ゲストは連載「種カジのタネあかし」の生みの親
今回のゲストは、ファッションライフスタイルメディア『OCEANS』の統括編集長を務める原亮太さんです。
原さんは、MCの種市暁さんの人気連載「種カジのタネあかし」を立ち上げた人物でもあります。当時はまだ編集長ではなかったものの、企画をスタートさせたのが原さん自身だったと話されています。
これはだからパクリではなくオマージュ。まさにああいうタイトルを考えて、種市さんのスタイル自体を紹介する企画を始めたのも、当時の編集長と相談してスタートしたのは僕だったりします。
この連載はすでに10年ほど続いており、原さんは「そんなに長く続く連載はあまりない」と話します。
紙の雑誌だけでなく、Webに転載してもデジタル上で人気ランキングに入るという事実があると、原さんは説明しています。
住宅情報誌からOCEANS、そしてWebへ
ここで、原さんのこれまでのキャリアが語られます。
大学卒業後、原さんは住宅情報誌を扱う出版社で編集の仕事を始めました。しかし、ちょうどインターネットが広がり始めた時代で、住宅情報や転職といったジャンルがデジタル化されていく過渡期でもありました。
もともとエンタメやファッション、カルチャーが好きだった原さんは、その後インファスという会社に転職し、女性誌「流行通信」の編集部に入ります。
その後「流行通信」がなくなり、縁があって『OCEANS』へ転職しました。原さんにとって初めてのメンズ誌でした。
そして雑誌のWebメディア化が求められる時代になったとき、デジタルに興味があった原さんはWebメディアの立ち上げに関わります。
参画とかって言うとかっこいいですけど、当時の編集部は、やるならやれっていう感じでした。
立ち上げの準備を経て、2016年にWeb版『OCEANS』がローンチされました。原さんは2019年ごろにWeb編集長となり、一昨年から雑誌とデジタルを統括する現職に就いています。
原さんは、自分が雑誌だけをやりたくて編集者になったわけではないと語ります。誰かに影響を与えたくて、たまたま雑誌の編集者になっているという立場です。
究極、プラットフォームは何だっていい。新しいものが出てきて、そっちの方が伝えやすいとなると、自分もそっちに流れていきたくなるタイプではあります。
インターネットが「トレンド」を消していった
最初のテーマは「メンズのライフスタイル×テクノロジー」です。デジタル、そしてSNSの時代に、原さんが何を考えて発信しているのかが語られます。
原さんは、誰にとっても身近なテクノロジーとしてインターネットを挙げます。インターネットの特徴は、リンクやシェアによってすべてがフラットに、つまり均質化してつながっていくことだと話します。
さらに原さんが実感しているのは、そのスピードの速さです。通信速度と同じように、ファッションやライフスタイルのトレンドもどんどん速くなっていったと指摘します。
全部均質化していくし、小さなコミュニティがどんどん生まれていく。そのうえ消費がめちゃくちゃ早いんですよ。早すぎるから、みんな疲れていく。小さなコミュニティができても、下手すると、そこすらもすぐなくなっていく。
そしてこの流れが行き着いた先が「トレンドがなくなった」ということだと、原さんは語ります。
かつては「渋カジ」と言えばみんながそれを目指す、そんなビッグトレンドがありました。しかし今は、細かなトライブ(集団)がいくつも存在する世界に変わったと言います。
トレンドに振り回されない「軸のある人」がカッコいい
原さんは、雑誌がトレンドを作ってきたのは事実だとしつつ、その理由を冷静に振り返ります。
雑誌がトレンドを作ってきたのはすごくいい歴史ですし、事実そうだったと思うんですけど、逆に言うと、別に雑誌しかなかったんで。
テレビや印刷物が登場してから次のプラットフォームが出るまでには、数十年の間隔がありました。その間、雑誌がもっともインフルエンス力を持つ人たちの感性にはまるツールだったと原さんは説明します。
その役割は、今ではSNSかもしれないし、リアルな場やサロンのようなものかもしれないと語ります。
では、こうした時代に「カッコいい」とはどういうことか。原さんは、そうしたものに振り回されず、軸のある人がやはりカッコいいと感じられるようになってきていると話します。
ここで種市さんも、自分の実感を語ります。種市さんの世代では、まず憧れの入り口が「街」にあったと言います。街でカッコいい人を見て憧れ、映画でスタイルを追いかけ、そこから雑誌、そしてWebへと移っていったと振り返ります。
そして年齢を重ねた今、種市さんはリアルなコミュニティへと一周して戻ってきた感覚があると話しています。
「みんなが知らないこと」に生まれる新しい価値
原さんは、若い世代のメディア接触や消費活動を見ていて、価値の置かれ方が変わりつつあると感じています。
むしろ誰も知らないことの方がカッコよかったり、ネットに情報がないことの方がちょっとイケてる。地元の先輩とコミュニケーションを取ってないとわからないことみたいなところに、再び価値が戻り始めている。
原さんは、会員サービスやクローズドなもので人気があるものは、こうした価値観に支えられているのではないかと話します。
ここで原さんは、自分が編集者になったころに先輩から教わった言葉を紹介します。
どんなにニッチな企画でも、統計学的に2万人は絶対に振り向く。だから、その2万人はいるという前提で、どうやって届けるべきかを考えて企画を立てるべきだと教えられたんですよ。
どんなにニッチな内容でも、共感してくれる人は必ず一定数いる。だからこそ、どう届けるかという方法論を考えるべきだ、という教えです。
原さんは、この考え方が今のSNSと重なると語ります。ラーメンだけを発信している人の方がフォロワーが多かったりと、ニッチなことにもファンがつく様子が、いまは数字として見えるようになったと話します。
SNSの飽和と、次に生まれる場所
原さんは、SNSというツール自体を悪いものだとは思っていないと語ります。細分化された相手に伝えるHowとしては、とても優れていると評価します。
一方で、どんなものも飽和すると次のものが欲しくなる、とも指摘します。Facebook、Twitterがあり、インスタが出て、TikTokが出てと、それぞれで見ている人の属性が分かれてきたと話します。
原さんは、若い世代がおじさんたちのいるコミュニティには入りたがらない心理を、行動として理解できると言います。自分たちの価値観でわかることをやっていきたい、という欲求があるからです。
TikTokにやたらおじさんユーザーがどんどん入っていったら、いや、ちょっと違うんだよなって。また新しいのが出てくるだろうなって思うんですよね。
そして原さん自身も、今では「そっち側」になってしまったと笑いながら振り返ります。26歳の社員はFacebookをやっていないと話し、小畑さんも自分はインスタしかやっていないと応じます。種市さんがインスタを使っているのは、むしろイレギュラーな例だと語り合います。
まとめ
インターネットとSNVSが流行のサイクルを速め、大きなトレンドが消えていった時代。だからこそ、原さんはトレンドに振り回されない「軸のある人」や、「みんなが知らないこと」に新しい価値が生まれていると語りました。プラットフォームが移り変わっても、伝えたいものの本質は変わらないという視点が印象に残る回でした。
- インターネットは流行を均質化し、消費サイクルを速めた結果、大きなトレンドが消え多様化が進んだ
- トレンドに着替え続けるより、軸を持つ人がカッコいいという本質的な価値観に立ち返りつつある
- ネットにない情報やクローズドなコミュニティにこそ、新しい価値が見出されている
- どんなにニッチでも共感する人は必ずいる。それがSNSでは数字として可視化されるようになった
- SNSは伝える手段として優れているが、飽和すれば次の場所が生まれるという循環がある
