AI全盛の時代にポッドキャストが面白い理由
冒頭、二人はこの回が2025年の締めであることを確認します。番組は5月に始まり、約8か月続いてきました。
種市さんは当初、ポッドキャストにピンときていなかったと振り返ります。ですがやってみてから自分なりに調べ、周りの洋服の人たちからも「一番面白い」と聞くようになったそうです。
小畑さんは、その面白さの背景にAIの存在があると話します。今はXの投稿も画像も簡単に作れてしまい、コンテンツが爆発的に増えていると言います。
みんなバズらせようとするんで、とにかくどうやってアテンションを引くか、スクロールした時にどう目に留まらせるかをものすごい考えてやってる。で、ポッドキャストって全然その対極にいる存在なんですよ。
インスタやショート動画が一瞬の反応を競う世界だとすれば、ポッドキャストは何かで知って、たどり着いて、聞かないと届かない世界だと小畑さんは整理します。
種市さんは、規制がなく自分たちだけで好き勝手やっている自由さこそが面白さだと感じたようです。
激痛なのに手放せない「シャクティマット」
ここから今年買ってよかったものの紹介に入ります。小畑さんの一つ目は、話題のマット「シャクティマット」です。
見た目は柔らかそうですが、触ると激痛だと小畑さんは言います。この上に背中や上半身を乗せて、20分ほど寝るのが基本的な使い方です。
これね、よく出たやつね。俺ちょっと気になってたんだよな。あのさ、銭湯とかにあるじゃん、足ツボのやつ。あのレベルじゃねえの、これ?
ない。これめちゃくちゃ痛い。
公式には最初は痛いけれど、じわじわ気持ちよくなって眠れるとあります。ですが小畑さんの実感は少し違うようです。
僕、少なくとも僕は今のところそんな気持ちよくなるとこまではなってない。けど20分ぐらいすると、もうなんか確かに眠りに落ちてるんですよ。で、やべやべみたいになって。
結果として、よく眠れて朝も起きやすくなった気がすると小畑さんは話します。価格は真ん中グレードで2万5000円ほど。模倣品も出ていますが、これが本物だと言います。
同じ時期に、リカバリーウェアのVENEXも買ったそうです。快調なのがシャクティの効果か、VENEXの効果か、どちらか分からないと二人は笑い合います。
時を経て美しさを増す「大谷石」
種市さんの一つ目は、重くて持ってこられなかったという石です。撮影で訪れた宇都宮の採石場で出会った、大谷石だと紹介します。
種市さんはもともと石が好きだと言います。若い頃にスピリチュアルな石屋へ通ったことや、飲食店のディレクションで木ではなく岩塩を置いたことなどを振り返ります。
置いてて、やっぱりなんか気持ちがいいものっていいじゃん。壁なんて置くの、みたいな話じゃん。それがたまたま自分が石が好きだったりっていうので。
この大谷石は、館林のお店で偶然テーブルの下に見つけたものだそうです。売り物ではなかったものを、交渉して譲ってもらったと言います。
俺、服屋あるあるだけど、その服屋の人が本当に持ってるもの欲しいんだよ。売り物じゃないもの、好きなパターンが発動して、めっちゃ交渉して譲ってもらったの。
さらに半年ほど前には、木が長い年月をかけて石になった珪化木も買っていたと思い出します。石の硬質感やソリッドな佇まいが、家のアクセントとして落ち着くのだと話します。
狂気を感じる作りの偏愛ブランド「NICENESS」
小畑さんの二つ目は洋服、ブランド「NICENESS」です。子どもの幼稚園のパパ友がやっていると知り、店に遊びに行って一気にハマったそうです。
最初は少量生産でセレクトショップに置いてもらう形で地道にやってきたブランドで、今年、恵比寿と広尾の間に路面店ができたと言います。
種市さんは、シンプルで上質なクワイエットラグジュアリーとは一線を画すポジションだと分析します。
ナイスネスに関しては、質を良くしながらでもアバンギャルドな見せ方をすごいやってるから、めちゃくちゃ個性がある。独特のポジショニングだよね。
小畑さんも、シンプルな服が好きな一方で、NICENESSは生地や作り方に狂気を感じる点に惹かれると話します。
なんかシルエットとか作り方とかがものすごい狂気を感じるというか。それがすごいいいなと思って。すごい高いんですけど、なんか日常着だみたいな感じで言ってて。
種市さんは、うんちくより先にまず佇まいのあるものを作ることが大事だと、かつて先輩デザイナーから聞いた話も添えます。ロンTからバッグまで、小畑さんはすっかり買い揃えているそうです。
職人が手作りする小松音響製作所の真空管アンプ
種市さんの二つ目は、以前話したヴィンテージスピーカーに続く、真空管アンプです。友人に紹介されて福島まで買いに行ったJBLのスピーカーに合わせるものを探していたところ、話が動きました。
アンプ選びに悩んでいた頃、友人の店で小松音響製作所の小松さんという職人とばったりすれ違ったそうです。友人から「あの人は好きそう」と言われ、実際に工房を訪ねました。
作ってるものをパッと見せてもらった時に、めちゃくちゃソリッドでかっこいいの。で、これはやばいなって思って。ステンの上にシンプルに真鍮管が刺さってる、ミニマルな旭日みたいなデザインで。
その場でお願いして手作業で作ってもらったアンプで音を鳴らすと、それまでのBluetoothスピーカーとは違う温かみや丸みを感じたと言います。
なんとなく惰性で音楽聴いてたり、惰性でテレビつけたりしてたものを、なんかやっぱ消すようになったっていうか。良かったです。
ライカで撮る非効率の楽しさとAIの対極
小畑さんの最後はカメラ、ライカです。以前も一度紹介した品ですが、写真を撮ること自体がとにかく楽しいと語ります。
iPhoneや普通のデジカメと違い、ピントを自分で合わせる手間があります。その一手間があるからこそ、朝や夜に目黒川沿いを散歩して写真を撮る時間が増えたそうです。
それがあることによって、それを聴きたくなるとか気分が上がるとか、物を買うってそういうところだもんね。俺のスピーカーの下りと一緒だよね。
最近はデジタルの写真をA4やA3の大きめサイズでプリントアウトするのも楽しいと言います。ここから話は、効率とその対極という共通テーマへ向かいます。
小畑さんは、自分の仕事はライカと真逆だと打ち明けます。AIを使ってどれだけ短時間で大量のアウトプットを出すかを日々追いかけているからです。
どれだけ効率を上げて、最小工数で最大のアウトプットをお客さんに出すか。そこはかなり追っかけてるんですけど、それはそれで疲れる。これはやっぱ全然真逆の概念でめちゃくちゃ苦労して撮るんですよ。
種市さんは、車は道具として使いやすさを求める一方、カメラや洋服では非効率に惹かれると、自分なりのバランスを語ります。効率の対極にある手間こそが、気持ちを上げるのだと二人は共感し合います。
AIによる最小工数のアウトプット、道具として使いやすい車など、簡易さと機能を重視する領域
激痛のシャクティ、時を経る石、狂気の作りの服、手でピントを合わせるライカなど、手間や佇まいに投資する領域
下町のふ菓子の元祖「鍵屋のふ菓子」
種市さんの最後は、ずっと買い続けている「鍵屋のふ菓子」です。子どもの頃から大好きで、収録時に止めるドン・キホーテで駐車場代を埋めるように何袋も買うのだと言います。
一時期は多くのメーカーが自然の黒糖を使うふ菓子に変わっていったそうです。ですが鍵屋はカラメルと水飴だけの、味が濃くないボソッとした食感で、そこが好きだと話します。
昔一袋円だったのに、今三、四百円するんだよ。もう俺これで物価高を感じたんだけど。でもそれを何個も何袋も買って。
本社は向島の下町にあり、ふ菓子の元祖中の元祖だと種市さんは紹介します。カップヌードルやペヤングも含め、長く続くシンプルなものへの愛着を語ります。
なんかやっぱりシンプルで本当にいいものを作るいいものっていう。子供の時に食べてた味だから、っていうのもあるのかもしれないけど。
小畑さんも「長く続いているには理由がある」と応じます。二人は2025年を締めくくり、聞いてくれた人への感謝と、来年も楽しく続けたい思いを語り合いました。
まとめ
AIで何でも効率化できる時代だからこそ、二人はあえて手間や物語に投資していました。激痛のマット、時を経る石、狂気の作りの服、手動のカメラ、長く続くふ菓子。どれも効率の対極にあり、日々の行動や気分を確かに変えている愛用品でした。
- 小畑さんのベストバイは、激痛だが安眠につながるシャクティマットと、非効率が楽しいライカのカメラ、偏愛するブランドNICENESSの服
- 種市さんのベストバイは、時を経て美しさを増す大谷石、職人が手作業で作る小松音響製作所の真空管アンプ、下町の鍵屋のふ菓子
- 二人に共通するのは、効率や機能ではなく、手間・佇まい・物語に価値を見出す審美眼
- 物を買うことで音楽を聴きたくなったり散歩に出たくなったり、行動そのものが変わる点に価値があると二人は話す
- ポッドキャストもまた、瞬発力で数字を取るSNSの対極にある「たどり着いて聞く」メディアとして語られた
