寄せられた相談:給食の牛乳が飲めなかった
今回の配信では、ポポポネームのコルトマルテスさんから寄せられた質問に答えていきます。
給食に牛乳が出ていた頃は全く飲めませんでした。成長期に飲めなかったことが、その後の体格などに影響あれば教えてください。
川上さんは、同じ悩みを持つ人は多いのではないかと話します。
近年は学校給食のあり方も変わり、無理して食べない教育が広がりつつあると言います。福岡市では月に一回、牛乳をお茶に変えるという議論も出てきているそうです。
そこで今回は、酪農家としての視点だけでなく、国内外の研究や栄養学のデータも踏まえて答えていくと川上さんは話します。
結論:飲まなかった=失敗ではない
まず川上さんは、結論から話し始めます。
牛乳を飲まなかったイコール必ず身長が伸びない、骨が弱くなるというわけではありません。ここをまず安心してほしいですね。
その根拠として挙げられたのが、身長に関する研究です。
今の研究では、人の身長は約八十パーセントが遺伝の影響と言われていると川上さんは説明します。両親や家系の影響がかなり大きいということです。
家系の影響なので、隔世遺伝によって兄弟の中で一人だけ身長が違う、といったことも起こりうると話します。
残りの十〜二十パーセントほどが、栄養、睡眠、運動、病気など、成長期の環境で変わるとされています。
牛乳は「効率のいい栄養源」だった
その環境要因の中で、牛乳はかなり効率のいい栄養源だったというのが今の科学的な見解だと川上さんは話します。
牛乳にはカルシウム、良質なタンパク質、乳脂肪、ビタミンB群、リン、成長期に必要な必須アミノ酸がバランスよく含まれていると説明します。
海外の大規模研究では、思春期に牛乳をしっかり飲んでいた子供の方が平均身長が高い傾向が確認されているそうです。
ただし川上さんは、これは確定ではなく、あくまで傾向だと繰り返し強調します。
またカナダの研究では、牛乳の代わりに植物性ミルクだけを多く飲んでいた子供に、平均身長が少し低い傾向が見つかったとも紹介されます。
一方で、ここで超大事な点として、牛乳だけで成長するわけではないと川上さんは付け加えます。
寝不足や栄養バランスが悪ければ、成長にはマイナスになりうる
肉・魚・卵・睡眠・運動が整えば、牛乳を飲まなくても十分成長する人は多い
肉や魚や卵をしっかり食べ、睡眠が取れ、運動をしていた子供は、牛乳を飲まなくても十分に成長している人がたくさんいるということです。
自分を責めなくていい理由
だからこそ、給食の牛乳を残したから今の身長になったと自分を責める必要はないと川上さんは話します。
むしろ当時の給食は飲み切る文化が強く、苦手なのに頑張っていた人も多かったのではと振り返ります。
牛乳でお腹を壊す人もいますし、乳糖不耐症だった可能性もあると指摘します。
体に合わないものを無理して飲み続けるのが正解という話でもないんですね。
今からでもできること
では、今からできることは何か。ここも大事だと川上さんは話します。
骨は大人になってからも作り変わっているため、カルシウム、タンパク質、ビタミンD、適度な運動、そして日光を浴びることを意識するだけでも、骨や筋肉の健康に意味があると説明します。
牛乳が苦手な人は、ヨーグルトやチーズ、小魚、豆腐、納豆、青菜類など、他の食品でも栄養を補えると話します。
さらに、昔は飲めなかったが大人になって牛乳を飲めるようになった人も結構いると言います。味覚や腸内環境は年齢で変わるためだと説明します。
戦後の食文化と牛乳の役割
酪農家として面白いと感じる点として、川上さんは日本の食文化の歴史に触れます。
昔の日本人は今ほど牛乳を飲む文化はなく、牛乳を飲む習慣が本格的に始まったのは戦後、およそ八十年ほどだと話します。
学校給食で牛乳
成長期の栄養インフラとして牛乳が広まった
栄養全体の改善
肉や卵など食事全体の栄養が向上した
医療・衛生の向上
衛生環境や医療も合わさった
平均身長の伸び
これらが合わさった結果として身長が伸びた
平均身長が伸びたのは牛乳だけの効果ではなく、食事全体の改善や医療・衛生環境がすべて合わさった結果だと川上さんは丁寧に補足します。
その中で、牛乳が成長期の栄養インフラとして大きな役割を果たしたのは間違いない、というのが川上さんの見解です。
人間の成長はもっと複雑で、もっと総合的なものだと川上さんはまとめます。
無理はさせない、という視点
もし子供が牛乳を飲めないと悩む親がいれば、無理に飲ませるのではなく、その子に合った栄養をどう作るかという視点を持ってほしいと川上さんは話します。
配信のライブでは、あるお母さんから「息子の学校では無理して食べず、苦手なものを減らしていいそうです」というコメントが寄せられました。
川上さんは、まだ見つかっていないアレルギーや体質に合わないものは必ずあるとして、体調が悪くなるなら無理はしない方がいいと応じます。
美味しく楽しくね、続けてもらえると嬉しいなと思いますね。
一方で川上さんは、給食で牛乳が出る意味にも触れます。経済的な事情で食べるものが十分でない子供もいる中で、牛乳は成長の最低限のラインを確保するために大切だと話します。
また、学校で牛乳を飲まない子供が増えることで、将来的に骨粗しょう症や骨のもろさ、歯への影響が出るのではという予測もあると紹介します。ただしこれは十数年経たないとわからないかもしれない、と慎重に付け加えます。
まとめ
今回は「成長期に牛乳を飲まなかった影響はあるのか」という相談に、川上さんが研究データを踏まえて答えました。牛乳は優秀な栄養源である一方、成長は遺伝や生活全体で決まる総合的なもので、飲めなかったことを失敗と考える必要はない、という落ち着いた結論でした。
- 身長は約八十パーセントが遺伝の影響とされ、残りを栄養・睡眠・運動などの環境が左右する
- 牛乳は成長期に効率のよい栄養源だが、牛乳だけで成長が決まるわけではない
- 牛乳が苦手なら、ヨーグルト・小魚・豆腐・青菜類など他の食品でも栄養を補える
- 骨は大人になっても作り変わるため、今からの栄養や運動、日光にも意味がある
- 無理に飲ませるより、その子に合った栄養の作り方を考える視点が大切
