波瀾万丈だった起業家11年の振り返り
記事の冒頭で語られたのは、ビットフライヤーを作ってからの11年、来年1月で12年になる歩みでした。
加納さんは、本格的に資金調達をして起業したのはこれが初めてだったと話します。
もちろんまだやることあるから、ここで振り返って人生終わりにするっていう感じでもないけど、やっぱ波瀾万丈ですよね。
そのうえで、成功のすべてが自分の実力とは思っていないと語りました。仲間の巡り合わせや、その時々の周囲の状況が組み合わさった運の中で生かされている、という感覚だそうです。
2017年は暗号資産の相場が大きく動いた年で、当時のことを厳しい時期だったと振り返ります。もともとサラリーマン時代もトレーダーとして相場の上下を経験していましたが、起業後はそれ以上に大きな利益と損を繰り返す日々だったといいます。
つらい時は本当につらいし。まあでも起業家っていうのはそういうもんだなって覚悟して入ってるけど、それでもやっぱりすごい波ですよね。
自分で掃除も給与振り込みもした黎明期
話題は、会社が小さかった頃の泥くさい現場に移ります。今は掃除も業者に発注しますが、当時は自分たちでゴミ捨てや掃除をしていたそうです。
週末にはIKEAへ何度も往復し、家具を自分たちで組み立てていました。エンジニアが大事だったため、組み立てで怪我をしないようにという配慮もあったといいます。
給与の振り込みも、当時は加納さん自身が手動で行っていました。一度、振り込みが一日遅れた時には社内で不満の声が上がったと明かします。
俺一回さ、給料をさ、一日遅れた時に暴動が起きたから。
忘れていたら遅れてしまうという、非常にシンプルな仕組みだったと笑いを交えて振り返ります。生活がかかっている社員からすれば当然の反応で、こうした黎明期を支えてくれた人たちへの感謝を語りました。
想定通りに進んだ大きな波と、進む規制
起業した当時に思い描いていた世界が実現していくこと、そしてそこに中心で関われることが楽しいと加納さんは話します。
いま注目しているのはステーブルコイン円やドルなど法定通貨に価値を連動させて発行される暗号資産の一種。価格変動を抑えることを狙い、決済手段としての活用が期待されているです。円やドルに連動したトークンが決済に使われる未来が来るかもしれない、と語りました。
大きなビジョンでいうと、起業時に思っていた通りになっているとも話します。
アンダーグラウンドのお金っていうのを放置できないから、結局そのままぐるぐる回すよりかは規制して表に出した方がいいって当局は考えるはずです。
細かい規制まで予想するのは難しいものの、本人確認義務やマネロン対策は当然やってくると当時から考えていたそうです。規制の方向性は、既存金融が歩んできた歴史をおおむね繰り返すだろうと見ていました。
日本の規制は世界の中でも早く進んだといいます。過去のハッキング事件を受けて規制が厳しくなり、暗号資産に即した規制を世界で初めて作った国だとされています。
アメリカは今まさに法改正をしようとしており、ヨーロッパにはMiCAというライセンス制度があります。日本では規制が進んでいたおかげで、外国企業の破綻や他社のハッキングがあっても、日本の顧客の資産は守られてきたと語りました。
次の10年は起業家、そしてイノベーターとして
次の10年を問われた加納さんは、社長業として責任を果たすまではビットフライヤーをやりきる覚悟だと語ります。
一方で、年齢を重ねると今の働き方は難しくなるとも話します。分単位で進み、ランチは二分といった働き方はいずれきつくなり、後任や後継者もどこかで考えなければならないといいます。
そのうえで、面白いことをやり続けるイノベーターでいたいという思いを語りました。
この業界の人ってさ、なんかお金のためにやってる社長さんが多くて、それがちょっと残念だなと。別にそんなにクリプトも詳しくないし、そんなに好きじゃない。
加納さん自身は楽しいことをして生きていたいから、仕事を本気で考えるならイノベーターとして生きていたいと話します。ただし、何をやるかはまだ決まっていないそうです。
新しいテクノロジーへの興味を問われると、興味はあるが責任を背負ってしまったと答えます。業界団体を含め、みんなの期待に応えたいという思いが先に立つといいます。
なお、話の合間には収録を通じて何度も出てきた「サンゴ屋をやりたい」という趣味の話も飛び出しました。どんな話題からもサンゴに戻ってくる場面が、この回の空気をよく表しています。
1.4兆円という重みと、ゼロイチの起業家像
今どれくらい預かっているのかという問いに、加納さんは1.4兆円と答えます。日本全体では暗号資産の預かりが4兆円ほどと見られ、その中でビットフライヤーの預かりが最も大きいそうです。
この規模に、種市さんは想像がつかないと驚きます。かつては海外の取引所がハッキングされて資産を失ったマウントゴックスかつて世界最大級だったビットコイン取引所。大量のビットコインが消失し経営破綻した事件は、暗号資産の安全性が問われるきっかけとなったの事件が仮想通貨のイメージだったといい、そこからの変化に言葉を失っていました。
話は「本物の起業家とは何か」という論点に広がります。当時のビットコイン取引所は、詐欺事件と同じような目で見られていた時期に立ち上げられたもので、小畑さんはそれを「狂気」だと表現しました。
それだから今の人はさ、作れるっていうけど、それ答えを知ってるから。答えを知ってないところで作るっていうのはやっぱ難しい。
加納さんは、その感覚をパラシュートの比喩で説明します。
練習せずにパラシュートをつけて崖から飛び降りれるかっていう感覚。理論上は開けば多分大丈夫だ。でもたまに失敗するかもしれないという状況でちゃんと飛び降りて引けますかっていう。
この話を受けて、種市さんは、起業家とは本来こういう存在なのだと初めて実感したと語りました。世の中にないものをゼロイチで生み出すこと。それが、既存のものをアレンジするビジネスとの決定的な違いだと二人は整理していきます。
答えを知らないまま、前例のない領域を試行錯誤でつくり出す。ゼロイチのビジネス。
すでにあるものの中で組み合わせや工夫を重ねていく。多くのビジネスがこちらに近い。
まとめ
11年の波瀾万丈を経て、いまや1.4兆円を預かるトップとなった加納さん。その言葉からは、華やかな成功像とは裏腹の泥くささと、面白い未来をつくりたいというイノベーターの姿勢、そして預かった資産への責任感がにじみます。
- 本格的な起業は初めてで、成功は運や仲間の巡り合わせの中で生かされてきたものだと語る
- 創業期は自分たちで掃除や家具の組み立て、給与振り込みまで手がける泥くさい現場だった
- 規制は既存金融の歴史を繰り返すと予測し、日本は早く規制が進んだおかげで顧客資産が守られてきた
- 次の10年は起業家として責任を果たしつつ、お金のためではなくイノベーターとして生きたいと語る
- 答えを知らないまま前例のない領域をつくるゼロイチの起業家像を、パラシュートの比喩で表現した
