2008年、スタバはなぜSNSに賭けたのか
今回のエピソードは、前回に続いてスターバックスを扱う回です。前回の話では、スタバがマーク・ベニオフ ── クラウド型の顧客管理サービスで知られるセールスフォースの創業者でCEO。テック業界の大物の一人ですさんに相談し、サイトづくりを依頼したところまでが語られていました。
そのサイトが、顧客がスターバックスにアイデアを提案できる「MyStarbucksIdea」です。宮武さんによれば、パソコンメーカーのデルも似た取り組みをしていて、スタバも同じ仕組みでさまざまなアイデアを集めたといいます。
(MyStarbucksIdeaなどで)スタバってすごい、2008年から10年ぐらいの間ってすごい変わったんですよね。
宮武さんは、この時期の変化を「コーヒーカンパニーからテックカンパニーになった」と捉えています。草野さんは、スタバについてアプリをやっていることぐらいしか知らなかったと話し、宮武さんは個人的にはテックカンパニーだと思うと答えます。
変化の起点は、2008年にCEOのハワード・シュルツがスタバに戻ってきたことでした。シュルツはベニオフさんらに相談し、スタバをもう一度盛り上げるためにテックカンパニーにしようと考え、FacebookやTwitterの戦略を作り直したと宮武さんは説明します。
その結果、スタバは数ヶ月以内に100万人のFacebookファンを獲得し、2010年には2700万人まで伸ばしました。スマホが出てきたばかりの時期に、新しいチャネルにしっかり乗ったという話です。
本当に初期にめちゃくちゃ張ってますね。
一方で、TikTokへの参加は遅かったと宮武さんは補足します。TikTokではユーザーやバリスタが勝手に盛り上げてくれていた、という対照的なエピソードです。
16年かけたインスタントコーヒーとロイヤリティプログラムの始まり
スタバのイノベーションはSNSだけでなく、プロダクトにも及んでいました。1993年、ハワード・シュルツは科学者を採用し、「ハイクオリティなインスタントコーヒーを作ってくれ」と依頼したといいます。
そのインスタントコーヒーが実際にローンチしたのは、16年後のことでした。商品名は「StarbucksVia」で、アメリカで発売してから10ヶ月で売上100億を記録したと宮武さんは紹介します。店舗だけでなく、スーパーなどでも売られていたようです。
同じ時期にスタバが導入したのが、リワードシステム、いわゆるロイヤリティプログラムです。宮武さんは、これが今後のスタバにとって非常に重要になると前置きします。
スタバは2001年からギフトカードを販売していましたが、ユーザーからはポイントカードのような仕組みを求める声が多かったといいます。草野さんが「毎日行く人も多いですもんね」と応じると、宮武さんは「まさにそうなんですよ」と同意しました。
2008年にローンチした「StarbucksRewards」は、翌年にアプリとして提供され始め、それが今のスタバのアプリになっています。宮武さんは、ここがスタバが本当にテック展開したきっかけだと見ています。
なぜアメリカの朝はスタバに並ぶのか
草野さんは、ロイヤリティプログラムの狙いを「常連の人がハッピーになる仕組み」と受け止めます。宮武さんは、コーヒーは毎日のように買うものなので、習慣づけするプロダクトとしてすごく相性がいいと説明します。
アメリカでは、朝にマイボトルを持ってコーヒー屋に寄り、車のドリンクホルダーに入れて出かける人が多いという話になります。宮武さんも、父親が住んでいたニューヨークを訪ねた際、朝はコーヒー屋の前が長蛇の列だったと振り返ります。
(アメリカでは)店舗に行って、そこで毎日朝会うバリスタと挨拶をしてみたいな。なんかそういう習慣になっちゃうみたいな。これは一部ありますよね。
宮武さんによれば、アメリカのスタバも決して安くはありません。ただ、それより安い価格帯で、すごくおいしいコーヒーが少ないといいます。
東海岸のダンキンドーナツや全米のマクドナルドもコーヒーを出していて、マクドナルドのコーヒーは安いのに意外とおいしいそうです。それでも、ダンキンやマクドナルドにはブルーカラーやお金をあまり持っていない人というイメージがあり、スタバに行きたいという欲求のほうが強いと宮武さんは話します。
さらに、アメリカには専門のコーヒー店も多く、味や食べ物、店内環境でスタバを上回る店もあるかもしれません。それでもスタバが優位を保てる理由の1つが、アプリと、その裏にあるテクノロジーだというのが宮武さんの見立てです。
テック出身CEOと「3つのテック要素」
2021年時点のスタバは、ハワード・シュルツではなく、ケビン・ジョンソンさんがCEOを務めています。ジョンソンさんはIBMからマイクロソフトに移り、その後ジュニパーネットワークス ── ネットワーク機器を手がけるアメリカの大手テック企業。ルーターなどの通信インフラ製品で知られていますのCEOを務めた、テックバックグラウンドの人物です。
めちゃくちゃテックの人ですね。
宮武さんは、スタバがテック企業である理由を3つの要素に整理しています。ここからのエピソードは、この3つを順に解説する形で進みます。
スタバは、コーヒーでマネタイズするテック企業だと宮武さんは整理します。
スタバのアプリは、マクドナルドより使われている
スタバのアプリ自体の機能はシンプルです。オンライン注文、ポイントのリワードシステム、商品のピックアップ、商品の閲覧が主な機能だと宮武さんは説明します。
ところが、アメリカのスタバの売上の半分以上は、このアプリのリワードメンバーから来ているといいます。スマホからの注文も全体の26%を占めています。
リワードメンバーは約2300万人で、しかもアクティブなメンバーの数だと宮武さんは話します。宮武さん自身は世界の数字だったと思うとしつつ、アメリカの数字かもしれないとも留保しています。コロナ期間中にも350万人増えたそうです。
ほかにチポトレ ── メキシコ料理のファストカジュアルチェーン「チポトレ・メキシカン・グリル」。ブリトーなどをカスタマイズして注文できる店として知られますは約1950万人で、スタバは普通にマクドナルドを超えている、と宮武さんは強調します。
なぜここまで使われるのかという草野さんの問いに、宮武さんはオンライン注文の便利さを挙げます。マクドナルドやチポトレでもオンライン注文はできますが、スタバのほうがクオリティが高いというイメージがあり、スタバ好きはアプリで頼んでピックアップするだけで時間を短縮できるといいます。
スタバ側にとっての利点は、ユーザーと直接つながれることです。事前に注文が入るので、スタッフは前もって一部を作り、最後の仕上げだけをして、空いた時間を他の客の満足度向上に回せます。必要なスタッフの数も見えてくると宮武さんは説明します。
AIプラットフォーム「ディープブリュー」は何を提案してくるのか
スタバのアプリはインターフェースこそシンプルですが、裏ではすごい量のデータが飛び交っています。宮武さんは、スタバの本当の優位性は消費者向けアプリではなく、その裏にあるAIプラットフォームだと話します。
そのAIプラットフォームの名前が「ディープブリュー」です。草野さんが「コーヒーっぽい」と反応すると、宮武さんはディープマインド ── Google傘下のAI研究企業。囲碁AI「AlphaGo」の開発で広く知られるようになりましたと、コーヒーを淹れる意味の「ブリュー」をかけているのではないかと推測します。
宮武さんによれば、ディープブリューの目的は3つあります。平均注文額を上げること、来店頻度を上げること、そしてオペレーションを効率化することです。そのためにユーザーの直接のデータが必要で、だからアプリを持っているという構図です。
スタバのアプリは、ポイントをインセンティブにして「新しい行動を取ってみませんか」と提案してきます。宮武さんは、具体的な提案のパターンをいくつか紹介しました。
| 状況 | 提案 | 狙い |
|---|---|---|
| 週末の散歩帰りに店の近くにいる | おやつのクーポン | 来店のきっかけづくり |
| 平日に雨が降っている | 限定商品のディスカウント | オフィスから店舗へ来てもらう |
| 毎日同じフラペチーノを頼む | 合うスナックやフルーツ | 平均注文額を上げる |
| ホットしか頼まない | 冷たい飲み物の割引やポイント | 新しいメニューを試してもらう |
| 月曜朝9時に行列ができている | アメリカーノ | 作る時間の短い商品で混雑を緩和 |
週末散歩の例では、曜日や時間に加え、GPSのトラッキングも一部使って近くにいるかを判断するといいます。冷たい飲み物の例について、草野さんは「冷たい飲み物の方が高いですもんね」と指摘しました。
混雑時のアメリカーノの提案は、ラテよりアメリカーノのほうが作る時間が短いからです。宮武さんは、こうした提案によって店の混雑や時間を全部コントロールできると説明しています。
1週間の「チャレンジ」はどう習慣をつくるのか
ディープブリューの提案は単発で終わりません。スタバは習慣づけを狙って、1週間単位の「チャレンジ」を出してくると宮武さんは話します。
宮武さんが紹介した例では、ある人に3つのチャレンジが提示され、その中から1つを選ぶ形でした。1週間でアイスティーを3回試す、温かいお茶を3回買う、新しく出た食べ物を4回買う、という3択です。
宮武さんは、このチャレンジを提案された人はおそらくスタバでお茶を頼んだことがない人だと推測します。コーヒーしか頼まない人に、お茶の習慣づけを試しているというわけです。
それ(チャレンジ)をもしコンプリートした場合には、スタバってあのスター制度、ポイントがスターになってるんですけど、100スターをあげますと。
100スターでドリンク1杯や朝食のアイテムが無料でもらえるので、まあまあなボーナスだといいます。宮武さんは、こうして短期だけでなく長期的にも習慣づけし、平均注文額と頻度を上げる設計になっていると説明します。
昔はこうした提案をある程度人間が考えていましたが、今はパーソナライズされた提案をディープブリューが自動で出し、売上を上げるためにさまざまなABテストをしているそうです。
草野さんは、普段は飲食店のアプリをあまり入れないと前置きしつつ、スタバに行く習慣があり1杯無料になるかもしれないなら乗ってしまいそうだと話します。
宮武さんは、ある程度頻度が高いビジネスでない限り、スタバの仕組みをそのまま真似するのは厳しいだろうと見ています。
スタッフの勤務から出店タイミングまで、AIが決める?
ディープブリューの役割は、ユーザーの行動パターンを変えることだけではありません。宮武さんによれば、従業員のスケジューリングにもAIが関わっていて、どのタイミングで忙しくなりそうかを計算しているといいます。
スタバは需要側のデータを持っているため、スタッフのスケジュールや在庫レベルも管理できます。さらに、スタバの多くの機械はIoT ── Internet of Thingsの略。家電や機械などの「モノ」をインターネットにつなぎ、データを集めたり遠隔で管理したりする仕組みですでつながっていて、コーヒーマシンのデータもAIプラットフォームに入り込むそうです。
なんか急に怖い。
ユーザーの居場所や流行がわかれば、どこに店舗を置くかの提案もできます。宮武さんは、スタバは多くのD2C企業以上にソフトウェアを使っていると話し、草野さんはクーポンでハマらせる仕組みに、ファッションECのShein ── 中国発のファッションEC。アプリを軸に大量の商品を低価格で販売し、世界の若い世代に急速に広がりましたに近い感覚を見ています。
コロナ禍での出店判断にもAIが使われています。宮武さんによれば、スタバの社長自身が、ディープブリューで各国のワクチン状況を見ながらいつ頃回復するかを予測し、海外展開のアクセルを踏むタイミングを判断していると話しているそうです。
事前注文とアプリの履歴
需要がいつ、どこで生まれるかがわかる
IoT化した機械のデータ
コーヒーマシンなどの情報もAIに集まる
オペレーションの最適化
スタッフのシフト、在庫、機械のメンテナンスを調整
経営判断
出店場所や海外展開のタイミングを予測
コーヒー屋がネオバンクになるとはどういうことか
宮武さんが挙げる3つ目の要素は、スタバがネオバンク ── 既存の銀行の支店網を持たず、アプリなどのデジタルを軸に金融サービスを提供する新しい形の事業者を指す言葉ですになっていることです。2018年時点で、店舗などで使うスマホ決済アプリのうち最もユーザー数が多かったのはスタバだったといいます。
現在はApple Payが約3000万人で1位ですが、スタバも約2500万人のユーザーを抱えています。Googleの決済は約1200万人で、スタバとは2倍ほどの差があると宮武さんは紹介します。
スタバのスマホ決済が多い理由の1つは、リワードプログラムを使ったインセンティブ設計です。決済でスターがもらえるだけでなく、スタバのアカウントにお金を入れるだけで2倍のポイントがもらえるといいます。
このデポジット額について、宮武さんは確かそうだったと思うと断ったうえで、直近の四半期で1.75ビリオン、前四半期の1.56ビリオンから増えていると紹介します。
2016年時点のデータでは、スタバのデポジットは約1.2ビリオンで、アメリカの銀行などのキャッシュデポジットと比べると6位ほどに入ったといいます。1位はPayPalで、当時アメックスは約3ビリオンだったため、コーヒー屋さんがアメックスとそこまで差がない水準だったという話です。
このキャッシュはスタバが投資などに使うこともでき、銀行のようなこともできると宮武さんは話します。さらに、スタバに行かなくなるなどしてアプリに入れたお金を使い忘れる人もいて、2020年にはその額が約145ミリオンあったそうです。
宮武さんは、昨年約20ビリオンの売上がある会社にとって145ミリオンは必須ではないとしつつ、勝手に入ってくるキャッシュとしては悪くないと評しています。
日本のスタバはなぜLINEで伸ばしたのか
アメリカとは異なり、日本のスタバはLINEを使ってリワードを伸ばしたと宮武さんは紹介します。日本のスターバックスリワーズのメンバーは、確か約500万人だといいます。
草野さんは、日本ではお店のアプリを入れる習慣がないか、そもそもスタバで毎日コーヒーを飲む人が少ないのではないかと考えます。宮武さんは「多分どっちもですよね」と答えます。
既存でユーザー、ユーザーがいっぱいいるところに乗っかるっていうのが多分一番いい戦略だったと思うので、そういう意味でLINEを選んだのかなと思いますね。
宮武さんは、日本でリワーズを始めた当時はPayPayのようなアプリがあまりなかったはずだと推測し、LINEを選んだ理由をそう見ています。
日本のコンビニの存在も大きな違いです。アメリカではコンビニのイメージが悪く、CVSのコーヒーはおいしくないと思われがちですが、日本のコンビニは信頼され、品質が高く安いため、日本のスタバにとって強敵だと宮武さんは話します。
独自アプリでリワードを拡大。安くておいしいコーヒーの選択肢が少なく、コンビニのコーヒーはイメージが悪い
LINEを使ってリワードを拡大。コンビニのコーヒーが安く高品質で、スタバにとって強敵
「サードプレイス」から「早く出てもらう店」へ
宮武さんは、ここからスタバが今後どう変わるかに話を移します。約40年前、ハワード・シュルツは店内に座ってコーヒーを楽しんでもらうことを重視し、ソファーを置くなど、いわゆるサードプレイス ── 家庭(第1の場所)でも職場(第2の場所)でもない、くつろげる第3の居場所を指す考え方。スタバのブランドを語る際によく使われます化を進めていました。
ところが現在、特にアメリカのスタバは真逆の方向に進んでいて、どうやって早く店の外に出すかを考えているといいます。草野さんは、硬い椅子で回転率を上げるマクドナルドのようだと反応します。
まあでもそれがユーザーの方がそれを重要視してるんですよね。スタバで別に長居する必要ないよねっていう。
アメリカでもゆっくり飲める店はありますが、スタバはビジネスパーソンが朝コーヒーを買ってオフィスに向かう場所という感覚だと宮武さんは説明します。草野さんは、作業や人と会う用途が多い日本とは違うと驚いていました。
約40年前のシュルツの方針。ソファーを置き、店内で座って楽しんでもらうサードプレイス
現在のアメリカ。できるだけ早く外に出せる、スピード重視の店舗
2020年6月頃、スタバのCEOは400店舗を閉じ、店舗デザインを考え直すと話していました。人とのやり取りをほぼゼロにしてコーヒーをピックアップできる仕組みを目指すものだそうです。
この取り組みが人気になり、今年はスピード重視のサービスを400店舗から760店舗に広げると言い出しているといいます。ドライブスルー的な要素に加え、歩いて来る客向けにも速いサービスを考えているそうです。
デリバリーと中国展開、ラッキンコーヒーの存在
スタバはデリバリーやゴーストキッチン ── 客席を持たず、デリバリー注文の調理だけを行う店舗。ダークキッチンとも呼ばれますも試しています。2015年頃からポストメイツと提携し、2019年からはウーバーイーツと提携しているそうです。日本でも確かやっているはずだと宮武さんは話しますが、まだパイロット段階だろうとも述べています。
中国ではアリババの子会社と組んでデリバリーを始め、ゴーストキッチンも検証中だといいます。宮武さんは、最近のスタバは中国展開をかなり重視しているのではないかと見ています。
その背景として宮武さんが挙げるのが、ラッキンコーヒー ── 中国のコーヒーチェーン。急速な出店で上場したものの、2020年に売上の不正計上が発覚し、大きな問題となりましたです。書き起こしでは「ラックンコーヒー」と呼ばれています。急拡大して上場したものの、財務報告の誤りや詐欺が発覚して大変なことになっていますが、一時期は中国でスタバを超えたそうです。
2020年の売上は、アメリカが約16.8ビリオン、中国が約2.6ビリオン、それ以外の全世界が約4ビリオンでした。宮武さんは、中国は伸びているので、少なくとも5年以内にはアメリカ以外の国の累計を超えるのではないかと話します。
スタバはどうやって中国を「100%コントロール」したのか
草野さんも宮武さんも、アメリカの企業が中国でここまで成功しているのは珍しいと口をそろえます。宮武さんによれば、スタバは中国進出の当初、ジョイントベンチャーの形で入っていて、全体をコントロールできていなかったそうです。
宮武さんの説明では、スタバはジョイントベンチャーの残り50%を2017年末に買い取り、100%コントロールするようになりました。これは珍しいことだといいます。現在、中国だけで約5000店舗あるそうです。
中国はアプリで買い物をする国でもあり、スタバにとって相性がよい市場です。中国のリワードメンバーは1600万人以上で、中国の売上の72%がリワードメンバーから来ているといいます。
さらにスタバは中国向けのローカライズとして、自社アプリ以外にWeChatやアリババ、JD.comからも注文できる仕組みを作っているそうです。草野さんは、スタバにとって一番難しかった市場はイタリアで、2018〜2019年頃にようやく初出店した印象だと振り返っています。
スタバの次はスーパーアプリか、AIの外販か
宮武さんは、ネオバンクを持つスタバが次にどう展開するかに注目します。決済アプリとして考えると、ロジック的には次はスーパーアプリだといいます。
宮武さんが挙げる可能性は、別の決済手段の提供、アプリのギフティング機能を発展させた個人間送金、そしてスタバと関係のない店舗での支払いです。草野さんがスーパーとの連携を挙げると、宮武さんは「まさに」と応じます。
さらに宮武さんは、確かなことはわからないとしつつ、ディープブリューを他の事業にホワイトレーベルで提供する可能性にも触れます。スーパーやレストランなど飲食系はコーヒーと相性がよさそうだという話に、草野さんはお酒やバーも挙げました。
「コーヒーでマネタイズしているテック企業」という結論
宮武さん自身も、リサーチ前はスタバをコーヒー屋さんだと思っていたといいます。調べてわかったのは、裏ではテック企業で、マネタイズをコーヒーでしているという姿でした。
宮武さんは、D2C企業ではブランドやプロダクトが重視される一方、テック要素の強いブランドは少なく、そこへ進化できた数少ない1社がスタバだと話します。
草野さんは、スマホの転換期やSNSの盛り上がりに、スタバが最初から張っていたことに今回初めて気づいたと振り返ります。宮武さんも全く気づかなかったと同意し、スタバはコンシューマーブランドとして強いだけでなく、それ以上の会社だったと締めくくりました。
まとめ
今回のOff Topicでは、スタバが2008年以降にSNSとロイヤリティプログラムでテック化し、アプリ、AIプラットフォーム、ネオバンクという3つの要素を持つ企業になった姿が解説されました。毎日コーヒーを買う人が多いという事業の性質が、その仕組みを成り立たせています。
- 2008年にCEOへ復帰したシュルツのもと、スタバはSNS戦略とStarbucksRewardsで早くからデジタルに張った
- アメリカの売上の半分以上をリワードメンバーが支え、アクティブメンバー数はマクドナルドを上回る
- AIプラットフォーム「ディープブリュー」が、個別の提案やチャレンジ、シフトや出店判断まで担っている
- アプリへの入金は巨額のデポジットとなり、スタバは「利子なしの借り入れ」を持つネオバンクの側面がある
- 店舗はスピード重視へ転換し、中国展開やスーパーアプリ化など次の展開も見込まれている


