「シェマ」とは何か
今回は雑談ではなく、学びの共有回として「シェマ」という概念が取り上げられました。
きっかけは、学校の先生向けに発達心理学の研修動画を作ったことだと話されています。
その動画では、ピアジェスイスの心理学者。子供の思考が段階的に発達すると考え、認知発達理論やシェマの概念を提唱したとエリクソン発達心理学者。人生を8つの発達段階に分けて捉える理論で知られるという2人の学者の理論を解説したそうです。
このうちシェマという概念を構築したのがピアジェで、これはビジネスにも重要かもしれないと感じたことから話が始まりました。
シェマはシェマだよっていう感じなんですけれども、一言で言うのがすごく難しくて。
シェマは、子供の認知能力や理解能力、つまり学びの発達を促す上で重要なものだと説明されます。
人にはもともとシェマがあり、それによって世界を捉えます。ただ、自分の持つシェマと世界とのあいだにはズレが生じます。
そのシェマをアップデートし、現実とのズレを調節していくことが大事だと語られています。
子供の学びと大人の役割
子供は大人のような論理的思考をまだ持っていません。
だから大人として子供に接するときは、子供の持つシェマに目線を下げて歩み寄り、シェマの調節を支える役割を担うとよいとされます。これがピアジェの理論です。
この考えの背景には構成主義人は環境との相互作用の中で、知識を自分自身で構成していくという考え方があります。
人間は勝手に成長するわけでも、完全に環境に依存するわけでもなく、世界の仕組みを探索し、知性を自分で構築していくという前提に立っています。
だからこそ、頭の良さの優劣や、話を理解する速度の差、頭の硬い人と柔らかい人の違いが出てくると話されています。
言葉と飲食店に見るシェマの例
わかりやすいシェマの例として挙げられるのが、言葉の学習です。
1歳児や2歳児は、四本足の動物を見ると指さして「ワンワン」と言うことがあります。犬でも猫でもクマでもライオンでも、すべて「ワンワン」になってしまうのです。
この子のシェマは「四本足はワンワン」しかないため、四本足の動物が全部そこに含まれてしまいます。
これを「あれは猫ちゃんだよ」「あれはクマさんだよ」と書き換えていく手助けをするのが大人の役割です。
この過程で、四本足の動物というシェマから、犬・猫・クマ・ライオンのシェマが分割されて出来上がっていきます。
大人の例では、初めて入る飲食店が挙げられました。ルールを説明されていなくても、案内され、座り、メニューを見て注文し、会計して帰ることができます。
これは飲食店のシェマがあるからだと説明されます。
一方で、店員がいない、注文はタブレット、会計はボタンといった場面ではシェマが崩れます。そこで「タブレットの店になったのね」と調節することで対応できるのです。
つまり、予想と現実のズレを埋めることで、戸惑わずに振る舞えるようになります。
シェマの書き換えを拒む場面
一方で、シェマの書き換えが起きない場面もあります。
例として、仕事場の近くのファミリーマートにセルフレジができたときの話が語られました。
店員に「これって皆さん使ってるんですか」と聞いたところ、あまり使われていないという答えが返ってきたそうです。特に高齢の人は有人レジを使い続けているといいます。
だから仕事が減ったかと思いきや、そんなに仕事減ってませんみたいな感じで。
これはコンビニというシェマに新しいセルフレジが加わったものの、調節を諦め、慣れた行動を続けているパターンだと解釈されています。
飲食店ではその場に従うしかありませんが、コンビニのように選択肢があると、本来のシェマで過ごした方が楽だからです。
この話が示唆に富むとして、経営層が男性育休や女性の就業に共感しないケースへと話は展開します。それは経営層のシェマが調節されていない状態だと位置づけられました。
OSとアプリで考える認知の発達段階
では、どう突破すればよいのか。ここで引き合いに出されるのが、ピアジェのもう一つの有名な理論である認知発達理論です。
子供の認知発達は4つの段階に分けられます。
それぞれの時期だからこそ理解できることがあり、一つ上の段階の枠組みには対応できないと説明されます。
前操作期の子供はひたすらラベリングを覚える段階で、まだ論理的思考には未熟さがあります。
この時期の子に論理的思考が必要なことを教えても、ピンとこないといいます。OSが入っていないので、論理的思考のアプリを入れられない状態だと例えられました。
体験談として、Ryotaro自身が5歳ごろに九九の歌を覚えてしまった話が語られます。
当時は数概念も論理的な力もなかったため、九九の歌を歌詞としてしか捉えられませんでした。
そのため、いざ九九の学習になったとき、歌詞として入っている九九を論理構造に分解し直すのが非常に難しかったといいます。百マス計算では、歌を歌わないと答えが出てこず、いつも終わらなかったそうです。
OSが整ってない人間に一つ上のグレードのアプリをインストールしようとしても、その段階で持ってるOSの形で書き換えてしまう。
この構図が、経営層に育休や女性の働き方改革を伝えても、そもそもOSが整っていないから入らないというパターンにつながると考えられています。
予想と現実のズレを埋める学びのサイクル
では大人はどうか。子供ではないので、よほどでない限り第4段階の形式的操作期には至っているはずだと話されます。
形式的操作期とは、目の前にないことでも論理的に考えられる段階です。
例として、水金地火木土天海と惑星が並ぶ図が挙げられました。あの図の実物を見た人類は一人もいません。
それは計算によって縮尺や距離を導き出し、モデル化しただけです。目の前にないことでも考えられる推論能力があるからこそ描けるのだと説明されます。
この段階には小学6年生ごろから到達し、その後、数学や物理などの学びを通して仮説推論能力を後天的に高めていきます。
シェマを語る上で大事なのは、まず世界が先に存在しているという前提です。
世界について行動し、予想に反することが起きたとき、なぜかと考えて修正していく。これが学びの核心だと話されています。
子供の例では、友達が遊んでいる世界に「入れて」と言ったら、断られたという場面が挙げられました。
なぜと思って先生に聞き、「トランプをやっていたから途中で入れないと言われた」と知ることで、世界の見え方が変わります。
すると「みんなが遊んでいる」ではなく「みんながトランプ遊びをしている」と見えるようになり、区切りがついたら入れてと言えばいいと行動が変わります。
さらに、それでも断られれば新しいズレが生まれ、「3本勝負だった」と知ってまた見方が変わっていきます。
世界がある
世界が先に存在している
行動する
その世界に対して行動を起こす
ズレに気づく
予想と現実のズレが起きる
修正する
なぜかを考えてシェマを調節する
見え方が変わる
世界の見え方が変わり、次の行動につながる
組織を変えるには連帯が必要
この構図が経営層と従業員の関係に重ねられます。
経営層には経営層に見えている世界があり、育休が必要な従業員や女性には別の世界が見えています。
従業員には「育休が必要な世界」が見え、経営層には「育休が必要ではない世界」が見えている。この2人がいくら話しても、世界は交わりません。
そこで自分にできるのは、自分の行動を変えることだと語られます。相手に伝わらなかったとき、自分のシェマをアップデートし、どう修正を促すかを考える必要があるのです。
さらに踏み込むと、経営層の見ている世界を変えるには、予想と現実のズレを引き起こしていく必要があると話されます。
例えば、この仕事を振れば受けてくれると思っていた相手に「息子の迎えがあるので無理です」と言うことが、実は大事だといいます。
ただし一人でノーと言うと評価が下がるかもしれません。そこで、一緒になってノーと言う連帯が必要だと語られます。
こいつら別に文句言わねえだろって思ってるから、いろいろ無理難題押し付けてくる。けれども、私たちだって文句を言うんだぞっていうのを見せてあげることで、考え方変えるよっていう風になっていく。
その最も大きな形がストライキだと位置づけられました。自分より上の立場の人の考え方を変えるには、みんなで一丸となってノーを突きつける必要があるとまとめられています。
頭を硬くしないためのインプット習慣
最後に、年齢と知能の話へと展開します。
年齢が上がると結晶性知能経験や知識の蓄積によって身につく能力。加齢の影響を受けにくいが流動性知能新しい状況に対応し、その場で考える能力。加齢とともに低下しやすいとされるより優位になっていくといいます。
若いうちはシェマがまだ固定されておらず、どんどん新しいことを取り込める頭になっているはずだと話されます。小さい頃の思い込みがずっと残らないよう、脳はある程度可変である必要があるのです。
およそ30歳ごろまでに自分と違う考えの人に触れてシェマをアップデートし続け、その後、脳は急速に流動性から結晶性へと変わっていくと説明されます。
この大きい道路を2個作っておけば交通量いいんでみたいな。余計な道は草ぼうぼうでも構いません。
主要な道だけ舗装して生きていけるようになる一方で、頭はどんどん硬くなり、シェマを変えにくくなっていきます。
だからこそ、読書などのインプット習慣が自分のために大事だと語られます。太い道が出来上がるなら、その道を新しいものを吸収するインプットの道にしておくのがよいという考えです。
新しいことに対応するのは難しくても、知識を詰め込むこと自体はずっとできると話されています。
気に入らない上司や大人を「ああはなりたくない」というエンジンにするのも一つの手だと締めくくられました。
まとめ
シェマという発達心理学の概念を軸に、子供の学びから大人の頭の硬さ、組織の変え方までが一本の線でつながる回でした。予想と現実のズレを受け入れて修正する態度こそが、学びと変化の鍵だと語られています。
- シェマは世界を捉える枠組みで、現実とのズレを調節してアップデートしていくもの。
- OSが整っていない段階に一つ上のアプリは入らない。相手の発達段階やシェマに合わせる必要がある。
- 学びは「世界がある→行動する→ズレに気づく→修正する→見え方が変わる」というサイクルで進む。
- 経営層のシェマを変えるには、予想と現実のズレを起こし、連帯してノーを突きつける必要がある。
- 年齢とともに頭は硬くなるため、流動性を保つインプット習慣が自分のために重要。
