スレッズのポエムから始まるゲスト回
今回は渋谷のお店「CHOWCHOW(チャウチャウ)」に朝から集まり、関口正人さんへのインタビューが始まります。
きっかけは、関口さんがスレッズに投稿していた文章でした。種市さんはそれをチェックしたものの、あまりに長くて途中で眠くなったと笑います。
ただ、その内容には仕事にそのまま使える示唆がたくさんあったと言います。そこで、気になった投稿をピックアップして本人に聞いていくことになりました。
これ本当に書いてるのかな、自分で。いろんな経歴から考えてみると、どうもおかしいなと思って。こんなの書ける?みたいな。AIで書いてんじゃねえかなって。
最初に取り上げたのは、「場作りにおける景色の哲学」と題された投稿でした。飲食店やホテルなどの場づくりを「一つの景色を描くこと」だと語る内容です。
おしゃれな内装、心満たされる料理、心地よい音楽。それらはすべて描きたい景色を形作るパーツにすぎない、と関口さんは書いています。
一番大切なのはその先。集まる人々が同じ価値観を共有し、笑い、つながっていく光景こそが本当に作りたいものだ、という哲学です。
その先の光景を、どこまで想像しているのか
小畑さんが気になったのは、「その先」の部分でした。集まる人々が作っていく光景を、事前にどこまで解像度を上げて想像しているのか、という問いです。
ビジネスでよく言う再現性のように、A点がうまくいったから次のB点を作るとき、そこに人がどういう光景を作ってくれるのかを、作る前にどこまで想像しているのか。
これに対し関口さんは、まず大前提として不動産の特徴から話し始めます。
不動産って地球の中に一箇所しかないじゃん。ものを作るのは、洋服でも何でも同じものをたくさん作れるけど、不動産は一個しかない。地図上にロケーションって一個しかないから、まずその唯一無二の文脈みたいなものを、どこまで自分なりに読み解くか。
一般的なマーケティングでは、前面道路の交通量やエリアの世帯年収を見ます。関口さんはそれも重要としつつ、そこは苦手だと言います。
代わりに重視するのは、歴史的な背景や、その辺に住む人がどんな車に乗っているかといった、別の特徴を自分なりに読み解くことです。
もう一つの特徴は、たくさんの人を思って企画するのが得意ではない、という点でした。千人や一万人を思うと、ぼやけてしまうと言います。
一人好きな人がいれば必ず他にもいるだろうみたいな感じ。自分の生活動線や趣味嗜好の中で、この場所だったらこう使えたらいいなと想像した時に、近しいことを思ってる人たちは少なからずいるだろう、という積み重ね。
自分は料理もしないし店にも立たない。だからこそ大枠のコンセプトやストーリーを考える。ロケーションの特徴と、プロダクトアウト的な発想を組み合わせていく作業だと語ります。
鎌倉ガーデンハウスに見る、逆張りの場づくり
種市さんは、この考え方を「セレクトショップっぽい」と表現します。関口さんはその例として、ガーデンハウスの一号店を挙げました。
鎌倉には年間千二百万人の観光客が来ます。マーケットとしては大きい。しかし駅を境に東口と西口で分けると、その九割が東口に集中していました。
西口は市役所やスーパーがある生活エリアで、観光客はあまり来ません。地元の人からも「あそこではレストランはうまくいかない」と言われたそうです。
マスマーケティング、大きな一般的な商売の捉え方でいくとうまくいかないと思いますよ、と。なんだけど、それは結果的にうまくいったからすげえだろって言いたいわけじゃなくて、じゃあなんでやったのか。
理由は、その土地の形と雰囲気でした。入り口の間口が狭く、奥に広がる「旗竿敷地」で、そこに古びた洋風の古民家が建っていたのです。
草はボーボー、建物はボロボロ。それでも関口さんは、将来の景色を思い描いた時に「むちゃくちゃいい場所になる」と直感したと言います。
鎌倉に人が求める体感価値は、自然が豊かで気持ちのいい場所。でも実際にそういう場所は少ない。緑に囲まれた古民家なら、それを味わえると考えました。
これを体感した人は、別に東口で人が多いからじゃなくて、ここに向かって人が来るだろうなと思った。ビジネスロジックとして成り立ってなくても、ある程度形になっていく。
同じ発想はホテルにもあると言います。関口さんが例に挙げたのは、西武が開発する前はただの原野だった軽井沢でした。
最初にポツンとホテルができたことで、外国人が通い、別荘を構え、価値が顕在化していった。そうしたプロダクトアウト的な街の作り方に、やりがいや面白みを感じると語ります。
競争を避け、価値観を共有する組織づくり
小畑さんが「一言で言うとセンスの話ですね」と問うと、関口さんはロジカルと感覚のバランスの話として応じます。
商売でうまくいきそうな場所には、強豪の競合がたくさん来ます。そこでしのぎを削るのは大変だと言います。
自分がいいなと思って、あんまり人が手を出せないようなところでやった時に、先行者利益的なもので持ってやることの方が、結果的には楽しいし、うまくいった時の取りが大きい。
話題は、会社が大きくなる中での意思決定へと移ります。小畑さんは、大企業では誰もがわかる共通言語、つまり数字でビジネスが成り立ちがちだと指摘しました。
関口さんは、自身がサラリーマンだった頃を振り返り、何が楽しく、何がつまらなかったかを経営判断の軸にしていると言います。
面白いと思うことをやるっていうことが、働いてる人にとっておそらく一番モチベーションが高い状態。モチベーションが高い状態で考える答えが、一番確率論的に高い答えになるんじゃないか。
その上で大切になるのが、権限委譲と管理のバランスだと言います。できる限り「好きなことをやればいい」の比率を上げたい、という考え方です。
ただし前提は、価値観の共有ができているかどうか。緑色の事業をやる会社で「ピンク色が好き」と言われても、それは根本的に価値観が違う、と例えます。
同じグリーンの中でやりたいことがあるならやってみればいい。やる人がオフェンスなら、管理者はディフェンスとして数字やリスクを担う。その役割分担のバランスが目指す姿だと語ります。
飲食やホテルの先にある、不動産金融という本質
小畑さんが数字とのバランスをどう取っているのか重ねて問うと、関口さんは「数字の話もバリバリする」と前置きしたうえで、GREENINGの本質を語り始めます。
飲食やホテルはホスピタリティやクリエイティビティを売る仕事です。しかしGREENINGがやっているのは、少し離れて言えば「不動産金融」だと言います。
誤解じゃないように言っておくけど、数字の話はバリバリするからね。
かつて不動産の価値は、隣の土地と比較して決められていました。銀座の地価が世界一という話題も、その比較の考え方によるものでした。
それが2008年、日本にJリート市場が開設されたことで大きく変わります。土地から生まれる収益、つまり家賃やキャッシュフローの大小で価値を測るようになったのです。
GREENINGの前身は、この変化を契機に設立されました。比較ではなく、そこから生まれるキャッシュをもとに不動産の価値を作る会社です。
関口さんはこれをシンプルに言い換えます。売れる飲食店が入ったビルは、売上連動の賃料なら価値が上がる、というものです。
田舎の飲食店が売れていて都会の飲食店が売れていなければ、田舎の飲食店が売れてるビルの方が価値が上がっちゃう。でも今までの名残で都市の土地は高く田舎は安い。このギャップをビジネスに変えていこうっていうのが、僕らの本質的なビジョン。
さらに志の話として、日本全国の不動産価値が上がれば担保力が上がり、経済の基礎体力も上がると語ります。地方が元気になれば、サーフィンやスノーボードという自身の楽しみにも直結すると言います。
その価値を具現化するのに食が重要で、価値を定着させるには人が留まる必要があるからホテルが必要になる。飲食もホテルも、本当にやりたいことへの手法だという整理です。
本質的にはこっちなんだよね。だから出る場面によって、ある時にはレストランやホテルをやってますよ、あるところでは不動産や金融ですよっていう場面もある。
この一連の説明に、種市さんは「会社案内でこれを聞かせた方がいい」と感想を漏らします。実際にポッドキャストを聞いて入社した人もいると聞き、小畑さんも「今の話は入りたくなる」と応じました。
まとめ
関口さんの場づくりは、マスマーケティングや再現性をあえて手放し、唯一無二のロケーションと自身の感覚を組み合わせる逆張りの発想に支えられています。そしてその飲食やホテルは、不動産価値を作り、地方を元気にするという本質的なビジョンへの手法でもありました。
- 不動産は地球に一つしかないため、その唯一無二の文脈をどこまで読み解くかを起点にしている
- たくさんの人ではなく、たった一人の好きな人を思い浮かべ、そこから場をつくる
- 競争の激しい場所を避け、先行者利益を取りにいく方が楽しくうまくいくと考えている
- 組織では権限委譲と管理のバランスを取り、価値観の共有を前提に「面白いこと」を軸に据える
- 飲食やホテルは手法であり、本質は不動産価値を作り地方や経済に貢献する不動産金融にある
