音楽と看板まで、体験を丸ごとデザインする
sioでは料理だけでなく音楽にもこだわっていると鳥羽さんは話します。
その象徴として、坂本龍一さんの逸話を挙げます。
坂本龍一さんが、アメリカかどこかで自分のめちゃくちゃ好きなレストランがあったんだって。だけど音楽がダサすぎて、「自分がやるよ」って言ってやったぐらい、飯と音楽がめちゃくちゃ重要なんですよ。
食事中にジャミロクワイのような主張の強い曲がかかると集中できない、と鳥羽さんは言います。
一方で、ヌージャベスやMUROの選曲が「さりげなく」流れると刺さる、という感覚を語ります。
さりげなくヌージャベスとかかかってるとか、ムロ君のあのアルバムの中からSTAY WITH MEかかってくるとか、そういう「あ!」みたいな感じがやっぱ刺さるんですよ。
小畑さんは、トータルで体験がデザインされていると受け止めます。
トータルでほんと体験がデザインされてんだよなぁ。
鳥羽さんは、それが「開いているけれどセグメントしている」感覚だと表現します。
わかる人にだけ届けばいい、というスタンスを明確に取っているという話です。
わかんない人は別に、もうぶっちゃけた話いいんですよぐらいの。別に来るなとはもちろん言わないけど、そういうところをちゃんと目配せして。
満席看板というアートへの投資
最近のsioは満席が続くといいます。
そこで鳥羽さんは、満席であることへの自信と決意を込めて「満席看板」を作ってもらったと話します。
俺たち満席だからっていう自信もあるし、そうじゃなきゃいけないっていう思いも込めて、ナイジェル・グラックさんに満席看板作ってもらってるんですよ。
その看板は、ミシュランの人形に見えるようゴーストバスターズのキャラクターで描いてもらったといいます。
普通ならチョークで済む看板に、あえて費用をかけてアートにする点に鳥羽さんのこだわりが表れています。
さらに鳥羽さんは、依頼相手を店に招き、料理を食べてもらいながらプレゼンして仕事を進めると話します。
レストランのいいところは、プレゼンしてそのまま食べてもらって、そこでもう営業できるっていう。だからまずかったら無理なんですよね。センス悪かったら無理なんだけど、そこが合ってしたら仕事できるっていう。
鳥羽さんはそれを「狩りの場」と呼びます。料理が営業ツールになるという発想です。
クライアントを想う徹底した準備
他業種の仕事を受けるときも、鳥羽さんの準備は徹底しています。
ラーメン屋の仕事が決まると、三週間前から毎日食べに行くといいます。
来るって決まったら、もう三週間前ぐらいから毎日食い行きますもん。そこのお店のあんま頼まれないやつとかも食っちゃうの。
さらに、店の壁に書かれた思想まで暗記して相手に伝えるといいます。
「そこも行ってんすか」と驚かれる、そのやり取りが仕事につながっていくのだと話します。
究極のクライアントワークだな、これ。
この姿勢は、ロイヤルホストへの偏愛にも表れています。
ロイヤルホストで注文したら、ホールの人がお箸を持ってきて「お食事の準備させていただきます」って絶対言うんですよ。あれマニュアルなんですけど、もうそこにプロ意識を感じちゃうわけですよ。
ガストとの仕事でも、一号店がひばりが丘だからマークがひばりなのだという背景や、かつての300グラムハンバーグの思い出を相手に語ったといいます。
相手のブランドの背景やストーリーまで拾い上げる姿勢に、小畑さんは感心します。
心使うなあ。いやこれ勉強になるなぁ。
センスはインプット。常に張られたアンテナ
小畑さんは「センスはインプットだ」という話を鳥羽さんに向けます。いつインプットしているのかと尋ねます。
鳥羽さんはめちゃくちゃインプットしていると思うんですけど、いつしてるんですか。
鳥羽さんの答えは「ずっと」でした。店に立ちながら、車もマイクも椅子も、飯を食べる時のコップの素材まで、あらゆるものが自然に気になってしまうといいます。
鳥羽さんは、それを意識してやっているわけではないと強調します。
無理がないというか、それを無理やりやろうって思ってやってないから。気になっちゃう、もう楽しくて。面白いから。もっと良くなればいいじゃん。だから呼吸っすよね。
そのこだわりは、表面的なものではなく裏側のディテールに向かっているといいます。
表面的なこだわりじゃなくて、もっと裏側のディテールを細かくやってるか、そういうのに行ってるって感じにはなってますね。
同じ熱量で突き抜けている仲間として、鳥羽さんはナカダさんやフジイさん、コジマさんの名前を挙げます。
自分は服ではなく料理版で同じことをやっているだけだ、と話します。
気合と行動力。修行時代の無茶
鳥羽さんの「好き」と行動力は、料理を始めた頃から一貫していたようです。
最初の修行先には、ピストのTシャツとディッキーズを切ったズボンという格好で行き、イタリアンの店でフォアグラを頼んでキレられたと振り返ります。
そんな格好で、そもそもレストランに短パンでダメなのに行った上に、イタリアンの店なのに「フォアグラ食べてご飯ありますか?」って言って、キレられたっていう。それぐらいストリートだったんですよ。
それでも感動して翌日に飛び込み、カプチーノが入れられないと言われれば、牛乳を十本買って勝手に練習しに行ったといいます。
鳥羽さんは、これがサッカーで挫折した後の話だと明かします。
サッカーになれなかったじゃないですか。その挫折の喪失感がすごすぎて、もうあんな思いは二度としたくないっていうのと、じゃあ何やるかっていったら料理。俺、料理いけちゃうなって勝手に思っちゃったんですよ。
花人の東信さんが情熱大陸で花を大切にする姿に感動し、五年後に会いに行くと電話した逸話も語られます。
六年後に電話したら「誰ですか」と言われたという落ちも含め、鳥羽さんは当時の無茶を笑って振り返ります。
B級もユニクロも。フラットに本質を見る
鳥羽さんの「好き」は高級なものに限りません。B級グルメもコンビニ飯も同じように愛しています。
この日の鳥羽さんのトップスはユニクロだといいます。
今年のユニクロUのTなんですよ。それが今年超薄くなってとかやっぱあるんすよ。その違いを毎回ユニクロの企業努力に感動しながら身につけているっていう。
種市さんは、これまでの文脈の上でユニクロを着てくる「落ち感」が面白いと受け止めます。
高いからいい、安いからダメとかではなくて。そのものの一番の良さというか。誰がどう着るかっていうところもあるから。
鳥羽さんも、それが本質だと同意します。
そのフラットな視点は、カップ麺への熱量にもつながります。デカマルくんの味噌ラーメンを三十年ぶりに食べたら「クッソうまい」と再評価したといいます。
さらに鳥羽さんは、マルちゃんの焼きそばの正しい作り方を熱弁します。
結局炒めすぎるんすよ、みんな。マルちゃん一番やばいのは、最後に粉入れてちょっと水入れて二度炒めすると、めっちゃソースもテカテカしてしっとりして。
炒めすぎて水分が飛び、油っこくなってしまう
最後に粉と少量の水を入れて二度炒め、ソースをしっとりさせる
話題はペヤングやプロレスの例えにも広がります。鳥羽さんはペヤングを、闘魂三銃士より一世代前の「ストロングスタイル」に例えます。
定番でありながらコラボにも挑戦するブランドのあり方を、そうした比喩で語っていきます。
ためらわない。アートは行ける時に行く
鳥羽さんの行動力は、アートの買い物にも表れます。
ラッパーのB+さんと出会った際、その場でケンドリック・ラマーのサインを300万円で買ったといいます。
もうトランクホテルに即行行って、ケンドリック・ラマーのサイン買ったら三百万でしたよ。そしたら「お前やべえな」って、「親愛なるブラザー」ってB+って書いてくれて。
写真家の長谷川章さんのイベントでも、一度は安いポスターを選ぼうとしたものの、思い直して三十万円の作品を買い直して店に飾ったと話します。
その行動を長谷川さんがインスタで喜んでくれた、という結末も添えられます。
ためらったらダメっすよね、アートは。いける時に行けみたいな。
まとめ
看板もカップ麺もアートも、鳥羽さんは同じ熱量で「好き」を貫いていました。センスとは意識して磨くものではなく、無理なく気になってしまう呼吸のようなものであり、その熱量が行動力となって仕事や体験に還元されていく。そんなディテールへの偏愛が語られた回でした。
- sioは料理だけでなく音楽や看板まで含めて体験全体をデザインし、届けたい人に届くよう明確なスタンスを取っている
- 鳥羽さんはクライアントワークで徹底的に相手を調べ、店の思想まで暗記して相手に伝える
- センスはインプットの量から生まれ、鳥羽さんにとって気になることは「呼吸」のように無理のない行動
- 高級かB級か、高いか安いかではなく、そのものの一番の良さをフラットに見ることが本質
- 気合と行動力、そしてためらわないことが、鳥羽さんの「好き」を突き抜けさせている
