味の違いに気づいたリスナーからの質問
今回のお便りは、TikTokから届いた「ティアンさん」からの質問です。
給食の牛乳とスーパーで買う牛乳、なんか味違う気がする?
川上さんはまず、この違いに気づけること自体をすごいと受け止めます。地域の制度やメーカーによって、牛乳の味は本当に変わってくるからです。
いや、そうなんですよ。味違うはずです。いろんな地域でいろんな給食の制度とか、メーカーさんとかで変わっていくんですけれども、味は違うはずなんですよね。
結論として、味が違う理由は乳業メーカー、乳脂肪率、殺菌方法、鮮度の違いにあると川上さんは話します。ここから順番に説明していきます。
給食の牛乳は「特別仕様」になっていることが多い
給食の牛乳には全国的に共通した特徴があるそうです。まず、200ミリリットルの小型紙パックが主流で、工場ラインが独立し、給食専用にパックされるケースがあります。
もうひとつが乳脂肪率です。給食では規格を揃えて、年間を通して味のバラつきを出さないために、脂肪率を3.6パーセント前後で安定させる傾向があるといいます。
一方でスーパーの牛乳は3.5パーセントから3.9パーセントなど幅があり、メーカーによって「濃い」「あっさり」といった違いが出やすくなります。
いちばん大きいのは殺菌方法の違い
川上さんが「一番大きい」と話すのが、殺菌方法の違いです。牛乳の風味は、加熱温度によってかなり変わるといいます。
給食で多いのは、地域によりますが、パスチャライズと呼ばれる65度から75度で15秒から30秒ほど加熱する方法です。値段は高くなりますが、こだわりの牛乳を出したい地域で使われています。
パスチャライズ牛乳は、コクが残りやすく、風味が生乳に近いと感じられることが多いそうです。給食センターや契約工場が、地域の酪農家の生乳をそのまま処理する場合もあります。
これに対してスーパーで多いのは、120度から130度で2秒ほど殺菌する超高温殺菌牛乳です。癖がなく安定した味で、輸送に強く賞味期限が長いのが特徴です。
ただし超高温殺菌の方が加熱臭が少し出るため、これが「給食と味が違う」原因に直結しているかもしれない、と川上さんは話します。
コクや生乳に近い風味が残りやすい。給食で使われることがある
癖がなく安定した味で日持ちする。加熱臭が少し出やすい
鮮度と集乳エリアが生む「産地の味」
もうひとつの理由が鮮度です。給食の牛乳は地域内の酪農家から地域の乳業へ、そして学校へすぐ配達されるため、搾ってから飲まれるまでの時間が短いといいます。
中には前日に搾った牛乳が翌日に学校で飲まれる地域もあるそうです。その結果、香りがフレッシュで乳脂肪の風味を強く感じる人が多いのではないか、と川上さんは説明します。
スーパーの牛乳は、メーカーごとに生乳の集乳エリアが違うことも味の差につながります。北海道から運ばれてくるものもあれば、関東なら群馬や埼玉、千葉から入ってくる場合もあります。
さらに冬や夏といった季節でも味は変わります。牛は生き物なので、季節の温度によって風味が左右されるからです。
牛は生き物なので、その季節の温度とかでも風味が変わったりしますね。
均質化と「冷たさ」が味覚に与える影響
専門的な話として、川上さんは均質化(ホモジナイズ)にも触れます。牛乳は乳脂肪を均一にする処理を行っていますが、その圧力や回数がメーカーごとに違い、それだけで舌触りが変わることがあるそうです。
「子どもの頃、給食牛乳が苦手だった」という感覚も、科学的に説明できると川上さんは話します。牛乳は低温だと味を強く感じるためです。
給食はキンキンに冷やされて出てくるので、乳脂肪の香りやタンパク質の風味がダイレクトに来て、苦手に感じることがあるのではないかといいます。
逆に牛乳は常温に近づくほど甘く感じる人が多く、温めるとなおさらです。給食室がある学校か、給食センターから運ばれるかでも温度は変わり、味の印象に関係してくるそうです。
加工で個性が出るのが牛乳の面白さ
川上さんは、牛乳はいろんな牧場やエリアの牛乳が混ざり、年間を通して安定した品質を保つよう、企業やメーカー、酪農家が努力していると話します。
その上で、味のブレは牛という生き物から出ているものだと知って、感じながら飲んでほしいと語ります。給食と家の牛乳の味の違いも、立派な食育だといいます。
最後に川上さんは、自身の牧場の例も紹介します。川上牧場でも夏場は3.5パーセントほど、今の時期は4.5パーセントほどと、乳脂肪率が1パーセントも差が出ることがあるそうです。
これだけ違うとやっぱり風味全然違いますので。そういう違いがある食べ物なんだよ、飲み物なんだよっていうのを知ってもらえたら嬉しいなと思うところでございます。
今の時期はトウモロコシサイレージ、春になると生草や放牧場の草など、牛が食べる餌によっても牛乳の味は変わっていくのだといいます。
まとめ
給食とスーパーの牛乳の味が違うのは、乳脂肪率、殺菌方法、鮮度、集乳エリア、均質化の処理といった複数の条件が組み合わさっているから。どれが良い悪いではなく、加工方法で個性が出るのが牛乳の面白さだと川上さんは話しました。
- 味の違いの主な理由は、乳業メーカー・乳脂肪率・殺菌方法・鮮度の差
- 給食は脂肪率を3.6パーセント前後で安定させ、パスチャライズや高い鮮度の牛乳が使われる地域もある
- スーパーは超高温殺菌が多く、集乳エリアや季節によっても味が変わる
- 牛乳は低温だと味を強く感じ、常温や温めると甘く感じる人が多い
- 味のブレは牛という生き物から生まれるもので、その違いを知ることも食育になる
