D2Cの優等生Awayはどんな会社だったのか
2019年12月初旬、スーツケースのD2Cブランド「Away」の共同創業者でCEOのステフ・コリーさんが、社内でのパワハラなどが原因で辞任したというニュースが出ました。今回のOff Topicは、Twitterでのリクエストを受けて、この件を取り上げています。
草野さんはまずAwayのおさらいから始めます。Awayはスーツケースに特化したラゲージブランドで、D2C ── Direct to Consumerの略。メーカーが小売店などを介さず、自社のECサイトや直営店で消費者に直接販売するビジネスモデルですといえばAway、という存在の会社でした。
草野さんによると、Awayは創業からわずか4年で世界40カ国で販売し、販売数は100万台ほど。ロンドンやアメリカを中心に10か所以上の実店舗を持ち、Forbesによれば2017年に黒字化を達成しています。
Awayの面白さについて、草野さんは「スーツケースではなく旅の楽しさを売るトラベルカンパニー」を名乗っている点を挙げます。旅に関する雑誌なども手がけ、ただのリテール企業ではないところに魅力があるといいます。
なんか多分そもそものプライスポイントが、いわゆるコスパがめちゃくちゃいいっていう話で、多分最初(Awayは)売れたと思うんですけど。
いわゆるデザイン性が良くて、で、[[リモワ]]ほど高くなくて。
宮武さんは、デザイン性が高く、高級ブランドのリモワほど高くない価格帯が、Awayが最初に売れた理由だと見ています。草野さんも、その真ん中の価格帯が空いていたことが成功の要因ではないかと応じます。
Awayは2019年5月に1億ドルを調達し、評価額は14億ドルのユニコーン ── 評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業のこと。めったに見つからない存在という意味で、伝説の一角獣になぞらえて呼ばれますになりました。ただ宮武さんによれば、当時VC業界では「高すぎないか」という声もあったといいます。
いい会社っていうことは間違いないと思うんですけど、いいプロダクトではあると思うんですけど、まあまあ1ビリオンの会社なのかっていうところですね。
創業者は、メガネのD2C企業ワービーパーカーで働いていたステフ・コリーさんとジェン・ルビオさんの2人です。ジェン・ルビオさんはAwayのチーフブランディングオフィサー(CBO)を務めています。
The Vergeが暴いた「恐怖とバーンアウトの文化」とは
2019年12月、アメリカのテックメディア「The Verge」が、CEOのステフ・コリーさんによるパワハラや社内の内情を伝える長文の暴露記事を出しました。草野さんによれば、TechCrunchやForbesなど他のメディアでも取り上げられ、日本でも少し話題になったといいます。
宮武さんの説明では、The Vergeの記事は14人の元従業員から集めたSlackのメッセージログを基に書かれています。従業員を罵倒するステフさんのSlackのスクリーンショットもリークされていました。
記事が伝えた内容は、異常に長い労働時間、休みが取れない環境、Slack上で経営メンバーから公開処刑されることの繰り返しでした。夜遅くや週末でもメッセージにすぐ答えないと怒られる状態だったといいます。
まさにすごいブランドなのに、裏では恐怖とバーンアウトの文化だったみたいなことをザ・バージが出していて。
この記事のあと、ステフ・コリーさんは辞任します。さらにその後、The Vergeは2本目の記事を出しました。辞任を見た別の従業員たちが「私たちにも言い分がある」と声を上げたものです。
主にカスタマーサポート側の従業員の訴え。Slackでの公開処刑や長時間労働など、社内文化の問題が中心
ステフさんの辞任後に出たもの。主に小売店スタッフの訴えで、会社が店舗の環境を整えていなかった問題が中心
宮武さんは、この2本の記事の中身をどちらも軽く紹介していきます。
メール禁止・DM禁止のオープン文化はなぜ生まれたのか
宮武さんはまず、Awayの社内コミュニケーション文化を説明します。Awayではほとんどのやりとりを、スタートアップでよく使われるチャットツールのSlack ── アメリカ発のビジネス向けチャットツール。チャンネルと呼ばれる話題ごとの部屋でやりとりする仕組みで、スタートアップを中心に広く使われていますで行っていました。
Awayの社内ルールは独特でした。普通のメールのやりとりは基本的にNGで、さらにSlack上のダイレクトメッセージ(DM)も原則禁止です。ランチに誘う程度ならよく、ビジネスの話はすべて誰でも見られるパブリックなチャンネルで行うことになっていました。
宮武さんは、このルールには悪くない理由があったと強調します。ステフさんとジェンさんは、ワービーパーカーなど過去の職場で、重要なミーティングに関するメールの宛先から女性社員がよく外されていることに気づいていました。
(メールを)やりとりをしてしまうと、メールって人を選べるじゃないですか。あのToに誰を入れるか、CCに誰を入れるかっていうのを。
Slackのパブリックチャンネルなら全員が見られるので、全員にとってフェアになる。逆にDMは差別につながりかねない、というのがAwayのもともとの考え方でした。草野さんは「女性経営者だからこそわかることでもある」と受け止めています。
過去の経験
メールの宛先から女性社員が外されることに創業者2人が気づく
ルール化
メールとDMを原則禁止にし、Slackのパブリックチャンネルに集約
ねらい
誰でも見られる場で、全員にとってフェアなコミュニケーションにする
ただし宮武さんは、少し矛盾もあると指摘します。過去のインタビューによれば、ステフさんとジェンさんはワービーパーカー時代、プロジェクトがうまくいかない時にプライベートで話して励まし合ったことが、一緒に仕事ができると感じたきっかけだったそうです。
で、それ(創業のきっかけ)がDMじゃんって、プライベートで話してるじゃんっていうところで、若干矛盾してるかなっていうのはあるんですけど。
それでも宮武さんは、2人の根底には「フェアでオープンなコミュニケーションをしよう」という思いがあったことは忘れないでほしい、と念を押しています。
誰より働くCEOは、なぜ恐れられたのか
宮武さんによれば、Awayの創業者2人の思いは良かったものの、結果としては想像以上に悪い文化に向かってしまいました。従業員の不満は、圧倒的にCEOのステフさんに集中しています。
共同創業者のジェン・ルビオさんに不満が向かなかったのは、ジェンさんがほぼ社外にいて、会社の顔を担っていたからです。草野さんもジェンさんのInstagramをフォローしていて、旅をしたりアワードに出たりする姿は広告塔としてよく機能していると話します。
一方のステフさんは、社内でオペレーションを担う裏方でした。宮武さんによると、従業員全員が認めているのは、ステフさんがとにかく優秀で、誰よりも長く会社にいて、誰よりも熱心に働く人だという点です。
ただ、ステフさんはダイレクトにものを言う人で、センシティブな場面で怒鳴ることもあり、人を強く詰めてしまうタイプだったといいます。
宮武さんは、どれだけオープンな文化にしても、プライベートチャンネルは生まれてしまうものだと話します。Awayでも、LGBTQの従業員向けの「ホットトピックス」というチャンネルがあり、社内のおかしな出来事について愚痴を言い合っていました。
このチャンネルにはステフさんは入っていませんでした。ところがある日、ステフさんが急にそこに参加します。メンバーは心配しつつも、大きな問題にはならないだろうと考えていました。
呼び出された人たちが会議室に入った時に、相手はステフさんと会社の弁護士と会社の人事トップがいて、で、最終的にそのチャネルに入ってた全社員がクビになりましたと。
怖すぎる。
宮武さんによれば、クビになった元従業員たちは、ミーティング中にステフさんから「お前たちは人種差別をしている」と言われたと話しています。ただし、ステフさん本人はこの発言を否定しています。
基本的にあのステフさんがパソコンでタイプし始めると、みんな怖がるっていう文化だったらしいです。
人手不足のカスタマーサポートで何が起きていたのか
1本目の記事の中心は、カスタマーサポート(CS)チームの話です。宮武さんによると、従業員の多くはステフさんやジェンさん、そしてAwayのブランドに憧れて入社していました。
しかしCSチームは、対応すべき問い合わせの量に比べて人数が少なすぎました。スーツケースには季節性があり、新商品が出ると注文が急増しますが、その対応がまったく追いつかなかったといいます。
そこでステフさんに憧れる上司が部下にプレッシャーをかけていました。帰り際に「なんで帰るの?」と言ったり、「私は夜遅くまで頑張るけど、帰りたいなら帰っていいよ」という長文メッセージを送ったりしていたそうです。
帰りたいなら帰っていいよみたいな話をしたりとか、そうすると帰れないじゃないですか。
帰れないですね。社長にそんな言われたら。
年末年始の繁忙期には、上司が家で仕事をしている自分の写真をSlackに載せ、「私はこれだけ頑張っている」とアピールすることもあったといいます。草野さんは、こうしたことは良し悪しは別として日本でもありそうだと感じています。
休暇も十分に取れず、旅行中に呼び戻されたり、空港に向かう途中で「なんで休むんだ」と社内で問題になったりしたケースもあったそうです。最終的にステフさんは「これだけ対応できていないのに休暇を取るのはおかしい」と、休暇を認めない段階まで進みました。
宮武さんは、ここに見落としがあったと指摘します。社長のステフさんは株を多く持っていて強いインセンティブがありますが、従業員の持ち株はそれほどでもなく、給料も特に高くはありません。当時は残業代すら出ていなかったといいます。
草野さんは「スタートアップならよくある話では」と返しますが、宮武さんは、初期ならともかく、記事が扱っているのはすでに規模が大きくなったAwayの話だと説明します。CSチームは夜遅くまで働き、帰宅後も寝るまでサポートしていたそうです。
覆面電話から休暇の全面却下まで、CEOはどう現場に介入したのか
ステフさんは、CSの電話対応が遅いと感じた時期に、Awayのユーザーを装ってCSチームにランダムに電話をかけていたといいます。電話を取らなければ激怒したそうです。
宮武さんは、社長が店舗を回って対応を確かめるのは小売業ではよくあることだと補足します。草野さんも、そこまで社長が現場を見ていたこと自体はすごいと話しています。
問題になったのは、マネージャー陣が部下に研修をしていた時の出来事です。研修中は当然電話に出られませんが、ステフさんは会議室に入ってきて「なんで電話対応していないんだ」と怒ったといいます。
できないし、できない環境ぐらい人がいないというか。それ(電話対応の遅れ)はなんかその人たちだけの問題じゃないですよね。
人を増やさないといけない時に増やさなかったっていうのが多分一番のキーポイントなんですけど。
休暇を認めないという判断が出たのは、バレンタインデーの前日でした。ステフさんはサポート対応の遅れを見て、朝から長文のメッセージを次々に流し、休暇を一切承認しないと伝えたそうです。その理由は、従業員のキャリアのために「責任というスキル」を学ばせるためだというものでした。
パワーワードですよね。
休暇ですからね。休暇を取るのは権利なので。
その後、ステフさんが直接見ていたCSチームとの間に、Rent the Runway ── ドレスなどの衣服をレンタルするアメリカのスタートアップ。サブスクリプション型のファッションレンタルで知られていますから引き抜いた管理職が置かれました。カスタマイズできるスーツケースの発売で注文が殺到した際、この管理職は部下のメンタルを心配して守り、「すぐには対応できない」と押し返したところ、数か月後にクビになったといいます。
宮武さんと草野さんは、ユーザーと直接つながるサポートはD2Cブランドにとって一番重要な部分だと話します。そのうえで、こうした出来事が一年中、しかも全従業員が見られるSlack上の公開処刑として起きていたことが、従業員にとって最悪の環境だったと振り返ります。
全員が見られるパブリックチャンネルで、誰にとってもフェアなコミュニケーションをする
全従業員が見られる場で強い叱責が続き、公開処刑のような場になってしまう
暖房もない、銀行口座もない、小売店の現場で何が起きていたのか
2本目の記事は、Awayの小売店で働くスタッフの話です。宮武さんによると、こちらは社内文化というより、会社がスタッフに最低限の環境を用意していなかった問題でした。
ニューヨークの店舗でも、暖房が効かない、水が出ないといった状況があったといいます。草野さんは、それでは来店客の満足度にも響くのではと驚いています。
さらに多くの店舗には銀行口座がなく、売上の現金が店舗裏の金庫にたまり続け、あふれ出していました。ある店舗のマネージャーが撮った動画は、The Vergeの記事にも掲載されています。
のちに銀行口座ができてからも、本来ならセキュリティ会社に頼むはずの現金輸送を、マネージャー個人がダッフルバッグに入れて運んでいたそうです。宮武さんは「映画で現金を入れるような柔らかいバッグ」と表現しています。
ほかにも、エアコンやトイレが一時使えない、従業員用の水がなく近くのスーパーで買う、といった状況がありました。ゴキブリやネズミも出ていて、朝5時にネズミがモーションセンサーを作動させて警報が鳴ったこともあります。その様子を捉えた防犯カメラの画像もリークされ、従業員はネズミに「ミッキー」とあだ名をつけていました。
冬のニューヨークで暖房が動かない中、服装ルールでコートやマフラーは禁止されていましたが、あまりの寒さにスタッフはルールを無視したといいます。倉庫に入りきらないスーツケースが、階段から天井まで積まれていたこともあったそうです。
メールも使えずSlackは無反応、小売店はどう追い込まれたのか
小売店のスタッフはこうした問題をSlackで本社に伝えました。Awayではメールが禁止されていたため、Slack以外の手段はありません。しかし宮武さんによると、Slackでの連絡には基本的に返事がなかったといいます。
問題はカスタマーサポートの混乱ともつながっていました。問い合わせが多すぎてCSチームが対応しきれなくなった時期、経営陣はサイトからCS用の電話番号を一度消してしまいます。
問い合わせ過多
CSチームが明らかに対応しきれなくなる
窓口の閉鎖
経営陣がCS用の電話番号をサイトから消す
小売店へ殺到
電話番号が載っている小売店にユーザーが電話し始める
行き場がない
小売店スタッフがSlackで本社に問い合わせても返事がない
もちろん全部の質問(に)回答できないので、それをアウェイのSlackで送るんですけど、レスがない。じゃあどうすればいいっていうのが結構あったらしいです。
さらに、「本当の自分を会社に出そう」という会社のポリシーがありながら、小売店のスタッフはメイクの濃さなどを細かく指摘され、ナチュラルな見た目を求められていたそうです。
草野さんは、小売業で商品のイメージに合う身だしなみを求めるのは日本では当たり前だと感じます。宮武さんも、アメリカでもルール自体はよくあるとしたうえで、問題はポリシーとの矛盾だと説明します。
なんか全然ルール設定あれば、多分従業員ってそれに従うだけなんで、全然多分いいんですけど、そもそもポリシーが、ありのままの自分をっていう話が、それって違くないっていう話になっちゃうので。
スタートアップならハードワークは当然なのか?
ここまでの内容を受けて、草野さんは、この件には賛否両論があると話します。スタートアップだからハードワークは当たり前で、上司の当たりが強いのもよくある話だ、という見方もあるからです。宮武さんも、スタートアップでは珍しいことではないと認めます。
草野さんが紹介したのは、VCがよく身につけるパタゴニアのベストとオールバーズの靴をセットで売る「VC Starter Kit」というアカウントです。このアカウントがTwitterで、VCや起業家、ジャーナリストからAwayの件について匿名で意見を集めて公開していました。
集まった意見には、成功の優先度が高いスタートアップでは厳しい上司も仕方ないという声もあれば、そうした扱いは受け入れられないという声もありました。草野さんは、これまでの世代では仕方ないと受け入れられてきたことが、新しい世代やAwayのような会社では受け入れにくくなっていると感じています。
宮武さんによると、ざっと見て3割ほどがAwayのような文化は普通だという立場で、7割ほどがおかしいという立場だったといいます。そして普通だと言う側には、感覚的にVCが多く、他の創業者はダメだと言っていたそうです。
スタートアップは大変なのでこうした文化は普通、という声。VCに多い印象
これはおかしい、ダメだという声。他の創業者はこちらを言っている
VC側って中身理解してないんで、だから言ってる気もするんですよね。いわゆる結果、結果伸びてるじゃんっていう話で、結果オーライじゃんっていう話なんで。
宮武さんは、創業者側の発言は自社の従業員を意識した建前かもしれないとも付け加えています。また、社内のコミュニケーションはVCですらあまり見えておらず、外からは何が起きているかわかりにくいとも話しています。
「男性CEOなら記事にならない」は本当か?
宮武さんは、この問題自体は新しいものではなく、Amazonでも似た話はよくあると話します。そのうえで面白いと感じた意見として、ステフさんが女性だからここまで批判されたのではないか、という声を紹介します。
女性だからこれだけ批判されたのかなっていう声も結構上がったりして。これ男性だったら記事に絶対ならないっていう話が。
男性CEOならこうした振る舞いは「普通」と受け止められ、良いとは言えないまでも記事になるほどの驚きはない、という見方です。宮武さんはこれに一理あると考えています。
宮武さんは、ここ数年、女性CEOに対する社内の暴露記事が増えていると感じています。その理由の1つは、メディアやVC、従業員を含む一般社会が、女性CEOに違う期待値を持っていることではないかといいます。
女性CEOだと女性に対してもっとその、他の人種の人たちに対してもっとウェルカムな文化を作るのが当たり前。
草野さんは、Awayの件ではそうした多様性への配慮が欠けていたという話は出ていないと指摘します。宮武さんはそれを認めつつ、女性CEOには文化づくりやコミュニケーションを丁寧にする、あまり怒らない、といった期待が高まっていて、厳しい女性リーダーはそのイメージとずれてしまうのだと説明します。
草野さんも、女性CEOであることで記事のインパクトが大きくなり、Awayのようなブランド企業だとなおさらショックが大きいと受け止めています。
辞任とNetflixの事例、見え方はどう違うのか
宮武さんは、VC Starter Kitのツイートの中で、あるVCが「この件があってもAwayの売上はそれほど変わらないだろう」と言っていたことを紹介し、割と正しい指摘だと話します。
ステフさんの後任には、ルルレモン ── カナダ発のヨガウェア・スポーツウェアブランド。機能性とデザイン性の高さで人気を集めています出身の人物が就きました。草野さんと宮武さんによると、この人物はもともとCEOになる予定で決まっていたといいます。
ザ・バージの記事のせいで辞任したんだみたいな感じに見えがちなんですけど、まあ最終的に多分ステフさんって降りる予定だったと。
草野さんはNetflixの例も挙げます。Netflixでは社員が辞める際、その退職理由を全社にメールすることが話題になりました。それでもAwayほどの大きなインパクトはなかったと草野さんは感じています。
草野さんは、女性経営者がやっていることと、Netflixの熟練の経営者がやっていることでは見え方が違うのかもしれない、と話します。宮武さんも、確かに見え方は全然違うと同意しています。
Awayの失敗から何を学ぶべきか
宮武さんの結論は、文化の設定は難しいということです。良い思いで作ったSlack上のオープン化が裏目に出てしまいました。
宮武さんは、以前番組で紹介したベン・ホロウィッツ ── アメリカの起業家・投資家で、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者。経営や企業文化についての著書でも知られていますさんの本にも触れます。文化にはルール設定が必要ですが、実際に文化を作るのはその後のアクションだという考え方です。
もう1つの学びはインセンティブの違いです。CEOは株を持ち、会社を成功させる責任を負っていますが、CSの従業員とはビジョンもゴールもインセンティブも違います。宮武さんは、その違いを理解しないといけないと話しています。
草野さんは、中間管理職がクビになった件にも触れ、トップダウンで社長が直接現場を見るのではなく、ミドル層にもっと任せられる体制があるとよかったのではないかと考えています。宮武さんもこれに同意しています。
| 論点 | Awayで起きたこと | 番組の見方 |
|---|---|---|
| 文化づくり | オープン化の場で公開処刑が続いた | ルールよりその後のアクションが文化を作る |
| インセンティブ | 株を持つCEOと従業員で温度差があった | ゴールや動機の違いを理解する必要がある |
| 組織の層 | CEOが現場を直接見て、守った管理職はクビに | ミドル層にもっと任せる体制があるとよい |
Awayの件は社内チャットの使い方を変えるのか?
最後に宮武さんは、ネット上でこの件が「Slackのネガティブキャンペーンではないか」とも言われていたことを紹介します。草野さんも、最近アメリカのツイートで「もうSlackは嫌だ」という声を見かけると話します。
SlackとAwayには関係があります。草野さんは以前の番組で、ジェン・ルビオさんとSlackのCEOスチュワート・バターフィールドさんが付き合っているというゴシップを紹介しており、2人はその後婚約しています。
どうSlack上でコミュニケーション、いわゆる社内コミュニケーションがこの影響で変わるのかっていうのは若干なんか見るポイントかなと思っていて。
草野さんは、新しい選択肢として、資金調達をしたばかりの非同期型ビデオコミュニケーションサービス「Room」を挙げます。CSや営業でよく使われるもので、チャットでは説明しにくいけれどビデオ会議では時間を取られすぎる場面に向いているといいます。
宮武さんも、テキストでは長すぎる内容を動画で送るという使い方は人気になりそうだと応じ、2人は社内コミュニケーションの次の形に関心を寄せて回を締めくくります。
まとめ
Awayの件は、女性社員を排除しないために作ったオープンなSlack文化が、人手不足とCEOの強い叱責によって公開処刑の場に変わってしまった例として語られました。番組は、女性CEOへの世間の期待のずれにも目を向けつつ、文化はルールよりもその後の行動で作られると整理しています。
- Awayのメール・DM禁止は、宛先から女性社員が外される問題をなくすためのフェアな仕組みとして生まれた
- CSの人手不足、休暇の却下、小売店の劣悪な環境とSlackの無反応が重なり、従業員を追い込んだ
- 反応は3割が「スタートアップでは普通」、7割が「おかしい」で、前者はVCに多いと宮武さんは感じている
- 女性CEOにはウェルカムな文化や穏やかさが期待されやすく、それが報道の大きさにつながった可能性がある
- 文化はルール設定のあとのアクションで決まり、CEOと従業員のインセンティブの違いを理解する必要がある



