世界シェア90%超、Googleはリプレースできるのか?
今回のテーマは、検索エンジンの王者であるGoogleを、他のサービスが置き換えられるのかという問いです。草野さんは、プライバシーを重視したDuckDuckGo ── ユーザーの検索履歴を追跡しないことを掲げる検索エンジン。プライバシー志向の代替検索として知られていますのような検索エンジンが人気を集めているというニュースを見かけても、結局みんなGoogleを使うと話します。
昔から検索エンジンのリプレースサービス系(の検索エンジンは)結構出てきてますけど、結果としてはGoogleがずっと勝ってますよね。
宮武さんによれば、Googleの検索シェアは世界で90%を超えています。一方で、最近はAmazonやTikTok、Instagramのように、特定の用途では他社の検索を使う場面も出てきていると宮武さんは指摘します。
宮武さんは今回の企画を、Googleに「勝てない理由」と「勝てる理由」の両側から語る構成だと説明します。前編にあたる今回は、まずGoogleがどれだけ強いのかを認識してもらうための回です。
もう結論出てますか。
結論出てないんですけど、両側の一応意見を言いたくて。
売上の約6割を稼ぐ検索広告という土台
宮武さんはまず、Googleの数字を紹介します。2021年の売上は257ビリオンUSDで、そのうち81%が検索やYouTubeなどの広告収入でした。
さらに257ビリオンのうち149ビリオン、全体の58%がGoogle検索の広告収入です。YouTubeの売上は30ビリオンほど、成長が目立つGoogle Cloudも売上の7.5%ほどにとどまり、売上の大半は検索から来ています。
親会社のアルファベット ── Googleの親会社。2015年の組織再編で設立され、Googleとそれ以外の事業を傘下に持つ持株会社ですも、事業を「Google」と、DeepMindやバイオテック系などの「アザーズ」に分けています。宮武さんは、完全にGoogleが主な事業になっている構造だと話します。
大手テック企業は技術だけで勝ってきたのか?
宮武さんは、大手テック企業が必ずしもテクノロジーだけで勝ってきたわけではないと指摘します。新しい売り方やビジネスモデル、場合によってはビジネスデベロップメントでマーケットシェアを取りに行ったことで成長した面があるという見方です。
例として挙がるのがMicrosoftです。MicrosoftはIBMとの提携でIBMのパーソナルコンピューターにOSを提供しましたが、そのMS-DOS ── Microsoftが提供したパソコン用OS。元になったソフトはシアトル・コンピュータ・プロダクツが開発したものでしたは、シアトルコンピュータープロダクツという会社を買収して取得したものだったといいます。
宮武さんはFacebookについても、最初のCTOだったダスティン・モスコビッツさんはもともとプログラミングのやり方がわからなかった人だと話します。AppleのMacのGUIも、XeroxのイノベーションセンターであるXerox PARC ── Xeroxが設立した研究所。マウスで操作するGUIなど、のちのパソコンに大きな影響を与えた技術を生み出しましたからインスパイアされたものだったといいます。
Googleも同じで、最初の検索エンジンではありませんでした。裏側のアルゴリズムは新しく、1996年にプロジェクトとして立ち上がり、1998年に会社として設立されています。
1億円の売却提案はなぜ断られたのか?
宮武さんによると、創業者のラリー・ペイジさんとセルゲイ・ブリンさんは、スタンフォード大学に戻ろうとしていた時期があり、Googleを売却しようとしていました。他の会社がやったほうがいいのではないか、という考えだったといいます。
二人は当時の強豪だったExciteに、1ミリオンUSD、約1億円で売却のオファーを出します。しかしExciteは見送り、その理由が「Googleの検索が良すぎた」ことでした。
Exciteってポータルサイトだったので。(ユーザーに)Exciteに残ってほしいんですよ。Exciteとしては。その広告事業で回ってるので。
Exciteにとっては、検索結果が良すぎるとユーザーがポータルから離れてしまうことが問題でした。Googleはその後、提示額を750Kに下げてもExciteに断られ、AltaVistaやYahooにも1ミリオンで打診しましたが、うまくいきませんでした。
そこで歴史変わってたかもしれないですね。(Exciteが)買ってたら。
宮武さんも、検索エンジンの立ち位置が変わっていたかもしれず、ポータルサイトがもっと発展していた可能性もあると応じます。
さらにYahooは2002年、改めて1ビリオンの買収オファーを出しました。Googleは5ビリオンならいいとカウンターオファーを出しましたが、今度はYahooがNGを出しています。
逃した魚は大きいですね。これは。めちゃくちゃ大きいです。
初期のGoogleを勝たせた「安いサーバー」
Google検索が最初に勝った理由として、宮武さんはまずビジネスモデルの違いを挙げます。ポータルサイトはユーザーを自社サイトに残したい一方、Googleはシンプルなプロダクトで、ユーザーを目的のサイトへできるだけ飛ばすことで満足度を高めていました。
宮武さんがもう一つ挙げるのが、ハードウェアです。検索エンジンには、サイトを巡回して情報を集めるウェブクローラ ── ウェブ上のページを自動で巡回し、内容を収集するプログラム。集めた情報が検索用のインデックスの元になります、情報を整理するインデックス用サーバー、検索キーワードと結果を結びつけるランキングのアルゴリズムが必要でした。
当時、ほとんどの会社はOracleのサーバーを使っていました。1台3000ドル、約30万円ほどで、きれいにパッケージングされ、5年以上持つものだったといいます。
Googleはそれを使わず、一般的なハードウェア店で部品を買って自社でサーバーを作り、大量生産しました。1台のコストは150〜200ドルほどで、壊れやすい代わりに、捨ててもいいと思えるほど安かったといいます。
1台約3000ドル。きれいにパッケージされ、5年以上持つ
1台150〜200ドル。壊れやすいが、捨ててもいいほど安く大量に並べられる
よりサーバー数が多いと、より多くのウェブ(ページ)をインデックスできて。で、しかもより頻繁にインデックスができるんですよね。
宮武さんは、ハードウェアのスケールが重要だと最初から理解していたことが、Googleの初期の優勢を作ったと話します。1998年12月に1日5万回ほどだった検索の対応数は、5か月後には10倍になったといいます。
サーバーを増やす
より多く、より頻繁にウェブをインデックスできる
プロダクトが良くなる
より多くの人が使うようになる
検索広告の売上が増える
広告エンジンから収益が入る
ハードウェアに再投資
新しいサーバーを作り、さらに速く広くインデックスする
データセンターと海底ケーブルという積み重ね
Googleは現在もデータセンターを自社で開発しており、2005年ごろからはネットワーク機器も自社でデザインしています。宮武さんによれば、データセンターの担当者は処理能力をどれだけ増やせるかに強くフォーカスしています。
たとえば電気はGoogleにとってコストなので、同じ電気量でどれだけ処理能力を上げられるかが重視されます。2005年から2012年にかけて、その効率を3倍にしたといいます。
データセンターへの投資額は、2021年が7ビリオン、2022年は9.5ビリオンの予定です。4月にはネブラスカ州で750ミリオンのデータセンターを立ち上げたと宮武さんは紹介します。
大きくなり続けるじゃないですか。もう。無理じゃないですか。
宮武さんは、データセンターを最も多く持つのはGoogle、Amazon、Microsoftであり、同等の投資ができる会社は限られると話します。Googleはデータセンター内のネットワークを「Firehose」というコードネームで自社開発して処理能力を100倍にしたほか、自社で海底に光ファイバーを引き、トラフィックの25%をそこに通しています。
ハードウェアの投資っていうところが正直ずっと積み重なってるので。そこを意外と考えない人も多いかなっていうところですね。
インターネットのページ数は2008年に1兆ほどでしたが、7年後には60倍になっていたといいます。インデックスすべきページが増え続ける以上、それに対応できるハードウェアは必ず必要で、それができる会社は限られていくと宮武さんは見ています。
創業期のメンバーが今も残っている強み
宮武さんがもう一つ面白い点として挙げるのが、創業者のラリーさんとセルゲイさんがいなくなった今も、Googleの経営チームに古株が何人か残っていることです。
その一人が、現在YouTubeのトップを務めるスーザン・ウォジスキさんです。Googleの最初のオフィスはウォジスキさんの親の家のガレージで、ウォジスキさんはAdSenseの最初のPMでもあったといいます。
もう一人が、Googleの8番目の従業員であるアーズ・ホルズルさんです。1999年にエンジニアリングのトップとなりGoogleのエンジニア文化を作った人物で、先ほどのデータセンターのインフラを担当しています。宮武さんは、この人物が今も残っていることが重要だと話します。
ソフトウェアの会社がハードウェアに向かった理由
ハードウェアの優位があっても、当時のGoogleは今ほど巨額をハードウェアに投資していたわけではなく、まだリプレースされる危機感を持っていたと宮武さんは話します。ソフトウェアサービスから始まった会社である以上、ディストリビューションを取らなければならないという考えです。
これってAPPLEの考え方と逆なんですよ。APPLEってハードウェアファーストなので。
Appleはハードウェアがスタート地点ですが、Googleはサービスが起点のため、ハードウェアやアプリレイヤーに頼ることになります。そこで生まれたのが、Chrome、Android、Google Mapsなどを出していく戦略です。
草野さんは、ソフトウェア企業がハードウェアで成功するのは珍しく、Facebookもスマートフォンを作ろうとしたがあまり成功したイメージはないと話します。宮武さんは、Googleがうまくいったのは他社にはできない戦略だったからだと答えます。
無料のChromeと拡張機能のエコシステム
Chromeはその典型で、宮武さんによれば現在60%のマーケットシェアを持ち、20億人ほどが使っています。今でこそブラウザは無償が基本ですが、当時は無償で出すこと自体がすごいことだったといいます。
(Chromeが)無料で使えてるの本当おかしいですね。
草野さんはアップデートの頻度の多さにも触れます。宮武さんは、起業家にとっては、AppleやGoogleのアプリストアで新しいアプリを出すより、Chromeの拡張機能ストアで出すほうが、競争環境を考えると良い場合もあると話します。
実際にChromeの上では、Honey、Grammarlyなどの拡張機能からユニコーン企業が生まれています。
アプリって削除しますけど、拡張機能ってなかなか削除しないんで。
「あだ名」から生まれたAndroidとMicrosoftへの警戒
宮武さんは、Googleにとってより大きいのはAndroidだと話し、AdSenseの元の会社と並ぶ良い買収だったと言われていると紹介します。Androidは2003年に立ち上がった会社で、創業者はアンディ・ルービンさんです。
ルービンさんはAppleで働いていたとき、ロボット好きだったことから「Android」というニックネームを付けられ、それが社名の由来になったといいます。草野さんは悪口にも聞こえると笑い、宮武さんも裏では違う話だったかもしれないと冗談めかします。
「ヘイ、Android」みたいな感じで。嫌だなあ、私だったら。
Googleは2005年に50ミリオンでAndroidを買収します。当時はまだiPhoneが出ておらず、Googleが警戒していたのはAppleではなく、PCを支配していたMicrosoftでした。Microsoftがスマホでも同じことをするのではないかと考えていたといいます。
結果として、そのハードウェアとかOSメーカーを持つ人たちが検索へのゲートウェイになると。必ずなるっていうのを理解していたからこそ、必ずAndroidを買収しなければいけなかったと。
現在、Androidはモバイル市場のOSシェアで72%を持ち、Android端末のデフォルトの検索エンジンはGoogleです。
キャリアがGoogle版Androidを選ぶ理由
GoogleはAndroidのオープンソース版も作っているため、携帯キャリアはオープンソース版とGoogle版のどちらも選べます。Google版を使う場合は、Googleのアプリをデフォルトで入れなければなりません。
その代わり、Googleはレベシェア ── レベニューシェアの略。売上の一部を提携相手に分配する仕組みのことですを行います。端末経由でGoogle検索をして広告がクリックされると、その売上の一部がキャリアに渡されるといいます。
一応オプションを渡すものの、うちらのサービスを使うとお金もらえますよと。
それは使いますね、確かに。
自前で地図を集め、無料で配ったGoogle Maps
宮武さんは、Google Mapsを無償で提供したことも当時は普通ではなかったと話します。初期のGoogleは地図データをTeleAtlasとNavteqの2社からライセンスしていましたが、地図APIを外部に出そうとしたところ、ライセンス元が応じたがりませんでした。
2007年ごろはターンバイターンのナビデータが話題になり、GPSデバイスメーカーのTomTomがTeleAtlasを、その数か月後にNokiaがNavteqを買収します。Googleはライセンス条件の変更を求め、1社はNG、1社はOKを出しましたが、ちょうどそのころから自社で地図データを取り始めました。
それが、車で世界中を回って地図データを集めるストリートビューです。
もし私が(地図プロジェクトに)入って、一からもう車で、一つずつ道をちょっと写真撮ってこうみたいな言われたら、マジ?みたいな。
宮武さんは、Googleがそのデータを無償で提供し、買収済みのAndroid端末にナビ機能として入れたことがすごいと話します。当時、TomTomのiPhone向けナビアプリはダウンロードに100ドルかかるもので、その価格でもおかしくない機能でした。
ナビアプリは有料が当たり前で、TomTomのiPhone向けアプリは100ドル
Googleが質の高いナビを無料でAndroidに搭載し、スマホメーカーもそれを使うしかなくなる
インターネット上どこでもディストリビューションすれば、そこのフレームワークをコントロールできると。
プロダクトの強みよりディストリビューション?
宮武さんは、Appleはソフトウェアやサービスに投資して体験を良くし、ハードウェアの利益で成り立ってきたのに対し、Googleはその逆を取ってきたと整理します。そのうえで、ディストリビューションを持つことが、場合によってはプロダクトの強みよりも大事だったと話します。
ハードウェアファースト。ソフトやサービスで体験を良くし、ハードウェアの利益で稼ぐ
サービスが起点。ハードウェアやアプリレイヤーに頼るため、ディストリビューションを取りに行く
わかりやすい例がマップです。初期のGoogle MapsはApple Mapsに大きな差をつけていましたが、iPhoneにApple Mapsがデフォルトで入っていると、使う人は一定数いました。宮武さんは、当時のアメリカでは日本ほどApple Mapsの評判が悪くなかったとも補足します。
音声認識も同様で、宮武さんによればGoogleはSiriより良いプロダクトを出しています。しかしiPhoneでは、GoogleのキーボードであるGboardから音声での操作ができず、Googleアシスタントを使うにはGoogleアプリかChromeに行くしかありません。
AppleがGoogleから受け取る年間15ビリオン
Googleはディストリビューションを取るため、Appleと提携を続けています。宮武さんによれば、AppleとGoogleのCEOは定期的に会っており、最初の提携はスティーブ・ジョブズさんとラリー・ペイジさんの時代の2005年でした。
2005年の提携は、MacのSafariのデフォルト検索エンジンをGoogleにするものでした。それが進化し、今ではiPhoneのデフォルト検索エンジンもGoogleになっています。
宮武さんは草野さんに、Googleが年間いくら払っているかをクイズのように尋ねます。推定では、2014年に1ビリオン、2020年に10ビリオン、2021年に15ビリオンで、7年間で15倍になったといいます。
(Googleが)今のところ一番いいですし、Appleからしたらめちゃくちゃいい契約ですね。
両社の関係が悪くなった時期もあり、そのときはSiriの裏側がGoogleではなくBingになったといいます。数年前にGoogleに戻り、契約は数年ごとに更新されています。
2022年に想定される18〜20ビリオンは、Appleの利益の10〜20%にあたると宮武さんは話します。Googleにとってはそれだけ払う価値があり、Microsoftが入り込めない額を払っているという見方です。
Mozillaの売上の86%はGoogle
Googleがお金を払っている相手はAppleだけではありません。Firefoxを手がけるMozillaには、2006年に57ミリオンほどを払い、それは当時のMozillaの売上の85%ほどでした。
2020年のMozillaの売上465ミリオンのうち、86%がGoogleからだといいます。宮武さんは、Mozillaは基本的にGoogleで成り立っていると話します。
こうした積み重ねで、Googleは検索エンジンで92%のシェアを持っています。2位のBingは3.2%、続いてロシアのYandexが1.5%、Yahooが1.3%、Baiduが0.7〜0.8%です。
草野さんは、日本ではYahooが人気で、2番目のシェアを持つと指摘します。宮武さんは、iPhoneではGoogleがデフォルトになるため、その状況も変わってきているのではないかと話します。
唯一対抗したFacebookと、Googleアナリティクスの「That's evil」
検索広告の領域でGoogleに対抗できたのは、唯一Facebookだったと宮武さんは話します。Googleがキーワードから検索の意図を読み取るのに対し、Facebookは属性で広告を出し、のちにリターゲティングも始めた点が違いでした。
ただFacebookもスマホのプロジェクトを実現させず、結果としてハードウェアを他社に頼ることになりました。宮武さんは、それがFacebookが今Appleに苦しめられている理由だと話します。
AppleがFacebookを追い詰める理由として掲げるのはプライバシーです。宮武さんによれば、Googleの創業者はこの問題を昔から見ていました。広告主が広告のパフォーマンスをトラッキングできるGoogleアナリティクス ── ウェブサイトのアクセス状況を分析できるGoogleの無料ツール。訪問者の行動を計測し、広告や施策の効果測定に使われますを考えた二人がピッチしたとき、ラリーさんとセルゲイさんの最初の言葉は「That's evil」でした。
いわゆるサードパーティーのクッキーっていうのが悪いんじゃないかと。ユーザーのトラッキングしたくないですと。
最終的に二人は、より良いユーザー体験を作れるという話に説得され、25ミリオンで会社を買収してGoogleアナリティクスを作りました。宮武さんは、創業メンバーはいずれ問題になることを何かしら理解していたのだろうと話します。
Moat(堀)にすらたどり着けないGoogle城
宮武さんは、アメリカでは事業の優位性をモート ── 英語で城の周りの堀のこと。投資やビジネスの世界では、競合の参入を防ぐ持続的な優位性を指しますと呼ぶと紹介します。城の周りを水で囲み、敵が入り込めないようにする堀のことです。
Googleの場合、データセンターなどのハードウェアがモートにあたります。そしてAndroid、Chrome、Mapsは、モートを広げたのではなく、モートの周りの土地を燃やしたと宮武さんは表現します。
iPhoneだともうデフォルトがGoogleですし、Mozilla行ってもそのハードウェアレベルでもブラウザレベルでもアプリレイヤーでも全部Googleが取ってるので。
すごいですよね。なんか創業者の人が変わってるのに。
「無料以下」のビジネスモデルとは?
宮武さんは、キャリアにお金を払うところまでやっていることに注目します。プロダクトを無償で出すのではなく、お金を払って使わせているという点です。
これは、ベンチマークのビル・ガーリーさんがGoogleの「Less than free」と呼ぶビジネスモデルです。コアな検索事業のマージンが高いからこそでき、しかも大きなコストがかかるため、誰にでもできる戦略ではないと宮武さんは話します。
Chromeでも同じことをしており、SONYやHP、DELLがChromeOSをベースにパソコンを作ると、検索のレベニューシェアを受け取れるといいます。
宮武さんはこの戦略を、ペプシを無料で飲めて毎回10円もらえる状況にたとえます。その状況で、120円ほどのコカ・コーラを払って買うだろうかという問いです。
無料プラスお金もらえるってすごいインセンティブなので。
「棚を確保しているだけ」は独占禁止法に当たるのか?
宮武さんによれば、このディストリビューション戦略は、独占禁止法 ── 市場での公正な競争を守るための法律。支配的な企業が競争を不当に制限する行為などを規制しますに該当するのではないかと強く問われています。ただ、検索結果もChromeやAndroidも良いプロダクトで、ユーザーが不満を持っていないなら当てはまるのか、という難しさがあるといいます。
Googleがデフォルトの地位を得るためにお金を払っている相手には、Apple、LG、Samsung、AT&T、T-Mobile、Verizon、Mozilla、Opera、UCWebなどがあります。
(Googleの回答は)その「リテール店舗と同じです」と。棚の確保をブランドってするじゃないですかと。
たとえば子ども向けのシリアルは子どもの目線の棚を確保し、置く場所によって値段も変わります。Googleは、それと同じことをデバイス上でやっているだけで、別の会社がもっと払えば棚は取れると主張しているといいます。
小売の棚の確保と同じ。他社がより多く払えばデフォルトは取れる
これだけのスケールは独占で、デフォルトの変更手段の提示や競合を入れられない条件の撤廃が必要
草野さんは、Googleのサービスから逃れられるのはXiaomiのような中国系のスマホくらいしか思いつかないと話しますが、調べるとXiaomiもAndroidベースだったかもしれないと気づきます。
もう勝てないですね。
それでも課題はある。次回は「勝てる理由」へ
宮武さんは、Googleの検索事業の強さを知るには他の事業も見る必要があり、深くリサーチするほど勝てないのではないかと思えてくると話します。ただ、課題もいくつかあるといいます。
プロダクトがやっぱりいいっていうのは本当にすごいことだなと思うので。
草野さんは、ユーザーとして進んで使いたい気持ちがある一方、独占していることにはどうなのかと感じると話します。それでも、他のサービスより使いやすいのがすごいという実感です。
次回は、検索エンジン単体としてのプロダクトの課題、独占禁止法をめぐる課題、そして社名は伏せたまま、Googleにとって最大のリスクとなる会社について話す予定です。
まとめ
今回のエピソードでは、Googleが検索で勝ち続ける理由が、検索の質だけでなく、安価な自作サーバーから始まったハードウェアの積み重ねと、高いマージンを元手にしたディストリビューション戦略にあることが語られました。競合はGoogleの堀に挑むどころか、そこにたどり着くことすら難しい状況です。
- Googleの2021年売上257ビリオンのうち58%が検索広告で、検索事業が収益の中心にある
- 創業期は1億円での売却を断られ、のちのYahooの1ビリオン提案もまとまらなかった
- 安い自作サーバーを大量に並べ、インデックスの規模と頻度で優位を築き、今もデータセンターに巨額投資を続けている
- Chrome、Android、Mapsの無償提供と、Apple・Mozilla・キャリアへの支払いで、お金を払ってまで使わせる「Less than free」の戦略を取る
- その強さは独占禁止法の観点から問われており、次回はGoogleの課題と「勝てる理由」が語られる


