そもそも「会員権」って何だろう
第3回はいよいよ本題。テーマはブロックチェーンと会員権です。ただ、いきなり難しい話には入りません。
そもそも会員権って何だろう。自分のイメージだと、お金持ちの人がゴルフの会員権を持ってたり、先輩でリゾートマンションが使える会員権がどうたらっていうのをぼんやり聞いたことあるけど、実際どういう。
小畑さんは、まず会員権の範囲を広げてみせます。ゴルフやリゾートだけでなく、アイドルやスポーツ選手のファンクラブの会員証、スポーツジムの会員権、サブスクリプションなども会員権の一種だと説明します。
一般的にイメージされるゴルフやリゾートの会員権は、一口数百万円から数千万円するものもあります。ここで小畑さんは「その価値はどうなのか」という問いを投げかけます。
なぜ会員権はすぐ値段が下がるのか
自分用に買った会員権を、あとで売りたくなるケースは少なくありません。ところが小畑さんによれば、一般的な会員権は売りたい時に値段が下がってしまうといいます。
結局、売りたい時に売れないんですよ。売りたい人が、買いたい人を探してこなきゃいけない。それがすぐ見つからないと、もう値段をもっと下げていくみたいな。
つまり価格は、買いたい人と売りたい人の目線が合ったところで決まります。その取引がやりやすいか、やりにくいかで、つく価値が大きく変わるということです。
種市さんが「やりにくいというのは、外に出しづらい、みんなの目に触れづらいということ?」と確認すると、小畑さんは「まさにそう」と応じます。
メルカリが「モノ」に起こした革命
ここで小畑さんは、わかりやすい例としてメルカリを持ち出します。物の個人売買に革命を起こしたサービスだと話します。
NFTとは、ブロックチェーン上で発行される、複製できない固有のデジタルデータのことです。会員権やアートなどの権利をデジタルで表せます。
小畑さんは、いらなくなったスノーボードの板をメルカリで売った経験を挙げます。昔なら数人の友達に声をかけるくらいで、ほぼタダで手放していたようなものに、値段がつくようになったといいます。
ブランド物のバッグを買う若者が増えた理由も同じだと説明します。以前は30万円のバッグも買った瞬間にほぼ価値がゼロになりました。売る場所がなかったからです。
今はメルカリみたいなものがあるので、これワンチャン30万で買うけど20万で売れるなとか、なんならレアなものだと値段が上がるかもしれない、というのがすごくやりやすくなった。
種市さんは、売買の仕組み自体は昔からあったが、それを誰でも気軽に使えるようにし、多くのユーザーを集めたことが革命だったと受け止めます。
デジタルの「権利」はなぜ売りにくいのか
物理的なモノの売買は、メルカリなどのおかげで多くの人にとって想像しやすくなりました。では会員権はどうか、と話は本題に戻ります。
ゴルフやリゾートの会員権は、今も売れる場所やブローカーが存在します。ただ、簡単に取引できる環境ではないと小畑さんは言います。理由は、会員権自体がこれまでアナログだったからです。
紙をもらって名前を書き、ゴルフ場に印鑑を押してお金を払う。売る時も、相手がゴルフ場で本人確認をし、名義を書き換える必要があります。これがかなり面倒だといいます。
ゴルフやリゾートの会員権みたいに金額が高いものだと、一定そういう面倒くさい手続きをしても経済的に合うんですよ。数百万のものだから、一回千葉に行ってサインするか、と。
一方で、そのやりとりが面倒だからこそ、便利に取引できるプラットフォームが育っていません。メルカリにゴルフ会員権を出品しても、名義の書き換えなどができないのが実情です。
ここで種市さんが「それってブロックチェーンの技術を使うといいってこと?」と切り込みます。
まさに、本当にその通りで。結局そういう権利って、基本的に紙で表してたんですよ。紙と印鑑みたいな。それを真面目に売買しようとすると、ものすごい摩擦が生じて、面倒くさくてやらないんですよ。
ブロックチェーンで会員権はどう変わるか
紙よりデジタルの方が便利ですが、デジタルの権利をそのまま売買するのは難しいと小畑さんは言います。
たとえばアイドルのファンクラブの会員権をデジタルで作るとします。サイトでアカウントを登録し、メールアドレスとパスワードで会員権を作る。しかしそれは、そのアイドルのサイトのデータベースにあるものを、画面に映しているだけです。
だから売りたくても、そのサイトの中に取引できる場所がなければ売れません。そして普通、そんな仕組みは用意されていません。
ところが、会員権をブロックチェーンで発行すると事情が変わります。会員権がサイトの外に出て、二次流通できるマーケットで取引できるようになるのです。
種市さんが、ブロックチェーンとは複製ができないことを保証する技術なのか、と尋ねます。小畑さんは「そうです」と答えます。
複製ができない。あとはアイドルのサイトの中に閉じてないんですよ。インターネットのもう一個上のレイヤーと呼ぶんですけど。だからアイドルのところで買った会員権が、メルカリのようなプラットフォームにも出品できる。
実際メルカリは、NFTを取引できる「メルカリNFT」というサービスを始めています。今はアートなどが中心ですが、会員権や利用権もいずれ扱われるかもしれない、と小畑さんは話します。
紙と印鑑でのやりとりが基本。売る時は本人確認や名義書き換えが必要で、面倒なため取引が広がりにくい
複製できず、発行元のサイトの外でも取引可能。二次流通のマーケットで売買しやすくなる
「価値がある」とは「売れる」ということ
小畑さんは、モノや権利に価値があるとは、ほぼ「売れるかどうか」と同じ意味だと語ります。
みんなが1000円なら買ってもいい、5000円なら買ってもいいと思うから、値段がつく。ルイヴィトンのバッグも、売れなければ価値はゼロだといいます。
これに種市さんは、自分にとって必要で道具として使えるなら、自分にとっての価値はあると返します。小畑さんも同意しつつ、外に出て不特定多数が見た時の価値は、お金という共通の指標で測られると整理します。
自分がいらないって思った時に、誰かがその価格で買ってくれるかっていうのが、ほぼものの価値とほぼ同義なんですよ。
物はメルカリで売れるようになりましたが、デジタルなものは今なかなか売れません。それを売れるようにしたのがブロックチェーンの革新的な点だ、と小畑さんは締めくくります。
会員権が「民主化」される未来
この技術が広がると、会員権を持つことの敷居が下がると小畑さんは考えます。
たとえば500個限定で発行されたアイドルの会員権を、欲しい人がより買いやすくなる。種市さんは、偽物ではないことをシステムで保証できる点が大きいと指摘します。
安心で、かついろんな人たちがみんなが取引できる。メルカリみたいな革命とは言わないけど、すごい便利で、いろんなことができるんだろうなっていうのはぼんやり感じた。
小畑さんは、会員権がもっと民主化され、安いものも含めて世の中に流通しやすくなると見ています。自身の会社Decentierでは、こうした領域に取り組んでいるといいます。
Decentierは、小畑翔悟さんが代表を務める会社で、ブロックチェーンの社会実装を進めています。
種市さんは「自分がつなげられることもありそうで、ちょっとワクワクしてます」と、次回への期待を語りました。
まとめ
ブロックチェーンは、これまで紙と印鑑で扱われ、取引しにくかった「権利」を、複製できず透明性の高い形でデジタルに乗せ替える技術です。会員権が民主化され、暮らしにより身近になる未来像が見えてきました。
- 会員権にはゴルフやリゾートだけでなく、ファンクラブやジムなど幅広い種類がある
- 価値がある=売れる、であり、取引のしやすさが価格を左右する
- 紙と印鑑ベースの会員権は手続きが面倒で、取引が広がりにくかった
- ブロックチェーンなら会員権が発行元の外に出て、複製されずに二次流通できる
- 会員権が民主化され、安いものも含め流通しやすくなる未来が期待される
