NFTを掘っていた編集長と「翻訳」の壁
原さんは資産形成としてではなく、なぜあれほど盛り上がるのかという仕組みへの興味からNFTを掘っていたと話します。
一方で、雑誌『OCEANS』でこの領域を扱ったことはないそうです。理由は「翻訳」の難しさにあると言います。
詳しいって言っても買ったりしてるわけではなくて、コロナ真っただ中ぐらいの時にすごい盛り上がりを見せたので、情報として仕入れたいし、なんであんな盛り上がるんだろう、仕組みを知りたいなと思って掘ってたっていう感じですね。
原さんは、雑誌の編集からデジタルの編集に移ったときに「言語がまるごと変わる感覚」があったと振り返ります。
写真と文章を扱うことは同じでも、求められる結果も使われる単語も違ったそうです。
雑誌の編集からデジタルの編集に変わった時に、言語がもう変わる感覚なんですよ。やることは同じ、写真と文章っていう。だけど求められる結果も違うし、使われる単語も違うし。
デジタルとNFTに共通する「フラットな世界」
原さんは、インターネットがフラットな世界だと言われた当時のことを例に出します。
当時は権威性が加味されず、始めたばかりのメディアがいきなり巨大な相手と横並びで比べられたそうです。
どんだけビューがあるんですか、こっちのサイトと、こっちのインフルエンサーと何が違うんですかっていう風に世の中に放り投げられるんですよ。オーシャンズウェブ始めましたって。ライバルがいきなりHIKAKINみたいな。君何できんの?みたいになるのがデジタルの世界。
その感覚を思い出しながら、原さんはNFTやブロックチェーンにも同じ興味を持ったと言います。
サルのグラフィックが数億円で取引される現象を掘り下げるうちに、この仕組みをファッションに応用できないかと考えたそうです。
原さんは、ファッションがシーズンごとに大量のデザインを作り、多くは破棄されていく点に注目します。
そのデザインを知的財産としてデータ化すれば、デジタルの世界に洋服を持ち込めるのではないかというアイデアです。
作ったものは全部知的財産だと思えば、これデータ化できれば、全部NFT的にスライドできたら、互換ソフトさえ作れば山のようにその世界に洋服を持っていけるんじゃないかって。
コロナ禍が加速させた「もう一つの自分」
小畑は、NFTが盛り上がった背景にコロナ禍があったと説明します。
外に出られない時期に、メタバースという言葉やオンラインの集まりが広がったと言います。
種市さんは、かつてBEAMSにもセカンドライフへの出展オファーがあったと振り返ります。当時は担当部署の動きを遠巻きに見ていたそうです。
小畑は、こうした価値観は形を変えながらも残ると考えています。コロナ禍にメタバースとして加速し、いまは語られる頻度こそ減ったと話します。
ただし、オンラインとオフラインで別の自分を持つ感覚は今も続いていると言います。
Xにめちゃくちゃフォロワーがいるインフルエンサーみたいな人が、実は普通の会社員だったりするみたいなのって普通にあるじゃないですか。だからオンラインとオフラインでバーチャルな世界ができてるみたいなのは、もう今起きてるかなって。
Web2は「閉じている」、Web3は「開かれている」
小畑は、いまのSNSは基本的に「閉じている」と指摘します。
Instagramで数万人のフォロワーがいても、そのつながりをXには持っていけないという例を挙げます。
これはWeb2の世界で、データが巨大なプラットフォーマーの中に集まっているからだと説明します。
一方でWeb3は分散型で、データが個人側についているという考え方だと言います。
巨大プラットフォーマーにデータが集まり、影響力はその中に閉じている
データが分散し個人側につくため、いろんなサービスで使える可能性がある
小畑は、この抽象度の高さこそが説明の難しさだと認めています。
大手に固まった影響力が外でも使えたほうがいいという文脈で、新しいサービスが生まれ得ると話します。ただし今はまだ事例が少なく、想像しづらいとも言います。
会員権という「金融の外側」の実用性
種市さんは、ユーザー目線ではメリットがまだ分からないと率直に伝えます。
まあなんかぼんやりはわかるけど、結局じゃあどうしてったらいいの?っていうところ。何が一番効果的でとか。
小畑は、ここでブロックチェーンのわかりやすい事例として仮想通貨を挙げます。
ビットコインは論文が2008年、実装が2009年で、裏付け資産がないのに価値がついていると説明します。
いまアメリカがビットコインやイーサリアムを新しい金融資産と位置づけ、大きな資金が流れ込んでいると言います。ETFなどの金融商品も売られていると話します。
さらに小畑は、金融はもともと紙とペンでやりとりする権利の取引なので、ブロックチェーンと相性が良いと説明します。
そのうえで、小畑たちが注目しているのは金融の外側にある権利だと言います。その代表例が会員権です。
この技術を使うと、いつからその人が会員権を持っているのか、世界に何個あるのか、何回流通したのか、いらなくなった時にすぐ誰かにあげたり売却したりできるようになる。これがものすごく画期的だなと思っていて。
種市さんは、その偽物が作れない点がNFTの技術なのかと確認します。小畑は、偽物が作れないうえ、作ったアプリの外側に出せることが新しいと答えます。
これまでも紙やアプリで会員権は作れましたが、コストがかかりすぎて誰もやらなかったと小畑は言います。金融の外側にあったビジネスに、新たな価値が出てくると考えているそうです。
結論は次回へ、具体例という宿題
種市さんは、話が概念的で具体例が出ていないと指摘します。
難しいっていうかね、具体的なところが出てきてない。お金の話しかしない、ビットコイン。
小畑も、今回は導入部分であり、飲食や芸能とどう紐付けるかは次回に掘り下げると応じます。
種市さんは、それをライフワークやビジネスにするなら言語化が必要だと促します。
最終回では原さんと一緒に、具体的に何をやると面白いかを話す流れになりました。小畑がイーサリアムを買うかどうかも持ち越しです。
まとめ
NFTバブルを経たいま、web3の価値は「翻訳」の難しさとともに語られました。データが個人につく分散の発想や、金融の外側にある会員権の実用性が、次回の具体論につながっていきます。
- 原さんは資産目的ではなく、盛り上がりの仕組みへの興味からNFTを掘っていた
- web3の難しさは、専門用語を日常の言葉へ「翻訳」する橋がない点にある
- Web2は影響力がプラットフォーム内に閉じ、Web3はデータが個人側につく発想
- ビットコインは現時点で最もわかりやすいユースケースとして語られた
- 偽物が作れず外に持ち出せる会員権など、金融の外側に新しい価値が生まれ得る
