一緒に作る新サービスと出会いのきっかけ
今回、鈴木隆行さんが番組に登場した背景には、小畑翔悟さんと一緒に作っているサービスの存在があります。
サッカーを本気で上手くなりたい小学生や中学生、そしてその子を応援する親御さんに向けたサービスだと説明されています。
動画を中心に、基礎から進路まで本物のクオリティの指導を見てもらうウェブのサービスとして準備が進んでいます。
コンテンツは鈴木さんが中心となって制作しているとのことです。仕事で知り合った小畑さんは、鈴木さんの話をいろいろ聞くうちに、面白さを感じて出演を依頼したと話しています。
サッカーを本気で上手くなりたいお子さん、小学生とか中学生とか。その子供を一生懸命応援する親御さんに向けて、本物のクオリティの高い指導を見てもらえるようなサービスなんですよ。
なぜ指導者、しかも育成の現場を選んだのか
鈴木さんが今やっているのは、基本的にサッカーの指導者です。
幼稚園の年少さんから小学6年生までを教えるスクールを自分で運営し、女子サッカーチームのアドバイザー兼コーチも務めています。指導者としてもう11年目になるそうです。
メインの指導者は鈴木さん一人。11年間、毎日グラウンドに立ち続けています。
なぜ指導者を選んだのか。引退後にサッカーに一番近い仕事をしたいと考えたからだと話します。
一方で、いきなりプロのトップチームに入ることはしませんでした。下積みのない自分では選手に迷惑をかけると考えたからです。
力もないのにいきなりそういうところに行っても選手に迷惑かけるなと思って。やるんだったらちゃんと下積みを積んで、自分が自信を持ったらそういう世界に入っていきたいなって。
指導者仲間からは、育成から始めた方がいいと勧められたそうです。それを信じて、育成の現場からスタートしました。
幼稚園児が突きつけた「人間教育」という壁
育成のきっかけは、意外な形でやってきました。
引退する2015年、娘が通う幼稚園の園長・吉江先生から「園児たちにサッカーを教えてもらえませんか」と声をかけられたのです。
まだ現役でしたが、今年で終わりと決めていた鈴木さんは、後々指導者になるならと積極的に飛び込むことを決めました。
最初は年中と年長の2クラス、週1回ほどのスタートでした。ところが、これがすさまじく難しかったといいます。
鈴木さんは指導ライセンスをAまで取得しており、指導ライセンス日本サッカー協会の公認指導者資格。上位からS、A、Bなどと分かれ、Sが最上位。当時Aで指導できる範囲はJFLクラスまでとされていた。そこそこ指導できると思っていたそうです。
しかし、実際の指導経験はライセンス取得時だけ。幼稚園児を教える技術は全くありませんでした。
幼稚園生をうまく統率して、それもサッカーの指導していくって、相当指導者の力量がないとできないんですよ。ノイローゼになるぐらい、本当に難しすぎて。
ここで鈴木さんは大きな気づきを得ます。幼稚園児にはサッカーそのものをそれほど教えられません。だからこそ、サッカーに教育を組み合わせる必要があったのです。
その時に初めて、自分が何も持ってない人間だって初めて気づいたんですよ。
カバンを揃えて置かせること、同じ場所に置かせること。そんな基本を、指導者であり教育者である自分が気にできていなかったと振り返ります。
一方で、その幼稚園の先生たちはクラスをきちんと統率していました。鈴木さんは、その姿に学ぼうと決めます。
どう声をかけ、どう話し、どう言うことを聞かせているのか。毎年少しずつ失敗を繰り返しながら成長し、今では週3日その幼稚園に通っているそうです。
靴を揃えることから始まる指導者の責任
かつては園児に靴を揃えさせることすらできなかった鈴木さん。今はその大切さを教えられるようになりました。
最初に教えれば、子どもは何年も続けます。だからこそ、初めに大事なことを伝える責任は自分にあると考えるようになりました。
一番初めに大事なことを伝えて、小さい時に教えれば、そこから三年間ずっとやり続けるんですよ。それって俺、自分次第じゃないですか。
この責任感から、それまで適当にやっていたことができなくなったと話しています。
現在は幼稚園を含めて5か所でスクールを運営し、これまで教えてきた子どもは何千人にのぼるそうです。
鈴木隆行が大事にする4つの指導軸
子どもたちに何を教えているのか。鈴木さんは大きく4つを大事にしていると語ります。
1つ目は基本、つまり基礎技術です。ボールを止める、蹴る、運ぶという土台を重視しています。これは鹿島時代にジーコブラジル出身のサッカー選手・指導者。鹿島アントラーズの発展に大きく関わった人物として知られる。から学んだ「基本がなければ何をやってもダメ」という教えに基づいています。
2つ目はオフザボールの準備です。試合中、選手の95%以上はボールを持っていません。だからこそ、持っていない時の準備が結果につながると考えています。
小学生には、その意味から時間をかけて教えるそうです。プレーを一度止めて説明し、頭に入れてから動かすやり方を取っています。
ボールを持ってない時に準備をしてなかったらどういうことが起きるか。準備したことでどういうことが起きるのか。頭に入るまでとことん教えます。
3つ目は個人の技術です。一対一で勝てない選手はプロにもなれないと言います。
ただし、抜くだけではありません。抜けない時は運んでシュートを打つ、味方にパスを出すといった判断も含みます。そのため一対一よりも、パスの判断が加わる二対二の練習を重要視しているそうです。
守備が得意な選手には守備を、というように特性で分けて教えるのですか。
特性は見極めるものの、基本は攻撃も守備も両方やらせるとのことです。今の選手は守備のポジションでも攻撃できないと試合に使ってもらえないため、両方で戦える力を求めています。
そして4つ目が気持ち、情熱です。鈴木さんが毎日一番叱っているのはこの部分だといいます。
足元は上手いんだけど、自分が一生懸命とか戦ってる気持ちが表に現れない選手がほとんど。むしろ悪くなってると。
その原因を、鈴木さんは日本の文化の影響ではないかと見ています。自分を出すことが良しとされにくく、悪いことのように感じてしまうのではないかというのです。
だからこそ、プロになりたいと口にする子には、その気持ちを前面に出せなければプロにはなれないと問い続けているそうです。
日本サッカーの現在地と育成への自負
話題は日本サッカー全体に及びます。ワールドカップを控えるなか、その現在地はどうなのか。
鈴木さんは、かなりレベルが高いと即答します。理由は、ヨーロッパでプレーする選手が圧倒的に多いことです。
ヨーロッパで居続けるには実力と戦える気持ちの両方が必要であり、それを持つ選手が毎年増えていると分析しています。
つまり日本の育成はうまくいっている、と小畑さんが確認すると、鈴木さんは強く同意します。
こんなにうまくいってるところないですよ。2、30年ぐらいでこんなに飛躍してる国ってないじゃない。
一方で、日本の育成を批判する評論家や記者には手厳しい言葉を向けます。知ったかぶりで語る姿勢は良くない、と切り捨てました。種市さんはこれを「日本刀でバサッと行った感じ」と表現しています。
YouTube時代に「本物の技術」を届ける
鈴木さんが今後もっとも大事にしたいテーマは、本物の技術を教えていくことです。
今はYouTubeにサッカーの動画が数多くありますが、そこには課題もあると小畑さんは感じています。
エンタメ的で派手な動画がバズる一方、サッカー経験のない親御さんには、それが正しい指導だと見えてしまうことがあるというのです。
本来なら良い才能が、間違った方向へ進んでしまう可能性もあります。だからこそ鈴木さんは、周りに関係なく本物の技術を伝えたいと話します。
関係なく、自分たちが本物のもの、技術をやっぱり伝えたいっていう、その思いだけですね。
新サービスは夏ごろのリリースを予定しているそうです。開発そのものが鈴木さんにとっても学びになっていると言います。
教えるべきことを理論的に整理し、映像として残す。これが選手への説明にも役立ち、練習以外の時間にもデータとして教材を使えるようになるからです。
アナログだった自分を進化させるための重要な作業だと位置づけています。
直近の目標はプロの監督になることです。下積みを積んだ自負を持ちつつ、その現場に向けた準備を続けています。
僕はまあ指導者としては革命を起こすと思ってて、自分は。こんなに準備して、こんなに指導してきた人間もいないと思うんだけどなと。
仕事を通じて鈴木さんと関わった小畑さんは、感覚でプレーしがちな元選手と違い、鈴木さんの言語化能力の高さに驚いたと語ります。教え続けた11年の蓄積がそこにあると感じたそうです。
鈴木さんは最後に、どんな仕事も経験を積まなければ技術は上がらないと締めくくります。毎年苦労し落ち込みながらも、続けたからこそ少しずつ良くなってきたという実感がにじんでいました。
毎日四、五時間教えたら、それはレベルアップするはずですよ。何回も同じ失敗するけど、こんだけ続けたらそれはちょっとずつ良くなるよって思う。
まとめ
元日本代表の鈴木隆行さんは、引退後にあえて幼稚園児からの育成現場を選び、11年をかけて「本物の技術」を伝える指導者になりました。靴を揃えることから気持ちの大切さまで、泥臭い経験の積み重ねが、新サービスにも受け継がれようとしています。
- 鈴木さんは幼稚園児の指導で、サッカー以前に人間教育の重要性に気づいた。
- 指導で大事にするのは基本、オフザボールの準備、個人の技術、そして気持ちの4つ。
- 日本サッカーの育成は大きく飛躍しており、鈴木さんは強く自負している。
- YouTube時代だからこそ、本物の技術を届けることをテーマに新サービスを開発している。
- どんな仕事も経験の積み重ねでしか技術は上がらない、という姿勢が一貫している。
