Web3はなぜ「歴史」から理解すべきなのか
メタバースに続いてWeb3がバズワードとして盛り上がる中、Off Topicは前回のインターネット創業期の話に続いて、Web3そのものを取り上げます。
前回は、インターネットが本来コマースモデルになるはずだったのに広告モデルになった理由と、クリプトがその解決案だったという話でした。今回の宮武さんは、投資ではなくコンセプトとして「Web3とは何か」を語ると宣言します。
今までのインターネットの流れを見ると、(Web3の)ムーブメントができてるっていうことが逆に理解しやすくなるかなと思っていて。
草野さんも、前回のクリプトの話は「なぜ流行っているか」より、歴史をたどって「こういうものが必要だった」と分かるストーリーが大事だったと応じます。宮武さんによれば、インターネットには4つのフェーズがあるといいます。
Web1.0とWeb2.0は何が違ったのか
宮武さんが挙げるフェーズ1はWeb1.0の時代です。1993年の政策の変化をきっかけに多くのサービスが生まれ、HTTPSやSMTPといったオープンなプロトコルの上に、GoogleやeBayが自分たちのサービスを築きました。
宮武さんは、このWeb1.0をスキューモーフィック ── もともとは、現実の物の質感や形をデジタル上で模倣するデザイン手法を指す言葉。Web3の文脈では、オフラインの物をそのままオンラインに移しただけの段階という意味で使われていますだと表現します。雑誌や新聞といった読み物をサイトに出しただけの「読む時代」だったという意味です。
フェーズ2のWeb2.0では、新しい起業家がウェブサイトを「パソコン」として捉え直しました。読むだけでなく書いたりコードを組み込んだりできる「読み書きの時代」で、初期にはFlickr、Delicious、SixDegreesなどが登場します。
その初期サービスを見たマーク・ザッカーバーグ、ジャック・ドーシー、エヴァン・スピーゲルらがより良いパッケージにして、FacebookやSnapchat、Twitterが生まれました。同じ時期にスマホとモバイルの波も重なり、Web2.0は一気に拡大したと宮武さんは説明します。
GAFAの時代はなぜ「チャンネルが4〜5つのテレビ」に近づいたのか
宮武さんが3つ目のフェーズとするのは、Web2.0のまま大手テック企業がマーケットシェアを広げた時期で、2012年あたりから2020年あたりまでを指します。Apple、Google、Facebook、AmazonのGAFAが巨大化した時代で、ティム・クックさんがAppleのCEOになったのも2011年8月です。
草野さんは、この時期は新しいイノベーションよりアプリのマーケット拡大が加速した印象だと話します。宮武さんは、インターネットが昔のテレビのように少数のチャンネルしかない世界へ向かっていたと応じます。
インターネットがどんどんその昔のテレビみたいに、その4つか5つぐらいのチャンネルしかない時代にどんどん向かってる雰囲気になっていて。
そうした世界に住みたくない人たちが次のフェーズを作ろうとしていて、それがWeb3だと宮武さんは位置づけます。ビットコインに始まり、ヴィタリックさんがイーサリアムを作り、今は黄金期に入るとも言われていますが、宮武さん自身は本当に来るかは分からないとも付け加えています。
新しいテクノロジーはなぜ最初「しょぼく」見えるのか
宮武さんは、テクノロジーは生まれた直後はどうしても小さく見えると話します。そのうえで、世界で一番頭のいい人たちが週末に何をしているかが10年後、20年後にメインストリームになるという考えは正しいと考えています。
例として挙がるのが、パソコンオタクたちが趣味で集まったホームブリュー・コンピュータ・クラブ ── 1970年代にシリコンバレーで活動したコンピューター愛好家の集まり。アップル創業者のスティーブ・ウォズニアックらも参加していたことで知られますや、何十ステップもかけないとアクセスできなかった初期のインターネットです。同じことが今AIやVRで起きていて、次はクリプトかもしれないと宮武さんは見ています。
草野さんは、前週の収録後にアシュトン・カッチャー主演のスティーブ・ジョブズの映画を見返したそうです。ウォズニアックが「オタクでさえこんなでっかいの買わない」と言い、ジョブズが「誰もパソコンを触ってないからそう言うんだ」と返す場面に、新技術への見方が表れていると感じたといいます。
触ってないし、その可能性を知らないからそういうことを思うっていうのは、本当テクノロジーがこう、最初に見られる見方だなっていうのをそれ見て思いました。
宮武さんは、VCやスタートアップにとって大事なのはタイミングだと続けます。多くの人は「これが来る」と分かっていても、今入るか、来年か、5年後かで成否が分かれます。ARやVRもずっと来ると言われてきましたが、宮武さんは「ようやくこれから来るはず」と話しています。
Web3は「信頼できるニュートラルなプラットフォーム」になれるのか
宮武さんによるWeb3の定義の一つは、信頼できるニュートラルなプラットフォームを作れる場所です。イーサリアムの上でアプリを作っても、自分のアプリだけ手数料を急に上げられたり、明日アカウントを削除されたりする心配がありません。
もう基本的に誰も所有してないものなので。
だからこそ、プラットフォームレベルの失敗を恐れずに全力で投じられると宮武さんは説明します。イーサリアムの人気がなくなるリスクはあっても、イーサリアムが悪質なことをするのはできない仕組みだといいます。これはHTTPやSMTPの上にGmailなどが生まれたWeb1.0の構図とよく似ています。
対照的なのがWeb2.0です。多くのスタートアップがFacebookの上やTwitterのAPIでアプリを作っていましたが、両社がAPIを大幅に絞ったことで、会社を畳まざるを得ない起業家が続出しました。ライブ配信のMeerkatMiaCatが代表例で、最終的にTwitterはPeriscopeを買収し、Periscopeだけが残りました。
運営企業が手数料変更やAPI停止、アカウント削除をいつでもできる
誰も所有しておらず、特定のアプリだけを狙った変更や削除の恐れがない
ビッグテックは成長しすぎてイノベーションを止めたのか
宮武さんは、Web2.0の大企業は成長しすぎて、社員がどこまでインスパイアされているのか疑問が出ていると話します。GAFAで創業者が今も残っているのはFacebookのマーク・ザッカーバーグさんだけで、ジェフ・ベゾスさんも退いています。
そのうえで、GAFAの中で最もリスクを取って新しいことをしているのはおそらくメタだと宮武さんは見ています。これは事業運営の巧さではなくリスクの取り方の話で、事業運営が一番うまいのはGoogleだとも明言しています。
では2012年以降、大手テックが画期的な新プロダクトを出したかというと、意外と思い浮かばないと宮武さんは言います。AmazonにはAmazon Goがありますが、GoogleはPixelのようなハードウェアや、2008年に始まったGCPが挙がる程度で、GmailやGoogle Mapsなど主要プロダクトの多くは2000年代のものです。
Appleも2001年から2010年頃にiPod、iPhone、iPadを出した一方、その後はAirPodsとApple Watch程度です。それでも時価総額は2兆ドル伸びたと宮武さんは指摘します。かつて「テック業界のスーパーボウル」だったAppleのキーノートも、今は位置づけが変わったのではないかと話されています。
2001〜2010年頃にiPod、iPhone、iPadを次々に投入し、キーノートが業界最大のイベントだった
その後の新カテゴリーはAirPodsやApple Watch程度だが、時価総額は2兆ドル伸びた
利益の最大化はなぜネットワークの健康と矛盾するのか
宮武さんは、Web2.0の課題はザッカーバーグさんやティム・クックさんといった人の問題ではなく、インセンティブ構造の問題だと強調します。株主は利益向上を求めますが、会社が大きくなるほど、利益の最大化とネットワークの健康が矛盾していくといいます。
立ち上げ期
クリエイターや開発者を集め、ユーザーが最も重要な存在になる
人気の拡大
プラットフォームの権力が上がっていく
メインストリーム化
関係が逆転し、プラットフォーム側が圧倒的に強くなる
収奪の段階
ユーザーからデータとお金を取ることが売上につながる
やらなければ他社が同じことをするため、APIの遮断、アルゴリズムによる誘導、広告のための個人情報収集、クリエイターのレベニューシェア引き下げが、実は売上を伸ばす最適な戦略になってしまうと宮武さんは説明します。Microsoft対Netscape、Google対Yelp、Facebook対Zyngaもこの構図の中で戦っていました。
しかも他社がそれをやると、それによって売り上げが上がって、株価が上がって、時価総額が上がって、それによっていい人材を取れて、で、そこにプロダクトに再投資ができると。
このサイクルの唯一の例外が、寄付で運営されるWikipediaだと宮武さんは言います。草野さんも、Wikipediaはレコメンドで誘導されず見やすいと応じています。
逆にYouTubeでは、ミシェル・ファンさんのような初期YouTuberがメインストリーム化に大きく貢献したのに、今はコモディティ化され、収益化の停止や手数料変更がいつ起きるか分かりません。ネットワークを築いた人たちが、ガバナンスにもアップサイドにも関われなかったという問題です。
「Don't be evil」から「Can't be evil」へ
宮武さんは、アメリカのデラウェアCコープや日本の株式会社という資産の形と、ネットワークとの相性が悪かったと考えます。それを合わせられるのが、もしかするとトークンかもしれないという見立てです。
これによってインターネットのモットーも変わると宮武さんは話します。Web2.0を象徴するGoogleの「Don't be evil(悪者になるな)」が、Web3では「Can't be evil(悪者になれない)」になるといいます。
では既存のWeb2.0企業はどうすべきか。宮武さんは、創業者が率いる会社のほうが次の波への危機感を持っていて有利だと見ており、実際にWeb3化を始めているのがTwitter、Square、Facebookだと挙げます。
Web2.0の勝ち方は、ベン・トンプソンさんのアグリゲーション・セオリー ── テック分析で知られるベン・トンプソンが提唱した理論。ユーザー体験を握ってユーザーを集約した企業が、供給側に対して強い力を持つという考え方ですに代表されるように、まず1億人のユーザーを集めてマネタイズを重ねるものでした。Web3はむしろクリエイターから始まる点が大きく違うと宮武さんは説明します。
まずユーザーを1億人集め、そこにマネタイズのレイヤーを重ねる
クリエイターから始まり、マネタイズモデルそのものが変わる
Web2.5のSubstackは何を変えたのか
Web2.0とWeb3の間には「Web2.5」と呼べる会社があり、宮武さんはShopifyやSubstackを挙げます。有料ニュースレターのSubstackは、ライターから10%の手数料を取るモデルです。
これまでSubstackのようなサービスが出てこなかった一因は、記事制作をインターネット化すると稼げないと言われ続けたことでした。広告モデルのもとでは、大量に読まれる猫やラーメンの記事を出さざるを得なかったといいます。
今ではまだ少数派ながら、年に1億円以上稼ぐSubstackのライターが何十人もいるそうです。宮武さんは、問題はクリエイターではなくビジネスモデルだったとまとめます。
やっぱりこれはそのインターネットの問題ではなくて、Web2.0のモデルの問題で。
「いいね」だけの世界はフェアなのか
宮武さんは、NFTが詐欺扱いされることがある一方で、普通に考えるとWeb2.0ほどの詐欺はないとまで言います。クリエイターが懸命に作った作品をFacebookやTwitterに出しても、お金にはならずハートマークをもらいに行っているだけだからです。
本物の絵を描いてるアーティストさんが、そのアートピースを無償で拍手だけのために渡してると同じことなんですよ。
ありがたいけど、生きていけない。
宮武さんによれば、クリエイターへの還元率が一番高いYouTubeで50〜55%、Facebook、Instagram、Twitterは0%です。草野さんは、YouTuberの流れが盛り上がった理由の一つはそこかもしれないと応じます。
一方でアプリ開発者は、Appleの手数料で売上の30%を取られます。宮武さんは、ほとんどの事業は売上の30%を取られて生き残れないと指摘しています。
SpotifyとNFTで、アーティストの稼ぎはどう違うのか
宮武さんはSpotifyが公開しているデータを紹介します。約800万人のアーティストのうち、年に約500万円の収入を得ているのは1万4000人ほどで、500万円はアメリカでは普通の生活のぎりぎりのラインだといいます。
対照的に、Spotifyではそこまで多くないフォロワーを持つDJの3LAUブラウさんは、アルバムをNFTとしてドロップして約1100万ドルを稼ぎました。宮武さんは、仮にそれが10万ドルだったとしても大きな数字だと話します。
ただしWeb2.0にも強みは残っています。オーディエンスを集めるのが上手い点で、今はTwitterで見つけてもらいSubstackで稼ぐ流れができているため、Web2.5の会社はWeb3への移行で重要になると宮武さんは見ています。
トークンは「ウェブサイトと同じ概念」なのか
ここで宮武さんは、Web3とはユーザーが所有権を持つインターネットであり、それを可能にするのがトークンだと定義します。NFTもトークンに含まれる基盤技術です。
トークンを投資資産と考えがちですが、宮武さんはウェブサイトと同じ概念として捉えてほしいと言います。チラシや雑誌をデジタル化しただけだったウェブサイトが、30年後にはSNSやSaaSにまで広がったように、トークンも広がっていくという見立てです。
インターネットの今までの歴史ってほとんど全部レンタルだったんですよ。
ゲームに課金しても遊ぶのをやめればアイテムはそこで止まりますし、Twitterのアカウントも明日BANされればフォロワーもツイートも失います。宮武さんは、インターネット上で唯一購入できたものはドメインくらいだったと話します。
ドメインさえ「みんなのもの」ではなくなるのか
ところがドメインにも課題があります。宮武さんによると前年、あるPEファンドが.orgドメインを管理する組織を買収しようとしたことがあり、最初は失敗したといいます。
もし買収されていれば、.orgの価格を自由に変えたり、気に入らない組織を外したりできたと宮武さんは説明します。今後はDNSなどオープンなインターネット資源が買収される時代が来るかもしれないという懸念です。
対してイーサリアム上のENS ── Ethereum Name Serviceの略。長いウォレットアドレスを「○○.eth」のような読みやすい名前に置き換えるイーサリアム上の仕組みですは、ガバナンスがコード化されているため誰も買収できないと宮武さんは話します。
宮武さんは現実の例えとして、Nikeの店舗で買ったスニーカーがその店でしか使えず、店が潰れると消えてしまう世界を挙げます。しかも今のインターネットは、Nike、アディダス、アンダーアーマーの4〜5社からしか買えない世界に向かっていると警鐘を鳴らします。
NFTはなぜ今これほど投資資産化しているのか
宮武さんは、インターネットに初めて所有権が持ち込まれたからこそ、何もかもが高い価値に見えて、NFTが投資資産化していると説明します。
一方で、現実世界で私たちが所有する物も本質はNFTと同じですが、変に投資資産化はされていません。二次流通はあっても、しっかりしたマーケットプレイスがあります。インターネットがその状態に至るまでには時間がかかると宮武さんは見ています。
宮武さんは、いずれインターネットやメタバースの95%ほどのものがNFT化されると予想します。そのときは一部が高値になり、ほとんどは値下がりしていく、現実の所有物と同じ形になるという見立てです。
ウォレットとOpenSeaで「中心」はどう変わるのか
宮武さんによると、所有権が重要なのは「誰が中心にいるか」が変わるからです。レンタルではプラットフォームが中心ですが、所有権がユーザーに移るとユーザーが中心になります。
その分かりやすい例がクリプトウォレットとOpenSeaです。MetaMaskやSolanaのPhantomなどのウォレットは、ビットコインやイーサリアム、NFTを保管する「デジタルリュックサック」のようなもので、それを持っていろいろな場所に行けると宮武さんは例えます。
OpenSeaには登録ボタンがなく、右上の「Connect Wallet」からMetaMaskをつなげると、リュックサックの中身が表示され、プロフィールページも自動で作られます。
(OpenSeaは)ただのインターフェイスのレイヤーなんですよ。
NFTを持っているのは各ユーザーなので、OpenSeaが変なことをすればリュックサックを別のマーケットプレイスへ持っていけばいいだけです。だからWeb3のプラットフォームはユーザーに優しくせざるを得ず、Web2.0が15〜30%の手数料を取るのに対し、OpenSeaは2.5%しか取らないと宮武さんは説明します。
ユーザーが資産を所有
NFTやトークンはウォレットにあり、プラットフォームは持っていない
スイッチングが容易
不満があればウォレットごと別のマーケットプレイスへ移れる
ユーザー中心の設計
プラットフォームはユーザーに優しい体験とモデルを出す必要がある
低い手数料
OpenSeaは2.5%と、Web2.0の15〜30%を大きく下回る
「Your margin is my opportunity」と手数料の歴史
宮武さんは、現実世界で似たものはクレジットカードだと話します。2〜3%しか手数料を取らず、20%も取れば誰も使わなくなるからです。
手数料が下がる流れ自体は、インターネットの歴史では自然なことだと宮武さんは言います。ジェフ・ベゾスさんの「Your margin is my opportunity(あなたのマージンは我々のチャンス)」は、Amazonがわざとマージンを下げてユーザーを集めたことを表す言葉です。
Craigslist、Google、Facebook、TripAdvisor、Airbnbと、インターネットは1990年代から手数料を下げてきました。その流れを止めたのが3つ目のフェーズで、取り返しつつあるのがWeb3だと宮武さんは位置づけます。以前紹介したAxie Infinityも手数料は4〜5%です。
音楽業界はゲーム業界のようになるのか
宮武さんは、手数料の高い業界ほどWeb3の影響を大きく受け、とくに音楽業界がそうだと見ています。草野さんは、テイラー・スウィフトさんが自分の曲なのに再録音して出さなければならない状況を見ると、アーティストにオーナーシップを、という流れに共感すると話します。
宮武さんは、音楽は将来ゲーム業界に近い状況になり、音楽自体は無料になって周辺のNFTやトークンで稼ぐ時代が来るかもしれないと予想します。すでにSpotifyで稼げるアーティストは少なく、グッズやコンサートで収益を得ています。
ゲーム業界はコピーや配信を止めるのではなく、拡散してくれる最高のマーケティング機会として受け入れ、マネタイズモデルを変えてきました。その結果ゲーム業界は1400億ドル規模に伸び、音楽業界はそこまで伸びていないと宮武さんは対比しています。
稼げるアーティストが少なく、グッズやコンサートで収益化している。大きくは伸びていない
コピーや配信を拡散の機会と捉え、マネタイズモデルを変えて1400億ドル規模に成長
ゲームとWeb3はどこが似ているのか
宮武さんは、ゲーム業界とクリプト業界には似ている部分がたくさんあると話します。草野さんも、ゲームはひとつの世界のようだと応じます。
| ゲームの要素 | Web3の要素 | 共通点 |
|---|---|---|
| ゲーム内通貨と複雑な経済 | トークンエコノミクス | 独自の経済圏を持つ |
| MOD | リミックス | 既存のものから新しいものを生む |
| バーチャルグッズ | NFT | デジタルな持ち物 |
| ギルド | DAO | 集まって一緒に何かをする |
| GG、GLHF | GM、GN | 独自の用語とコミュニティ感 |
用語の例として、宮武さんがよく見るStarCraftでは、負けを認めてゲームを終えるときに「GG(Good Game)」と入れ、始めに「GLHF(Good Luck Have Fun)」と出したりします。Web3でも「GM(Good Morning)」や「GN(Good Night)」をよく見かけ、匿名性やコミュニティ感も似ているといいます。
クリプトゲームはなぜ「ゲーム内GDP」を伸ばすのか
宮武さんは、以前のAxie Infinityの回で草野さんが言った「Axie Infinityが国家化したみたい」という例えは正しく、a16zの人たちも同じことを言っていると紹介します。
クリプトゲームの会社は売上ではなくゲーム内経済の規模を伸ばそうとしていて、その中で小さな手数料を「税金」として取るという考え方です。Axie Infinityなどはすでにエコノミストを採用し、トークンエコノミクスを本格的に設計させています。
宮武さんは、現実の経済を分析するより一から構築するのでとても面白い仕事だろうと話し、ユーザーがそれほど伸びなくても経済が成り立つインセンティブ設計などを例に挙げます。Airbnbのようなマーケットプレイス型の企業も経済の専門家を雇っているそうです。
さらに宮武さんが注目するのは、今のクリプトゲームはゲーム出身者が作っていないため、ゲームとしてはまだそこまで面白くない点です。ところがRiot、Blizzard、EA、Epicを辞めた人たちは、全員クリプトに向かっているといいます。
もう1年前ですと、本当に数パーセントしかクリプトが戦略の一部でしかなかったんですけど、今100パーセント。
大手ゲーム会社はなぜアプリ内課金を拒んだのか
ゲーム業界は新しい技術に寛容だと思われがちですが、宮武さんは「実は違う」と言います。2000年代初期のEAはスマホゲームを嫌い、初期のスマホゲームは15ドルの買い切り型が主流で、アプリ内課金を広めたのはKingやSupercellでした。
Free to Playも、アメリカでは当初「アジアの変な企業のやること」と拒まれていました。RiotはLeague of Legendsを無料で出すかで社内が揉め、コアゲーマーはバーチャルグッズを買わないと考えていたといいます。
そのためRiotは失敗に備えて、GameStopなどの実店舗で売るCD版の有料版まで用意していました。宮武さんによると、今もRiotのオフィスには誰も使わなかったそのコピーがあるそうです。宮武さんは、同じことが今NFTやクリプトゲームで起きているのではないかと見ています。
店舗での買い切り
ゲーム店でCDを20〜30ドルで買う
フリーミアム
無料で遊び、スキンやアイテムで課金。獲得コストが下がる
Play to Earn
プレイヤーが稼げるようになり、獲得コストがマイナスに
ユーザー獲得コストがマイナスになるとは?
宮武さんは、ゲームで根本的に変わったのはユーザー獲得の仕方だと話します。フリーミアムで獲得コストが下がり、今はプレイヤー自身が稼げるPlay to Earn ── ゲームを遊ぶことで暗号資産やNFTを得て、実際の収入につなげられる仕組み。Axie Infinityが代表例として知られますによって、ゼロどころかマイナスになっているといいます。
宮武さんによれば、Play to Earnでは9割のプレイヤーが別のプレイヤーを紹介してくるため、勝手に伸びる仕組みになっています。自分が稼げてオーナーシップもあるからこそ、人を連れてくるという見立てです。
Web2.0の会社では、上場時のS-1を見ると最大のコストはマーケティングであることが多く、スタートアップも調達額の3〜4割がFacebookとGoogleの広告に流れるとVC業界では言われます。対してクリプト系の会社の多くは広告を一切出していないと宮武さんは対比します。
ビットコインは会社ではないのに、1億人以上がツイートやブログで広めてくれていて「宗教化」していると宮武さんは言います。理由は、TwitterやDiscord、YouTubeといったWeb2.0のツールの上で立ち上がったことと、トークンやNFTを持つ人がエバンジェリスト化しやすいことの2つだといいます。
最大のコストはマーケティング。調達額の3〜4割がFacebookとGoogleの広告に流れる
多くは広告を出さず、所有者がエバンジェリストになって勝手に広がる
Co-Creationは番組やSaaSにも広がるのか
宮武さんは、さまざまな人が集まって一緒に何かを作るCo-CreationもWeb3の新しい概念だと話します。フェスのラインナップやメディアが扱うニュースを複数の人で決める例や、過去に番組で紹介したファンがコントロールするアメフトチーム、ボトムアップなIP作りのDream SMPも挙がります。
エンタメでは、NFT保有者がキャストやデート中の出来事を決められる「Web3版バチェラー」のMad Realitiesがあります。アシュトン・カッチャーさんとミラ・クニスさんが始めたWeb3アニメStoner Catsも、NFT保有者が番組を見られて意見も出せる仕組みです。
草野さんはStoner Catsのサイトで、イーサリアム考案者のヴィタリックさんが声優として出演しているのを見つけたと話し、「声優デビュー」と驚いています。
宮武さんは、同じ考え方はB向けのSaaSにも応用できると言います。草野さんが言う「最初の100人は一生無料」のように、初期メンバーのライフタイムアクセスをNFT化すれば、価格が上がったときにユーザーがそれを他人に売ることもできるといいます。
Web3の上下は「金融商品」と「プロダクト」で分けて見るべきか
最後のテーマはWeb3の今後です。宮武さんは、ブロックチェーン業界の浮き沈みは、金融商品としての上下とプロダクトとしての上下という2つの軸で考えるべきだと話します。
2018年のICOブームの後、2019年に大きく落ち込んだときは、両方が下がり、新しいアプリもまったく出てこなかったといいます。今回も来年あたり金融商品としては下がると宮武さんは見ていて、NFTがこれほど高値になるのは正直ありえないと考えています。
それでもポジティブに見る理由は、プロダクト側が上がり続けているからです。毎日新しいプロジェクトが出ているレベルだといいます。
宮武さんにとってブロックチェーンは、単なる投資資産ではなく、コンピューターであり、コミュニティであり、ネットワークであり、経済であり、ゲーム理論でもあります。NFTにはカルチャーやメディア、ゲームが、DeFi ── 分散型金融の略。銀行などの仲介者を介さず、ブロックチェーン上のプログラムで融資や取引などの金融サービスを提供する仕組みですにはファイナンスが加わり、インターネットの何でもがWeb3化されうるといいます。
クリプトファンドは「ただのファンド」になるのか
宮武さんは、マーク・アンドリーセンさんの「Software is eating the world」と同じように、クリプトがWeb2.0の会社を潰す勢いで来ていて、危機感を持つべきだと話します。
アメリカでは多くのVCがクリプトファンドを作っていますが、宮武さんは5年後にはそれが「ただのファンド」と呼ばれるかもしれないと予想します。20年ほど前にインターネット企業専用の「インターネットファンド」があったものの、今では全部がファンドになったのと同じだという例えです。
多分同じようにクリプトがどの要素でも入ってくると思うので、クリプトファンドではなくてただのファンドになるっていう時代は来ると思います。
インターネットファンド、クリプトファンドのように専用ファンドが作られる
その技術があらゆる分野に入り込み、ただのファンドになる
日本にもWeb3のチャンスはあるのか
草野さんは、Web3の盛り上がりには日本とアメリカで差があると感じています。インターネットがアメリカで伸びてきた背景や、オーナーシップを重視する文化、そしてクリエイターの力がアメリカのほうが強いことを理由に挙げます。
宮武さんはその差を認めつつ、Web3は今始めればまだ十分間に合うと話します。Web2.0はアメリカで始まり、当時はiPhoneも普及していなかったため、アメリカ人が会社を立ち上げて大企業になるしかなかったといいます。
それが今だと誰でもWeb3企業を始められて、グローバルで戦える、特にWeb3だからこそグローバルで戦えると思うので。
次のFacebookはアメリカだけでなく、インドやアフリカなど世界中で生まれうると宮武さんは言います。誰が勝者かまだ決まっていない今が最大のチャンスで、2〜3年待つと遅いかもしれないと強調します。
宮武さんは、とくにクリプトゲームの領域は日本が強いと付け加えます。草野さんも「ゲームは確かに」と応じ、次のザッカーバーグがこの回を聞いていることを願って締めくくっています。
まとめ
宮武さんはインターネットを4つのフェーズで捉え、GAFAの時代に生まれた「プラットフォームが強すぎる」構造へのカウンターとしてWeb3を位置づけました。トークンによる所有権がユーザーを中心に据え、手数料やユーザー獲得、ゲームや音楽の稼ぎ方まで変えうるという見立てです。
- Web1.0は「読む」、Web2.0は「読み書き」の時代で、2012年頃からはGAFAがシェアを広げる3つ目のフェーズに入った
- Web2.0の課題は人ではなく、利益の最大化とネットワークの健康が矛盾するインセンティブ構造にある
- Web3はトークンによってユーザーが所有権を持つインターネットで、乗り換えが容易なためプラットフォームの手数料が下がる
- クリプトゲームはゲーム内GDPを伸ばす発想で動き、所有者が紹介を広げることでユーザー獲得コストがマイナスになりうる
- 勝者がまだ決まっていないWeb3は世界中にチャンスがあり、ゲームに強い日本にも好機だと宮武さんは見ている




