バンキングの次に来るNBT候補は何か
Off Topicで続いてきた「AppleのThe Next Big Thing(NBT)は何か?」シリーズは、パート4で最終回を迎えます。ただ、パート4の本編は合計1時間40分に及んだため、前半と後半の2回に分けて配信されることになりました。
合計1時間40分でしたからね。ちょっとさすがにそれをリスナーさんに1回で聞いてもらうにはっていうところだったんで、2回に分けて届けましょう。
宮武さんはこれまでの議論を振り返り、NBT候補として可能性が高いのはバンキングやAR・VRで、広告はもう少し短期的なものだと整理します。
宮武さんによると、Appleの狙いはiPhoneなどのハードウェアと紐付いたサービスを増やし、ユーザー1人当たりの売上を伸ばすことです。その大きな候補の1つ目がバンキングで、今回扱う2つ目がヘルスケアだといいます。
500兆円市場と「363モデル」をAppleはどう変えるのか
宮武さんはまず、ヘルスケア市場の大きさを示します。アメリカだけで2021年に4.3トリリオンドル、日本円で約500兆円の規模があり、シリーズ第1回で扱った自動車業界の1.2トリリオンドル(2020年)と比べても約3.5倍にあたります。
草野さんは、以前の配信でもAppleのヘルスケアに触れ、Apple社内に従業員向けの医療サービスがある話が出ていたことを思い出します。宮武さんは、その社内医療こそがヘルスケア戦略の一部になっていくはずだと応じます。
宮武さんは、ティム・クックさんの発言も紹介します。将来振り返ったときに、Appleが人間に最も貢献したのはヘルスケアだったと言われるかもしれない、健康管理の仕方を変えて民主化する、という趣旨です。
宮武さんが説明するアメリカの「363モデル」とは、一般の人は年365日のうち363日は医者に会わず、問題があったときだけ年1〜2回通院するという状態です。Appleはこれを、日常的に見守る予防的な医療へ変えようとしていると考えられます。
そのために必要なのが大量のデータで、草野さんの「でも持ってますよね」という反応に、宮武さんは「持っていて、取得する方法がめちゃくちゃうまい」と答えます。ヘルスケアアプリは2014年、Apple Watchは2015年に登場し、Appleは去年7月に珍しくヘルスケアの取り組みをまとめたレポートも公開しています。
Apple Watchだけが特別扱いされる理由は?
宮武さんがシリーズ最終回でヘルスケアを選んだ大きな理由は、シリーズ第1回の後継者の話にあります。現時点でティム・クックさんを継ぐ有力候補とされるのは、COOのジェフ・ウィリアムズさんです。
Apple Watchのオリジナルチームには、ジョニー・アイブさん、現在プロジェクトタイタンを率いるケビン・リンチさん、そしてジェフ・ウィリアムズさんがいました。Apple Watchは最初から意図的にヘルスケア機能を組み込んだプロダクトで、そのヘルスケア事業を仕切っているのがジェフ・ウィリアムズさんだといいます。
さらに現在のApple Watchのトップは、ヘルスケアソフトウェアエンジニアリングのトップでもあるエヴァン・ドールさんです。宮武さんは、Apple Watchのチームにはヘルスケアチームのメンバーがかなり多いと指摘します。
宮武さんによれば、Apple Watchはおそらく唯一、ソフトウェアとハードウェアを1人が統括するAppleのプロダクトです。
ハードウェアはジョン・ターナスさん、ソフトウェアはクレイグ・フェデリギさんがそれぞれ担当
ハードウェアとソフトウェアの両方をジェフ・ウィリアムズさんが担当
うーん。(1人が両方を見ているのは)ヘルスケアが絡むからだと思うんですよね。
草野さんも、Apple WatchはiPhoneのような性能向上よりも、ヘルスケア機能が着実に良くなっていく印象があると話します。シリーズ8やウルトラまで展開され、2014〜2015年の発表から8年ほど改善が続いていることに、二人は改めて驚きます。
理想は自分の健康履歴を知るAIアドバイザー
宮武さんは、ヘルスケアの展開で重要になるのはAIだと話します。すぐの話ではないものの、Appleはおそらく視野に入れていると見ています。
いまChatGPTに症状を聞くと間違った回答も出ますが、会話型なので医者に話している感覚に近いと宮武さんは説明します。症状を選ぶと病名候補をリストで出すWebMD ── アメリカで広く使われている健康・医療情報サイト。症状から考えられる病気を調べるツールなどを提供していますやGoogle検索より、パーソナルなやり取りができるという位置づけです。
宮武さんが描く最終進化版は、自分の過去の健康データや家族の健康履歴をプライベートなデータベースとして持つAIモデルが、自分に合わせたアドバイスをしてくれる姿です。
なんか高血圧、朝ごはん(のせいで)高血圧になってるから気をつけましょうねみたいなのが。
今日はちょっともうちょっと歩きましょうとか、今日はちょっと電車じゃなくて歩くのはどうですか?みたいな。
宮武さんは、こうしたAIを実現するにはデータが必要で、さらにそのデータをどこに保管するかという問題もあると続けます。
AirPodsとApple Watchが「ヘルスケアデバイス」と言える理由
宮武さんは、Appleの特許申請の履歴を見ればそれがわかると話します。AirPodsでは酸素の消費量にあたるVO2 ── 運動中に体が取り込んで使う酸素の量。最大値のVO2maxは持久力の指標としてよく使われますを取得する特許や、AirPods Maxで心拍を取得する特許が出されています。
草野さんは、AirPodsの設定で耳の形を読み取る機能があり、音楽を聴くのにそこまで必要なのかと不思議に思っていたと話します。宮武さんは「絶対関係あります」と即答し、そのデータは後々使われるはずだと見ています。
血圧の測定は2018年から開発中で、まだ正式導入はされていないものの、特許申請は多数出ています。Apple Watch本体だけでなくバンドの特許もあり、測定中に自動でフィットを調整して締め付けるような仕組みだといいます。
宮武さんは、Appleがスマートリングの特許も出していると紹介します。Apple Watchを手首に着け続けるのがだるくてやめた草野さんは、太さにもよるものの、常時つけるならリングのほうが良さそうだと話します。
AirPodsが補聴器になる日は来るか
AirPodsの今後について、宮武さんは仮説と断ったうえで、拡張された聴覚をマスに届ける、つまり補聴器としての展開は十分あり得ると話します。草野さんは、iPhoneのヘルスケアにすでに「音量を出しすぎ」という通知があることを挙げます。
宮武さんは噂ベースで確認は取れていないとしながら、Appleが最近、補聴器の調整などを担うオーディオロジスト ── 聴覚の評価や補聴器の調整、聴覚リハビリなどを行う専門職。アメリカでは資格が必要な医療職として位置づけられていますを多く採用していると紹介します。
さらに、2022年10月にアメリカで「オーバー・ザ・カウンター・ヒアリングエイズ」のルールができ、処方箋なしで補聴器を買えるようになりました。宮武さんは、マス向けに製品を売るAppleにとって大きな追い風だと見ています。
宮武さんによれば、アメリカでは65〜74歳の約4分の1が聴覚に不自由を抱え、75歳以上では半分にのぼります。この数字から、宮武さんは補聴器の展開は正直やってくるだろうと話します。
草野さんが「ロビー活動とかしたんですかね」と尋ねると、宮武さんは可能性はあるとし、大手テック企業は直接お金を出さなくても、関連研究や研究機関への寄付で支えるケースがあると説明します。
ユーザーが何もしなくてもデータが集まる仕組み
宮武さんは、Apple Watchの転倒検知や、アメリカで大きな問題になっている糖尿病に関わる血糖値のモニタリングにも触れます。そのうえで、すべてに共通する重要点はパッシブなデータ収集、つまりユーザーが手入力しなくてもAppleにデータが届くことだと強調します。
規模も桁違いです。宮武さんの推定では、AirPodsは去年1億台が販売されたとされ、数億人が持っているとみられます。Apple WatchもiPhoneユーザーの10%ほど、約1億人が使っていると言われています。
集めたデータをまとめる場所がヘルスケアアプリです。Appleはアプリを立ち上げた2014年の1年前に、ヘルスデータのスタートアップGlimpseを買収していました。
宮武さんは、Appleが無名のスタートアップを技術目的で買収するのはいつものことだと話します。指紋認証のAuthenTec、ショートカット機能のWorkflow、Apple News+のTexture、Siriの元の技術、Apple MusicのBeats、コンテンツ認識のShazam、心拍などのトラッキング技術を持つBedditなどです。
Glimpseはデータを集めるだけでなく、データを部分的にシェアする技術も持っていて、それが後々役に立つと宮武さんは予告します。
ヘルスケアアプリには、iPhone・Apple Watch・AirPodsのデータに加えて、HealthKit ── Appleが開発者向けに提供する仕組み。外部アプリが健康データをヘルスケアアプリと読み書きできるようにしますを通じて、Nikeのランニングアプリや瞑想アプリのCalmといった第三者アプリのデータも集まります。その結果、1つのアプリに健康データ全体が集約されるといいます。
Fitness+はPelotonと戦わない?
第三者アプリだけでは足りず、よりマス向けに広げたいときにAppleが出すのが自社アプリで、ヘルスケア版にあたるのが運動動画サブスクのFitness+です。アメリカでの利用者数は公開されていないものの、宮武さんは徐々に人気になっている印象だといいます。
2020年12月のFitness+開始当時は、上場直後でコロナ禍の追い風も受けていたPeloton ── エクササイズバイクとオンラインのフィットネス動画を組み合わせたアメリカの企業。コロナ禍の自宅需要で急成長しましたにAppleが勝てるのか、と多くの人が問いかけました。Appleにはエクササイズバイクのようなハードウェアがないためです。
宮武さんが去年の数字として挙げるPelotonの規模は、ハードウェアとサブスクを持つ人が300万人、動画だけのデジタルオンリーが100万人ほどです。家族で1台を共有するケースもあり、メンバー数は700万人にのぼります。
宮武さんは、700万人は大きな数字ではあるものの、マス向けの商品を出すAppleが望む数字感ではないと話します。そこでAppleはPelotonと同じ市場を狙っていない、というのが宮武さんの見立てです。
ジムによく通う、比較的裕福なハイエンド層に向けたジムの置き換え
その層に加え、ジムにあまり行かないが健康を気にして瞑想やヨガをするライトな層
Fitness+の動画ラインナップから見えるもの
宮武さんは、Fitness+で提供されているエクササイズの種類を分析した人の仮説を紹介します。Fitness+はランニング、サイクリング、ヨガなどのカテゴリーごとに、5分、10分、45分、1時間といった長さの動画を複数用意しています。
その仮説は、人気のアクティビティほどAppleはコンテンツを多く出しているはずだ、というものです。宮武さんも個人的に正しいと考えています。
その見方でFitness+を分析すると、最も多いのはサイクリングで、特殊なハードウェアがなくても自転車があればできるのが特徴です。さらに、エクササイズの45%弱が10分以下の短尺です。
いきなり45分の(エクササイズは)選ばないですよね。
(45分を選ぶのは)やっぱペロトン向きの人たちなんですよね。
宮武さんは、45分を選ぶのはマラソンのトレーニングをする人やジムに通う人で、Appleは明らかにそちらではなく、短尺でマス向けのコンテンツを出していると話します。
ヨガ、ビヨンセ、サーフィンまで広がるFitness+
Fitness+には、2021年にヨガと瞑想、今年1月にキックボクシングが追加されました。草野さんは、ヨガや瞑想は最初からありそうで意外だと驚きます。
宮武さんは、ビヨンセの音楽に合わせたフィットネスクラスにも触れ、Apple Musicとの連携がうまく取れるのではないかと話します。
スポーツとの取り組みもあります。Appleが一時配信の交渉をしていたワールド・サーフ・リーグは、Apple Watchを公式ウェアラブルに選び、選手の情報をリアルタイムでトラッキングしているといいます。
宮武さんは、フィットネスチャレンジに応じたリワードプログラムの特許申請も紹介します。草野さんは、いまのApple Watchで運動すると金メダルがもらえるものの、それだけで終わってしまうと話します。
なんかそれ(金メダル)がなったことによって、何かこう、Appleの中で何かいいものがもらえたら嬉しいなっていう。
宮武さんは「1年間頑張ったので次のデバイス5%オフ」のような形を例に挙げ、ソーシャルやゲーム的な要素があれば楽しくなるかもしれないと応じます。草野さんは、日本ではiMessageをあまり使わず、Appleアカウントでつながる友達が少ないことも一因かもしれないと話します。
社内クリニックから医療保険まで、4層で見るヘルスケア戦略
宮武さんは、Appleが自社サービスも組み込んで情報を集めていると話を戻します。Appleはキャンパス内で医師を雇い、従業員向けに診断や遠隔医療を提供しています。
草野さんは「一度は働いてみたい」と興味を示しますが、宮武さんは厳しいNDAへのサインが必要で、入社すればOff TopicでAppleの話ができなくなると笑います。白衣にリンゴのマークがあるのか、といった話でも盛り上がります。
この社内医療では、従業員が医師とヘルスケアのデータを共有することがあります。この医師にはこのデータだけ見せたい、これは常に見せてよい、という部分的な共有を支えるのが、2013年に買収したGlimpseの技術だと宮武さんは説明します。
宮武さんによれば、データを常に共有していれば、「最近血圧が異常に低い」といったフォローアップを医師側からできるようになります。今後はApple WatchやFitness+のデータをもとに医療保険を出し、データ次第で割引率が決まる展開もあり得ると見ています。
もう一生Appleについていくしかないですね、もうこれは。
宮武さんは、Appleのヘルスケア戦略を4つの層に分けて整理します。
ヘルスケア戦略はいつから練られていたのか
草野さんが「スティーブ・ジョブズの段階ではないですよね」と尋ねると、宮武さんはジェフ・ウィリアムズさんの構想だと思うと答えます。ヘルスケア戦略がまず動いていて、その一環としてApple Watchを作ることになった、という推測です。
宮武さんは時系列から逆算します。ヘルスケアアプリはApple Watchより先に出ていて、2013年にはGlimpseを買収しているので、少なくとも2012年には検討が始まっていたはずだといいます。
宮武さんは仮説としつつ、ジョブズさんの死後にApple内で次をどうするか考えた結果、ティム・クックさんがヘルスケアにベットしたのかもしれないと話します。逆に、健康管理を気にかけていたジョブズさん自身が、この領域に入りたいと言っていた可能性もあるといいます。
いずれにしても、Appleは10年以上ヘルスケアを考え続け、ようやく大きくなり得る段階まで来たというのが宮武さんの見方です。草野さんは、パソコン、iPod、iPhoneに次ぐほどの大きなものだと受け止めます。
Appleが自社チップを作る本当の理由はヘルスケア?
宮武さんは、ここで重要になるのがAIだと話を進めます。AppleはM1チップをはじめ、iPhoneやiPadでも自社チップを作っています。性能向上などの理由もある一方で、大きな理由の1つはAIをクラウドで処理するかローカルで処理するかにあるといいます。
Appleはプライバシーの観点からローカルで処理したいと考えている、と宮武さんは説明します。私的な健康データをクラウドで扱うのはリスクが大きすぎるため、ヘルスケアがあったからこそ自社チップが必要になったのではないか、という仮説です。
宮武さんによれば、Appleは2019〜2020年だけでAI関連企業を5社ほど買収しています。中でも重要なのが、2020年1月に2億ドルで買収したXnor.ai ── シアトル発のAIスタートアップ。低消費電力のデバイス上で機械学習モデルを動かす技術を持っていましたで、クラウドではなくデバイス上で機械学習の処理を行う技術を持っていました。
2019年には、Intelのスマホ向けモデム事業を10億ドルで買い取り、特許と従業員2200人を引き継いでいます。2017年のiPhone Xでは、機械学習を端末上で処理するニューラルエンジンを含むA11 Bionicチップを発表しました。
草野さんは、HomePodに温度や湿度を測る機能が入っていた話も挙げ、消費者がまだ使っていない機能が多く仕込まれていると感想を述べます。宮武さんは、慎重な会社なのでデータは集めつつ、まだ活用していないのだろうと応じます。
そこの事業やってなかったみたいな。そこ張れてなかったみたいなことがないですよね。
iPhoneでStable Diffusionが動くことの意味
宮武さんは、AIを端末上で動かすことはプライバシーへのコミットでもあると話します。2021年6月ごろには、Siriの一部機能がインターネット接続なしで使えるようになりました。
画像生成AIのStable Diffusion ── 2022年に公開されたオープンソースの画像生成AI。モデルを手元のパソコンなどにダウンロードして動かせるのが特徴ですは、Appleデバイス上でローカルに動かせます。iPhoneを機内モードにして画像生成できるか検証した人もいて、時間はかかるものの実際に生成できたといいます。
宮武さんが珍しいと強調するのは、数ヶ月前にAppleがStable Diffusionと自社チップがうまく連動するためのアップデートをわざわざ出したことです。Appleが特定のソフト専用の対応を出すのはかなりレアだといいます。
宮武さんは、512×512ピクセルの画像1枚を生成する時間を、去年末ごろの数字として比較します。
| 環境 | 生成時間 | 補足 |
|---|---|---|
| NVIDIAの最上位GPU搭載PC | 8.7秒 | 比較の基準 |
| M1チップのMac mini | 約70秒 | かなり時間がかかる |
| M2チップ | 23秒 | 大きく短縮 |
| M1 Ultra | 9秒 | NVIDIAとほぼ同じ |
宮武さんは、iPhoneのチップがさらに良くなれば、iPhone上でもかなり速く画像生成をローカルで行えるようになると見ています。
クラウドかエッジか、Lensaの行列が示した課題
宮武さんは、生成AIの市場では処理をクラウドで行うかエッジ(ローカル)で行うかが今後大きな議論になると話します。違いはコスト、スピード、プライバシーやパーソナライズにあります。
例として挙がったのが、去年流行したLensa AIです。自分の顔写真をアップロードすると宇宙飛行士風などのプロフィール画像を作ってくれる有料アプリで、Stable Diffusionを使っていたとみられ、アプリランキング1位になり、11〜12月で30億円ほど稼いだといいます。
ところが人気のピーク時には、最初は数分で届いていた画像が、何日も届かなくなりました。宮武さんは、利用者が集中するとキューができて1人ずつ処理するため、今のChatGPTと同じく回答スピードが落ちると説明します。
利用者が集中すると行列ができて遅くなる。サーバーやGPUの処理コストを事業者が負担する
行列は自分だけなのですぐ処理できる。コストは端末のバッテリーが減るだけで、処理コストはほぼゼロ
宮武さんは、ChatGPTはStable Diffusionよりファイルサイズが大きく今は端末に落とせないものの、いずれそれができる時代が来ると見ています。オープンソースのStable DiffusionにAppleがしっかり投資しているのは、AIはローカルで動かすべきだというAppleの姿勢の表れだといいます。
独自データを持つAppleがAI時代に強い理由
宮武さんは最後に、LLMの競争の行き着く先を語ります。オープンなインターネット上のデータはどのLLMもアクセスできるため、最終的にはほぼ同じデータセットになるという見方です。
草野さんが「Appleいっぱいありますね」と応じると、宮武さんはそれを最も持っているのはAppleかもしれないと話します。プライベートな健康データを持ち、ローカルで処理する機能があり、Calmのような第三者アプリのデータにもアクセスできるからです。
宮武さんによれば、こうした条件から、よりパーソナライズされたAIのレコメンドができるのはAppleだということになります。草野さんも「Appleしかいないですね」と同意します。
宮武さんは、インターネット上のデータには限りがあるとも指摘します。OpenAIはChatGPTを作るために、人にお金を払って会話のやり取りの仕方を示すデータを作ってもらっているといい、そうしたデータの一種が医療データだと話します。
AIとヘルスケアを掛け合わせた本題は、次回のパート4.2で語られます。草野さんは、シリーズの本当の最後になる次回もぜひ聴いてほしいと呼びかけて締めくくります。
まとめ
今回のパート4前半では、Appleが健康データの生成・保管・アプリ連携・サービスの4層を10年以上かけて整え、自社チップとローカルAIによって、プライバシーを守りながらパーソナルな健康アドバイスを届ける土台を築いてきた、という宮武さんの仮説が語られました。
- アメリカのヘルスケア市場は約500兆円で、Appleは「363モデル」を予防的な医療に変えることを狙っていると考えられる
- Apple WatchとAirPodsは、ユーザーが何もしなくてもデータが集まるヘルスケアデバイスとして設計されている
- Fitness+はPelotonと競うのではなく、短尺でライトな層向けのコンテンツでマスを狙っている
- 自社チップとローカルAIへの投資は、私的な健康データを端末内で扱うためとみられる
- LLMの差別化が独自データにかかるなら、健康データを持つAppleは有利になり得る





