輸入飼料が止まったらどうなる?という質問
今回の放送で取り上げられたのは、リスナーのもぐらさんから届いた質問です。
輸入餌がもし入ってこないことになると、日本の牛さんなどどのくらい減りますか?牛乳などは値段が上がって庶民は買えなくなりますか?
背景には、中東情勢やホルムズ海峡をめぐるニュースがあります。原油や燃料が不安定になり、ガソリン代が上がってきていることが、酪農にどう関わるのかを気にしている人も多いようです。
川上さんはまず、この質問はかなり重要なものだと受け止めた上で、結論から話し始めます。
結論は「牛は減る、値段は上がる、でも即崩壊ではない」
川上さんの結論はシンプルです。輸入飼料が長期間止まれば、日本の牛は確実に減り、牛乳の価格も上がる可能性が高いといいます。
ただし、すぐにゼロになる、全員が買えなくなる、という話ではないとも話されています。ここを冷静に見るのが大事なポイントだそうです。
なぜそう言えるのか。前提として、日本の酪農がどれだけ輸入に頼っているのかから話は進みます。
日本の酪農はどれだけ輸入飼料に頼っているのか
日本の酪農は、餌の多くを輸入に頼っていると川上さんは説明します。
トウモロコシや大豆カスなどのエネルギー源になる濃厚飼料、そしてチモシーやイタリアン、アルファルファ、スーダンといった輸入牧草まで、幅広く海外に依存しているそうです。
とくに穀物などのエネルギー源は海外依存が高く、日本ではほぼ作っていないとのこと。つまり、輸入が止まることは、餌の供給が不安定になることを意味します。
ホルムズ海峡は「直接」ではなく「間接的」に効いてくる
ここで川上さんが整理するのが、「ホルムズ海峡が止まる=飼料が止まる」なのか、という点です。
結論としては、飼料そのものの主な輸送ルートはアメリカなどからの太平洋航路なので、ホルムズ海峡が直接の通り道というわけではないそうです。
一方で重要なのが、原油や燃料といったエネルギーの物流です。ここが不安定になると輸送コストや船の運賃が上がり、肥料や飼料の価格上昇につながっていきます。
エネルギーの物流が不安定
原油や燃料をめぐる情勢が揺れる
輸送コストが上昇
船の運賃や動力費が上がる
飼料・肥料が値上がり
間接的に酪農のコストが増える
仮に飼料が止まったら、現場では何が起きるのか
では、実際に輸入飼料が長期間入らなくなったら、現場ではどうなるのでしょうか。川上さんは3つの段階で説明します。
こうして牛の頭数は段階的に減っていくのではないか、と予想されています。
その先の牛乳の値段については、供給が減れば価格は上がる方向に動くとのこと。ただし日本には流通や、加工向けと飲用の調整という制度があるため、急な暴騰にはなりにくい性質があるそうです。とはいえ、じわじわ上がる可能性は十分にあると話されています。
牛乳は買えなくなるのか
質問のもう一つの核心、「買えなくなるのか」について、川上さんはここは安心してほしいところだと話します。
完全に買えなくなる可能性は低いといいます。国内生産がゼロになるのは現実的ではなく、国産飼料や制度上の調整が動くからです。
ただし、価格が上がることで気軽に買えるかどうかは変わるかもしれません。今はいつでもどこでも買える状況ですが、酪農家の軒数や生産量が少ない都道府県では、供給が二日に一回や週に一回になる、といった部分が出てくる可能性もあるそうです。
今はいつでもどこでも成分無調整牛乳を買える状況
価格が上がり、地域によっては供給が減る可能性がある
なお、成分無調整牛乳は手に入りにくくなるかもしれませんが、脱脂粉乳など海外からの輸入や加工乳で代替され、安定させる方向になるのではないか、とも話されています。
川上牧場自身が抱えるリスクと、続けるためにできること
この話は他人事ではなく、川上牧場自身のリスクでもあります。
北海道や一部の地域では自家飼料を作っている牧場もありますが、川上牧場は牧草などを自分のところで作っておらず、すべて購入飼料でやっているため、一番大きな打撃を受ける可能性があるといいます。
すでにコロナ禍で経営が厳しくなり、ジャージーやブラウンスイスなど複数種を飼っていたスタイルから、長く牛を飼う品種改良へと大きく切り替えてきた経緯があります。それでもまだ、その大変だった時期を乗り越えたとは言えないと率直に語られています。
コロナ禍のすごく大変だった時期を乗り越えたとは言えないんですよね。その中でこういう不安定なことが起こると、もっと廃業が増えて生産量が落ちてしまう。皆さんがいつでもどこでも飲めるということは難しくなってくるのかなと。
リスナーからは「今は大丈夫でも数年後に皆さんが困ることになる」というコメントも届きました。川上さんも、先を見るのは難しく、目の前の生活が一番なのは当然だと受け止めます。
だからこそ、明日食べるものに困っている人に「酪農を応援して」とは言いにくいし、国の支援も財源やスピードの問題があると話します。その上で、消費者と直接つながって理解してもらい、大変なときは助け合える関係を作りたいというのが、配信を続ける理由だと語られています。
答えはなかなか出ない問いだとしながらも、やれることをやって頑張っていく、と川上さんは前を向いていました。
まとめ
今回は、輸入飼料が止まったら日本の酪農はどうなるのか、というリスナーの質問に川上さんが答える回でした。牛乳は世界の物流の上に成り立っていること、そして国産飼料や地域循環の大切さが見えてくる内容です。牛乳を一日コップ一杯でも飲み続けることが、酪農を支える一歩になりそうですね。
- 輸入飼料が長期間止まれば、日本の牛は確実に減り、牛乳の価格も上がる可能性が高い
- ホルムズ海峡は飼料の直接の通り道ではないが、燃料や輸送コストを通じて間接的に酪農へ影響する
- 飼料が止まると「節約→乳量低下→頭数調整」の順で現場は動き、頭数が段階的に減っていく
- 完全に買えなくなる可能性は低いが、価格上昇や地域による供給減は起こりうる
- 購入飼料に頼る川上牧場は打撃を受けやすく、消費者と直接支え合う関係づくりを続けている
