今日の質問「混ざるなら意味ないのでは?」
この日の配信は寒波が入り、最高気温は4度。堆肥を運び、確定申告の準備を進めるという1日の中で、川上さんはリスナーからの質問に答えていきます。
一般的な牛乳のパックには乳脂肪率3.5%などと書かれていますが、川上牧場の牛乳は牛群検定の平均で4.5%が出ているそうです。
そこに届いたのが、AWAネーム斎藤百合子さんからの質問でした。
川上さんの牛乳は乳脂肪分4.5%と言っていましたが、結局他の酪農家の牛乳と混ざってしまうなら、個別販売しない限り意味ないのではないでしょうか。
川上さんはこの質問を、酪農の仕組みをちゃんと理解しようとしている「とてもいい質問」だと受け止めます。
とうとうここまで気づいてしまいましたか、消費者の皆さんが。
普段飲んでる牛乳3.5%、川上さんのやつ4.5%、それ薄なっとるやないかってことですよね。気持ちはわかります。
生乳はどう扱われているのか
まず川上さんは、この回で整理するポイントを3つにまとめます。生乳はどう扱われているのか、混ざることの意味、それでも数値を把握する意味は何か、です。
そして結論を先に示します。
日本の酪農では、各牧場で搾乳した牛乳をバルククーラーで冷やし、そこに乳業会社の集乳車が回収に来ます。
集乳車は複数の牧場を回って牛乳を集め、乳業工場でまとめて処理します。つまり川上牧場の牛乳も、他の牧場の牛乳と混ざります。ここは質問者の理解どおりです。
搾乳
各牧場で牛から牛乳を搾る
冷却
バルククーラーで冷たく保管する
集乳
集乳車が複数の牧場を回って回収する
処理
乳業工場でまとめて処理される
じゃあ4.5%って意味あるの?
ここが本題です。混ざるなら、4.5%という数字に意味はあるのでしょうか。
川上さんは「意味はあります」と答えます。ただしそれは、商品スペックの自慢ではないと言います。
意味はあります。ただし、それは商品スペックの自慢ではありません。川上4.5だぜっていうことではないってことですね。
乳脂肪4.5%が出ているというのは、牛の遺伝改良が進んでいること、能力を生かす飼料設計ができていること、牛が健康で体調管理ができていること、ストレスが少ないこと、こうした牧場の管理状態の結果を表す指標だと川上さんは説明します。
言い換えると、その牧場で牛がちゃんと機能しているかを測る、健康診断の数値のようなものだといいます。
混ざっても「データ」は消えない
では、混ざったら意味がないのでしょうか。川上さんは「意味ないことないんですよね」と続けます。
日本の生乳の取引では、乳脂肪率、乳タンパク率、体細胞数といった数字が、牧場ごとに検査・記録されています。
この数値は、牛乳の販売価格の算定や改善点の把握、繁殖や飼料の見直しに使われます。つまり牧場経営の意思決定に直結する数字だということです。
「個別販売してないと無意味なのか」という点にも、川上さんは触れます。確かに4.5%の牛乳をそのまま消費者に届けるには、小規模の加工場を作って直販する必要があります。
でも、すべての牧場が直販を目指す必要はない、と川上さんは言います。日本の酪農は、みんなで量を安定供給しながら、その中で品質を底上げする仕組みで成り立っているからです。
その中で自分の牧場がどんな基準にあるのかを知ること自体が、意味のある行為だと話します。
酪農って感覚じゃなくてデータで考える仕事なんですよ。
牛の状態は、元気そう、可愛いだけではわかりません。数字を見ることで初めて見えることがたくさんあります。
なぜ市販は3.5%で安定しているのか
川上牧場が4.5%なのに、市販の牛乳が3.5%と書かれているのはなぜか。ここには乳成分が年間で変動するという事情があります。
牛乳は3.5%を切らない基準で出荷されているため、夏場は3.5%ギリギリのこともあれば、牛が健康な涼しい時期には3.8%や4%の牛乳が詰められていることもあるそうです。
川上牧場の牛乳が4.5%であることは、乳業メーカーの引き取り価格で「いい牛乳」として評価される、と川上さんは説明します。
逆に夏場や病気などで基準を下回ってしまうこともあります。そのとき他の牧場の牛乳と混ざることで、市販の牛乳が3.5%を下回らないように保たれているのです。
ライブでは質問者の百合子さんから「引き取り価格で評価されてるならよかった。持ちつ持たれつ」というコメントが届き、川上さんも「そういうことです。把握が早い」と応じました。
品質を上げていくという酪農家の姿勢
川上さんは、他の酪農家と混ざるからといって「頑張っても意味ない」ではなく、みんなでいい牛乳を作って品質を上げていきたい、と話します。
その背景には、海外との違いもあります。海外の牛乳はヘルシー志向で3%が基準の地域が多い一方、日本は乳脂肪分が高いとされています。
日本の消費者が3.5%に飲み慣れていることは、「3%の牛乳は薄い」と言える理由にもなり、輸入への関税障壁にもつながる、と川上さんは指摘します。
どんどん品質を上げて、日本人の舌を肥やしていこうかなと、そういうことをしていった方がいいかなと思ったりするところですね。
まとめ
混ざるから意味がない、というのは違う、というのがこの回の答えです。生乳は基本的に混ざりますが、乳脂肪率などの数値は牧場ごとに記録され、経営や改善の判断材料になります。直販しなくても、数字は牛の状態を映す鏡として意味を持つ、というお話でした。
- 日本の生乳は各牧場で搾られ、集乳車で回収されて乳業工場でまとめて処理されるため、他の牧場の牛乳と混ざる
- 混ざるのは「もの」としての牛乳であり、乳脂肪率などの検査データは牧場ごとに残り消えない
- 乳脂肪4.5%は自慢のスペックではなく、牛の遺伝・飼料・健康・ストレスなど管理状態を映す指標
- 市販の牛乳は3.5%を切らない基準で出荷され、酪農家全体で年間を通じた品質の安定を支えている
- 直販を目指さなくても、自分の牧場の数値を把握することは経営と改善に意味がある
