会場ブースで収録、Figma Configはなぜフェスっぽい?
今回のOff Topicは、普段のリモート収録ではなく、サンフランシスコのモスコーンセンターに設けられたブースからの収録です。会場は、Figmaが開くカンファレンスConfig ── デザインツールFigmaが毎年開く公式カンファレンス。新機能の発表やデザインに関するセッションが行われ、世界中のデザイナーが集まりますで、二人はFigmaのジャパンチームとPRチームから声をかけられて参加しました。
ブースには防音処理が施され、Figmaのロゴや、Figmaの要素をかたどったかわいい枕まで置かれています。草野さんは、会場の中にこうしたブースがあるのは日本ではあまり見ないと話しています。
草野さんは以前から、Figmaのイベントに行きたいと言い続けていたそうです。Configはカンファレンスでありながら、DJがいたり、会場全体でウェーブをしたりと、フェスのような楽しさがある点に惹かれていました。
いつもなんか(Configは)カンファレンスなんですけど、フェスっぽいなんか楽しさがあって、なんかDJとかいたり、なんかそのカンファレンスでウェーブみんなでするみたいな。
宮武さんは、Figmaがアメリカのスタートアップとして最初の5年ほど苦しみ、そこから大きく伸びた会社だと紹介します。そのうえで今回のConfigでは、過去10年ほどかけて4つのプロダクトを作ってきたFigmaが、一度に4つの新プロダクトを発表したことに驚いたと話しています。
草野さんが特に試したいと挙げたのは、Figma Make ── 今回のConfigで発表されたFigmaの新機能の一つ。AIを使ってアイデアから動くプロダクトの形まで作れることが紹介されました、Figma Sites、そして手書きのような表現が作れるFigma Drawです。Off Topicのサイトはとてもシンプルなので、新機能でいろいろ試してみたいと語っています。
一体感のあるプレゼンは何が違ったのか
宮武さんは新機能だけでなく、Configのプレゼンの仕方や雰囲気そのものが、Figmaのカルチャーを表現していて面白かったと振り返ります。草野さんも、昼休みにその点を話していたといいます。
草野さんが印象に残ったのは、他のカンファレンスと比べてコミュニティ感がとても強いことでした。登壇した従業員が「今回で6回目のConfig参加です」と話すような場面は、普通のカンファレンスではあまり見られないと語ります。
新機能の話をする前に、自分たちのこれまでのデザインの出会いとか、そこのストーリーを個人的な話からするっていうのはすごく共感するし、すごくいいプレゼンの仕方だなっていうのは思いました。
宮武さんは、登壇者の個人的なストーリーから新商品の話へ進み、最後は全員が同じビジョンに戻ってくる構成に注目しました。最初にCEOのディラン・フィールドさんが語った「アイデアからプロダクトの実装まで、すべてを担うのがFigma」という考えを、登壇者全員が一貫して口にしていたといいます。
宮武さんはこの統一感を、他のイベントではなかなか見ない一体感だと評価しています。会場には日本人の参加者も多く、草野さんは声をかけられたり、他のポッドキャスターに会えたりしたことを喜んでいました。
やっぱりデザインって何か言語があんまりいらないっていうか、ほんとデザイナーのコミュニティなんだなっていうのを思いました。
同じ週のStripe Sessionsと何が違う?
Figma Configと同じ時期のサンフランシスコでは、決済サービスStripeのイベント「Stripe Sessions」も開かれていました。二人は前年にStripe Sessionsにも参加しており、どちらも面白いとしたうえで、雰囲気はいい意味でまったく違うと話しています。
宮武さんは、Stripeが決済系のサービスであることや、創業者のパトリック・コリソンさんとジョン・コリソンさんの思想がディランさんとは少し違うことが、場の作り方に表れていると見ています。Figmaは楽しさを強調し、Stripeはユーモアを交えつつも真面目さがある、という対比です。
真面目じゃないといけないんです。なんか決済で遊びすぎると大丈夫かってなっちゃうので。
DJやウェーブなど楽しさを強調。登壇者の個人的なストーリーから入り、コミュニティ感が強い
ユーモアもありつつ真面目な雰囲気。決済サービスとして、遊びすぎない場の作り方
一方で、共通点もありました。FigmaでもStripeでも、AIを使ったライブデモが行われていたことです。
宮武さんは、どちらのデモも想定どおりの結果にはならなかったものの、それこそがバイブスコーディング ── 細かい仕様を書かず、AIに雰囲気(バイブス)で指示を出しながらコードを作っていくスタイル。結果が予測しきれない点も特徴とされますらしさでもあり、面白かったと振り返っています。
Severanceのデザイナーまで登壇するセッションの幅
Configには、ディランさんの基調講演以外にも、デザインにまつわる多様なセッションがあります。映画のストーリーテリング、NFLアプリのデザイン、アニメーションの作り方などが取り上げられていたと二人は話しています。
草野さんが楽しみにしていたのは、2日目のクロージングに登壇する、ドラマ『Severance』のセットやビジュアルを担当するプロダクトデザイナーのジェレミー・ヒンドルさんのキーノートでした。一方で、CEOのディランさんはこのドラマを見ていないと話していたそうで、草野さんは驚いたといいます。
宮武さんは、3日目の最後に登壇するメタのアンドリュー・ボスワースさんとみられる人物の話も聞きたいと挙げています。草野さんは、Webデザインの人もビジュアル表現の人もいて、デザインに関わる幅広い人が集まる点が面白いとまとめました。
テック企業の大型発表会はこれからも増えるのか
宮武さんは、テック企業が年に1〜2回の大型イベントを開き、そこでまとめてプロダクトのアップデートを発表する流れが来ていると指摘します。例として、Apple、SalesforceのDreamforce ── Salesforceが毎年サンフランシスコで開く大規模カンファレンス。テック企業の大型イベントの代表例として知られています、Google、Canva、Metaなどを挙げました。
さらに、物流のフォワーダー系企業Flexportが今年2月、年2回の大型プロダクトアップデートを行うと発表したことにも触れます。宮武さんによれば、FlexportのトップはAirbnbのブライアン・チェスキーさんから、発表を年2回に絞るべきだと言われて実行したようです。
この流れが続くかという問いに、草野さんは「続くと思います」と答えました。理由として挙げたのは、テック系の記者から聞いた、新機能のニュースを取り上げる率が減っているという話です。
もうちょっとトランプとか、もうちょっとシリアスなニュースとかを取り扱うことが多くて、新機能とかたくさん出てるので、なんかそれをピックアップするっていうのがちょっと減りつつあるみたいな話を聞いて。
草野さんはまた、起業家とのランチで話題になった、AIエージェントによって組織図が変わるという話にも触れます。そうした時代だからこそ、リアルイベントや人との関わりのように、人間にしかできないところに投資するのは意味があるのではないかと考えています。
大型イベントを支える3つの理由
宮武さんも、この流れは続くと見ています。1つ目の理由は、以前の回でも話したアテンションの問題で、注目が分散するなかで1つのカルチャーモーメントを作れば、みんなが注目してくれるという点です。
2つ目に宮武さんが挙げたのは、社内への効果です。Configでは受付でバッジを渡すところから従業員が対応し、会社全体でスタッフとして動いたり登壇したりしています。
なんかやっぱりそのチームの、なんかその会社のプライドを高めるための一種の、なんかすごいなんか会社のイベントみたいな感覚にも多分なると思いますし。
宮武さんは、大型イベントには多額のお金がかかり、従業員は過去1〜2ヶ月これだけを考えているはずだとしつつ、やり遂げた達成感は大きいだろうと話します。3つ目の理由は、プロダクト開発に期限が生まれることです。
草野さんも、場所を押さえて人を呼んでしまえば間に合わせるしかない、という効果は「絶対あります」と同意しました。
アテンション
注目が分散するなかで、1つのカルチャーモーメントを作れる
社内のプライド
従業員総出で運営し、会社としての達成感が生まれる
期限の効果
開催日に合わせてプロダクトを作り切る必要が生まれる
宮武さんは、この3つをうまく掛け合わせたのが大型イベントだと整理しています。会場のFigmaストアには、1時間以上かかりそうなほどの長い列ができていて、二人は並ぶのをあきらめたそうです。
久しぶりのサンフランシスコは変わっていたか
宮武さんは、前年に来たときも治安は回復し始めていたものの、今回はさらに良くなったと感じたと話します。草野さんも、久しぶりのダウンタウンは夜でも人が多く、街もきれいで、もっと頻繁に来たいと思ったそうです。
前年は夜に歩いても人が少なく、ピックルボールをしている人がちょっといる程度
今回は夜遅くでも人が歩いていて、街の雰囲気が良くなった
宮武さんは、この変化は市長が変わった影響もあるのではないかと推測しています。これまではニューヨークやLAに行くことが多かったものの、近いうちにまたサンフランシスコに来たいと語りました。
オフィス訪問オタクも唸ったStripeの社屋
草野さんは話をStripeに戻し、Stripeのオフィスを訪問した体験を紹介します。自称「オフィス訪問オタク」の草野さんにとって、これまで訪れたオフィスの中でもトップに入るほどだったそうです。
Stripeのオフィスで二人が特に印象に残したのは、大きな本棚と、ハリー・ポッターの動く階段のように3方向から集まる不思議な構造の階段でした。
宮武さんによれば、この階段は5ヶ月ほど前に作られたもので、完成時には社長を含む従業員が誰が一番早く上れるかを競うレースをしたといいます。
パトリックさん含め、パトリックさんはなんか40秒台だったらしいです。それ(記録)がすごいのかどうかはわかんないですけど。
今週はモスコーンセンターのすぐ近くにあるFigmaのオフィスにも行けるそうで、二人は楽しみにしています。Figmaの従業員と話す機会も多く、今後はプロダクトのトップを務めるユウキ・ヤマシタさんなど、日本語も話せる人へのインタビューも目指したいと話しました。
サンフランシスコで会った面白い人たち
二人はLAに滞在したあと、サンフランシスコに移動していました。宮武さんは、LAではディープテックやクリエイター周りの人に会うことが多かったのに対し、サンフランシスコではAI関連の人が多かったと比べています。
草野さんが印象に残ったのは、クリエイター向けツールを手がける起業家の、オフィス兼自宅の一軒家を訪ねたことです。古いシリコンバレーのエリアにあり、周りを歩くだけでも面白かったそうです。
宮武さんは、Google、Replit ── ブラウザ上でコードを書いて動かせる開発環境サービス。AIによるアプリ開発支援にも力を入れています、Anthropicの人たちとの食事の場で議論を交わしたといいます。テーマは、AIサービスの経済的合理性や、AIモデルが倫理的な価値観をどう形づくるのか、日本とアメリカの違いなどでした。
推論コストとかがすごい高い中で、そこをどういうふうにその補うのか、なんかそれが長期的にこのモデルって、そのビジネスモデル的に通用するのか通用しないのかとか、そこら辺の話を議論して、別に答えはないんですけど。
草野さんは、Stripeの出版部門Stripe Press ── Stripeが運営する出版部門。テクノロジーや経済、イノベーションをテーマにした書籍を、こだわった装丁で刊行していますの編集長、タマラ・ウィンターさんとの出会いを挙げます。難しいテーマを誰にでもわかりやすく、しかもかっこよく届けるのがとてもうまく、自分もああなりたいと刺激を受けたそうです。
熱狂的なコミュニティを、FigmaとStripeはどう作る?
宮武さんは、StripeとFigmaはどちらも熱量の高いコミュニティを抱えているのに、アプローチの仕方がまったく違うと指摘し、草野さんも強く同意します。
Stripeの側では、Stripe Pressの本屋に人が集まり、そこで結婚した人がいたという話まであるそうです。草野さんは、1日に1000冊以上がD2Cで売れていると聞いて驚いたといいます。
Figmaの側の例として宮武さんが挙げたのは、毎年面白いというエイプリルフールの企画です。今回の「Figpal」は、Figmaを開くとカーソルにFigmaのキャラクターがついてくるというもので、90年代の子ども向けインフォマーシャル風のCMやグッズまで作られました。
宮武さんが一番面白かったのは、気に入ったユーザーのために、キャラクターに「追っかけないで」とその場にとどまらせる機能まで用意されていたことでした。
やっぱ遊び心がなんか明確に、そのFigmaだと。なんかプロダクトにもすごい反映してるじゃないですか。
草野さんが従業員に「ディランさんはどんな人ですか」と聞くと、謙虚で優しく、誰にでも同じように接する人だという答えが返ってきたそうです。宮武さんは、トップの人柄がプロダクトに落とし込まれ、さらに組織にも落とし込まれている感覚があると話しています。
トップの人柄
謙虚で優しく、誰にでも同じ対応をするディランさん
プロダクト
Figpalのような遊び心や優しい楽しさとして表れる
組織
従業員の雰囲気やイベントの一体感として表れる
Figma Makeの登壇者は、まさかの知り合いだった
宮武さんは、Figma Makeを紹介した登壇者のホリーさんを、たまたま知っていたと明かします。夫から登壇すると聞いてはいたものの、サイドステージだろうと思っていたら、メインステージで主要機能を説明していたそうです。
ホリーさんは最後にDJドロップをして去り、二人ともその去り方を絶賛しています。草野さんは、カメラで手の動きを読み取ってコントロールするデモも印象的だったと振り返りました。
やっぱりこれ、バイブスコーディングの時代だからこそ、なんかいろんな新しいことができるようになりますし、多分我々でもなんか多少なりいろいろ商品、プロダクトも作れるようになったりしますよね。
TikTokでバズるFruit Riotとチポトレの失敗
話は余談に移ります。宮武さんによれば、LAとサンフランシスコの出張中に草野さんが食べたい、買いたいと言ったものには、どれもASMRコンテンツから来ているという共通点があったそうです。
草野さんはハンバーガーやブリトーのようなジャンクな食べ物が好きで、それを食べる人の動画を見るのも好きだといいます。そこで知ったのが、凍らせたブドウを強烈に酸っぱいパウダーで覆ったスナック「Fruit Riot」でした。
草野さんによると、食べ物系の動画はこれまで激辛やチーズが伸びるものが定番でしたが、Fruit Riotは「めっちゃ酸っぱい」というリアクションでバズり、カナダにも展開しているそうです。カロリーが低いのでヘルシーなスナックとされる一方、宮武さんは「あんまりヘルシーではない」と笑っています。
スーパーの冷凍コーナーで見つけて食べた宮武さんの感想は、「酸っぱかった」でした。
草野さんは、宮武さん流のチポトレの注文も試しましたが、夜遅くに行ったためトマトもワカモレもレタスもなく、チキンとチーズ中心の一皿になってしまったそうです。宮武さんは、失敗の原因は自分たちではなく時間帯だと強調しています。
サンフランシスコで一番おいしかったものを聞かれた二人は、すぐには答えが出ません。草野さんは、LAで友人にもらったおいしい飴をチャイナタウンで見つけられたことを挙げ、雨続きで寒かったLAに比べてサンフランシスコは25度ほどの暑い日もあったと話しています。
Configに来年も来たくなるのはなぜか
宮武さんは、来年もConfigに来て、Figmaがどう変わっていくかを見るのも楽しみ方の一つだと話します。PRスタッフの中には、4年ほど前、コロナ禍のオンライン開催の時期に入社し、会場が徐々に大きくなるのを見てきた人もいたそうです。
草野さんによれば、今回も会場は拡大されていました。宮武さんは、来場者は8500人ほどで、ライブ配信を含めれば数千人から1万人以上が見ている可能性もあると見ています。
宮武さんがもう一つ注目したのは、Figmaに買収されたスタートアップの元創業者が、今もFigmaに残っていることです。
草野さんは、その元創業者がConfig直前まで4週間のサバティカルでハワイに行っていたと聞き、いい会社だと感じたそうです。二人は今後、Figmaのオフィスでの収録や、サンフランシスコで撮ったインタビューの公開にも意欲を見せて、この回を締めくくりました。
まとめ
サンフランシスコのFigma Config会場から届けられたこの回では、新機能の発表以上に、Figmaのコミュニティの熱量と文化が語られました。同時期のStripe Sessionsとの比較を通じて、テック企業が大型イベントを開く意味や、トップの人柄が組織に伝わる様子が浮かび上がります。
- Figma Configは4つの新プロダクトを発表し、フェスのような楽しさと強いコミュニティ感が印象に残った
- Figmaは楽しさ、Stripeは真面目さと、熱量の高いコミュニティへのアプローチはまったく違う
- 大型イベントには、アテンションの獲得、社内のプライド、開発の期限という3つの効果がある
- 謙虚で優しいトップの人柄が、プロダクトの遊び心と組織の一体感に表れていると二人は感じた
- 買収された創業者が残り続けることは、いいスタートアップの指標だと宮武さんは見ている






