マーケターが集うINBOUNDは、ほかのテックカンファレンスと何が違う?
この回は、草野さんと宮武さんがサンフランシスコに滞在中に収録されました。2人はHubSpotが主催するカンファレンス「INBOUND 2025」に参加し、会場だったモスコーンセンター ── サンフランシスコ中心部にある大型のコンベンションセンター。大規模なテック系カンファレンスの会場としてよく使われますの近くで話しています。
滞在した1週間のサンフランシスコは晴れの日が多く、朝晩は少し冷えるものの日中はほどよい暑さだったそうです。宮武さんは、今の日本の夏と比べると「日本から逃げる時はサンフランシスコに行くべき」と冗談まじりに語っています。
INBOUNDの本編は水曜から金曜にかけて開かれ、火曜の夜からはディナーなどの関連イベントもありました。収録は終了後の土曜日で、会場はかなりの人出だったといいます。
宮武さんがまず感じたのは、参加者の属性の違いです。これまで2人はStripeやFigma、Robloxなどのカンファレンスにも足を運んできましたが、INBOUNDはマーケターの比率が高い印象だったそうです。
草野さんは、参加者の年齢層の幅広さに注目しています。若い人もいれば、長年通い続けている様子の人もいて、ネットワーキングの場でもすでに知り合い同士が多かったといいます。
本当になんだろう、このカンファレンスが好きで来られてる方がたくさんいるんだろうなっていうのを思いました。
やっぱりなんかマーケター同士で繋がってる感じはしますよね。(マーケターは)他の業界よりも、横の繋がりみたいなものができやすいのかもしれないですね、その仕事柄。
インバウンドマーケティングの提唱者とクリエイターたちの登壇
宮武さんにとってHubSpotは、なじみのある会社です。HubSpotはボストンの企業で、宮武さんはボストン近郊のバブソン大学に通っていました。同じ大学からHubSpotにインターンや正社員として入る人も多く、今回初めて一緒に仕事ができたのは嬉しかったと話しています。
宮武さんはボストンに8年住み、HubSpotを知ったのは大学時代だったそうです。HubSpotはインバウンドマーケティング ── 広告で押し出すのではなく、役立つコンテンツで見込み客に見つけてもらい、関係を育てていくマーケティング手法という言葉を生んだ会社でもあり、宮武さんは大学2〜3年生の頃から同社のブログを読んでいたといいます。
草野さんは、コンテンツの重要性が増した今の時代を反映して、INBOUNDにはポッドキャストやニュースレターの作り手、クリエイター出身の起業家なども多く登壇していたと振り返ります。
2人が特に喜んでいたのは、ガジェットレビューYouTuberのMKBHD ── YouTuberのマーケス・ブラウンリーの通称。テック製品のレビュー動画で世界的に知られていますを見られたことです。ほかにも番組「Hot Ones」のホストであるショーン・エヴァンスさんや、コメディアンのエイミー・ポーラーさんといったセレブ寄りの登壇者もいました。
ちょっとBtoB SaaS感がっていう風に見てしまう方々も多かったりすると思うんですけど、やっぱりこのコンテンツ側もすごい強い会社っていうのを、多分こういうイベントとかで結構表していますよね。
今回のINBOUNDは、初めてのサンフランシスコ開催でした。宮武さんは、AI関連の話題が多く、Anthropic CEOのダリオさんやPerplexityのCEOも登壇していたことから、それが開催地をサンフランシスコにした理由ではないかと推測しています。ただし、あくまで推測だと断っています。
HubSpot流のプレゼンは、なぜパーソナルな話から始まる?
宮武さんは、カンファレンスごとにプレゼンの独自のスタイルやトーンがあると話します。HubSpotでは、社長がとてもエネルギッシュな一方、共同創業者でCTOのダーメシュさんはテック系のジョークを交えて話していたそうです。宮武さんは、その組み合わせがうまく機能しているのかもしれないと見ています。
草野さんが面白いと感じたのは、CEOの基調講演の組み立てです。CEOは大学生の息子から受けた「いい人生を送るにはどうしたらいいか」という問いから話を始め、AIの話や新サービス「Loop」の紹介へと進み、最後にその問いへの答えを示したといいます。
宮武さんによると、ほかの登壇者も同じような流れで話していたそうです。この共通する流れを整理すると、次のようになります。
パーソナルな話
自分自身や家族のストーリーから始める
本題
プレゼンの内容に入る
解決案
課題に対する解決策を示す
パーソナルな回答
冒頭の問いに対する答えで締める
そこも何ですかね、やっぱスタイルが。それがHubSpotっぽさなんですかね。
サンフランシスコで食べたものと、マクドナルドの真っ青なシェイク
話題はカンファレンスから、滞在中の食事へ移ります。2人はIn-N-Outのハンバーガーを食べ、ブリトーは2回食べたそうです。草野さんは、以前番組で話した酸っぱいお菓子「Fruit Riot」も、スーパーのSafewayで50%オフになっていたものを試しました。
草野さんが食べたFruit Riotは、冷凍フルーツの周りに砕いたキャンディがまぶされたもので、キラキラした見た目が可愛かったといいます。アメリカンチェリー味でかなり赤い色をしていましたが、宮武さんいわく「全然サワーじゃなかった」そうです。
色の話から、宮武さんは草野さんが苦手な青い食べ物の話題を出します。草野さんが引いてしまったのは、ドナルドがカムバックした「マクドナルドランド」キャンペーンで売られているシェイクでした。濃い青に真っピンクのクリームがのったものだったといいます。
ちょっと(あのシェイクは)ごめんなさいって感じでしたけど。
一方で草野さんは、かき氷のブルーハワイや、ボバティーのHEYTEAで出ている透明感のある青いドリンクは平気だそうです。宮武さんは「結構似た青なんですけどね」と返し、自分はゲータレードも飲むのでどれも飲めると話しています。青いものに対する草野さんの線引きを整理すると、次のようになります。
かき氷のブルーハワイ、HEYTEAの透明感のある青いドリンク、地球グミのような青いグミ、ディズニーのスター・ウォーズエリアの青いドリンク
マクドナルドの濃い青のシェイク、ゲータレードの青
草野さんは「飲み物は色がついていると苦手」と言いますが、宮武さんに「HEYTEAも飲み物じゃないですか」と突っ込まれてしまいます。最終的に宮武さんは「味な気がします」とまとめ、草野さんもすごく甘そうだと想像してしまうのが原因かもしれないと納得していました。
アメリカのケーキが食べられない理由と「さっぱり」への渇望
草野さんから苦手なアメリカの食べ物を聞かれた宮武さんは、一般的に売られているアメリカのケーキを挙げます。フロスティングがたっぷりかかり、ひたすら甘いだけのケーキが多く、甘すぎて胃もたれしてしまうそうです。
やっぱり日本のケーキをアメリカ人が食べてすごいびっくりするのはなんかめちゃくちゃ理解できるんですよ。ここのケーキしか食べてないと。
宮武さんは、サンフランシスコには質の高いケーキもたくさんあると断ったうえで、日本のケーキと比べています。
フロスティングが多く、甘さが強い「砂糖の塊」。1つが大きく、胃もたれしやすい
チーズケーキのように軽く、胃もたれせずに食べられる
宮武さんは、アメリカには温かくてさっぱりした料理がほとんどないとも指摘します。温かい料理には油やバターがたっぷり使われていることが多く、さっぱりしたものは冷たいものに限られがちだといいます。
宮武さんがアメリカでアイスティーをよく頼むのも、さっぱりしているからだそうです。レストランのメニューになくても、とりあえず聞いてみるといいます。草野さんは、アメリカから日本に来た人がフォーを食べに行くのも、同じようにさっぱりしたいからかもしれないと話していました。
ただし宮武さんは、2人が食べているのは高級な料理ではなく、比較的ジャンクなものだから、とも付け加えています。高級店ならまた違うかもしれないという留保つきの感想です。
すしブリトー、Wingstop、プロテインバー「David」を試してみて
草野さんが念願だったのが、TikTokで見て気になっていたすしブリトーです。インタビューでUCバークレー近くに行った際、近所のレストランを探していて見つけたそうです。実際に食べてみると「でっかい太巻き」のようで、ブリトーというよりロールに近かったものの、美味しかったといいます。
チキンウィングのチェーン店Wingstopも、草野さんがTikTokで知って行きたかった店です。TikTokでは、WingstopやRaising Cane's ── アメリカのチキンフィンガー専門のファストフードチェーンレイゼンケーンのようなチェーン店の料理を車内で食べるモッパン動画が多く、それを見て憧れていたそうです。食べてみると美味しかったものの、辛いものが苦手な人には合わないかもしれないと話しています。
プロテインバーの「David」も食べました。サンフランシスコのダウンタウンでは扱う店舗が限られており、1店舗目は売り切れ、2店舗目は残り1本だったそうです。宮武さんは、人気のせいなのか、単に在庫が少ないのかはわからないと話しています。
Davidは、RXBAR ── 卵白などシンプルな原材料を前面に打ち出したアメリカのプロテインバーブランドの創業者が立ち上げたブランドです。宮武さんによると、初年度でおよそ140ミリオンドル規模の売上が見込まれるほど、急成長しているといいます。
パッケージにはダビデ像が描かれており、草野さんは「日本に進出したらダビデと呼ばれるのでは」と想像を膨らませていました。デザインがかっこよく味も美味しかったので、もっと見かけたい商品だったそうです。
取材で印象に残った起業家とクリエイターは?
今回の滞在では、2人は1週間でおよそ7件のインタビューを行いました。草野さんが面白かったと挙げたのは、AIを使ったマッチングサービス「Ditto AI」の創業者です。
Ditto AIは、「Tinderの競合です」「出会いを探していますか」といったチラシを学校や街中に貼るマーケティングで知られ、草野さんはUCバークレーでも実物を見かけたといいます。オフィスで、マーケティング用の小道具や企画の話を聞けたことも印象的だったそうです。
(Ditto AIのマーケティングは)本当にその世代の人じゃないとできないし、アプリの利用者もその学生限定とか、その人のキャラクターとそのコミュニティじゃないとできないマーケティングと。
宮武さんが挙げたのは、インキュベーターであるSouth Park Commonsのアディティアさんです。Facebookの5番目のエンジニアだったとされる人物で、Facebookやマークさんの時代から現在の新しい取り組みまで、幅広い話を聞けたといいます。草野さんはアディティアさんについて「映画に出てる時代を知ってる人」と表現していました。
もう1人は、Robloxで今トップクラスの人気を誇るゲーム「Grow a Garden」を大きくした人物です。宮武さんにとってはクリエイター本人への初めてのインタビューで、Robloxのカンファレンスでも4人ほどのクリエイターと直接話す機会があり、「正直めちゃくちゃ学びがあった」と振り返っています。
HubSpotのニュースレター買収は、コンテンツ中心の戦略の答え合わせになるか
インタビュー相手には、HubSpotのチーフマーケティングオフィサーもいました。この人物はHubSpotのコンテンツ全般を統括しており、そこには同社が買収したニュースレター「The Hustle」も含まれます。
宮武さんはThe Hustleを6年以上前から読んでおり、HubSpotが買収した際にはXで「いい買収だ」というスレッドを書いたほどだそうです。草野さんは、メディア買収の先駆けの1つかもしれないと話し、StripeやMailchimpの買収例も話題に上りました。
ただし宮武さんは当時、The Hustleの読者をHubSpotのサービスの利用にまでつなげられるのかについて、懸念も持っていました。今回の取材で、実際にはうまくコンバージョンさせていると聞き、とても驚いたそうです。
いい買収だと思う一方で、HubSpotのサービスのコンバージョンにまでつなげられるかは懸念していた
CMOへの取材で、うまくコンバージョンさせていると聞いて驚いた
宮武さんは、こうして考えると、コンテンツ中心のビジネスはHubSpotが第一人者として実践してきたことなのだと話します。草野さんも、CRMやマーケティングについて検索するとHubSpotのページにたどり着くことが多いと共感していました。
AIの使い方は会社ごとにどう違う?
宮武さんは、HubSpotをはじめ、この1週間に参加したどのカンファレンスでもAIが大きな話題になっていたと振り返ります。ただ、AIへの向き合い方は会社によって違っていたそうです。
AIの影響でサイトへのトラフィックが減っていることを踏まえ、新しいツールの開発やコンテンツマーケティングで対応する
クリエイター向けにAIを使った新しいツールや機能を提供する
草野さんがRobloxのデモで面白いと感じたのは、AIで自分専用の武器を作れる機能と、音声機能でした。音声機能では、翻訳や、音声からテキスト、テキストから音声への変換ができ、自作キャラクターに声を当ててピッチを上げ下げすることもできるそうです。
草野さんが「本当に何でもできますね」と言うと、宮武さんは、だからこそプラットフォームとして難しい判断が増えると話します。自由度を与えすぎるとプラットフォームの色や安全性が失われかねないため、各社がそのバランスをどう取るのかが気になるといいます。
そこ(自由度と制限のバランス)を各会社がどういう風にバランスするのかっていうのはなんか気になりますよね。
時差ボケ、ビーフジャーキー、リスナーへのお願い
最後は仕事を離れた小話です。草野さんは今回、時差ボケがなかったといいます。いつも出発前日にパッキングなどで徹夜をしてしまうため、そのまま出発して生活リズムをリセットするパターンが多いそうです。
宮武さんは、滞在の後半になって少し時差ボケが出てきたといいます。収録の2時間ほど前には、Lyftの車内で眠りかけていたそうです。
おすすめのビーフジャーキーを聞かれた宮武さんは、一番好きなのはLAのビーフジャーキーなので、LAに行ったときに紹介したいと答えます。そのうえで、柔らかめのジャーキーが好みなので、サンフランシスコでおすすめの店があればリスナーに教えてほしいと呼びかけました。
草野さんがリスナーに教えてほしいのは、サンフランシスコの本屋さんです。友人に教わったパロアルト近くのケプラーズ・ブックスケプラブックスのように、キュレーションが魅力的な店を知りたいといいます。また、次回の訪問に向けて、雑談回を収録できる場所も募集していました。
まとめ
今回の雑談回では、初めてサンフランシスコで開かれたHubSpot INBOUNDの空気から、アメリカの食べ物、取材を通じて見えたコンテンツとAIの動きまでが、2人のゆるいやり取りとともに語られました。
- INBOUNDはマーケターが多く、常連同士の横のつながりが強いカンファレンスだった
- HubSpotの登壇者は、パーソナルな問いから始めてその答えで締める共通のプレゼンスタイルを持っていた
- 宮武さんは、ニュースレター「The Hustle」の買収がHubSpotのサービスのコンバージョンにつながっていると聞き、コンテンツ中心の戦略の強さを再確認した
- HubSpotとRobloxではAIへの向き合い方が異なり、自由度と安全性のバランスが今後の論点になりそうだと話された
- アメリカの食について、甘すぎるケーキやさっぱりした料理の少なさといった、日本との違いが語られた



