2022年の1位は何だった?毎年恒例ランキングの前提
Off Topicは、アメリカを中心にテックニュースやスタートアップ、ビジネスの話題を深掘りするPodcastです。今回は年末恒例の企画「2023年振り返りテックニューストップ10」の前編で、宮武さんによると、この企画は2018年から続いており6年目にあたります。
本題に入る前に、2人は前年2022年のランキングを振り返っています。草野さんが即答したとおり、2022年の1位はイーロン・マスクによるTwitter買収でした。
宮武さんは、2023年は一部の項目が前年から引き続きランク入りする一方で、スタートアップ環境が大きく変わった年だったと話しています。草野さんは、AIは6年ほど前から「来る」と言われ続けてきたのに、このタイミングでここまで爆発するのかという衝撃があったと振り返りました。
ランキングの前提として、2人はいくつかの断りを入れています。ウクライナやイスラエルの情勢は重要ではあるものの、今回はテック業界に絞ったため入れていないこと。そして順位は、いいね数などの数字ではなく、アメリカで話題になったものを2人の独断と偏見で選んだものだということです。
第10位「起業家がクリエイターになった年」とは?
第10位は「起業家がクリエイターになった年」です。草野さんによると、起業家がYouTubeなどクリエイターのコンテンツに出演したり、自らソーシャルメディアで発信したりするケースが増えました。発信することで、フレンドリーさや人となりが伝わるからだといいます。
第10位は第9位「クリエイターが起業家になった年」と裏返しの関係にあり、2人は一緒に紹介しています。草野さんは、Off Topicのイベントで、MrBeastのマネジメントを手がけるNightのリードさんと「クリエイターが起業家になった」というテーマで話したことにも触れました。
宮武さんが打ち合わせで特に納得したのは、草野さんが指摘した「ローンチ時のクリエイティブに凝る起業家が増えた」という点でした。草野さんは代表例として、AmoやArc Browser ── The Browser Companyが開発するWebブラウザ。独自のUIと、凝った紹介動画などのブランディングで注目を集めましたを挙げています。
B向けのなんか普通にSaaSっぽいサービスでも、映画の予告みたいなものを作って、すごくローンチの盛り上げが皆さんうまくなってるし、期待感がすごくなってきて。
草野さんはほかにHumaneも例に挙げつつ、すでに多くのフォロワーを持つ起業家が、自分たちやチームでムーブメントを作るのがうまくなったと見ています。
宮武さんは、とくに重要な初動のムーブメント作りに注目します。最近のアメリカでは、まったく無名のファウンダーが飛び抜ける例はあまり見られず、事前にオーディエンスやファン、投資家とのつながりを作ってからローンチするのが一般的になったといいます。
そもそもなんかそれがもうなんか必須条件になっちゃってるのかっていうところは、まあ単純にマーケティングのスキルセットが皆さん上がったっていうところかもしれないですよね。
草野さんは、発信がうまくなったのは起業家だけではないと続けます。Y Combinator ── アメリカを代表するスタートアップ支援組織。AirbnbやDropboxなどを輩出したことで知られますはショート動画に凝り始め、Bessemerはリールに力を入れ、アンドリーセン・ホロウィッツはPodcastを展開しているなど、VCもマスに届けるコンテンツ作りを強めているといいます。
宮武さんも、Podcastを短く切り抜いて編集して出すVCが増えたと応じます。全員のマーケティングの水準が上がったからこそ、さらに新しいテクニックを使わなければならない状況になっているのではないか、という見立てです。
凝ったブランディングが当たり前になると何が起きる?
宮武さんは、ArcやVacation、Red&Linkが出したシリアルブランドのように、90年代へのオマージュを効かせた凝った表現が、すでに普通になり始めていると指摘します。そのため、今後は初期のバズを作ること自体が難しくなるかもしれないと話しています。
大企業も、Appleを見習ったと思われる形でプレゼンテーションにこだわるようになりました。草野さんは、Amoのように「使っていないけど良さそう」と思わせるほどブランドが強いスタートアップが増え、それが当たり前になったらどうなるのだろうと疑問を投げかけます。
宮武さんは、スタートアップがここまでブランド化している背景に、2つの要因を挙げています。
競争の激化
スタートアップ同士の競争が激しくなった
ソフトウェアのコモディティ化
機能だけでは差がつきにくくなった
アテンションの獲得難
ブランドを作らないと、そもそも注目されない
口コミの遅れ
ローンチしてすぐ口コミが広がる時代ではなくなった
作ってなんかローンチして、ある程度ユーザーが集まってすぐに口コミが入ってくるっていうのが結構難しくなった時代になり始めたのが、本当に今年なんか見えてきたのかなっていうのは思いましたね。
宮武さんは、この流れはおそらく日本にも最終的にやってくるだろうと見ています。
草野さんはさらに、コンテンツを作る側だけでなく、それを紹介する側もうまくなっていると付け加えます。「このアプリやブランドがなぜイケているのか」を語る人が増え、サイクルが速くなった結果、ブランドが優れている理由まで皆が知ってしまう状況が生まれているといいます。
草野さんはこれを、コンテンツクリエイターに加えて「コンテンツ解説者」も増えている現象だと表現しました。宮武さんは、自分たちのような立ち位置の人が増えたということだと受け止めています。
第9位「クリエイターが起業家になった年」、Primeはなぜ急成長した?
第9位の「クリエイターが起業家になった年」について、宮武さんは、最初からコンテンツを作っている人たちの強さが際立った年だったと話します。クリエイターの起業自体は以前からある流れですが、2023年はメインストリームへブレイクスルーするブランドがいくつも出てきたといいます。
宮武さんが挙げた例は、売上750ミリオン(7億5000万ドル)が見込まれるSkims、300ミリオン程度とされるセレーナ・ゴメスのRare Beauty、100ミリオン以上とみられるMrBeastのFeastablesです。そのなかで宮武さんが最も驚いたのが、スポーツドリンクのPrimeでした。
宮武さんによると、PrimeはUFC、LAドジャース、アーセナル、FCバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンなどとも契約し、アスリートとも提携しています。草野さんは、もともと大手卸での取り扱いがあった中で、ここまで大きくなった決め手は何なのかと尋ねました。
宮武さんは複数の要因を挙げています。クリエイター2人が熱心に推していること、そして初期にサプライチェーンの問題で品薄になり、売り切れ状態がかえって子どもたちにとってのステータスシンボルになったことです。
わざとかどうかはわからないですけど、まあでも、個人的にはわざとだと思うんですけど。
さらに宮武さんは、ゲータレードのような古いブランドがひしめく市場に新世代として入るポジションだからこそ、マーケティングで強く押したり、既存ブランドを明確に敵対視したりといった振る舞いができたことも重要だったと見ています。もちろん、2人のファンが非常に多いことも大きな要因です。
宮武さんは、ほかにもエマ・チェンバレンのChamberlain Coffee、NELK BoysのHappy Dad、100ミリオン規模のテーマパーク構想を発表したDude Perfectなどを挙げています。
一方で宮武さんが強調するのは、大型クリエイターだけではないという点です。ガーデニング系YouTuberのEpic Gardeningは、登録者270万人ほどでありながら、ガーデニング用品のECサイトで約30ミリオンを売り上げているといいます。
アート系チャンネルを運営するサラ・レネー・クラークさんも、登録者は30万人ほどながら、2023年は円換算で2〜3億円ほどの売上になる見込みだと宮武さんは紹介しています。
今までの既存レガシーブランドと比べて圧倒的な信頼度を持ってるっていう、そこがやっぱり何よりも強いっていうところですね。
Primeを世界中の店頭に並べたオペレーションの裏側
草野さんは、Primeには別に社長がいるという話に触れ、その人物の経営力が成功の鍵なのかと問いかけます。宮武さんによれば、その人物は裏方として動いており、基本的な仕事は、Primeをできるだけ多くの場所に置いてもらうことです。
(Feastablesも)多分いろいろ課題を抱えてたはずなんですけど、やっぱりめちゃくちゃ多くの場所に、その商品を入れるってすごい難しいことなので。
草野さんは、KSIとローガン・ポールの知名度が決め手だとしても、アメリカだけでなくさまざまな国に卸せているのはすごいと話します。宮武さんも、それを可能にしたオペレーションを評価しています。
ただし、その拡大には大きなコストがかかりました。宮武さんは、真偽はわからないと断ったうえで、ローガン・ポール自身が「一時期は月に100億円ほどの赤字だった」と語っていたことを紹介しています。現在は黒字化に近いという噂もあるといいます。
宮武さんによると、この生産スピードを支えるには多額のアップフロントのコストが必要で、卸への対応も非常に大変です。あまり知られていない裏方のオペレーション会社が、Primeの強さを支えているという見方で、第10位と第9位の話は締めくくられました。
第8位「なんでも広告ネットワーク化」、Amazonの広告売上はどれほど?
第8位は「なんでも広告ネットワーク化」です。宮武さんによると、ここ1〜2年のトレンドではあるものの、2023年はとくに話題になりました。AppleのiOSアップデートなどで広告環境が変わるなか、多くの企業が自社のアドネットワーク ── 複数の広告枠をまとめて広告主に販売する仕組み。自社サービス内の広告枠を外部の広告主に売る形も含みますを作りたがっているといいます。
その最大のベンチマークがAmazonです。宮武さんによると、収録時点で直近の第3四半期のAmazonの広告売上は12ビリオンで、年間50ビリオンほどのペースです。
宮武さんは、この50ビリオンという規模を、企業1社の売上と比べて説明しています。広告だけで、HP、Intel、丸紅、ユナイテッド航空、オラクルの売上とほぼ同等で、ソフトバンク、コカ・コーラ、Nvidia、ロレアルの売上を上回るといいます。
この成功を見て、多くの企業が似た戦略を取ろうとしています。宮武さんと草野さんが挙げた各社の広告ビジネスの数字は次のとおりです。
| 企業 | 広告の位置づけ | 紹介された数字 |
|---|---|---|
| Amazon | 最大のベンチマーク | 四半期12ビリオン、年間50ビリオンのペース |
| Instacart | リテールメディア | 売上の約3分の1が広告 |
| Uber | 2023年に初の四半期黒字化 | 年間約650ミリオン、翌年1ビリオンを想定 |
| Walmart | リテールメディア | 年間約2.7ビリオン、営業利益の約10%と推定 |
2023年に上場したInstacartについて、草野さんは、グローサリー系アプリで商品を検索すると広告が出るリテールメディア ── 小売企業が自社のECサイトや店舗、アプリを広告媒体として活用する仕組み。購買データを活かしたターゲティングが強みとされますだと説明します。宮武さんは、提携スーパーのデジタルディスプレイにも広告を表示できることに触れ、広告がなければInstacartはおそらく黒字化していないと話しました。
Walmartの広告売上は、売上全体611ビリオンに対して0.5%未満と小さく見えます。しかし宮武さんは、小売はマージンが非常に低く、営業利益は20ビリオンほどしかないと指摘します。広告のマージンを80%程度と見積もると、営業利益の約10%が広告から来ている計算になるといいます。
広告の導入はほかの業界にも広がっています。動画配信ではNetflixやDisney+が広告プランを追加し、ホテルではマリオットが客室のテレビで広告を流しているほか、Robloxも広告を展開し、ユナイテッド航空もアドネットワークの構築を検討しているといいます。
広告に頼りすぎた1年だった?宮武さんの懸念
宮武さんは、この広告ネットワーク化の加速を個人的にかなり心配しています。売上の3分の1が広告というInstacartの状態は、事業として健康的ではないと考えているからです。
広告ってどうしてもコモディティビジネスなので、アテンションっていうコモディティを売るビジネスだと思ってるので。
宮武さんによると、Metaのように世界中の誰にでもリーチできるスケール可能なビジネスなら広告は問題ありません。しかしそれ以外の企業にとって、広告は基本的に利益率を上げるための施策にすぎないといいます。
宮武さんは2023年を、広告に頼りすぎた年だったのかもしれないと表現しています。草野さんの質問に答える形で、Instacartの売上の約3分の2は今も購入者からの手数料であることも補足しました。
(手数料)だけで補えない、プロダクトだけで足りないっていうのは一つ、ちょっと心配するべきポイントかなと思うので。
宮武さんが懸念するのは、SNS以外の会社で売上が伸びているように見えても、短期的に売上を伸ばしやすい広告に頼っているだけではないか、という点です。
草野さんは、広告ビジネスは悪いところばかりではないという話も以前していなかったかと尋ねます。宮武さんは、それは翌年に話す予定の内容だと予告しつつ、その議論はSNSという特定の分野についてのものだと説明しました。
アテンションそのものがプロダクト。ユーザーから課金するのも難しく、広告が主な収益源になる
コア事業はアテンションではなく取引。取引から生まれる価値がどれほどあるかを問い直す必要がある
第7位「中国アプリの成長」、Temuはなぜ話題であり続けた?
第7位は「中国アプリの成長」です。前年の6位から順位は下がったものの、2人は事前の打ち合わせで入れるべきか悩んだといいます。TikTok、Shein、そしてECアプリのTemuと、中国アプリは長く話題であり続けており、草野さんは「ここまでずっと話題なのもすごい」と話しています。
宮武さんによると、前年はTemuが9月にローンチしたばかりで、話題の中心はSheinでした。2023年はTemuが強すぎて、入れるしかなかったといいます。
宮武さんによると、アメリカでの成長は最近止まりつつあるという話もある一方、Temuは2023年に日本や韓国へも展開しました。日本では7月1日から11月2日までの124日間のうち101日間、ショッピングアプリとしてアプリストア1位を保っていたといいます。
宮武さんは、これには異常なほどのお金がかかっているはずだと見ています。草野さんもスーパーボウルでCMを出していたことに触れました。
Temuは現時点では完全な赤字事業ですが、宮武さんによると、親会社であるPinduoduoの売上の28%ほどがTemuではないかと言われています。Pinduoduoは2023年、時価総額でアリババを超えました。
Sheinも成長を続けています。宮武さんの説明では、5月に66ビリオンの時価総額という形になり(ダウンラウンド)、前年の売上は23ビリオン、利益は800ミリオンでした。2023年はH&Mをほぼ確実に追い越し、ZARAを抜く可能性もあるといいます。
さらにSheinはForever21と提携し、その運営会社Sparc Groupの株式の3分の1を取得しました。サードパーティのセラーの受け入れもアメリカに広げ、上場申請も出しています。宮武さんによると、ヨーロッパではアプリのMAUでTemuとSheinがeBayを超えており、完全にトップティアに入り始めています。
TikTok Shop、BYD、TikTok禁止論。中国企業をめぐる攻防
中国アプリの3つ目の例は、アメリカで2023年に強くプッシュされたTikTok Shopです。宮武さんによると、1日あたりの平均GMVは夏頃に約1ミリオン、9月時点で約5ミリオンとなり、ホリデーシーズンには15〜20ミリオンになると予想されていました。
宮武さんは、アメリカのアプリチャートで2位前後に入ったReelShortにも触れています。ショートフォームのドラマシリーズを配信するアプリで、Quibi ── 2020年に始まった短尺動画配信サービス。巨額の資金を集めたものの、半年ほどでサービス終了に追い込まれましたを思い出させるとしながらも、前年8月のローンチから累計1100万ダウンロードほどに達しているといいます。
宮武さんは、中国企業の勢いはアプリだけではないと続けます。中国の電気自動車メーカーBYDは、2023年第4四半期に販売台数でテスラを超えると予想されており、そうなればテスラは電気自動車が普及し始めて以来、初めて1位でなくなるといいます。
一方で、アメリカ政府と中国政府の関係はよくありません。2023年にはTikTokへの政府の調査があり、一部の政府機関で使用禁止になったほか、全米で使えなくなるのではという話も出ました。
宮武さんによると、モンタナ州は翌年1月からTikTokを禁止する法案を認めたものの、裁判所がそれを認めず、結局禁止できませんでした。翌年は大統領選があるため、TikTokの禁止どころではないかもしれないとも話しています。
逆に(TikTokを)禁止にできるんですかっていうのもちょっと(思います)。
めちゃくちゃいいポイントです、それは。そもそも特にアメリカって、その言論の自由をすごい大事にする国なので。
草野さんは、前年にイーロン・マスクのTwitter買収で言論の自由が盛んに議論されたことに触れ、あの議論は何だったのかと感じると話します。TikTokはトレンドの中心を作る面白いカルチャーなので、アメリカの人も使えたらいいと、他人事ながら思うといいます。
宮武さんは、多くのユーザーもそう思っているはずだとしたうえで、セキュリティ面は気にすべき部分であり、米中関係によって中国アプリの今後は大きく変わると話しています。VC業界でもSequoiaやGGVが中国部門を切り離しており、中国から撤退する動きがトレンドになりつつあるといいます。
第6位「シリコンバレーバンク破綻」、あの数日間に何が起きた?
第6位は「シリコンバレーバンク破綻」です。2023年3月の出来事で、草野さんは「今年だったんだ」と感じるほど前のことに思えると話しています。
宮武さんは、覚えていない人のために経緯を説明します。多くのスタートアップやVCを支えてきた銀行であるシリコンバレーバンク(SVB)で取り付け騒ぎ ── 銀行の経営不安などをきっかけに、預金者が一斉に預金を引き出そうと殺到する現象。銀行の資金繰りが追いつかなくなり、破綻につながることがありますが起き、株価が暴落しました。最終的に政府が介入し、預金者の預金を保護する形で救済されたといいます。
草野さんは、当時はVCが投資先のスタートアップに「大丈夫ですか」と次々に連絡を取っていたと振り返ります。宮武さんも、知り合いのスタートアップやVCから一気に全員から連絡が来たのは、おそらく初めての経験だったと話しています。
そもそもスタートアップとしては、そのお金が取り出せないってなると一番やばいじゃないですか。そもそも次の給料日で、従業員の給料が払えなくなるので。
デジタル上の取り付け騒ぎが突きつけた、想定外のリスク
宮武さんがSVB破綻で重要だと考えるのは、ほぼ初めての「デジタル上の取り付け騒ぎ」だった点です。これまでは預金を引き出すために銀行の前に並ぶ必要がありましたが、すべてがデジタル上でできると、全員が一気に引き出せてしまいます。
一斉の引き出し
デジタル上で全員が一気に預金を引き出せた
巨額の流出
SVBでは1日目だけで42ビリオンが引き出された
連鎖
複数の地方銀行でも同じ現象が起きた
政府の介入
アメリカ政府がやむなく銀行を救済した
宮武さんはこれを、スタートアップ側もVC側も誰も想定していなかったリスクを、1週間ほどで突きつけられた出来事だったと表現しています。現在のSVBは、経営陣が変わり、資産の一部を売却したうえで、一部事業を再開しているといいます。
草野さんが、連絡は現状共有のようなものだったのかと尋ねると、宮武さんは基本的には現状共有で、場合によっては相談もあったと答えます。たとえば、一部のお金を動かせたものの、次にどの銀行へ入れるべきかという相談です。移した先の銀行でも取り付け騒ぎが起きれば困るため、大手銀行に入れるべきかどうかといった相談が多く交わされていました。
宮武さん自身も、騒ぎが起きた瞬間に何人かの投資先へ、早めに資金を移したほうがいいかもしれないと連絡していたといいます。
結局VCが若干取り付け騒ぎを起こした部分もあるんですけど、でもVC側からすると、それを起こしてでも自分の投資先を守るっていうのが重要なので。
宮武さんは、一部にはVCの責任もあるものの、根本にはSVBの投資ミスなど経営の問題があったと整理しています。そのうえで、本当に怖い5日間から1週間ほどだったと振り返りました。番組は前編としてここで区切り、5位から1位は次回に持ち越されています。
まとめ
2023年テックニュースTOP10の前編では、ブランドと発信力が起業の前提になったこと、本業以外の広告収入に頼る企業が増えたこと、中国企業が米中対立のなかでも存在感を強めたこと、そしてデジタル時代ならではの銀行危機が起きたことが語られました。
- 起業家はローンチ前からファンを集め、映画の予告のような動画で初動を作るのが当たり前になりつつある
- Primeのように、クリエイター発のブランドは既存ブランドを上回る信頼を武器に急成長している
- Amazonを手本に多くの企業が広告ネットワーク化しているが、宮武さんは広告への依存が事業の健全性を損なうと懸念している
- Temu、Shein、TikTok Shop、BYDなど中国企業が伸びる一方、TikTok禁止論やVCの撤退など米中関係が今後を左右する
- SVB破綻は、デジタル上の取り付け騒ぎが1日で42ビリオンもの預金流出を招くという、誰も想定していなかったリスクを示した

