ビットコインではなく、まず自己紹介から
この回のゲストは、株式会社bitFlyer Holdings代表取締役CEOの加納裕三さんです。ビットコインの取引所を運営する会社の社長として知られています。
加納さんは日本ブロックチェーン協会の代表も務めています。会員が百数十社も入る協会で、ビットコインの税制を安くする動きや、株と同じ枠組みにする法律の準備などに関わっていると話されています。
聞き手の種市さんは、この収録に合わせてビットコインを始めようとしていたと明かします。投資用の口座を作り、いざ入金という段階で価格が下がったため、逆に「ラッキー」と感じて今買おうとしていると話しました。
連呼禁止なんだよね、テレビCM。でも今日はね、連呼できますんで。ビットフライヤー、ビットフライヤー、ビットフライヤー。
サンゴにどっぷりハマる理由
今回のテーマは、あえてビットコインや起業家論から離れたところから始まります。きっかけは、加納さんのSNSにサンゴの写真が次々とアップされていたことでした。
加納さんが言う「サンゴをやる」とは、海に潜って採るのではなく、サンゴを鑑賞するアクアリウムを自宅に作ることを指します。サンゴを採るのは違法だからです。
もともとは淡水魚を飼っていて、いつか海水も面白そうだと思っていたそうです。千葉のサンゴ屋さんでたまたま見た海水水槽があまりに綺麗で、そこからハマったと話されています。
ただ海水は淡水の十倍ほどお金がかかると言います。汚れを泡にして取るスキマーや、水を作るRO水の設備、薬品を自動で入れるドーシングポンプなど、機材だけで自宅がまるで水族館のようになっているそうです。
加納さんは、このサンゴ飼育が「次の十年で流行る」と予言します。家で本格的にできるようになった歴史がまだ浅く、日本初のイベント「リーフフェスタ」も盛り上がってきているからです。
自然の神秘を家に置く楽しさ
サンゴの一番の良さを尋ねられると、加納さんはダイビングで海中の美しさを見つけた時の感動を挙げます。あの自然の美しさを、手軽に自宅で見られることが魅力だと話されています。
ダイビングして、あのタンク背負ってさ。で、見つけた時のあの、なんつうの、自然のなんかこの美しさみたいなものを手軽に見えるっていう。家にあって、やっぱり見てると落ち着くんですよ。
加納さんによれば、サンゴが光る仕組みや、なぜ様々な色になるのかは、まだよくわかっていないそうです。サンゴの中にいる褐虫藻という植物とサンゴという動物が共存しているとのことです。
さらにサンゴは、一年に一度、満月の夜に一斉に産卵すると話されています。なぜ満月とわかるのか、なぜ申し合わせたように同じ日に産むのか、その理由は解明されていないそうです。
サンゴっていうのは一年に一回だけ満月の夜に卵を産むんですよ。で、その海域全部が一斉に卵を産むんですよ。こういうのがもう神がかっててすごい。
楽しさの中身は、街づくりのように組み上げる面白さと、できた景色を眺める落ち着きの両方だと言います。種類が豊富でコレクション性があり、少しでも水質が悪くなると死んでしまう難しさもあるそうです。
塩分濃度は34PPT前後、水温は24〜25度、そこにリン酸塩や硝酸塩、マグネシウム、カルシウムなどを整える。加納さんはこれを「パラメーターを調整するゲームみたいだ」と表現します。
自宅サウナと「麻痺していく」こだわり
話題はもう一つの没頭対象、サウナへ移ります。きっかけは聞き手の小畑さんで、一緒に入って「めちゃくちゃいいじゃん」となったことだと話されています。
加納さんの自宅サウナは電気式です。薪の柔らかい熱も魅力だと認めつつ、準備の大変さから、電気ならパッと使える手軽さを選んだと言います。それでも予熱に一時間ほどかかるそうです。
水風呂はいろいろ試した末、水シャワーに落ち着いたそうです。浴槽に氷を入れても「焼け石に水」で効かず、本格的に冷やすにはチラーが必要になるため諦めたと話されています。
入るのは朝と晩です。朝は五時過ぎに起きて運動し、少しサウナに入ってから出社。夜は社長業のストレスで神経がピリピリしているのを、サウナで抜いていると言います。
特徴的なのは温度の上げ方です。最初は九十度ほどだったのが、麻痺してくるにつれてどんどん上がり、今は百十度まで到達したそうです。実測では十度ほど低い可能性があるとも話されていますが、それでもかなりの高温です。
九十、九十五、百、百五、百十ってどんどん上がって。もうあれなんですよ、麻痺してるからより熱いとこ。
さらにサウナ室の中に椅子を重ねて、より熱い上の空間に登っていくといいます。扇風機で空気を対流させ、熱を上に集める工夫までしていて、聞き手からは「修行みたい」との声も上がりました。
湿度計に潜む「究極のこだわり」
こだわりの象徴として、加納さんはサウナの温度湿度計の話を持ち出します。電池で動いていないあの湿度計が、どうやって湿度を測っているかという問いです。
加納さんによれば、あの湿度計の中には人間の髪が使われているそうです。髪が湿度を含むと縮む性質を利用して測っているとのことです。しかも、細くて丈夫な金髪の女性の髪でないとダメだと話されています。
あれね、人間の髪なんですよ。人間の髪って湿度を含むとクニクニってなるじゃないですか。ちぢむんですよ。で、それを利用して湿度を測ってるんですよ。
安いネット製品は精度がずれるため、ちゃんと計測してアジャストされた高いものを選ぶ。値段は十倍ほど違うそうです。作りは簡素でも、テストを重ねているから高い、という理屈です。
加納さんは、こうしたこだわりの中にこそ「起業家になるための答え」が入っている気がすると言います。細部を突き詰めて楽しむこと、その姿勢自体が起業の本質だという含みです。
「面白いからやる」という起業家の本質
サンゴもサウナも、そしてビットフライヤーも、加納さんの根っこは同じです。ハマったら「うわっ」と熱中し、面白くてしょうがないからやり続ける。その姿勢が一貫しています。
起業家になる方法を尋ねられることについて、加納さんは、そう質問している時点で向いていないのではないかと話します。面白くてやってしまうものであり、「なるために何かを考えなきゃいけない時点で多分向いていない」という見方です。
聞き手の小畑さんも、この考えに共感します。夢中でやっている人にはかなわない、という言葉で対話は締めくくられました。
夢中はやっぱり勝てないですよ。夢中に勝てるものはないですから。
まとめ
サンゴとサウナという一見ビットコインと無関係な趣味の話から見えてきたのは、細部まで突き詰め、面白いから没頭してしまうという加納さんの一貫した姿勢でした。その没頭こそが、トップを走る経営者に共通する本質なのかもしれません。
- 加納さんは自宅にサンゴのアクアリウムを作り、水質を整える難しさそのものを楽しんでいる
- サンゴ飼育は家庭でできるようになった歴史が浅く、次の十年で流行ると予言している
- 自宅サウナでは温度を百十度まで上げ、椅子を重ねてより熱い空間を求めるほど没頭している
- 湿度計の髪の話のような細部へのこだわりに、加納さんは起業家の答えがあると考えている
- 「面白くてしょうがないからやる」姿勢こそが起業家の本質だと話されている
