リスナーからの質問と酪農IT化の現状
今回はリスナーさんの質問に答えるお便りコーナーです。
配信アプリのポポポから、ポポポネームもぐらさんの質問が届きました。
酪農のIT化が進んでいると聞きますが、どんな仕事をしてくれるのでしょうか。最新の設備は何万円しますか。
川上さんによると、酪農のIT化は今に始まったことではないそうです。
搾乳ロボットを最初に導入した人だと、三十年ほど前から使っている可能性があると話されています。
自動餌やり機はすでに酪農業界では当たり前になっており、餌押しロボットや牛の反芻量・行動量を観察するデバイスも、大きな牧場では導入されているところが多いといいます。
そこに生成AIの進化が加わり、海外で開発された技術が言語の壁を越えて日本に入ってくる余地が出てきていると語られています。
AIは牛をどう見ているのか
今の酪農IT化で一番大きいのは、牛を二十四時間監視できるようになった点だと川上さんは話します。
昔は牛の体調変化を人間が見つけるしかありませんでした。歩き方が変だ、餌食いが悪い、元気がない。すべて人間の経験に頼っていたのです。
つまり酪農経験とか、ベテランの方が勘と経験を生かして見つけるというものだったんで、新しい方もなかなか、教えてはもらえるんですけど、ここを習得するには時間がかかるっていうのがネックだったところですね。
今はセンサーやAIカメラで、歩数、反芻時間、活動量、体温、搾乳量、寝ている時間まで全部データ化できるようになりました。
海外では普通の防犯カメラのようなものを牛舎につけるだけで、AIが「足が痛そう」「餌を食べていない」「発情している」といったことを教えてくれる仕組みも出てきているそうです。
具体例として、北アイルランドのキャトルアイという会社のカメラが紹介されました。
これは搾乳後の牛をカメラで撮るだけで歩き方や背中のライン、痩せ具合を自動解析し、人間が気づく数週間前に蹄病になりそうな牛を発見するといいます。
さらに最近は、Wi-Fiが不要でソーラー電源だけで動き、牛の鼻の模様を読み取って病気の兆候を検知するAIも登場しているそうです。
つまり山奥でもAI酪農ができ始めているということですね。
生成AIが変える技術の共有
生成AIの登場で、新人の学び方も変わってきていると川上さんは話します。
昔は新人が「この牛なんか変です」と言っても、ベテランがいないと判断できませんでした。
でも今はスマホでAIに聞けるといいます。獣医さんや餌会社のようなアドバイザーを、スマホの中に常に置いておけるイメージです。
例えば「歩き方が変だけど、何をチェックしたらいい」とAIに聞くと、蹄の状態や関節の腫れ、病気の可能性、採食量の確認といった専門的な答えが返ってくるそうです。
つまり技術の共有化が起きるということですね。昔は親方の背中を見て覚えろみたいな、なんでわからないんだみたいなのがあったんですけど、今はそれをAIがアシストしてくれる、横についている感じじゃないかなと。
最新設備はいくらするのか
気になる値段について、川上さんは「ピンキリ」だと前置きします。
先ほどのAIカメラは数万円から10万円ほどで、市販のカメラにクラウド型のAIを組み合わせるとランニングコストは意外と安いそうです。
首輪型のセンサーは一頭あたり数万円ほど。川上牧場の80頭に一頭1万円で付けると80万円ほどで、これに月額費用がかかることもあると話されています。
一方で搾乳ロボットはどんどん値上がりしており、iPhoneのようにアップデートのたびに価格が上がっていくとたとえています。
自動餌寄せロボットや自動哺乳器、糞を掃除するロボットも数百万から数千万円になるといいます。大きい牧場だと導入費が億に届くこともあると話されています。
AIが進化しても最後は人
ただし、AIが進化しても最終的には人だと川上さんは強調します。
今日はなんだか目が違う、空気感がおかしい、群れの雰囲気が変。こうした感覚は、まだ人間の方が強い部分だといいます。
未来の酪農はAIが人を消すのではなく、人が牛を見る時間を増やす方向に行くと思います。
これまでは記録や確認、探す作業が多かったものが、AIが異常を教えてくれることで、人間は牛と向き合う時間に集中できるようになると話されています。
さらにIT化は人だけでなく牛にもやさしいといいます。病気を早く見つければ痛い時間を減らせ、暑熱ストレスや発情も見逃しにくくなるからです。
酪農のDXって最新でかっこいいとか、難しそうとか、そういうネガティブなことだけではなくて、人にも牛にも優しい方向に進んでいる。これが今の世界の流れですということですね。
価格逆転と日本酪農のこれから
AIのDX化やIT化は高額ですが、その価格構造が逆転しつつあると川上さんは見ています。
AIのレベルが上がっているため、大きな設備や機械を導入しなくてもDX化できる時代が近づいているといいます。
日本ではまだ普及が進んでいませんが、平均年齢が高くパソコンやスマホの活用が難しい状況が背景にあると話されています。
それでも、あと少しすれば否が応でも使わざるを得なくなると考えられています。
今まで覇権を取ってたところが価格破壊を起こしてしまって取れなくなってくる、みたいなことがあってきて。日本はかなり頭数が少ないので、そこを海外のスタートアップがドーンと取ってきたりすると、本当に面白いんじゃないかなと。
川上さんが理想として語ったのは、人も牛も楽になり、消費者がいつでもどこでも美味しい牛乳を飲める形です。
まとめ
酪農のIT化は搾乳ロボットやセンサーから、AIカメラや生成AIへと進化しています。設備は数万円から億単位まで幅広い一方、AIの進化で価格が逆転し始めており、最後に牛と向き合うのはやはり人だと語られた回でした。
- 搾乳ロボットや自動餌やり機はすでに酪農の現場に浸透している。
- AIカメラは人間が気づく数週間前に病気の兆候を見つけられる。
- 生成AIによって、新人でも専門的な判断をアシストしてもらえるようになった。
- 設備はAIカメラの数万円から搾乳ロボットの数千万円まで幅が大きい。
- IT化は人の負担軽減だけでなく、牛の福祉にもつながっている。
