リスナーからの質問「新幹線で牛乳を直送できる?」
この日のお便りコーナーに届いたのは、配信アプリ「ポポポ」のリスナー・もぐらさんからの質問でした。
新幹線で荷物を運ぶようになったみたいですね。牛乳も運ぶことになると川上牧場を直送できますか?
まず川上さんは、自分の牧場のケースで考えます。川上牧場から最寄りの出雲市駅まではおよそ10分。ですが、そこからJRで岡山や広島まで運ぶより、車で運んだ方が早いといいます。
陸の孤島、山陰なんですよね。新幹線通ってないんで。
さらに、川上牧場の生乳は一日およそ1トン。この規模では、鉄道や新幹線で運ぶのは割に合わないと話します。
物流量として何十トン運べるようになったら、列車や新幹線で運ぶことも検討できるかもしれないですけど、まだまだ川上牧場の規模だと割に合わないんですよね。
すでに牛乳は鉄道で運ばれている
質問への答えとして、川上さんはまず一つの事実を示します。イメージとは違う形ですが、日本ではすでに鉄道で牛乳が運ばれているというのです。
実はすでに鉄道で牛乳は運ばれているという事実があります。ただし、イメージしている形とはちょっと違います。
北海道の生乳は鉄道で本州へ運ばれています。ふつうは船で運ぶのが一般的ですが、代表的な事例として、ホクレンがJR貨物のタンクコンテナで釧路などから東京・大阪方面へ輸送しているそうです。
さらに新しい動きもあります。2025年5月には、北海道・中標津の「ループライズ」が21.5トンの大型タンクコンテナを導入し、名古屋まで定期輸送しているというニュースがありました。従来は16〜20トンほどなので、かなり大きなタンクだといいます。
より大量に効率よく運べるようになったということですね。牛乳はすでに鉄道インフラの上にあるということです。
なぜ鉄道輸送が増えているのか
鉄道輸送が増えている理由を、川上さんは3つ挙げます。
ドライバー不足
いわゆる2024年問題として、長距離運転手の担い手が足りていません。
CO2削減・モーダルシフト
カーボンニュートラルの流れで、CO2排出を減らす取り組みが進んでいます。
長距離輸送の安定性
大量の荷物を安定して運べる強みがあります。
鉄道はトラック10台分以上を一人で運べ、CO2の排出も大幅に少なく、専用タンクで温度管理もできます。つまり、大量・長距離の輸送なら鉄道が強いということです。
新幹線での直送はなぜ難しいのか
では質問の核心である「新幹線で直送」はできるのか。川上さんの結論は、今の仕組みではほぼ難しい、というものです。
理由の一つは輸送単位の違いです。鉄道貨物ではタンクで数十トン運べますが、新幹線だと小口の箱単位になってしまいます。
コストの構造も壁になります。牛乳は大量・低単価の食品なので、新幹線は速いけれどコストが高くつきます。
さらに物流の設計も難しいといいます。今の牛乳は工場に集めて処理してから流通する形ですが、直送すると殺菌や充填の問題が出てきます。
未来の可能性 ―無菌輸送と高付加価値商品
ただし、未来には可能性があると川上さんは続けます。すでに技術は進んでいるからです。
アセプティック輸送、いわゆる無菌輸送という方法があります。長期間品質を保てて、海外輸送の試験もすでに進行中だといいます。
また、高付加価値の商品なら成立する可能性もあります。低温殺菌牛乳やチーズ、プレミアム商品なら、輸送コストが高くても採算が合うのではないかという見立てです。
海外ではどうしている?
海外の事例も、鉄道と牛乳の相性を裏づけます。
| 地域 | 輸送の形 | 特徴 |
|---|---|---|
| インド | 牛乳専用列車 | 約2300kmを大量輸送し、都市の供給インフラになっている |
| アメリカ | 加工品を鉄道輸送 | 昔はミルクトレインが走っていた |
| ヨーロッパ | 一部で鉄道を利用 | 環境への配慮から |
つまり、牛乳×鉄道は世界的に実績があるということです。日本でも大型タンクの導入など進化は続いており、新幹線での直送は現状難しいものの、高付加価値や最新技術で変わる可能性がある、というのがこの日のまとめでした。
輸送の多様化と、川上牧場が描く未来
話は鉄道以外の輸送方法にも広がります。牛乳は重いため、コンビニや楽天がドローンで離島に荷物を運ぶ取り組みも出てきているといいます。
飛行機輸送で、北海道の牛乳が翌日には沖縄に届くような方法も登場しているそうです。燃料代やドライバー運賃でコストが変わる中、牛乳の輸送方法も多様になっています。
川上さんは、ドローン輸送が身近になれば、島根県内くらいなら搾った牛乳を小口で届ける夢も描けるといいます。ただし、その前に立ちはだかるのが法律です。
農家が生乳を販売してもいいんですけど、乳業メーカーで処理をしてもらわないといけないというハードルがあるんですよね。
海外にあるような、農家が搾りたての生乳を持っていけばその場で販売できる牛乳の自動販売機。川上さんは、これを日本でもやってみたいと繰り返し語っています。
一方で、直送よりも規模拡大に前向きな思いもあると明かします。ただし、それは単純な増産ではありません。
これから日本の人口が減って、消費する人も減っていく中で、規模を増やして結局飲まれなかったら意味がなくなっちゃうので。
まとめ
リスナーの素朴な質問から、牛乳輸送の現在地と未来像が見えてきた回でした。鉄道はすでに牛乳輸送を支えており、新幹線直送は現状難しいものの、技術と商品次第では可能性が残されています。
- 北海道の生乳はすでにJR貨物のタンクコンテナで本州へ運ばれている
- 2025年5月には21.5トンの大型タンクコンテナが名古屋まで定期輸送を開始した
- 鉄道輸送はドライバー不足・CO2削減・長距離の安定性から増えている
- 新幹線直送は輸送単位・コスト・物流設計の面で現状は難しい
- 無菌輸送や高付加価値商品なら、遠距離輸送の可能性が広がりつつある
