NFTバブルはなぜ起きたのか
この回のテーマは「NFT×アート」です。小畑さんはまず、2021年に起きたNFTブームを振り返ります。
アメリカの有名なシンガーが、なんかの子供が描いた絵みたいなのに何億円も払ったみたいな話。あれ何年前?
象徴的だったのが、Beepleというアーティストの作品です。5000日間毎日描き続けたデジタルアートが、当時約69億円で落札されました。
ほかにも、1万点の絵で構成されるクリプトパンクスや、Bored Ape Yacht Club(BAYC)が話題になりました。
BAYCはエミネムやスヌープ・ドッグ、ジャスティン・ビーバー、ネイマールといったセレブが購入したと報じられ、日経新聞のような硬いメディアにも取り上げられたと小畑さんは話します。
ブームを支えた3つのストーリー
なぜここまで盛り上がったのか。小畑さんは、当時語られたストーリーを整理します。
1つ目は、コピーが簡単で価値がないとされてきたデジタルアートに、NFTが「世界に一つ」という唯一性を与えたという話です。
2つ目は、アーティストの新たな収益源という話です。作品が転売されるたびに、作者にもフィーが入る仕組みが作れるようになりました。
小畑さんは本の転売を例に出します。2000円の本を1800円で売っても作者には最初の分しか入りませんが、NFTなら二次流通以降も作者に還元できるという発想です。
本当に価値を出した人たちが報われるような技術だよね、NFTってっていう風にすごく言われて、まあそこがバズったと。
3つ目は、中間業者の排除です。ギャラリーは一般に30〜50%の手数料を取ると言われ、オンライン直販ならそれを抑えられると語られました。
これに対して種市さんは、ギャラリー擁護の視点も示します。
あの人件費だったり光熱費だったり、あとその人脈というか、そこが持ってる客の量だったりインフルエンス力、世間の信頼、そういうところも加味してるから、一概に。
小畑さんも、間に入る人が全部悪いわけではないと応じます。ただ、アーティストがもっと評価されるべきだという業界の長年の問題意識が、この技術と重なったと話します。
一年で崩れたバブルと、冬の時代
ところが、ブームは1年ほどで一気に冷めます。
一年ぐらいで冷めたんだ。
理由として、価格がつきすぎていたこと、そして所有権は証明できてもJPEG画像そのものに価値があるのか、という冷静な疑問が挙げられました。
それはもちろん最初から思ってたよ。
さらに小畑さんは、NFTの価格が暗号資産の相場やマクロ経済に大きく左右される点も指摘します。世の中の経済の上下に引きずられた面もあったという見立てです。
こうして2022年から2023年にかけて「冬の時代」が続きました。ところが、ここ最近また盛り上がってきていると小畑さんは言います。
再燃の理由は明確な一因ではなく、技術の有用性が改めて認知されてきたことと、暗号資産価格の上昇の組み合わせだと小畑さんは分析します。
偽アカウントとブロックチェーン認証
種市さんは、NFTアートの承認欲求や所有欲について懐疑的な思いも口にします。
いくら権利持ってても結局じゃあぶっちゃけパクれて見えちゃうじゃんっていうところの、スマホの中でしか見せられないというか。
ここで話は、種市さん自身の実体験に及びます。SNSのプロフィール画像(PFP)とNFTの認証機能の話題です。
一日友人知人三十件以上、種さんインスタ、なんかこれほんと種さんですかっていう連絡が来て。仮想通貨とかそういうのの詐欺だったみたいで。これ絶対このポッドキャスト影響じゃねえか。
種市さんは、なりすまし対策として結局Instagramに月2000円を払って本人確認バッジをつけたと明かします。
小畑さんは、かつてTwitterがNFTを本人証明に使う機能を実装していたと説明します。
もしその情報がブロックチェーンに置かれていれば、一度登録するだけでInstagramでもFacebookでも認証を共有できたはずだと語ります。
競合同士なので情報を共有しない。各サービスで別々に本人確認と課金が必要
公共のインフラなので誰でも参照できる。一度登録すれば各SNSが確認しに行ける
ただし、この機能はブーム終息とともに使われなくなり、今は各SNSが自前で本人確認する方式に戻っていると小畑さんは補足します。復活の可能性はあるかもしれないという見立てです。
Hashmaskという奇妙なプロジェクト
話はアートに戻ります。小畑さんは、リアルなアートではできないことを実現した例として「Hashmask」を紹介します。
これめちゃくちゃ面白いんですよ。
Hashmaskは、約70人のクリエイターが手がけたお面(マスク)の絵で、全部で1万6384個あります。購入すると、パーツの組み合わせでできた1枚がランダムで出てきます。
当時は1枚が7000万円ほどで売れたものもあったといいます。背景の色や顔の種類など、数が少ない「レア」なパーツも存在します。
面白いのは、保有していると毎日「ネームチェンジトークン」が送られてくる点です。これを約半年分(1830枚)ためると、絵に名前をつけられます。
自分の絵の名前も変えられるんですけど、人のやつも変えられますよ。
このネームチェンジトークン自体が暗号資産で、市場で売買できます。半年分ためるか、市場で買うかして名前をつける権利を得る仕組みです。
アートじゃなくて、お金自体も売ってるってことなの?ビットコインみたいに。
さらにこのトークンは、プロジェクト開始から10年後に発行が止まります。今から数年後にはトークンが尽き、どこかで誰も名前を変えられなくなる設計です。
デジタルの所有欲と、これからのアート
種市さんは、こうした仕組みの新しさに徐々に引き込まれていきます。
買おうかな俺も。全く自慢したくなってきて、なんか今の。一個ぐらい俺も早いの欲しいな。
小畑さんは、アートの価値には所有欲や「見せびらかしたい」という感情があると指摘します。名前のセンスが良い作品ほど高く評価される可能性も語られました。
一方で種市さんは、フィジカルなアートと違い、デジタルは家の空間に置く実感が持ちにくいと疑問を投げます。
これに対し小畑さんは、サイネージ(デジタル画面)で飾っている人が多くいると答えます。
種市さんは、サイネージも写真で撮れば模倣できると気づき、それはリアルなアートのプリント複製と同じだと納得します。本物を所有している証明にこそ価値がある、という論点です。
まとめ
NFTアートはバブルと崩壊を経て、今は技術そのものが再評価されつつあります。Hashmaskの「名前をつける権利」のように、リアルなアートにはできない所有体験が、デジタルならではの面白さとして語られました。
- 2021年のNFTバブルは、唯一性・二次流通の還元・中間業者の排除という3つのストーリーで盛り上がった
- 所有権を証明できてもJPEG自体に価値があるのかという疑問と、暗号資産の相場に引きずられてバブルは崩壊した
- 本人確認情報をブロックチェーンに置けば、各SNSをまたいで認証を共有できるという発想がある
- Hashmaskは他人の絵の名前まで変えられ、10年後には名前が永遠に固定される独特の設計を持つ
- デジタルアートの価値は「所有している証明」にあり、リアルにはできない体験が再評価の鍵になっている
