ばらばらに見えるティールの主張は、なぜ一本につながるのか
Off TopicのPART3は、ピーター・ティールの「鉄板ネタ」がどうつながっているのかを探る回です。宮武さんは、ティールが個別に尖ったことを言っているのではなく、特定の世界観を持ち、その世界観の部品を尖った形で語っているだけ��はないかと考えています。
宮武さんは、これはティール本人が言ったことではなく自分の推測だと断ったうえで、ティールがアメリカに根本的に求めているのは「成長」だと整理します。ここでいう成長とは、生産性やGDPが上がり続けることです。
まあアメリカ、まあ特にそのアメリカっていう国に求めてるのかっていうと、なんか、もう、「成長してほしい」っていうのが多分根本としてあるんですよね。
ところがティールの見立てでは、アメリカのイノベーションはこの40〜50年間、減速してきました。それでも他国と比べるとまだトップにいること、そしてソフトウェアという一部の領域だけが大きく伸びていることから、アメリカ人の多くはその減速を感じていない、というのが宮武さんの説明です。
成長が止まると、なぜ社会は分裂するのか
ティールの仮説では、政治的な分裂も成長のなさとつながっています。宮武さんはこれを、従業員50人ほどのスタートアップのたとえで説明します。
業績が厳しいスタートアップが全員の給料を10%下げると決めた場合、社員は満足はしないものの「会社を育てるための犠牲」として理解はできます。しかし社内が2つの派閥に割れていると、「なぜあの人も受けるのか」「我々は5%でいいのでは」と、会社ではなく派閥のための争いになってしまいます。
宮武さんは、アメリカのような議会制民主主義の国では抑制と均衡のチェックが入るため素早い判断ができず、限られた予算の取り合い、つまりゼロサムゲームになりがちだと話します。逆にGDPが伸び続けていれば、全員に取り分が残るので争いにはなりにくいという考え方です。
伸びてないからこそ、えー、ゼロサムゲームになって、みんなの中、今残ってるものを取り合って、それで、それによって分裂が起きるんじゃないかと。
うーん、そっちが先なんですね。
ティールの見方では、分裂はイノベーション減速の「下流効果」です。分裂は被害者意識やポピュリズム、問題を誰かにスケープゴートする動きを生み、社会を均一化させます。その結果、異端的な考えが出しにくくなり、さらにイノベーションが減速するという循環が起きていると宮武さんは説明します。
イノベーションの減速
GDPや生産性が伸びず、分け合えるパイが増えない
ゼロサム化と分裂
残った予算の取り合いになり、派閥ごとの争いが起きる
被害者意識・ポピュリズム
課題を誰かにスケープゴートする動きが広がる
社会の均一化
異端的な考えが出しにくくなる
さらなる減速
新しいアイデアが生まれにくくなり、最初に戻る
宮武さん自身は、この考えには一理あり、どちらが先かは答えが出にくく、互いに関連し合っているのだろうと受け止めています。
キャンセルカルチャーと「変人を祝わない社会」
草野さんは、被害者意識のカルチャーやポピュリズム、キャンセルカルチャー、ウォークがイノベーションの減速とどれほど密接に関わるのかは、まだ理解しきれないと率直に話します。
宮武さんは、キャンセルカルチャーは人を守るという意図自体は良いものの、結果としてぶっ飛んだアイデアを出しにくくしてしまう面があると説明します。
草野さんは、セクハラやパワハラをするCEOをキャンセルしてよいのか、それとも「結果を出している特別な人だから」と許すのか、そのバランスをティールはどう考えるのかと問いかけます。宮武さんは、全シナリオに答えられるわけではないので、ティールは基本的に「法律ベース」で、ハラスメントは報告され裁かれるべきだと答えるだろうと推測します。
でも確かに、その、いいですか。その世論がちょっと過剰になってるっていうのはちょっとわかる気がします。もうこの人絶対悪だから、もう次、次はもう潰そうみたいな風になってしまうのはなんか良くないのかな。
宮武さんによれば、ティールが懸念しているのはキャンセルカルチャーそのものより、新しいことを言えなくなっていく社会の方向性です。草野さんが挙げた「いい人でいなくちゃいけない」という空気も、宮武さんはかなり近い話だと応じます。
草野さんは、もしイーロン・マスクがネットのない時代の人物なら、新聞や人づてでしか知られず、クレイジーさの輪郭がぼやけていたかもしれないと話します。
宮武さんは、世界を変える起業家は多少なりクレイジーな人たちであり、どこまで許すかには明確な答えがなく、ティールもそこに答えを出しているわけではないと整理します。
なんかどうしてもなんか、あんまり祝おうとしない。変人が世界を変えるのに変人を祝わないっていう。
宮武さんは、すごい変人と危うい変人の差はわずかで、その差を基準化できないからこそ、社会として扱いにくいのだろうと話しています。
次のザッカーバーグはSNSを作らない。起業に必要なのは何か
ティールがイノベーションを重視する理由について、宮武さんは、下の世代が親の世代よりよい社会を築くには発展が必要で、その発展はテクノロジーと科学から来るというのがティールの根本的な考えだと説明します。
ただし、まったく新しいものを生み出す方法は、教育や書き物にまとめにくいものです。既存のものをコピーしたり少し改善したりする話ではないため、明確なやり方がありません。
宮武さんは、明確なフレームワークを出すとそれがゲーム化され、本当の起業家が生まれにくくなる気がすると話します。草野さんは、フレームワークを正しく実践して成功する人もいると補います。宮武さんは、例としてリーンスタートアップ ── 仮説検証を小さく素早く繰り返して事業を作る手法。エリック・リースの同名書籍で広まり、スタートアップの定番の考え方になりましたを挙げ、本としては正しく多くの人の参考になったものの、「それが絶対の正解」になってしまうことに違和感があると述べます。
成功者から学ぶことは大事でも、真似しようとするとうまくいかない、というのが宮武さんの見方です。だからこそティールは『ゼロ・トゥ・ワン』で「誰も始めたことのない、すごい会社とは何か」を問うのだと説明します。
ティールが面接でも使うという「賛成する人のほとんどいない大切な真実とは?」という問いは、事前に知っていても答えにくい質問です。宮武さんは、この問いに必要なのは頭の良さではなく、全員から間違っていると言われる中でそれを口にする勇気だと強調します。
無難なことは言っても驚かないですからね。
ティールは、今の世界で天才以上に不足しているのは勇気ある人だと語っており、宮武さんはそれが昔からの傾向でありつつ、今はなおさらそうなのだと補足しています。
「アメリカはずっとNo.1」は本当か
宮武さんは、アメリカのGDPが自動的に上がり続けることはなく、上がり続けること自体がレアだと話します。だからティールにとって「アメリカは間違った方向に進んでいないか」という問い自体が重要になります。
草野さんがテック層も同じ感覚なのかと尋ねると、宮武さんは、停滞を口にする人はいても、最終的に他国と比べれば「アメリカがナンバーワン」という結論になると答えます。中国の勢いへの意識は残っているものの、アメリカを出たいと考える人はほとんどいないといいます。
結果として、日本の方が平和だったり、日本の方がなんか安全だったり、いろんなことあるんですけど、結果的に事業を成長するとか、なんかより大きなものを作るってなると、やっぱりどうしても皆さん最終的には(中略)アメリカを選んじゃうんですよね。
宮武さんは、その状況を当たり前だと捉えている人が多すぎるからこそ、ティールは問いを投げかけるべきだと考えている、と説明します。そしてティールがここまでイノベーションの減速を気にする理由は、彼が最も恐れているもの、つまり世界の崩壊にあるといいます。
ティールが見るアポカリプスの2つの面白いポイント
宮武さんは、アポカリプスにはさまざまな形があると整理します。キリスト教文化の西洋ではハルマゲドン ── 新約聖書の『ヨハネの黙示録』に登場する、世界の終末における最終決戦の地の名前。転じて世界の終末的な大戦争を指す言葉として使われますや反キリストが語られ、冷戦期には核兵器、近年は環境問題、AGI、コロナ期にはバイオテロやウイルスが語られてきました。
ティールの師匠であるジラール ── フランス出身の思想家ルネ・ジラール。人は他人の欲望を模倣するという「模倣理論」で知られ、スタンフォード大学でティールに大きな影響を与えましたは、最終的に核兵器でみんなが死ぬと語っていたと宮武さんは紹介します。
1つ目のポイントは、どのアポカリプスにも本当に心配すべき点があることです。核兵器ならロシア・ウクライナやイスラエル・パレスチナでのエスカレーションの可能性、環境問題は地球全体への影響、バイオテロはAIの発展で作るのが簡単になっていること、AGIは頭のいい人たちがリスクを語っていることが挙げられます。
それでもティールが面白いと見るのは、ほとんどの人が1つのリスクにしかフォーカスしない点です。宮武さんは、グレタさんのように環境問題を語る人はAIや核兵器のリスクの理解が浅く、AIの人たちは環境問題のリスクを計算していないのではないか、というティールの指摘を紹介します。
それリスク考えるの大変ですもんね。
まあ暗く--暗くなっちゃいますよね。
2つ目のポイントは、人々がハルマゲドンとアンチキリストのどちらを恐れてきたかです。宮武さんによれば、多くの人はハルマゲドンを恐れてきましたが、本当に恐れるべきは、ハルマゲドンの前段階にあたるアンチキリストだといいます。
ハルマゲドンは最終戦争という絵が見えやすい一方で、キリストに見せかけて世の中を支配するアンチキリストは想像しにくいものです。宮武さんが紹介する『Lord of the World』と『War, Progress and the End of History』という2つの昔のフィクションでは、アンチキリストがどうやって世界を支配したのか誰もわからず、カリスマ的なスピーチの中身も誰も覚えていない、徐々にマインドコントロールされる世界が描かれています。
なんか気づいてたらそうなってたっていう。
平和と安全の名の下に生まれる世界政府
宮武さんの説明では、ティールにとってアンチキリストの現代版は「アポカリプス的な考え」そのものです。さまざまな人がアポカリプスを語り始めると、最終的に1つの解決案に行き着きます。それが、ティールが最も恐れる世界を支配する世界政府です。
難しいのは、世界政府が悪い意図から提案されるわけではない点です。草野さんが「みんなの安全を守るために共通のルールを設けましょう」と言い換えると、宮武さんはまさにそういうことだと応じ、草野さんも「普通にいいことな気もする」と話します。
宮武さんは歴史上の例を挙げます。1945年に原子爆弾が使われた後、開発に関わった研究者らがアメリカで『One World Or None』というショートフィルムを出し、核兵器を中立な世界政府に渡さなければ世界が滅びると訴えていました。
AIでも同じような議論があり、宮武さんはサム・アルトマンですらグローバルなAIの連合を作るべきだと述べていたと紹介します。異端的なアイデアを阻止しないとAGIによる滅亡シナリオにつながる、とするAIリスクの論文記事もあったといいます。
宮武さんは、アポカリプス的な要素を前にすると、平和と安全のもとに世界をコントロールする世界政府へ道のりが向かい、アンチキリストと同じく、何が起きているかわからないまま人々がそこへ向かうのではないかと話します。
うーん、難しいですね。その、小さい規模感でいうと、その、政府とか、その、法律とか警察とかもそうかもしれないですけど、その秩序を守るためにルールを設けて、そこのルールのもとにやっていきましょうみたいな、枠は必要だとは思うんですけど
草野さんは、ルールという枠が必要なのは理解しつつ、それをどの規模で、誰が権利を持って率いるのかがもっと難しいと指摘します。宮武さんは、平和と安全の名の下では、人々は知らぬ間にというより自ら受け入れるのではないかと応じます。
「こうして自由は死んでいく」。スター・ウォーズと聖書のスローガン
宮武さんは、『スター・ウォーズ』に同じ構図のシーンがあると紹介します。共和国が帝国になる場面で、悪質な人たちをやっつけ平和を守るために、一時的に帝国になるという投票が行われ、それが可決されます。
で、その時に、あの、ある、その、メイン、メインのキャラクターが言うのが、「こうして自由は死んでいくのですね」と。「万雷の拍手とともに」と。
宮武さんはこのセリフをとても正しいと感じ、英語で「Liberty」という言葉が選ばれていることにも、最終的に個人の自由に関わる話だという点で納得したと話します。
さらに宮武さんによれば、聖書にはアンチキリストのスローガンが書かれており、それが「平和と安全」だといいます。草野さんは「みんな欲しい」「それだけあれば幸せ」と率直に返します。
草野さんは、娘や家族など守るものがあると、深く考えずに安全の側を選んでしまうものだと話します。宮武さんも、それはごく普通の考えで、ほとんどの人にとって正解だろうと認めています。
カオスのアップサイドは、なぜ見えにくいのか
宮武さんは、安全を選びがちな理由として、カオスを選んだときのアップサイドが見えにくく、しかも保証されていないことを挙げます。起業しても多くの人は失敗するので、安全性だけで言えば大企業で働くのが正しく、世の中も基本的にそちらへ向いています。
大企業で働くなど、失敗しにくい。世の中は基本的にこちらに向いている
起業など、多くは失敗するがアップサイドがある。ただし保証はない
宮武さんは、スタートアップやVC業界にいるとこの構図はわかりやすいが、文化的・国レベルでも同じことが起きていると話します。
その例が、2001年の9.11テロ後にアメリカで成立した愛国者法 ── 2001年の同時多発テロを受けて米国で成立した法律。テロ対策として、政府による通信傍受や情報収集の権限を大きく拡大しましたです。宮武さんによれば、テロを見つけ出すために国内での盗聴が許され、安全の名の下で個人が自由を失う形になりました。
いや、絶対思ってしまい、しまいそうなんですよ。で、あの、米国愛国心法って、愛国、愛国者法か、は、えっと、多分ほぼ全員OKしたはずなんですよ。
宮武さんは、国が一体となって安全第一になる流れは避けにくいとしつつ、自由が削られるとイノベーションやイノベーターが出にくくなると指摘します。
ぶっ飛んだ教授が消え、人は自分のアイデアを押し潰す
宮武さんは、アメリカの大学には頭のいい教授はたくさんいるものの、頭が良くてぶっ飛んだ教授はなかなかいなくなっているという話を紹介します。データで測れるものではないと断ったうえで、そうした教授の変わったアイデアが、さまざまな考えを持つ学生を生んできたと話します。
宮武さんによれば、社会的なプレッシャーに耐えられない人は多く、ソーシャルEQが高い人ほどプレッシャーをうまく汲み取り、自分の変わったアイデアを押し潰す傾向があります。宮武さんは、自分も含めて全員そうだろうと話します。
でもなんかこの平和と安全っていう名の下、なんか新しいことができなくなる世の中って起きてもおかしくないと思うんですよ。
宮武さんは、ティールは世界がそちらへ向かっていると見ており、だからこそそれを阻止する動きが必要だと考えているのだと説明します。
世界政府は本当に生まれるのか。自由から始まるティールの循環
宮武さん自身は、世界がいくつもの派閥に分かれている以上、世界政府そのものが出てくるかはわからないとしています。一方で、NATOや国連のような国をまたぐ組織はすでにあり、米中などの競争がエスカレートしたりテクノロジーが危険になったりすれば、それをコントロールしようとする人は必ず出てくると話します。
草野さんが、完全に中立な組織をどうすれば作れるのかと尋ねると、宮武さんは、その時代の権力者がリードすることになり、国連やNATOも今はアメリカ中心で動いていると答えます。こうした組織は世界大戦のような巨大なリスクの後に作られやすく、AIの発展もその状況を後押しするといいます。
草野さんは、ティールは自由の中にも秩序のフレームがあったほうがよいと考えるタイプではないかと尋ねます。宮武さんは、ティールのベースには個人の自由が第一という考えがあり、法律を守るなど完全な自由ではないものの、今ある個人の自由が少しでも減ると減り続けるのではないかと恐れているのだろうと説明します。
個人の自由
すべての土台になる
新しいことができる
異端的なアイデアが試せる
新しい企業と生産性
国の成長につながる
分裂の縮小
完全にはなくならないが、今までより減る
カルチャーの改善
国・世界をもっと良くできる
宮武さんの整理では、ティールの根本は自由があるからこそ新しいことができるという考えです。ここから国レベル、カルチャーレベルで世界をもっと良くできると、ティールは信じているといいます。
ティールフェローシップからトランプ支持まで、ティールの対抗策
宮武さんは、ティールがこの流れに対抗するために取っている行動を紹介します。ティールフェローシップ ── ピーター・ティールが2010年代初頭に始めた奨学プログラム。大学を辞めて起業や研究に取り組む若者に資金を提供しますは、ティールが「ただただやばい組織」と見る今の大学から人々を救い出し、自ら新しいアイデアを考えさせるためのもので、お金やネットワークを提供しています。
VCのFounders Fund ── ピーター・ティールらが設立したアメリカのベンチャーキャピタル。SpaceXやPalantirなどに投資してきたことで知られますも、新しいものを作ろうとする人への資金提供という点で同じ流れにあると宮武さんは話します。
宮武さんによれば、ティールがもともとトランプを支持したのも、今のアメリカ政府をぶち壊し、ゼロから作り直してくれることを期待したからでした。しかしトランプはそれをせず、ティールはがっかりしたといいます。
草野さんが今の大統領選について尋ねると、宮武さんは、多くの人がハリス対トランプは拮抗すると見る中で、ティールはトランプが圧倒すると語っており、どちらかを選ぶならトランプを選ぶと言っていたと紹介します。投票日は11月5日ごろで、このエピソードの公開から1週間ほど後になる見込みだと話されています。
宮武さんは、世界政府に向かう道のりは少しずつ見えてきていると話し、その例として、OpenAIのサム・アルトマン、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・サツケバーらが、IAEA ── 国際原子力機関。原子力の平和利用を促進し、軍事転用を防ぐための国際機関ですのような国をまたぐ組織を作ろうとしていたことを挙げます。
世界観が見えたことで、ティールの話はすべて理屈が通る
宮武さんはPART3の結びとして、ティールの個々の話はそれぞれ面白く意味があると思っていたものの、全体の世界観が見えたことが個人的に大きな学びだったと振り返ります。
なんかそれがより見えたっていうのは個人的にはすごい学びになりましたし、それが正しいかを置いてなんですけど、あの、なんかその下で考えると、彼の今までの話は全部理屈通るなっていうのは思いました。
二人はいつかOff Topicにティールを呼びたいと話します。草野さんは『ゼロ・トゥ・ワン』の出版イベントでスタッフとして手伝った経験を明かし、宮武さんは、質問すると「前提が間違っている」と言われそうなので、いい質問を考えないといけないと笑います。
『短くて恐ろしいフィルの時代』に見る、みんなが賛同する支配
草野さんは、アンチキリストの小説の話から、ジョージ・ソーンダーズ ── アメリカの小説家。寓話的でユーモアのある短編で知られ、『リンカーンとさまよえる霊魂たち』でブッカー賞を受賞しましたの『短くて恐ろしいフィルの時代』を思い出したと話します。
草野さんが紹介する『短くて恐ろしいフィルの時代』の筋はこうです。1人ずつしか入れないほど小さな国の人がはみ出したとき、外側の大きな国のフィルという人物が見事な演説で税金を取ろうと提案し、ヒーローになります。フィルは役職を上げ、やがて大統領になってしまいます。
物語の中では、フィルに褒められることだけを望む参謀がつき、同意書を中身も見ずにみんなが書きます。中身を確認しようとした人は「尊敬していないのか」と責められます。さらに「平和促進隔離区域」と称して、はみ出た人々を隔離し、小さな国の人たちを消し去ろうとします。
やばい。もうアンチキリストじゃないですか。
宮武さんは、こうした支配を人々は一人の悪い王やリーダーがやると想定しがちだが、必ずしもそうではないと話します。リーダー的な存在は出てくるとしても、カリスマのいる中で全員が賛同して進むのではないか、という見方です。
ああ、怖いですけど、その一人になる可能性は大いにありますよね。
宮武さんは「いろんな人を疑えるようになりましょう」と呼びかけ、草野さんが「ぶっ飛んでもいきましょう」と返して、この回は締めくくられます。
まとめ
宮武さんの推測として描かれたのは、イノベーションの減速が分裂を生み、アポカリプスへの恐れが平和と安全の名の下の世界政府へとつながるという、ティールの一本の世界観でした。その対抗軸として置かれているのが個人の自由です。
- ティールの根本にあるのは、アメリカに成長し続けてほしいという願いで、分裂はイノベーション減速の下流効果だと見ている
- 新しいものを生むには頭の良さより、誰も賛成しない真実を言う勇気が必要だとティールは考えている
- ティールが最も恐れるのは、アポカリプスへの対策として平和と安全の名の下に生まれる世界政府である
- 9.11後の愛国者法のように、人は安全のために自ら自由を手放しがちで、そのトレードオフを考える必要がある
- 支配は一人の独裁者ではなく、全員の賛同によって進むかもしれないからこそ、物事を疑える姿勢が大切だと語られた




