iPhoneの次に、Appleはどこで稼ぐのか?
この回は、Appleの今後を考えるシリーズの2回目です。前回は、車の開発プロジェクト「Project Titan」とAR・VRデバイスという、Appleの長期的な取り組みを取り上げていました。
AR・VRについては、今年デバイスが出るのではないか、2つ出る予定が1つになりそうだ、ARメガネは時間がかかりそうだ、といった続報が出ています。宮武さんは、デバイスは出るだろうとしつつも、3〜5年の視点で重要な事業になるかはまだ見えないと話します。
10年後、20年後は、(AR・VRが)大きい、重要な事業になる可能性はあるかなっていうところですね、今は。
それに対して今回のテーマは、もっと短期的な売上成長です。宮武さんによると、iPhoneの売上はインドなどで伸びているものの限度があり、ティム・クックCEOが成長の柱として挙げているのがサービス事業だといいます。
草野さんも、最近のiPhone発表会は「確かにそうだよね」というアップグレードが中心で、カメラ性能はすごくても以前のような驚きはないと話します。宮武さんも、プロダクトを根本から変えるような発表ではなくなったからこそ、サービス事業がより強調され始めていると見ています。
Appleのサービス事業が含む範囲はかなり広く、iCloud ── Appleのクラウドサービス。写真や書類、バックアップなどをオンライン上に保存でき、容量を増やす場合は月額課金になりますのストレージ、Apple Music、AppleCare、Apple TV+、Apple Fitness、Apple News、ゲームのサブスクのApple Arcade、決済のApple Pay、そしてApp Storeまでがひとまとめになっています。
草野さんが「App Storeも分けていないんですね」と驚くと、宮武さんは、Appleはむしろその内訳を出したくないのだろうと答えています。直近の決算では、iPhoneが少し下がった一方でサービス事業は伸びていました。
9億人超が課金する「抜け出せない」エコシステム
宮武さんによると、Appleの直近の決算では、サービス事業の有料サブスク数が9.35億に達しています。iCloudの有料版、Apple Music、Apple TV+などに、ざっくり9億人ほどが課金している計算です。
Appleがサービス事業を強調し始めたのは2016年ごろでした。そのタイミングでiPhoneの売上が一度落ち、決算発表でティム・クックCEOとCFOが「サービス事業はこれからのグロースエンジン」だと説明したといいます。
何を具体的に言ってたかというと、「Appleはハードウェアの会社ではない」と。(それを)言い切ってたんですよね。
サービス事業の良さは、ハードウェアに比べてマージンが高いことです。宮武さんは、Appleのサービス事業のマージンを60%程度と見ています。
だからこそ短期的には、前回話したAppleエコシステムの強化が重要になります。iPhoneを買い替えた人がApple WatchやAirPodsを買うだけでなく、App Storeやサブスクにもお金を使い続けてもらう必要がある、というのが宮武さんの見立てです。
なんかその(Apple製品を)連携すればするほど、他のデバイスには移行できないみたいな。
草野さんがシームレスに使えるエコシステムの「ヤバさ」を語ると、宮武さんは「どんどん沼に入っていく」と応じます。宮武さんは、Appleの強みは「デフォルト」であることだとし、ハードウェアから始まってOS、ソフトウェア、そしてApple Musicのようなアプリの層にまで入り込んでいると説明します。
エディ・キューが期待値を上げた理由とは
Appleは2010年代半ばごろから、毎年1月にApp Storeの実績をPRとして発表しています。自社の売上は一切出さず、開発者にいくら支払ったかなどを示して、アプリのエコシステムが盛り上がっていることを伝える内容です。
例年のこの発表では、当時CMOだったフィル・シラーさんや、サービス事業トップのエディ・キューさんがコメントを寄せる形でした。ところが今年は、オープニングをすべてエディ・キューさんが書いていたといいます。
エディ・キューさんは結構、これからが結構すごいことが起きるっていう話をしていて。
エディ・キューさんはApple在籍が長い経営幹部で、宮武さんによると、期待値を上げるような発言はあまりしない人物です。前回似たことを言ったのは2014年5月ごろのインタビューで、「過去25年間Appleにいたけど、これだけのプロダクトのパイプラインを見たことがない」と話していました。
その2014年はApple Watchが発表された年で、まだ発表前だったAirPodsもおそらくこの時期に開発されていた、と宮武さんは振り返ります。
では、今回の期待値上げは何を指すのか。一般的な予測としては、今年出ると言われるミックスリアリティのヘッドセット向けのコンテンツ消費プラットフォーム、つまりAR・VR用のアプリストアではないか、と宮武さんは紹介しています。どこまで本当かはわからないものの、読んでいてかなり期待値を上げていると感じたそうです。
サービス事業の売上とARPUは、どれほど大きいのか?
サービス事業の規模について、宮武さんは具体的な数字を挙げます。2022年7〜9月期のサービス事業の売上は190億ドル、直近の四半期は200億ドルで、日本円にすると1四半期で2.4兆〜2.5兆円ほどです。
2022年通年のサービス事業の売上は780億ドル、約10兆円でした。Apple全体の売上は3940億ドルなので、サービス事業が全体の約20%を占めるまでになっています。
宮武さんは、iPhoneのアクティブデバイス数が10億台、Apple全体のアクティブデバイスが20億台を突破していることから、ARPU ── Average Revenue Per Userの略で、1ユーザーあたりの平均売上のこと。通信やネットサービスの収益力を比べる指標としてよく使われますを計算しています。
比較対象はFacebookです。FacebookのARPUはアメリカで1ユーザーあたり200ドルほど、世界全体では40ドルほどだといいます。Facebookは広告で売上を立てていて、DAUは20億人に達しているそうです。
Appleのサービス事業を単純計算すると、1デバイスあたり50ドル、1 iPhoneユーザーあたり70ドルほどになります。ただし、サービス事業の売上にはGoogleがiPhoneの検索のデフォルトになるために払っているお金も含まれます。
宮武さんは、Googleからの支払いは予想にばらつきがあるとしたうえで、それを差し引くと1デバイスあたり30ドル、1 iPhoneユーザーあたり50ドルほどではないかと推計します。そうなると、AppleのサービスのARPUはFacebookの世界平均とほぼ同じ水準です。
あとまあプラスデバイスも買ってるって考えたら。
草野さんの指摘に、宮武さんは「そこがめちゃくちゃ大きい」と応じます。Appleのユーザーはまず最低10万円ほどのデバイスを買い、そのうえでサービスにお金を使っているからです。
宮武さんは、最初の10万円というハードルは大きく上げにくく、インドのようなAndroidが強い地域では安いiPhoneが必要になる可能性もあると見ています。だからこそ伸ばすべきは、1人あたり30〜50ドルのサービス売上だといいます。
このサービス売上を10〜20倍にできれば、サービス事業だけで1兆ドル、約100兆円規模を目指せます。それがこれからのAppleの狙いだろう、というのが宮武さんの見方です。
サービスを率いるエディ・キューと、App Storeの原点
草野さんが、今のAppleはサブスクのバンドルを推しているのかと尋ねると、宮武さんはバンドルに加えて、App Storeの存在が大きいと答えます。
サービス事業を率いるエディ・キューさんは、1989年にAppleに入社した大ベテランで、在籍は34年目です。Appleのオンラインストアの立ち上げを仕切り、2003年にiTunes Store、2008年にApp Storeを立ち上げました。
現在のエディ・キューさんは、Apple Music、Apple News、Podcast、TVアプリ、Apple TV+、Apple Pay、Apple Card、Apple Maps、検索広告、iCloudまでを統括しています。草野さんは「どこまで見てるんですか」と驚いていました。
一方で、エディ・キューさんは58歳ほどで、次のサービス責任者が出てくるのではないかという話もあります。後継候補は2人いたものの、テレビ業界出身でサービス事業のビジネスを担っていた1人は最近辞めてしまい、今の最有力はApple Payのトップのジェニファー・ベイリーさんだといいます。
サービス事業の中で最も売上が大きいのは、おそらくApp Storeです。宮武さんは、スティーブ・ジョブズがもともと第三者のアプリを入れたくないと言っていたことを考えると、App Storeの成長はすごいことだと話します。
App Storeは2008年7月に、500アプリでスタートしたとされています。
なんか本当に、なんか初期のアプリのランキングとか、本当に個人の開発者の人がランキングとかにいて、企業のやつはちょこっとだけみたいな。
宮武さんも、今年のアメリカのApp StoreではTemu ── 中国系のECアプリ。低価格の商品を大量の広告で売り込み、アメリカでダウンロードランキング上位に長く入っていますがずっと1位であることを挙げ、個人の開発者がトップに入るのは難しくなったと同意しています。
App Storeはいくら儲かっているのか?
App Storeの収益は多くの人が試算していますが、きちんとした数字はなかなか出てきません。宮武さんが見てきた予測は、100億〜250億ドル、1兆〜3兆円ほどと幅があります。
手がかりになるのは、Appleが開発者への支払額を公表していることです。App Storeの手数料は基本30%なので、支払額から逆算できそうに見えます。2021年と2022年にはそれぞれ600億ドル、2008年のローンチ以来の累計では3200億ドルほどを開発者に支払っています。
ただ、Appleの手数料はすべてが30%ではありません。年間売上100万ドルまでの開発者は15%、サブスクは初年度が30%で、ユーザーが払い続けた2年目以降は15%に下がります。
実際の平均手数料率が唯一出たのが、Epic Gamesとの裁判でした。2019年の平均コミッションレートは25%強だったと明らかになっています。
宮武さんは、この25%が毎年ほぼ同じだと仮定して計算します。その流れを順に並べると次のようになります。
開発者への支払い
Appleが公表した600億ドル
平均手数料率
Epic Games裁判で出た2019年の25%強を当てはめる
Appleの取り分
約200億ドル
App Store全体の売上
合計で約800億ドル
宮武さんは、この数字がどこまで正しいかには留保をつけつつ、App Storeはサービス事業の約25%、Apple全体の5〜6%ほどの売上になると見ています。「めちゃくちゃ大きくはないけれど、めちゃくちゃ小さくもない」という位置づけです。
興味深いのは、App Storeの売上のほとんどがゲームから来ていることです。Appleは基本的にゲームで課金を取る方針で、売上の80%ほどがゲームだとも言われているそうです。
Epic Games裁判のあと、規制の風は強まったのか
草野さんが、Epic Gamesとの裁判は結局どうなったのかと尋ねると、宮武さんは、今のところ基本的にAppleが勝ったと答えます。
それでも、業界には多少の影響があったと宮武さんは見ています。Appleへのプレッシャーは強まり、裁判の影響かはわからないものの、アメリカ政府やEUがApp Storeをめぐって動いているからです。
宮武さんによると、Appleの今後の課題は2つあります。1つはApp Storeの売上をゲーム以外の領域に広げること、もう1つは裁判やレギュレーションへの対応です。
もうインターネット企業の、ありとあらゆる一番力を持ってる会社と言っても過言ではないですよね。
アメリカでは、サイドローディングを可能にする法案と、アプリのマーケットプレイスを持つプラットフォームが自社のプロダクトを優先できないようにする法案が出ています。ただ、通るかどうかはまだまったく見えていないそうです。
より進んでいるのはヨーロッパで、デジタル市場法 ── EUが大手プラットフォーム企業を「ゲートキーパー」に指定し、自社優遇の禁止や他社サービスへの開放などを義務づける法律。英語名はDigital Markets Act(DMA)がすでに決まっています。対象は、時価総額800億ドル以上で、EU内に4500万MAU以上を持つテック企業です。
具体的にはApple、Google、Facebook、Amazonなどの大手が当てはまり、草野さんが尋ねたヨーロッパの企業は、宮武さんの見立てではあまり該当しないだろうとのことです。ルールの適用は始まっていますが、企業の対応期間として、全ルールへの準拠は2024年ごろからとされています。
オランダの出会い系アプリに見るAppleの抵抗
ヨーロッパでは、国単位でも動きがあります。オランダは独自に、出会い系アプリに限ってAppleに第三者の決済サービスを認めるよう求めました。なぜ出会い系だけなのかは、宮武さんも「不思議ですよね」と話しています。
Appleは要求に応じたものの、第三者の決済を使う開発者には27%の手数料を課すルールにしました。
結局その30パーセントのフィーの3パーセントは、あの決済プロバイダーが取るフィーなんで。
つまり、Appleは決済事業者の分を差し引いただけで、開発者が払う額は基本的に変わらない仕組みです。
さらにAppleは一時期、第三者の決済を入れたいアプリに対して、オランダ専用のアプリをゼロから別に作り、改めて申請するよう求めていました。機能は同じで、第三者の決済だけが組み込まれたアプリです。
この要求にはオランダ政府が怒り、Appleに罰金を払わせる形になったことで、Appleは要求を取り下げました。宮武さんは、Appleがこうした要求も含めて規制と戦っている例として紹介しています。
DMAは第三者アプリストアを命じているのか?
大きなニュースになったのが、2022年末のBloombergの報道です。Apple担当のマーク・ガーマン記者が、AppleはDMAに対応するため、iPhoneやiPadに第三者のアプリストアを入れられるよう準備していると伝えました。
第三者のアプリストアとは、たとえばSamsungの専用ストアや、Epic Gamesが持つゲーム用のストアのようなものです。Androidでは、Google Playストアと Samsungのストアを1台に共存させることがすでにできます。
報道では、ユーザーがApp Storeを通さずにアプリをダウンロードでき、Appleの制限や30%の手数料を避けられるのではないかとされていました。しかし宮武さんは、全体の話は間違っていないものの、この記事はミスリードしていると指摘します。
宮武さんによると、DMAの条文はAppleに次のようなことを求めています。
| 項目 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 外部の決済案内 | アプリ内で外部サイトでの決済を案内でき、それに手数料を取れない | Spotifyが「spotify.comで決済できる」と言える |
| 価格の差 | アプリ内課金とオンライン課金で別の価格にできる | Twitterはアプリ経由のほうが高い |
| 第三者の決済 | Appleの決済サービスを使わなくてもよい | Stripeなどを使う |
| 外部からのインストール | 第三者アプリのインストール「もしくは」アプリストアを許す | App Store外からのフォートナイトのダウンロード |
Spotifyはアプリ内でAppleの決済を使っていないため、アプリ内では決済できず、外部サイトで決済できることも案内できませんでした。その状態が、DMAによってようやく変わり始めています。
これってすごい重要な言葉が1個だけあるんですけど、これがオアで、あの、もしくはっていう部分で。
宮武さんが注目するのは4つ目の要件の「もしくは」です。条文は、第三者アプリのインストールか、第三者のアプリストアのどちらかを許せばよいと読めます。そのため宮武さんは、Appleは第三者のアプリストアは許さず、外部サイトからのダウンロード、つまりサイドローディング ── 公式のアプリストアを通さず、開発者のサイトなどから直接アプリを入れること。Androidでは基本的に認められていますを許す判断をするのではないかと予想しています。
たとえばEpic GamesのストアはiPhone上では出せないものの、『フォートナイト』はApp Storeになくてもダウンロードできるようになる、というイメージです。
宮武さんは、その理由も説明しています。第三者のアプリストアを許すと、Appleがプライバシーのために行ったiOSのアップデートのような管理が効きにくくなります。一方で外部サイトからのダウンロードなら、iPhone上でAppleの承認を挟むなど、いくつかの管理の層を残せるからです。
規制されても、手数料はなくならないのか?
宮武さんは、オランダの事例と同じく、DMAも手数料を取るなとは言っておらず、いくら以下にせよという規定もないと指摘します。そのため、第三者の決済が使えるようになっても、Appleは基本的に手数料を取るだろうと見ています。
草野さんが、法を作った人は何が目的なのかと尋ねると、宮武さんは、競争を損なわない、相互運用性のあるエコシステムを作りたかったのだろうと答えます。そのうえで、手数料の水準を法律で定めるのは間違っているとも考えられ、EUの立法者がどこまで考えていたかはわからないとしています。
さらに、開発者がStripeやAdyenを使うと3%以上の手数料がかかります。Appleが27%を取るなら、結局すべてAppleに任せたほうが安くなるため、規制が入っても結果はそこまで変わらないという説もあるそうです。
Epic Gamesとの裁判でも、裁判官は「Appleには手数料を取る権利がある」と明言しました。手数料の妥当性については、Appleを支持する考え方と、それに反論する考え方があります。
AppleはブランドやIPを提供し、アプリの発見も手伝っている。フォートナイトもiOSのユーザーにリーチできたので、手数料を取る権利がある
Tinderの新規ユーザーのほとんどはApp Storeでの検索から来ており、Appleのおすすめなどから来たのは6%だけ。それで全ユーザーから30%を取るのはおかしい
Match Groupの主張は、新規ユーザーの大半がすでにTinderを知っていて、App Storeで名前を検索してダウンロードしているというものです。宮武さんは、これはMatch Group側の意見だと断ったうえで紹介しています。
Appleにとっては、開発者との関係の保ち方がとても難しいと宮武さんは話します。取りすぎるのは良くないので、年間100万ドルまでは15%に下げるなどの対応もしています。
この30パーは正直多分永久に守れないとは思ってるので。
そうなると、Appleの選択肢は、開発者にもっと儲けてもらうか、ゲーム以外のカテゴリから収益を得るかになります。
FacebookにAppleが持ちかけた2つの提案
ゲーム以外の領域の例として宮武さんが挙げるのが、アプリ内での広告です。2021年に、AppleはiOSのアップデートでアプリをまたいだトラッキングを制限し、特にECブランドなどの広告コンバージョン率が落ちました。ただ、Appleはそれ以前からこの領域で動いていたといいます。
ウォール・ストリート・ジャーナルなどの報道によると、AppleはFacebookとかなり前から話し合い、Facebookの広告売上の一部を求めていました。Appleのアイデアは2つありました。
1つ目は、広告なしのサブスク型Facebookを作ってほしいという提案です。サブスクになれば、Appleは1年目は30%、2年目以降は15%の手数料を得られます。
2つ目は、Facebookの「この投稿をブーストしませんか?」という機能を使った広告売上のレベニューシェアです。
それを要求できる、そのシステムというか、座組がよくわからないです、なんか。
宮武さんの説明では、ユーザーはアプリ内でブーストを押しているため、Appleはそれをデジタルコンテンツであり、アプリ内課金だと考えたということです。草野さんも「そういう考えもできるのか」と納得していました。
この議論は2016〜2018年ごろにFacebookとAppleの間で行われていました。そして2018年夏、AppleはSafariのインフラを変え、Facebookのウェブ広告のコンバージョン追跡を難しくします。話し合いがAppleに不利に進んだことへの対抗だった、という見方もあるそうです。
ザッカーバーグ、「勘弁してくれよ」って思ったでしょうね。
宮武さんは「まあ『お金くれよ』と」と返しています。さらにAppleは、2020年夏にiOSのアップデートを予告し、2021年4月に実施した直後にも、Facebookにサブスク版をやらないかと改めてオファーしたそうです。
「投稿のブースト」はアプリ内課金になった
宮武さんは、こうした要求はFacebookだけではないと話します。アプリ開発者にとっては公に話すのがリスクなので言いにくいものの、徐々に同様のアプローチを受けたと明かす企業が出てきています。
その1つがTumblrです。Yahoo!から安く売却されたTumblrを持つ親会社Automatticでは、投稿のブースト機能を入れようとするたびにアプリ申請でリジェクトされたといいます。結局アプリ内課金として認めて導入し、Appleに3割を渡していたそうです。
ゲートキーパーだなあ。
宮武さんは、ここまでの流れを時系列で整理しています。
宮武さんの見立てでは、Appleはさまざまな会社と話したものの思うようにいかず、自ら別の方向に動き始めました。その到達点が2022年10月のガイドライン変更で、ブースト投稿を「コンテンツのデジタル購入」、つまりアプリ内課金だと言い切ったことです。
堂々とやってますね。もはや清々しい。
このルールでは、個人がFacebookなどでブースト投稿を押すと、Appleが3割、Facebookが7割を受け取ります。手数料を払うのはユーザーではなくFacebook側です。例外として、Facebookの広告マネージャーのような広告管理の専用アプリは対象外とされています。
草野さんは、Appleの肩を持つわけではないとしつつ、個人やクリエイターが広告を出すニーズは増え、ハードルも下がったので、課金と捉えることもできるかもしれないと話します。宮武さんは、Appleの難しさはアプリ内課金を何と定義するかにあり、これまでゲームやデジタルコンテンツの一部だけが対象で曖昧だったと指摘します。
それでも、アプリ内広告から収益を得る道はAppleの思った以上には進みませんでした。そこでAppleは、自ら広告市場に入っていく必要があると宮武さんは話します。次回は、Apple TV+での広告やApp Storeの検索広告など、Appleの広告事業を取り上げる予定です。
まとめ
iPhoneの成長に限りが見えるなか、Appleはマージンの高いサービス事業を成長の柱にしています。中心にあるApp Storeはゲーム頼みで、規制の圧力も強まっていますが、宮武さんは手数料そのものは形を変えて残ると見ており、Appleは広告など新たな収益源へ動き出しています。
- サービス事業は2022年に780億ドルを売り上げ、全体の約20%を占める。1人あたり30〜50ドルの売上をどこまで伸ばせるかが鍵
- App Storeの売上は約800億ドルと推計され、その約80%がゲームから来ているとされる
- EUのDMAは第三者アプリストアを必ずしも命じておらず、Appleはサイドローディングを選び、手数料も取り続ける可能性がある
- AppleはFacebookなどにサブスク化や広告売上の分配を求め、2022年10月にはブースト投稿をアプリ内課金と定義した
- アプリ内広告からの収益化が進まないなか、Appleは自ら広告事業に乗り出そうとしている




