デジタル全盛の逆説、ライブの価値が上がる理由
最終回のテーマは、この先の10年です。玉屋2060%も種市さんも小畑さんも40代に入り、これから世間と自分がどう変わっていくのかという話から始まりました。
種市さんが切り出したのは、AIの進化で音楽業界がドラスティックに変わりそうだという予感です。
玉屋2060%によると、今の音楽制作では歌を録音してコーディングし、音程もリズムも全部合わせるのが当たり前になっているそうです。
下手に歌ってもピッピッピッとやると音程が合うようにできるし、リズムも全部合わせられる。もうやってない人いないと思うぐらいで、俺も自分で出す時はやりますよ。それぐらいやらないと。
その精度はこの10年、15年でむちゃくちゃ上がったと言います。結果として、世に出るものはきっちり整理された音楽ばかりになりました。
一方で、玉屋2060%はここに逆説があると話します。整った音楽が当たり前になったからこそ、素を出すのが恥ずかしくなり、みんな「お化粧」なしでは出せなくなってしまったというのです。
だからこそ、ライブの価値が上がっているという流れです。
人間が一番興奮するのって、やっぱり人が泣いてるとか、笑ってるとか、怒ってるとか、失敗したとこなんですよ。SNSで回ってくるのも結局そういうやつ。これって生身の人間しか出せないことだから、そこは変わらないと思いますね。
むしろみんながAIに慣れていくほど、根本のエンターテインメントを欲するようになると考えられます。
楽曲提供とバンド、その先で目指すもの
現在の玉屋2060%は、バンドと楽曲提供に半々くらいの時間を使っています。小畑さんが、この割合はこのまま行くのかと尋ねました。
本音を言うとバンドだけやりたい。だけど今は楽曲提供っていうものを通して、その経験をバンドに持って帰ることもできるからやってる。ゆくゆくはバンドだけで成功して、同じようにバンドとして売れるのが一番の目標です。
Wiennersは活動して15年ほど。新しいメンバーが入ってワンマンをやりながら、さらに規模を上げていきたいと話します。
ただ、その上がり方は「超牛歩」だと表現します。本来バンドは一気に「バーン」と出ないと世間に届きにくい。それがない代わりに、ずっと少しずつ規模を広げてきたそうです。
種市さんは、牛歩と言いながらチケットが取れないほどになっている点に驚いていました。
若いファンが増えた背景と、アイドルオタクの「ディグり癖」
Wiennersの客層は若くなり、20代が多くなったと言います。年齢層は幅広い一方で、若い人が来てくれるようになりました。
その理由を種市さんが尋ねると、玉屋2060%は若い世代の流行への敏感さを挙げました。
若い子って流行に敏感なんで、その敏感な子たちに引っかかるところまで自分たちが行けた。玉屋2060%というものをアイドルとかで知って入ってきた若者の、目の届くところに行けたんだなっていう感覚ですね。
玉屋2060%が手がけたアイドルの楽曲をきっかけに、作詞作曲編曲が誰かを調べ、Wiennersにたどり着く人が増えているそうです。
アイドルオタクの方ってディグり癖がすごい。好きなアイドルが歌ってる曲、誰だこれって、これ玉屋ってやつが作ってるんだって掘って来てくれる。純度が高いまま来れてるのは大きいなって思いますね。
紅白を目指す本当の理由は「100万人に届く確信」
小畑さんが、バンドとしてどうなったら満足かと問いかけました。玉屋2060%が挙げたのは、バンドで紅白に出て、誰でも知っている存在になることです。
ただ、その動機は意外なところにありました。
中学の時に友達とディスクユニオンに行ってCDを買って、お前このCDここから聴けよみたいなことを、100万人の前でやりたいっていうだけなんですよ。
今のままでは、面白いことをやっても誰も聞いてくれない。けれど圧倒的に売れて発言権を持てば、流行りではない音楽でも耳を傾けてもらえる、と玉屋2060%は考えています。
なぜ紅白かという問いには、ロックのカテゴリーではフェス出演が一番でも、お茶の間レベルではまだ紅白が圧倒的に強いと答えます。去年の年末も、紅白の反響は全然違ったそうです。
別に紅白に出たいっていうより、一番影響力があるから出たいっていう感覚。もっと影響力があるものが出てきたら、そっちでもいい。でも多分10年先でも紅白が一番なんじゃないかなとは思いますね。
気が短い性格と、自信がつくまでの変化
話は玉屋2060%の人柄に移ります。種市さんは、どんなに売れても「ありがたい」と言えるおおらかさを、小畑さんに見習うよう促していました。
一方で、玉屋2060%は昔から気が短く、根っからの「王様気質」だと明かします。中学の昼休みのサッカーでキレていた頃から変わらないそうです。
あと根っからの王様気質なんで。でもこういう人が成功するなとも思うんですよ。王様気質イコール自分に自信がある。昔からそうなので、やっぱり説得力はあるなって思うんですよ。
ただ、玉屋2060%自身も10年前は真逆だったと振り返ります。バンドを始めた頃はとがっていて、売れているバンドにムカついていたと言います。
変わったきっかけは、経験と自信でした。自分の音楽が世に出ていく手応えが、心のありようを変えていったのです。
昔は売れてるバンドにムカついてた。でも自信がついた今から見ると、全然いいよって思う。本当に弱いやつには喧嘩売らないじゃないですか。それと同じで、自分がそうなった時にはそうならないんですよね。
この流れで小畑さんが「自信が僕はないのかもしれない」とこぼす一幕もあり、和やかに核心へたどり着きました。
今年の展望、バンド一年目の気持ちで
最後に、10年という長いスパンだけでなく、今年の具体的な予定も聞きました。
今年はバンドがまた正式メンバーが入って、ライブをいっぱいやって、作品もリリースしたりする。新しいメンバーが入ったから、またバンド一年目くらいの気持ちでガンガンやって、曲もいっぱい作ってアグレッシブにやっていきたいなと。
小畑さんも今度ライブに行くと約束し、ゲスト回は締めくくられました。
まとめ
AIで何でも補正できるからこそ、生身の揺らぎに価値が生まれる。玉屋2060%が語ったのは、そんなデジタル時代の逆説と、CDを友達に薦めたい少年の頃から変わらない原点でした。
- 補正が当たり前になった今、泣く・笑う・失敗するといった生身の表現がライブの価値を高めている
- 楽曲提供の経験をバンドに還元しつつ、最終的にはバンドとしての成功を一番の目標に据えている
- アイドル経由で楽曲を知り、ディグって来る若いファンが増え、純度の高い客層につながっている
- 紅白を目指すのは有名になりたいからではなく、100万人に届く発言権と確信を得るため
- 気が短い王様気質は変わらないが、経験と自信が積み重なり、他者への見方も穏やかに変化した
