SLAPSとは何か、名前に込めた意味
今回は、いつものトピックから少し離れて、小畑さんが手掛ける事業「SLAPS」の裏側を語る回です。
SLAPSはデジタル会員権サービスです。まず種市さんが気にしたのは、その名前の由来でした。
そもそもSLAPSってどういう意味でつけたんだっけ?
SLAPSは直訳すると「ひっぱたく」ですが、由来はそこではないと小畑さんは説明します。
いいスラングで、超いいとかイケてるっていう意味なんですよ。あとちょっと語感がいいかなと思って
つまり「このサービスは超イケてる」という意味を込めた名前だということです。
2025年は「回るかどうか」を試すフェーズだった
種市さんが最近の手応えを尋ねると、小畑さんは「結構いい感じになってきている」と答えます。
2025年のSLAPSは、導入店舗を一気に増やす段階ではなかったといいます。その手前のフェーズにいたそうです。
いわゆるメンバーシップっていうものがちゃんとお店に使ってもらえるのか、ファンをたくさん作ってたくさん来てもらいたいというものがちゃんと循環するのか、っていうテストのフェーズだったんですね
そして2026年になって2025年を振り返ると、うまく回る店がいくつか出てきたといいます。
「これはあるかもしれない」と感じ始めているのが、今の段階だそうです。
「愛を伝えると売上で返ってくる」会員権の仕組み
サービス開始当初は、「これで何の課題を解決するのか」という問いに、うまく答えられなかったと小畑さんは振り返ります。
いいお客さんを囲っていって、いいコミュニティを作っていきたいですみたいな。いや、わかるけど抽象度高くね、これ結局何がいいの、っていうリアクションをされる方も結構いたんですよ
実際にやってみるなかで、小畑さんたちも仕組みを言語化できてきたといいます。それは「店側が愛を伝えると、売上で返ってくる」という考え方です。
具体的には、会員権を売ってもらう形が最近増えているそうです。たとえば年間3万円の会員権です。
3万円を払うと、連れの無料チケットが約2万5000円分ついてきます。さらに毎回5%引きになり、会員だけが食べられるメニューも加わります。
つまり払った額よりも返ってくる価値が大きく、お得に感じられる設計です。
今の話を聞くとちょっと入りたいって思うもん
店側からすると持ち出しが多いように見えます。ですが、会員がすぐにまた来てくれるという効果が起きているといいます。
そこで小畑さんたちは、コンセプトを「リピーターを増やすためのサービス」へと変えました。
もうちょっとエモさで攻めてたのが、エモすぎるとよくわかんないから。つまりリピーターが増えます、つまり売上が上がります、そんな感じの打ち出し方に変えていて
年1回の客がもう1回来るだけで、売上は変わる
店舗と深く関わるなかで、小畑さんたちは飲食店の収益構造も見えるようになってきたといいます。
扱う店は座席数10〜20、大きくても30ほど。夜だけの営業で、来客の頻度も見えてきました。
年に1回来る客、2回、3回、それ以上と、それぞれの割合がわかるようになったそうです。
これ、ちっちゃいお店ってそういうデータ収集なかなかできないもんね
多くの店は、新規客を増やすことに力を注いでいます。SNSやグルメサイトへの広告がその例です。
ですが客を並べてみると、年5回も6回も来る常連はごくわずか。大半は年1回か年2回だといいます。
ここに小畑さんは着目します。この大半の客が、年にもう1回来てくれるだけで景色が変わるという発想です。
新規客が店を気に入ってくれるかはわかりません。それより、すでに来てくれている客がもう一度来るほうが、売上に確実に寄与するという考え方です。
「リピーターを増やしましょう」という昔からの話に近いですが、それがうまく回りそうだと小畑さんは話します。
SNSやグルメサイト広告で集客するが、来た客が店を気に入るかはわからない
大半を占める年1〜2回の客がもう1回来るだけで、売上が確実に伸びる
SNS疲れとクローズドなコミュニティへの流れ
種市さんは、レストラン選びのセンスと「持っているとステータスになる」感覚の親和性を指摘します。
大きすぎないミドルレンジの店ほど、来た人へのスペシャルな対応がしやすいという話です。
もう一つあればブレイクしそうな。ブレイクという言い方が正しいかわからないけど、なんかステータス性はある気がするな
小畑さんは「コミュニティ」という言葉があまり好きではないと前置きしつつ、SLAPSはその文脈に乗せやすいと語ります。
背景には、SNS疲れがあると小畑さんは考えています。刺激的な投稿でフォロワーを増やし続けることに疲れる人が増えているという見立てです。
パブリックにオープンに出すという情報と、もっとクローズドで、自分たちだけの中で自由に言いたいっていうのを使い分ける。そういう感じに時代がなってきている気がしていて
ポッドキャストが流行っているのも、この流れに近いのではないかと小畑さんは話します。
だからこそ、好きな人だけを集め、その中でやりとりをする形が、よりトレンドになっていると感じるそうです。
うまくいっている店は、集客にSNSを使いつつ、来てくれるファンを「えこひいき」して、もっと来てもらう。この使い分けをしていると小畑さんは説明します。
ジュリアナと信用の連鎖という商売の本質
種市さんは、バブル期のディスコ「ジュリアナ東京」の話を持ち出します。
派手に宣伝する一方で、裏ルートで人を入れたり、知る人ぞ知る会員制のバーラウンジがあったといいます。
それって結局クローズドというか、知ってる人しか知らないの
種市さんは、SNSでバーッと拡散して来た客の弊害にも触れます。一皿だけ頼み、写真を撮って喋るだけの客が増えると、常連やいい客が来なくなるという話です。
そのため店が、あえて塩対応をしたり、厳格なルールを作ることもあると種市さんは語ります。本当はやりたくなかったこと、という前提つきです。
寿司屋を例に挙げます。握った瞬間が一番おいしいのに、何貫も並べたままずっと喋る客がいる店もあれば、客層が自然とよい店もあるといいます。
難しいんだよね、お客さんは選べないから。いいお客さんでいい売上を上げていきたい、それで囲いたい。それで、そういう人たちがリピートしてくれるっていうのが、まさに小畑くんのやつって、そこがまさに具現化できるツールのひとつになるのかなと思う
いい客の連鎖が繋がれば、余計なSNSがいらなくなるかもしれないと種市さんは話します。混んでいて、いい客がいて、入りたいと思われる。それが理想だという見立てです。
種市さんは、有名俳優へのインタビュー依頼が「種市さんの友達だから」という理由で叶ったエピソードも紹介します。何のツテもない依頼が、紹介ひとつで実現した体験です。
食べ物も同じで、この信用の連鎖を店の中で作れるのがSLAPSの会員権ではないか、という話に着地します。
一斉スタートの店は「チーム戦」
最後に小畑さんは、寿司の話から思い出したエピソードを語ります。有名なフードブロガーが「一斉スタートの店はチーム戦だ」と書いていたそうです。
寿司はカウンターで一斉に出されます。出てきた瞬間が一番いいのに、写真を撮り続けて食べない客がいると、他の全員がイライラするという話です。
端っこに座ってるインスタ女子みたいなのがパシャパシャ写真撮って食べないわけですよ。そうするともうみんなイライラするわけですよ。チーム戦だって書いて、確かになって思って
種市さんは、江戸っ子としての流儀を冗談めかして口にします。
写真のシャッター音が鳴ってる間に食べる。それが江戸っ子としてのやっぱり
この場の空気感の話が、クローズドなコミュニティやいい客の連鎖という今回のテーマと自然に重なっていました。
まとめ
SLAPSが目指すのは、新規客を追い続けることではなく、すでに来てくれる客をもう一度呼び、いい客の紹介がいい客を呼ぶ「信用の連鎖」を店の中に設計することです。SNS疲れとクローズドなコミュニティへの流れを追い風に、その仕組みが少しずつ回り始めているといいます。
- SLAPSは2025年を「メンバーシップが循環するか」を試すフェーズとし、2026年に手応えを感じ始めている
- 会員権は「店が愛を伝えると売上で返ってくる」設計で、リピーター増加を軸にコンセプトを言語化し直した
- 大半を占める年1〜2回の客がもう1回来るだけで売上は大きく伸びる、という発想が事業の核にある
- SNS疲れを背景に、好きな人だけを集めるクローズドなコミュニティへの流れが追い風になっている
- いい客の紹介がいい客を呼ぶ「信用の連鎖」を店の中に作れるのが、SLAPSの狙いだと語られた
