IT・金融業界のファッションはバラバラ?小畑さんが挙げる3カテゴリー
この回は、小畑さんが種市さんに「服やブランドをどう選んでいるのか」を聞く雑談から始まります。
ところが種市さんは、逆に小畑さんのいるIT・金融・スタートアップ界隈のファッションを知りたいと切り返します。
ファッションの業界にいると、もうファッションオタクの物好きな人間から、細かいサイジングだったり、とんでもないウンチクマンだったり、すごい人たちがたくさんいるんですよ。でも逆にファッションじゃない人の格好の方が、ちょっと面白く見えたりもして。
種市さんはスティーブ・ジョブズの例を挙げます。いつも同じ格好に見えて、実はヨウジヤマモトのタートルにニューバランスという組み合わせが、むしろファッションに見えると話します。
小畑さんは、自分の周りのファッションは一言でくくれないと前置きしつつ、無理やり3つに分けてみせます。
本当に気にしていない層。安いしいいじゃんという感覚でユニクロを選ぶ
ハイブランドを身につけていればいいと考える層。相対的にお金を持つ人が多め
そして3つ目として、洋服が好きで、それなりにこだわりがあり、自分の服を説明できる「気を使ったおしゃれっぽい人」を挙げます。
割合はカテゴリー1と2で7割ほど、おしゃれ層が3割ほどというイメージだと話します。ただし全員がこの3分類に収まるかは自信がない、とも付け加えています。
「ファッション屋っぽく見られたくない」という本音
話は種市さん自身の服選びへ移ります。ずっとファッション業界にいながら、心の中には意外な思いがあると打ち明けます。
ずっとファッションのことをやりながら、でも同時にずっと、ファッション屋っぽく見られたくないっていうのがマインドの中にあって。何を着るっていうより、どう着るかとか、誰が着るか。服をどうなじませるかっていうのが好きで。
種市さんはBEAMS時代、性別も体型も年齢もさまざまな客に、その場で似合うものを提案してきました。新宿の店ではレディースのドレスまで扱っていたと振り返ります。
その経験から生まれたのが「プラマイゼロ」という考え方です。服が前に出すぎてもダメ、足りなくてかっこよく見えなくてもダメ、という感覚だと言います。
あっさりした人には濃さを加え、濃い人には引き算をする。俳優のスタイリングでも、そのバランスで組み立ててきたと話します。
リカバリーウェアとメリノウール——機能に寄せる服選び
年齢を重ねた今、種市さんはデザインだけでなく付加価値や機能を重視するようになったと言います。収録現場には愛用アイテムをいくつも持参していました。
まず紹介したのがリカバリーウェアのVENEXです。介護用ベッドのシーツから始まった会社で、休養学を提唱する教授のチームが関わっていると説明します。
機能的にはすごい楽になるし、車運転しちゃいけないっていうぐらい、ちょっと弛緩されてリラックスして眠りやすくなるというか、体が整えられるウェアではあるんだけど、そこにちょっとデザインの力を加えて。
種市さんはこのプロジェクトを手伝い、機能を崩さない範囲でワイドなシルエットにするなど、外で着てもおしゃれに見えるバランスを目指したと話します。
もう一つが、車を運転するときにも使えるメリノウールの服です。こちらはVENEXではなくウールラボというブランドのもの。
メリノウールで、普通ウールって夏着ないって思うけど、これ着ると本当に涼しくて、かつ匂いもしなくてすぐ乾いて完璧だな。今の令和のヘインズじゃないけど、そういう意味でのTシャツ。
古着とダメージ——エモーショナルな服の魅力
一方で種市さんは、機能とは真逆の服にも強く惹かれると言います。持参したのは年代物のFRUIT OF THE LOOMのTシャツでした。
ユーズドでフェード(日焼け)しており、いまのTシャツとはリブの細さも風合いも違うと語ります。
これを着る気持ちよさっていうか、機能的にはさっきのメリノの方が全然あるんだけど、この何とも言えない風合いとか、時代を経てきたものの魅力とかオーラとか。汚れてるもののカッコよさとか。
種市さんは、この味わいを自分で作り出すこともあると明かします。Tシャツをベランダで数か月日焼けさせたり、メルカリで五百円のバンズを買って雨ざらしにしたり。
マジでそんなことやってんすか?さすがっすね。
この志向を、種市さんは以前話した「ハイブリッドの車」になぞらえます。機能的にいいものを求める反面、土着的なものへの反動として、理屈では説明できない魅力に惹かれるのだと言います。
素足に近い靴から下駄まで——足元に宿る哲学
靴の話では、まずイギリスのブランドVivobarefootが登場します。ほぼ素足に近く、クッションが全く入っていないのが特徴です。
下手にこれで走ると膝やっちゃう。でもそれが体の矯正になったりとか。結局服着るのって人間じゃないですか。姿勢がいいと、ハイブランド着ようが何着ようが、着てる本人のバランスがちゃんとしてると、それなりに見えるものがある。
種市さんは、こうした機能的な靴にあえてリック・オウエンスのモードなパンツを合わせるなど、自分なりの個性の出し方を楽しんでいると話します。
さらに種市さんは、普段ハイブランドはほとんど買わないと言います。ただし例外があり、たまに出てくる「へんてこりん」なものには惹かれるそうです。
その例がMiu Miuの下駄でした。履くとカツカツして面白く、機能はまったくないと笑いながら語ります。
最初やっべ歩きづらって思ったけど、買っちゃったし。でもなんか妙に可愛かったりするんですよ。機能的には全然ないんですよ。でも面白くて。
記号性のあるハイブランドには興味がない一方で、こうしたバカっぽさやギャップには燃えると言います。かつてプラダの真っ白なダメージTシャツを、そのギャップの面白さで買ったエピソードも語られました。
選ぶ基準は「愛」と「理由」——なじませることの美学
最後に紹介したのは、友人がディレクションするダイワピアのミニチュアのボストンバッグでした。L.L.Beanが昔出していたバッグをキッチュに小さくしたものだと言います。
なんかね、その人の愛があったりとか。服買う基準って人となりを知ってるっていうのもあるのかもしれないけど、とにかく愛があるもの、作り手の。理由があるものというか。
機能に寄ったものと、エモーショナルなもの。一見真逆に見える両極を、種市さんは「両極ハイブリッド」と表現します。
リカバリーウェアやメリノウールなど、体にいい・使う理由が明確なもの
古着やダメージ加工、味わいのある一点など、理屈では説明できない愛着があるもの
そして種市さんは、自分の服選びの結論を「なじませたい」という一言に集約します。
いかにファッションしてないって思わせるかって。中はいいのよ、めちゃめちゃ考えてやってんだけど。鏡でわざと寝癖作るみたいな、わざとシワついたもん着る。でも外出た時はもう一切、別に僕気使ってないっすっていう。
小畑さんは「相当これ計算されてるってことですね、されてないように見えるけど」と受け止め、この回を締めくくりました。
まとめ
種市さんの服選びは、機能に寄せた「理由のあるもの」と、古着やダメージのような「愛着のあるもの」という両極を行き来するハイブリッドでした。共通するのは、服が主役になるのではなく、あくまで着る人がなじんで見えることを重視する姿勢です。
- IT・金融業界のファッションは「気にしない層」「ハイブランド層」「おしゃれ層」に大きく分かれ、単純な二極ではない
- 種市さんの根底には「ファッション屋っぽく見られたくない」「服が立たず、その人が出る」という美学がある
- VENEXのリカバリーウェアやウールラボのメリノウールなど、機能や体へのよさで選ぶ服が今は多い
- 一方で古着やダメージ、Miu Miuの下駄のような理屈で説明できないエモーショナルな服にも強く惹かれる
- 選ぶ基準は「作り手の愛」と「理由」、そして最終的にいかに自然になじませるかにある
