リスナーの質問から始まった腕時計トーク
この回は、リスナーからのコメントがきっかけで生まれました。
小畑さんは、以前から届いていたコメントを紹介します。
書かれていたのは「お二人の腕時計の遍歴をお聞きしたい」という質問でした。
逆に俺、小畑君の方が興味深い。
そこで、まずは種市さんの時計観から話が始まります。
時計はコーディネートのノイズになりやすい
種市さんは、今は時計をしていないと話します。
その理由には、独特のバランス感覚がありました。
俺基本的にはプラマイゼロになるのが好きなの。スタイリングの仕事もしてたし、いろんな人たちとやって、時計って結構ノイズになりやすいんだよね。
時計は、車と同じように、その人の考え方や生き方が出てしまうものだと言います。
高校のG-SHOCKから、褪せたロレックスGMTへ
種市さんの時計遍歴は、私服の学校だった高校時代から始まります。
最初はタイメックスのアイアンマン、そしてG-SHOCKのスピードでした。
サーフィンをしていた種市さんにとって、G-SHOCKの丈夫さは印象的だったようです。
一回サーフィンで車の上に(時計を)置いてて、忘れてブーンって走っちゃったことが何回かあって、多分踏んづけちゃったこともあるぐらいのノリなんだよ。でも大丈夫だったっていうんで、やっぱすげえなって。
その後、BEAMSに入る頃には古着やヴィンテージのブームがありました。
当時の先輩たちはサブマリーナーやロレックスをつけていて、種市さんも憧れます。
そして70年代の褪せたGMTマスター、通称ペプシを手に入れました。
GMTマスターは、ロレックスのスポーツモデルの一つです。赤と青のツートンベゼルは「ペプシ」の愛称で呼ばれます。
今持ってたらすごかったですね。
ところが、あるとき先輩に思わぬことを言われます。
先輩がトイレで(時計を)外して手を洗ってた。俺はわからないから、そのまま手を洗ってたら「これダメだよ、水入ってダメになっちゃうよ」って言われて。ヴィンテージだからダメなんだよお前、みたいな。
丈夫なはずのロレックスなのに、ヴィンテージゆえに気を遣わなければならない。
その矛盾に、種市さんは違和感を覚えます。
物質主義とサーフの世界で芽生えた葛藤
種市さんは、褪せた時計をかっこいいと思う一方で、それを手放す決断をします。
理由は、お金がなくなったからではありませんでした。
自分が大したその生活が、別に収入があるわけじゃないのに、そういうのをしてる虚構っぽい感じというか。その葛藤もすごいあるんだよね。
当時の種市さんは、華美なファッションの世界と、物質主義とは真逆のサーフカルチャーを行き来していました。
海のポイントに行って、高い車乗ってる方が石投げられるノリじゃないけど、逆にボロい車の方が美味そうに見えるみたいな。そのカルチャーを両方見てたから、なんかちょっと嫌になっちゃったのもあって売ったの。
二つの価値観の間で揺れた結果、種市さんは20代中盤から時計をしなくなりました。
Apple Watch、そしてガーミンへ
時計をしない時期が長く続いた種市さんですが、10年ほど前に転機が訪れます。
Apple Watchの便利さに惹かれたのです。
これは便利だって思って。腕時計のあの世界の中で邪魔しないというか。単に便利だったし。
LINEの通知や、海の上からの電話にも使えて重宝したと言います。
ただ、Apple Watchには充電の持ちという弱点がありました。
Apple Watchって充電減るの早いじゃん。持たないんだよ。結構一日半ぐらいしか持たなくて。俺、旅すごい行くから。
そんな中、トライアスロンやヨガをやる友人たちが使っていたのがガーミンでした。
ガーミンは、GPS機能に強みを持つウォッチのメーカーです。アウトドアやスポーツ向けで、電池の持ちが長いことが特徴です。
軽さと、2週間ほど持つバッテリーに惹かれ、種市さんは最近ガーミンを購入しました。
テクノロジーか、エモーショナルか
種市さんは最近、ガーミンとは別に、久しぶりにヴィンテージの時計も手に入れました。
人気モデルではなく、究極にミニマルでシンプルな一本です。
そのファッションのバランスの中で、あ、ようやく俺、多分これ似合う年になったなとも思った。
ただし、そのプラスチック風防の時計は、雨に濡れるとまた気を遣うことになったそうです。
種市さんの時計選びは、二つの方向に整理されていきます。
どちらかなんだよね。全くテクノロジーのものか、すごく自分にとってのエモーショナルなものか。
時計は見えてしまうもの。だからこそ、つけたときにプラスマイナスゼロにしたいと語ります。
持ちたいんじゃなくて、こなしたいとか馴染ませたい。馴染んでる人見てるとやっぱり、人となりも出るじゃん、結構時計って。
G-SHOCK、サブマリーナー、そしてガーミン
話は小畑さんの時計遍歴へと移ります。
小畑さんも、始まりは高校・大学時代のG-SHOCKでした。
もう服好きだし、G-SHOCK安く買えるし。安くって当時からすると別に安くないんですけど、二万円とか一万円とかで買えるじゃないですか。
社会人になると、金融機関である東京海上でスーツを着るようになります。
最初に買ったのは、ポール・スミスの時計でした。
種市さんが、一流企業の人たちの装いについて尋ねます。
どんな感じの格好なの?みんな。意外と地味?
地味ですよ。めちゃくちゃ地味ですよ。保険料高いじゃねえかって言われるわけですよ。派手にやればやるほどそういうお言葉をいただく業界なので。
その後、結婚する頃に小畑さんが買ったのが、ロレックスのサブマリーナーでした。
正規店ではなく、状態と値段が合う一本と出会ったと言います。
なんかまあそういうの好きだし、丈夫そうだし、欲しいなと思って。ある意味それをずっとつけてますね。
ただ、小畑さんも種市さんと同じように、時計が一人歩きすることには抵抗があると話します。
時計が一人歩きしちゃうじゃないですか。すごいそれ嫌で。
スーツにガーミンとリュックで反抗した日々
小畑さんがガーミンを使い始めたのは、トライアスロンやランニングがきっかけでした。
GPSの精度の高さと、電池の持ちの良さが決め手だったと言います。
そのアウトドア、だからやっぱりGPSの精度がものすごい高いのと、電池がものすごい持つ。ランニングして、だいたい三年ぐらい使ってると充電の不具合とか、GPSが反応しなくなったりとか。
当時の東京海上は、非常にトラディショナルな職場でした。
スーツにガーミン、そしてトゥミのリュック。小畑さんのスタイルは、周囲から不評を買います。
ロンドンでスーツ姿にリュック持ってる奴がいないと。めちゃくちゃ言われるんですよ。でも僕は逆にそれに腹立って、絶対こっちのがいいしみたいな。結構反抗して、普通にガーミンの時計つけてって、リュックで持ってくみたいな。
ところが、ガーミンには思わぬ効果がありました。
ガーミンの時計つけてるとお客さんとこ行くと盛り上がるんですよ。向こうもランニングやってると「あ、ガーミンですね」みたいな。ロレックスの時はそんなこと絶対なんない。
丈夫でかっこいい。ただ会話のきっかけにはなりにくい
機能性が高く、同じ趣味の相手との会話が生まれやすい
種市さんも、久しぶりにヴィンテージを買った理由の一つに、時間の見やすさを挙げます。
スマートウォッチって意外とずっと光ってないじゃん。押さなきゃいけないじゃん。ノンデートのヴィンテージを買ったんだけど、品も良くて、サッとつけてパッと見れるわけじゃん。
何を着けるかより、どう着けるか
種市さんは、時計選びを服選びと重ねて語ります。
理由がないものはあんまり着けたくないし、結局服もそうだけど、何を着るかっていうより誰が着るか、どう着けるかだから。その人に合ってればどんなブランドのものでもいいわけじゃん。
20代のときにヴィンテージのGMTをつけていても、結局は似合っていなかったのかもしれない。
種市さんは、そう振り返ります。
自分の中で、あ、しっくりくるなっていうバランス。サブマリーナーが似合う人もいれば、カルティエが似合う人がいて、ガーミンが似合う人がいて。そのシチュエーションの中でいかに整うか。
そして種市さんは、小畑さんのスタイルを評します。
Supremeにガーミンって意外といないと思うよ。ガーミンがあることによって、ちょっと大人っぽさと、メガネのバランスがいいわけじゃん。小物ってやっぱり大事だよね。
ただし、こうして考えを言葉にすること自体を、種市さんは野暮だと付け加えます。
この考えてることを言うこと自体が本当は野暮だから。言いたくはないんだ、はっきり言って。粋じゃないから、それは。
まとめ
腕時計という手元の小さな空間には、その人の価値観やライフスタイルがにじみ出ます。二人の遍歴は、ブランドの優劣ではなく、モノと自分をどう馴染ませるかという話に着地しました。
- 種市さんは「時計はノイズになりやすい」という感覚から、あえて時計をしない時期を経て、テクノロジーかエモーショナルかの二極へ落ち着いた
- 褪せたロレックスを手放した背景には、収入と釣り合わない虚栄心への葛藤があった
- 小畑さんはG-SHOCKからサブマリーナー、そしてトライアスロンを機にガーミンへと移り、機能性を軸に選ぶようになった
- スーツにガーミンとリュックは職場では不評だったが、同じ趣味の相手との会話を生む効果もあった
- 「何を着けるかより、どう着けるか」という視点が、二人の腕時計観に共通していた
