです。宮武さんは、ニッチな内容でもTwitterでは広がりやすいとして、このマーケティング手法を面白いと評価しています。
宮武さんの話では、Topicalsはコロナの影響でローンチを遅らせるなど苦労したものの、レイルヒッパーから資金調達を受け、伸びているそうです。
社会貢献はD2Cブランドの必須項目になったのか?
草野さんは、TopicalsやFacultyのように、売上の数パーセントをコミュニティなどに寄付する取り組みが、最近のD2Cブランドでは定番になっていると話します。
草野さんがよいと感じているのは、寄付を受けるNPOやコミュニティ側も盛り上がり、ブランドと互いに大きくなっている点です。例として、女性のメンタルヘルスのコミュニティであるSad Girls Club ── メンタルヘルスに悩む若い女性を支援するアメリカのコミュニティ。Instagramを中心に活動していますを挙げました。
草野さんによると、Sad Girls ClubはInstagramのアカウントから始まったコミュニティです。アルファやレアビューティー、セレーナ・ゴメスのブランドなどがSad Girls Clubと提携しているのを見ると、いいなと思うそうです。
宮武さんは、こうしたトレンドはここ数年で始まったもので、社会貢献に取り組むBコープ ── 社会や環境に配慮した事業を行う企業に与えられる国際的な認証です。パタゴニアなどが取得していることで知られますになる企業が増えていると説明します。例として、オールバーズやパタゴニアを挙げました。
多分今後売り上げの成長率とか売上がどれくらいあるかっていう話とほぼ同一レベルで、社会的貢献度合いがどれだけあるかっていうのも結構評価軸として入ってくると思うんですよ。
宮武さんは、Z世代やその下のアルファ世代がこうした点を気にするようになると見ています。そのため、5年後、10年後のブランドを作るなら、初期から社会貢献を考えておく必要があるという考えです。
価値観の変化
Z世代やアルファ世代が社会貢献を気にするようになる
評価軸の変化
売上の成長と同じレベルで、社会貢献の度合いが評価される
ブランドの条件
初期から社会貢献を考え、コミュニティとのつながりを保つ
宮武さんは、Topicalsや過去に紹介したオフリミツもこうした取り組みをしていると話します。草野さんの「面白いイケてるブランドは大体(やっている)」という言葉を受け、宮武さんは次のようにまとめました。
コミュニティファーストのGlossierがWNBAと組んだ理由
最後に草野さんは、新しいブランドではなく既存のブランドで面白い動きはあるかと尋ねます。宮武さんが挙げたのは、Instagramのストーリーズでも紹介したGlossierです。
宮武さんによると、Glossierは女子バスケットボールリーグのWNBAとパートナーになり、WNBAの選手たちがGlossierを紹介する動画を出しています。
GlossierはファンのUGC ── User Generated Contentの略。企業ではなく一般ユーザーが作った投稿や写真、動画などのコンテンツを指しますを広告に活用し、Instagramのストーリーズでもファンの投稿を多く紹介しています。宮武さんは、コミュニティファーストのブランドであるGlossierにとって、セレブを起用することはためらう選択だと説明しました。
宮武さんはWNBAを選んだ背景として、まずコロナ禍の状況を説明します。NBAとWNBAは、感染者が出ないようフロリダのディズニーワールドにコートを作り、その中で試合をしていました。草野さんが「ちょっと待ってください」と驚き、宮武さんも「普通に聞こえたら何やってんだ?ってなる」と笑っています。
宮武さんによると、WNBAの選手は人種差別問題などについてNBAより早く発言してきた人が多いそうです。また、NBA選手と比べると非常に有名な選手は多くありません。
やっぱりいいセレブ感と一般のラインがWNBAっていう話なんで、なんかそこのコラボってすごい相性いいなと思う。
宮武さんは、アスリートを起用するのもGlossierにとって初めての取り組みだと考えています。今回のパートナーシップは、今後の反応を試す場にもなりそうだといいます。
コミュニティファーストのGlossierにとって、ためらわれる選択
社会的な発言をしてきた選手が多く、セレブ感と一般の人の感覚のバランスがよい
草野さんも、Glossierにはこれまで有名人が出てこなかったと振り返ります。宮武さんは、あえて有名人を使わないと判断してきたGlossierだからこそ、インパクトのあるパートナーシップだと話しました。
まとめ
今回のOff Topicでは、Instagramで紹介したD2Cブランドを通して、サイト体験や商品展開で世界観を伝える工夫と、社会貢献が次世代ブランドの条件になりつつある流れが語られました。
- Entireworldは、白地のシンプルなサイトに音と動画を重ね、ブランドの世界観を体験として伝えている
- Facultyは複数のロゴとドロップ式の商品展開で、グルーミング以外の意図を感じさせるブランドとして紹介された
- Tributeのデジタルファッションは、限定販売やSNS、ゲームとの連携を通じて今後広がると宮武さんは見ている
- 売上の一部をコミュニティに寄付するなどの社会貢献は、D2Cブランドの必須項目になりつつあると話された
- コミュニティファーストのGlossierがWNBAと組んだことは、セレブ起用を避けてきたGlossierにとって新しい試みとして語られた





