新年一発目のテーマは「アニマルウェルフェア」
1月3日収録の新年一発目は、研修生さんのリクエストで「アニマルウェルフェア」がテーマになりました。
そもそもアニマルウェルフェアという言葉、研修生さんは酪農に来る前は知らなかったそうです。
酪農に来る前に知らんかった。
知ってからも、いろいろ理由を知るほど「これはどうなの?」と迷いが出てくるのが正直なところだと言います。
知らんかったら人間目線でかわいそうだなって思うことをしないっていうのが、知らん時の感じ。でも何のためにやってるかを知ってしまうと、でもそれはどうなの?みたいなのが出てくるから、難しい。
国際基準と日本、そして愛玩動物との違い
川上さんによると、アニマルウェルフェアの定義には国際基準のものと日本で作られたものの2つがあるそうです。
国際的な大前提は「五つの福祉」。拘束せず自由に動かせること、苦痛を与えないこと、空腹や飢餓の状態にしないことなどが含まれます。
ポイントは、これらをゼロにするのではなく「自分のできる範囲で努力しましょう」という点。
ゼロにしましょうじゃないんですよ。自分のできる範囲で努力しましょうっていうのが定義。
さらにややこしいのが、犬猫などの愛玩動物のアニマルウェルフェアと畜産・酪農のそれを混同してしまうケース。まずは物差しをそろえることが大事だと話されています。
あなたが今話しているのは海外のやつですか?日本のやつですか?それとも愛玩動物のやつかっていうのはちゃんとしないといけない。
イギリスは「選べる」、日本は「値段しか見ない」
話題はイギリスの事例へ。イギリスではアニマルウェルフェアが推奨されていて、マーク付きの牛乳を選んで買うのが結構主流だそうです。
川上さんが評価するのは「消費者が選べる」こと。付加価値がちゃんと値段に反映される点が素晴らしいと話します。
どっちもいいんですよね。なんか選んでくれるからこっちも頑張れるし。
一方で日本では、そもそも酪農について牛乳を飲む人がほとんど知らないのが現実だと2人は口をそろえます。
ミルク美味しいなとは思うけど、牛さんから出てるっていうのはわかるけど、それだけ。だから何?みたいな。
アニマルウェルフェアをつけても、消費者には「なんか美味しいのかな」という感覚になってしまう。だからこそ学校給食などでの食育が課題だと語られました。
放牧はおいしい?のびのびは本当に幸せ?
「放牧でのびのびしてる方がストレスなくて牛乳がうまいのでは」というイメージは、川上さんも「めちゃめちゃ言われる」と言います。
ただ、直射日光がバンバン当たる放牧場で、強い牛に弱い牛がやられて痩せていく光景もある。放牧が必ずしも幸せとは限らないと指摘します。
差し栄えとか直射日光がバンバンに当たるような放牧場で、本当にそれ牛幸せですか?って思う。
では味はどうか。おいしさは牛や餌によるので大きくは変わらないものの、風味には違いが出るそうです。
放牧には放牧の風味の良さみたいなのがあるし、牧草主体になったりするから乳脂肪の変動とかは変わる。
正直な感想として、川上さんは何種類か飲んで「薄い」と感じたことがあるとも。ただ、普段飲み慣れた牛乳と比べているからかもしれない、と付け加えています。
実は放牧じゃない?大山乳業の意外な仕組み
研修生さんが「全国で一番美味しい」と聞くと、川上さんは即答で大山乳業を挙げました。濃いのに甘くてすっきり、くどくない味わいが理由だそうです。
ところが研修生さんは、大山でアイスを食べた放牧場のイメージから「大山の牛は放牧」だとずっと思っていたことが判明します。
そう思ってました。放牧だと思ってました、ずっと。
実際には、あの放牧場にいるのは子牛や妊娠牛。飼い方はつなぎもフリーストールもいろいろで、放牧牛乳というわけではありません。
さらに大山乳業は一つの大きな牧場ではなく、たくさんの酪農家が出資してできた乳業会社。研修生さんの「大きい会社に酪農家が入っている」イメージとは仕組みが違いました。
乳業会社です。酪農家皆さんが出資して作った。
放牧牛乳という言葉のゆるさとマーケティング
なぜ思い込みが生まれるのか。川上さんは、パッケージや牛乳パックのイメージが大きいと話します。
そして「放牧牛乳」という表記自体にカテゴリーの幅があることも一因です。昼間だけ放しても、夜だけ放しても放牧を名乗れてしまうのです。
昼間だけ放してるのも放牧だし、夜ずっと放しても放牧だから、放牧牛乳って謳えるんですよね。
認証制度ではないため、言ってしまえば子牛の頃に放牧していただけでも放牧牛乳になりうる。研修生さんは「ゆるい」と驚きます。
認証制度ではないからね。まあだから、あの、マーケティングの一部だよね。
うまいし美味しいし、と川上さん。パッケージのイメージだけで判断せず、気になったら質問してほしい、というのがこの回のメッセージでした。
まとめ
放牧=幸せ、放牧=おいしいというイメージは、必ずしも実態と一致しないことがよくわかる回でした。アニマルウェルフェアも放牧牛乳も、言葉のうしろにある仕組みを知ると、牛乳の見え方が少し変わりますね。
- アニマルウェルフェアには国際基準・日本・愛玩動物の定義があり、混同しやすい。国際基準は「五つの福祉」を努力目標として掲げている
- 放牧は必ずしも牛にとって幸せとは限らず、味も「おいしさ」より「風味」の違いとして出る
- 大山乳業は一つの牧場ではなく、酪農家が出資して作った乳業会社で、放牧牛乳というわけではない
- 「放牧牛乳」は認証制度ではないため表記の幅が広く、パッケージのイメージが思い込みを生みやすい
- 日本では消費者が値段中心で選びがち。選択肢を増やし食育を進めることが課題として語られた
