春の牧場と日曜のコメント返し
配信は島根県出雲市にある小さな牧場から届けられています。この日は3月29日の日曜日、曇りのち晴れで最高気温は十九度でした。
昼間は長袖だと汗ばみ、朝晩は寒いという難しい天気だと話されています。出雲の桜はまだ咲き始めたぐらいだそうです。
牧場では急な暑さで発情期を迎える牛が一斉に増え、鳴き声が響いていたといいます。川上さんは、こんなところにも春の訪れを感じると語ります。
日曜日は各SNSや音声配信に寄せられた一週間分の質問やコメントに答える回です。今日は十分十五分では終わらないかもしれない、と川上さんは前置きします。
家畜のしつけはどこまで許されるのか
最初に取り上げられたのは、北海道の馬の牧場で子馬をしつけと称して虐待していると見られる動画がバズった件への質問でした。
牛は痛いことや怖いことを記憶するので、恐怖でコントロールする管理は長期的にはマイナスなんですよね。
川上さんは、恐怖で牛を扱っても誰も得をしないと話します。生産効率が落ちれば牛乳の値段も上がり、消費者にとってもよくないという理屈です。
一方で、現場では誤解を与える場面もあると認めます。だからこそ伝えていく必要があり、リスナーが関心を持ってくれること自体を受け止めたいと語りました。
別のリスナーからは、価値観によって線引きが難しいテーマだという指摘も寄せられました。畜産に関わらない人にはつなぎ牛舎も虐待に見え、欧州では規制されている地域もあるという内容です。
川上牧場は三代目まで続くつなぎ牛舎で、ゴムマットやつなぎ方、水や餌の与え方を変えて快適性を高めてきたといいます。
それでも「つなぎ牛舎はダメ」と言われると自分のやり方が否定されたことになる、と悲しさをのぞかせます。ただ、少しずつ変わらなければいけないとも受け止めていました。
川上牧場の牛乳はつなぎ牛舎だけど、牛がリラックスしていて、牛にとっていい環境を作っている酪農家だと思うから飲みたい。そういう方を増やしていけたらいいなと思いますね。
牛乳を知ると、味わいが変わる
酪農と関わりのなかったリスナーからは、TikTokで牛の話に興味を持ち、今では牛乳を飲むようになったという声が届きました。
確かに牛のことを知ると、牛乳は美味しく感じるようになりますよね。
川上さんは、こうしたリスナーが一人でも増えたらと配信を続ける理由を語ります。川上牧場だけでなく、酪農全体を応援してくれる人を増やしたいという思いです。
背景には、人手不足のなかで世界的な食糧問題を解決していく必要があるという危機感があります。酪農業界だけでは対応できないと考えています。
今まで自分がやってきてもらったものを、そのまま若い世代にちゃんといいものとしてつなげていけるように頑張っていこうと思っています。
乳糖不耐症でお腹を壊すというリスナーには、体温に近いホットミルクをすすめました。
牛乳は胃酸と混ざると凝固して固形になりますが、これがうまくいかず腸へ流れると水分を吸収しきれず下痢の原因になると説明します。体温と同じくらいの温度だとお腹がゴロゴロしにくいそうです。
川上さんは、体との相性に合う牛乳があるとして、いろいろな産地の牛乳を飲み比べてほしいと呼びかけました。
いろんな牛と、多様な酪農経営
川上牧場の牛乳は乳脂肪4.8%です。この話題から、いろんな品種の牛を飼いたかったというリスナーの声が紹介されました。
そのリスナーは、現実は難しく、今はお気に入りの柄のホルスタインをたくさん飼って満足していると綴っています。
川上さんも、毛が長くフワフワで足が短い牛など、飼ってみたい牛はいると語ります。ただ経営を回しながらとなると難しいのが実情です。
生産性が高く経済性がいいため、ホルスタインが選ばれてきたといいます。それでも、多様な酪農家が増えることには意味があると考えています。
みんなが餌代を下げて生産性を上げてという方向だけになってしまうと、世界情勢が変わった時に弱いので。多様な酪農家が増えるために、もっと牛乳の値段を上げていく取り組みをやっていきたいですね。
子どもからの「尻尾が三つある鶏がいたらぼんじりがたくさん取れる」というアイデアには、川上さんも面白がって反応しました。
海外にはお尻の肉が大きくなるよう筋肉質に品種改良された牛がいることにも触れ、若い子の発想が酪農業界を変えるかもしれないと期待を語りました。
FAXの現場と、AIで変わる酪農
3月6日に開催された酪農DXサミットの様子を伝えるショート動画に、いまだに連絡手段がFAXだというコメントが寄せられました。
これはサミットのアイスブレイクで話した内容だといいます。周りの業界がAIで飛行機のようなスピードで動くなか、酪農業界はFAXや手紙のままだという問題提起です。
学生たちはAIを使い始めているのに、就職して「うちはAIを使わない、FAXと手紙だから」と言われたら、この業界に人が定着しないですよね。
牛にトイレを覚えさせられたら掃除が楽になる、というコメントには、習性的に難しいと答えつつも希望を語ります。
人間が空を飛べなくても飛行機に乗れるように、牛のトイレも機械で解決していくだろうという見立てです。その先には堆肥処理という新たな課題も出てくると付け加えました。
配信の川上と、素の川上
「朝から元気な声が大好きで牧場に行きたくなる」という声に、川上さんは配信と実際のギャップを打ち明けます。
配信ではテンションを上げていますけど、終わったらもうスンですよ。牛舎に入って黙々と作業しています。
イメージを膨らませすぎると会った時にがっかりするかもしれない、と笑いつつ、酪農体験の申し込み方法を案内しました。
AIセミナーの動画には「AI川上さんですか」というコメントも。実際はリアルの川上さんで、スライドだけAIで作った「半AI川上」だと種明かししています。
共進会に久しぶりに経産牛を出した投稿には「綺麗」という声が届きました。成績は五頭中四位と及ばなかったものの、子牛は中国大会に向けて頑張ると語ります。
半年間の研修を終えた研修生への「川上さんと同等の立場になれている」という感想には、19年半を短縮できる研修だと応じ、令和8年度の研修生募集も案内しました。
『えんとつ町のプペル』が刺さった理由
子牛の逆子の出産を助ける動画が10万回再生を超えたことも報告されました。ほとんどの作業を一人でこなしていることに驚きの声が寄せられています。
最後に取り上げられたのは、映画『えんとつ町のプペル 約束の時計台』の感想記事へのコメントです。
リスナーは「挑戦し続けてきたものが、その先をどう生きるのかを問う作品」と綴り、待つ側の葛藤や苦しさを初めて知ったと感想を寄せました。
川上さん自身も、挑戦する人と、それを待つ人の関係が描かれた作品に胸を打たれたと語ります。
新しい活動を進めると、これまで応援してくれた人と考え方が対立し、応援が離れていくこともあるといいます。それでも変えたいものを変えるには進むしかないと話しました。
今まで応援してくれた人が応援してくれなくなることも多々あって、つらいんですけど、やっていかないと本当に変えたいものが変えられないので。
配信の締めくくりでは、一時の盛り上がりよりも、毎日コップ一杯の牛乳を飲み続けてほしいという願いが語られました。
もうファンですよと言ってもらえるとモチベーションは上がりますけど、ひっそりでいいので、牛乳をコップ一杯飲んでもらえると一番嬉しいなと思います。
まとめ
各SNSに寄せられた声に一つずつ答えるなかで、家畜のしつけや酪農のあり方、そして牛乳と長く付き合ってほしいという川上さんの一貫した思いが見えてくる回でした。
- 恐怖で牛を管理することは、酪農家にも牛にも消費者にも長期的にマイナスだと語られています。
- 乳糖不耐症でお腹を壊しやすい人には、体温に近いホットミルクがすすめられています。
- 餌代を下げて生産性を上げる方向だけでは情勢の変化に弱く、多様な酪農家が増えることに意味があると考えられています。
- FAXや手紙が残る現場にAIを取り入れなければ、若い世代が定着しないという危機感が示されています。
- 一時の盛り上がりより、毎日コップ一杯の牛乳を飲み続けてほしいという願いが繰り返されました。
