ライカを買ってしまった小畑
この回は、小畑さんが最近買ったカメラを種市さんに見せるところから始まります。手にしていたのはライカでした。
出たー。やっぱりそんなんだよな。もう時計ともうカメラのバランス。
小畑さんが選んだのはレンジファインダーカメラです。レンジファインダーカメラファインダーの二重像を重ねて手動でピントを合わせる方式のカメラ。ライカのM型が代表格として知られています。オートフォーカスがないタイプで、ファインダーを覗いてマニュアルで焦点を合わせて撮ると説明します。
種市さんはアナログ世代で、仕事でもカメラを扱ってきた経験があると話します。BEAMS時代にはカメラストラップを手がけていたこともあるそうです。
なぜライカにたどり着いたのか
そもそもカメラに興味を持ったきっかけは、友達が持っていた富士フイルムのカメラでした。撮らせてもらったら、スマホやコンデジとは写りが全然違ったといいます。
その富士フイルムのGFX100RFは八十万円ほど。高いと感じて三ヶ月ほど調べるうちに、ライカという選択肢にたどり着いたと話します。
まず画作りがすごく良くて。で、あとやっぱ僕は物好きじゃないですか。五十年前のレンズが付けられるとか、そういうのをすごい、オールドレンズとかもめちゃくちゃいいなと思って。
選んだのはM11Pという本体で、種市さんに値段を問い詰められた小畑さんは、本体が百五十万円、レンズが七十万円だと明かします。
いや、これちょっとカットしてほしい。マジ。
カットなんかするわけないでしょ。そういうリアルが知りたいんだってば。
種市さんは、ライカならリセールのバランスも変わってくると指摘します。小畑さんも、レンズは価値が下がりにくい点も考えて買ったと応じます。
写真に「撮った人」が刻まれる仕組み
ここから話は、このM11Pに搭載されたCAIという機能に移ります。CAIContent Authenticity Initiative。撮影者情報などを画像データに記録し、来歴や真正性を示す取り組みです。撮った写真に「誰が撮ったか」というデータが記録される機能です。
フェイクやAI画像が増える中で、写真家が撮った作品を「本当にこの人が撮った」と証明できる仕組みだと小畑さんは説明します。カメラにあらかじめ自分の名前を登録しておく形です。
なんかよくさ、今さ。写真撮って複製されたくない人なんか入れるもんね、文字みたいの。もう複製されないよ、これは俺のですよっていうハンコみたいな。
ただし、この情報は写真の見た目には入りません。デジタルデータの中に記録される仕組みです。
そのため、そのままInstagramに上げれば複製はされてしまいます。一方でAdobeのソフトなどCAIを読み取れる環境で開けば、撮影者の名前が表示されます。報道や芸術など、プロユース向けの機能だと小畑さんは話します。
関係ない。そう、絶対使わないのに。僕そんな機能いらないから。もっと本当はライト版でよかったんですけど、ないんですよ。新品で買うと。
CAIだけでは足りない「来歴管理」
すごい機能だと感心しつつも、小畑さんはこれが完璧ではないと感じたと言います。足りないのは来歴管理だと指摘します。
CAIでわかるのは「誰が撮ったか」だけです。誰から誰へ渡ったのか、どこで使われたのかという流通の履歴は、ファイルには残らないのです。
この写真を誰が撮ったか。偽物が「自分が撮った」と主張しても見分けられる
誰から誰へ売買され、どこで使われたかという来歴・流通の履歴
小畑さんは、撮影者情報に加えて来歴管理もあった方がいいと考えます。それによって写真の売買が透明になり、写真家がもっと評価される世の中になるのではないかと話します。
その解決の鍵として挙げるのがブロックチェーンです。ブロックチェーン改ざんが難しい形で取引履歴を記録・共有できる技術。真贋証明や来歴管理への応用が期待されています。AIで一瞬で画像が生成できる時代だからこそ、改ざん証明や来歴管理に相性がいいと考えられています。
AIの「何々風」と、クリエイターの権利
一方で種市さんは、自分自身もChatGPTを使い、「何々風」の生成が壁当てとして役立っていると正直に話します。仕事の現場では、粗のあるAIデータの中から選び、使いこなせる人がいい作品を生み出せるとも語ります。
結局たくさん出てきても、その中でチョイスできる人というか、それを使いこなせる人が結局いい作品を最後に生み出せるというか、アウトプットだよね。
ここで話題になったのが、一時流行した「ジブリ風」の加工です。子供の写真をジブリ風にしてみるといった使い方が広まりましたが、種市さんは作り手の著作権はどうなるのかと疑問を投げかけます。
でもあれ、ジブリの人たちの権利。あんま使っちゃいけないんだろうけど、風っていうのって、もうじゃあ作ってる人の著作権っていうのなんかわかんないけど、どういうあれなんだろうって思っちゃう。
小畑さんは詳しくないと前置きしつつ、商用利用は限りなく黒に近いグレーだろうと話します。ただ、いいねやフォロワーが増えた場合はどうなのかという線引きの難しさも残ります。
その上で小畑さんは、AIが発展するほどクリエイターがないがしろにされかねないと懸念します。同時に、「何々風」にできるのは誰かがそのスタイルを作ったからこそすごいのだ、とも付け加えます。
本物とは何か、所有とは何か
話は「本物」の価値へと深まっていきます。絵のコピーはいくらでも売られているのに、なぜ本物が欲しいのか。小畑さんは、本人が本当に描いたからこそ本物と偽物に大きな価値の差がつくのだと話します。
これまでは鑑定士が本物か偽物かを見極めてきました。しかしデジタル領域で大量に生成される時代だからこそ、誰が作りどう流通したのかがわかった方がいい、というのが小畑さんの主張です。
種市さんは家具やヴィンテージデニムを例に挙げます。オリジナルの刻印や時代性、当時の洗剤や乾燥機が生む風合いなど、レプリカでは再現しきれないオーラがあると語ります。
一方で、写真やアートのようなデジタル領域では、そのフィジカルなオーラの違いをどう捉えるのかが難しいのではないか、と種市さんは問いかけます。
小畑さんは、それもリアルと大きくは変わらないと答えます。ヴィンテージデニムも巧妙なレプリカとの違いは素人には見分けにくく、絵も同じで「見る人が見たらわかる」という点は共通していると話します。
その例えば同じようなものがあったとしても、最後はなんかエモーショナルなところっていうか、人間ってそこが多分AIとの違いなのかなって。その気持ちの上がり方というか。
最後は、ストーリーの時代であり、アナログとデジタルのハイブリッドだ、という着地になります。道具としての良さと、エモーショナルな価値は別のところにあるのかもしれない、と二人は話します。
まとめ
ライカの撮影者情報記録機能を入り口に、AI時代の「本物」と所有のかたちを掘り下げた回でした。誰が作ったのかを示す仕組みと、人が感じるエモーショナルな価値。その両方が問われていることが見えてきます。
- ライカM11PにはCAIという、撮影者情報を画像データに記録する機能が搭載されている
- CAIでわかるのは「誰が撮ったか」まで。売買や流通の来歴管理はブロックチェーンでの補完が期待される
- AIの「何々風」生成は便利な一方、クリエイターの権利や評価をどう守るかという課題を含む
- 大量生成の時代だからこそ「誰が作り、どう流通したか」が明確な仕組みの重要性が増す
- 本物の価値は、フィジカルなオーラやストーリー、人が感じるエモーショナルな部分にも支えられている
