リスナーからの質問「最も気を配ることは?」
今回のお便りコーナーには、配信アプリSpoonのリスナー「みずみずしいさん」から質問が届きました。
牛さんの飼育において最も気を配っていることは何ですか?これだけは普段から気をつけないと重大な疾患につながる、などありましたら知りたいです。
川上さんはこの質問に、まず「一つには絞りづらい」と正直に答えます。というのも、自分では当たり前にやっていることは、なかなか自分では気づけないんですよね。
自分じゃ気づけないんですよ、なかなかね。研修生さんに「川上さんってこうですよね」とか言われて、初めて自分がわかるというところもあったりする。
そこで今回は、AIの力も借りながら、普段無意識にやっていることを言葉にして答えていくことになりました。
土台になるのは「環境」と「観察」
AIがまとめた答えの結論は、川上さんが最も気を配っているのは「環境」と「観察」の2つ、というものでした。これが牛の健康すべての土台になります。
結論から言うと、私は環境と観察の2つです。これが全ての土台になります。あ、いいですね。この2ついいですよ。
川上さん自身も、この答えに「外れてない」と手応えを感じていた様子です。
なぜ「環境」が最重要なのか
牛は体が大きく見えて、実はストレアにとても弱い動物です。そのストレスの原因は、大きく4つに分けられると説明されました。
1つ目は温度。牛は暑さにも寒さにも弱く、快適な範囲を超えると乳量や餌の食べる量がガクッと減ってしまいます。
川上牧場では、換気扇を2棟に1台ほど設置して換気をし、牛舎の風の流れを常に見ています。夏場は水槽の掃除の回数を増やしたり、西日を防ぐカーテンの管理を徹底したりしているそうです。
2つ目は湿度と牛床の状態です。牛が病気になる原因の6割以上は湿気と言ってもいいくらいで、ベッドが湿ったり足元が滑ったりすると、乳房炎や蹄病の大きな原因になります。
だからこそ川上さんは、毎日牛の乳房の張りや左右の差、硬さを手で触って確認しています。
3つ目は餌です。牛の胃のバランスが崩れて酸性に傾くと、蹄の病気や乳量の減少、繁殖成績の悪化などが連鎖的に起きてしまいます。
川上牧場では、餌の水分量や配合飼料の与え方、反すうの様子、フンの状態、繊維が消化されているかなどを毎日チェックしているそうです。
4つ目は群れのストレス。牛は社会的な動物で、群れの編成が不安定だと大きなストレスになります。そのため、なるべく群れを安定させ、移動させすぎないことを徹底しています。
病気の9割は「行動の変化」で気づける
環境と並ぶもう1つの柱が「観察」です。現場では病気の9割は、行動の変化で先に気づけるといいます。
毎日チェックするのは、起立の回数、餌の食べ具合、水の飲み方、反すうの時間、目つき、乳房の張り、体の温かさなど。人間でいう「今日はだるそう」に近いサインを見逃さないためです。
牛は我慢する動物なので、症状が出た時にはすでに重いということも多い。だから毎日見る、必ず見る。それしかない。これが飼育の核心です。
川上さん自身、噴火器(種付け)のときには自然と牛の体を見て、いつもと反応が違わないか、すぐ立ち上がるはずの牛が立たないか、足が腫れていないか、フンの状態が悪くないかなどを確認しているそうです。
餌の時はウォーターカップ汚れてないかなとか、出が悪いかなとか、あとは柱のネジ外れてないかなとか、そういうところを観察したりします。もう観察が一番です。
気を抜くと危険な病気とは
続いて、少し気を抜くとすぐ重篤になる病気についても紹介されました。毎日の観察でほぼ防げる病気ばかりだといいます。
数時間で急に悪化し、牛乳が水のようになって命に関わることも。発見の遅れが致命的です。
分娩後のチェックが甘いと長引きやすい病気。産後の観察が大切になります。
体調不良や乳量減を招き、慢性化のループに入りやすい状態です。
足が痛くなると採食量が落ち、牛群全体のパフォーマンスも下がってしまいます。
夏場の過信は禁物。危険度の高い病気です。
これらは、どれも毎日の観察でほぼ防げる病気だと締めくくられています。症状が軽いうちに早めに対処すれば、治るのも早いからです。
まとめ
今回は、リスナーからの「牛の飼育で最も気を配ることは?」という質問に、川上さんが「環境」と「観察」という2つの答えで応えた回でした。特別なことよりも、毎日の積み重ねこそが牛の健康を守っているんですね。
- 牛の飼育で最も大切なのは「環境を整えること」と「毎日の観察」の2つ
- 牛はストレスに弱く、温度・湿度と床・餌・群れの4つがストレスの原因になる
- 病気の9割は行動の変化で先に気づけるため、毎日必ず牛を見ることが核心
- 乳房炎や蹄病などの重い病気も、多くは日々の観察でほぼ防げる
- 症状が軽いうちに早めに対処すれば、治るのも早い
