テーマは「牧場だけで稼がない」裏側の話
今回の配信は、朝の洗浄機の音が響くなかスタートしました。研修生が持ちかけたのは、いつもの現場作業ではなく、その裏側の話です。
餌を仕入れる営業や、牧場以外でのお金のやりくりまで、川上さんがどう稼いでいるのかを知りたい、という切り口でした。
牧場だけ稼ぐんじゃなくて、他も一緒にやった方が稼げると思ってうまくやってらっしゃると思うんですけど、そういう面を知れたら。
川上さんによると、こうした「裏側」や「牧場以外で稼ぐ取り組み」を本格的に始めたのは、コロナ禍からだそうです。それまではやっていなかったといいます。
SNS発信から収益化までの5年
もともとSNSは、収益目的ではなく別のきっかけで始めていました。出発点は「酪農教育ファーム」のネットワークです。
最初は会員同士で「こういうことをやりました」と報告し合うだけの、相互コミュニケーションが中心でした。
SNSやってたらどんどんフォロワーが増えてくるから、情報発信みたいなのをし始めて。それでまた伸び始めてみたいなになってた。
発信を続けるうちにフォロワーが増え、そこから収益化を意識するようになります。音声配信を始めたのは、SNSを始めてから5年ほど経った頃でした。
それまでは牛乳を出荷するだけのビジネスしか考えていなかったといいます。ですが音声配信を通じて、ファンとつながる稼ぎ方が見えてきました。
でっかい収益上げてるかって言ったらそうでもないけど、サラリーマンのお小遣い程度にはできてるとは思う。
餌を確保するための100件の飛び込み営業
話は「営業」にも及びました。この地域は餌が高く、そのまま買っても採算が合うものが見つからなかったそうです。
そこで川上さんは、地域で手に入る餌を自分で探すことにしました。牛の餌に使える酒粕や醤油粕、そして食品残渣が出る食品工場などに、片っ端からメールを送ったといいます。
反応があったところに名刺持って「行ってないですか?」っていうみたいなのを100件ぐらいやって。完全に営業。
さらに、SNSでの発信が営業にもつながっていました。今使っている大きなフレコンバッグの餌は、以前からSNSでつながっていた県外の餌の会社から仕入れているものだそうです。
20代から続けてきた投資と、たくさんの失敗
牧場以外のお金のやりくりについて聞かれた川上さんは、投資も20代の頃からずっと続けてきたと明かします。
新NISAなどで「投資しましょう」と言われるより前から取り組んでいたそうです。酪農家として年収がある程度決まる仕事だからこそ、お金を増やす方法を覚えないといけないと考えていました。
酪農の仕事を作るって決めて、年収決まるから、絶対そのお金を増やす方法を覚えないといけないっていうのを若い時から思ってた。
学んだのはアフィリエイトやメルマガ、デイトレードなど。ただし、そこには失敗もたくさんあったといいます。
アフィリエイトのセミナー商材は1つ10万円ほどしたそうです。それでも本気でやれば結果は出るものの、成功できるのは一部だけだと振り返ります。
ちゃんとやればできる。だから100人やって1人は絶対儲かる。
損もしましたが、川上さんはその失敗を今につながる経験だととらえています。資産の一部を、英語の勉強や海外へ行くといった自己投資にもあてていたそうです。
デイトレードから投資信託、そして企業案件へ
株のデイトレードについても話が広がりました。研修生が「ギャンブルでは」と尋ねると、川上さんはデータを取ってやるものだと答えます。
ギャンブルじゃないです。でもデータ取るからね。動きがあるんだけど、それをずっとやってると見えてくる。
当時は朝の牛舎の仕事を9時までに終わらせ、家に帰って午前中だけデイトレードに集中していたそうです。父親が現役だったため、朝晩の仕事を回せばよかったことも大きかったといいます。
現在はデイトレードではなく、投資信託にしっかり取り組んでいるとのこと。あわせてnoteの有料記事やメンバーシップ、サブスクからも収益が入っています。
さらに「企業案件」もこなしています。使っているのは、スペシャリストと企業をマッチングさせるサービスです。
たとえば、化粧品会社が自社技術で第一次産業に参入したいと考えている場合に、酪農のスペシャリストとしてオンラインでアドバイスするそうです。
去年はいっぱいやったね。マジであれは儲かるね。あれは本気でやった方がいい。
研修生は、こうした案件が来る背景に、川上さんがずっと顔を出して配信やnoteを続けてきた実績があるのでは、と指摘しました。川上さんもその積み重ねがつながっていると認めています。
コンサルの夢と、地域で生きる難しさ
川上さんには、いつか牧場のコンサルをやりたいという思いもあります。経営が難しくなっている人を相談で助けられたらいい、と話します。
ただ、酪農業界にはコンサル料を払う余裕がないのが現実だといいます。それでも、自分で試行錯誤して時間とお金を溶かすより、プロに聞いた方がいいという考えです。
研修生
研修生は、新規就農の仕方そのものがわからないので、まずはプロが横についてくれないと難しいと答えました。ある程度わかったら自分でやるタイプだからこそ、最初に頼れる制度がなければスタートすらしないだろう、というのが本音でした。
話は、山陰という地域で生きる難しさにも及びます。川上さんは、新しい人を受け入れる文化ではない、と率直に語りました。
島根はだって文化的にないからね。新しい人を受け入れる文化じゃないから。
受け入れてもらえても、成功したり車を買い替えたりすると反感を買いかねない。だからこそ川上さんは、豊かになっても質素にしようと心がけてきたそうです。
かつて地域と「戦った」失敗もあったといいます。感情的にぶつかると、自分の努力がすべて水の泡になる。その経験があるからこそ、今はうまくやることを大切にしています。
新規就農の第一歩をどう下げるか
最後は、新規就農の「第一歩の重さ」がテーマになりました。研修生は、牧場に来るまでにはかなりの勇気がいると打ち明けます。
川上さんは、そのハードルを下げるにはどうすればいいかを研修生に問いかけます。挙がったのが、単発で働けるサービスの活用です。
ただ、島根では知らない人も多く、見知らぬ車が牧場に来ることで周囲から白い目で見られることもあるといいます。
研修生は、募集サイトに笑顔の動画を載せてはどうかと提案します。顔が見えることは、やはり大事だという実感からでした。
さらに研修生は、今の若い世代にとっては電話をかけること自体のハードルが高い、と指摘しました。川上さんは、連絡手段は何でもいいと応じます。
いいんだよ。チャットでもいいよ。DMでもいいよ。
第一ステップは重たいんで、新規就農したい方は。
まとめ
今回は、牛乳を売るだけではない酪農家の「稼ぎ方の裏側」を、研修生が一つずつ聞き出す回でした。発信・営業・投資・企業案件と手を広げてきた背景には、たくさんの失敗と、地域で生きるための工夫がありました。
- 川上さんが牧場以外の稼ぎを本格化させたのはコロナ禍から。SNSは酪農教育ファームがきっかけだった
- 餌の仕入れ先は約100件の飛び込み営業で開拓し、SNSのつながりも役立った
- 20代からの投資では失敗も多かったが、それが今につながる経験になっている
- 現在はnote・企業案件・投資信託など複数の収入源を持ち、実績の積み重ねが案件につながっている
- 新規就農の第一歩は重く、地域の理解や連絡のハードルを下げる工夫が課題になっている
